英雄伝説~光と闇の軌跡~(SC篇)
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第62話
~遊撃士協会・ボース支部~
「ただいま~、ルグラン爺さん。」
「こっちの手配魔獣は片付けたぞ。」
「あ、お帰り、ママ!」
「こっちも終わっているわよ。」
エステル達がギルドに戻ると手配魔獣を倒しに行っていたミントとシェラザードのチームもギルドに戻っていた。
「おお、ご苦労じゃったな。どれ、全員戻って来たようだし先に今回の報酬を渡しておくか。」
そしてルグランはエステル達にそれぞれ報酬を渡した。
「ふむ、かなり凶暴だったらしいが問題なく退治できたようじゃな。」
「うーん、それなんだけど……。ちょっと気になることがあってね。」
「?気になることじゃと?」
「ああ、実はな―――」
そしてエステル達がルグランに魔獣の様子がおかしかった事を説明し始めた。
~同時刻・ボース市~
「ご機嫌よう、ヤハトさん。」
一方その頃リラを伴って街を歩いていたメイベルは親しげな様子で市民に話しかけた。
「おお、市長じゃないかね。教会に礼拝に行くのかね?」
「いえ、マーケットの視察に行くつもりですの。礼拝はその後するつもりですわ。」
「お嬢様……。先日も、そんな事を仰いながら結局お行きになりませんでしたが。」
市民に尋ねられ、答えたメイベルの言葉を聞いたリラは呆れた表情で溜息を吐きながら答えた。
「もう、リラったら。つまらないことを覚えてるわね。今日は絶対に寄りますわよ。」
「ふぉふぉ、仕事も結構じゃが日々の生活を大切にする事じゃ。あんたみたいに責任のある立場にいる人間ならば特にな。」
「ええ、肝に銘じておきます。それではわたくしたちはこれで失礼しますわ。」
「失礼します。」
そしてメイベルはリラを伴って、マーケットに入って行った。
「お父上が亡くなった後、すぐに市長に立候補した時はどうなるかと思ったが……。今ではすっかり一人前の市長の顔になったのう。ふむ、もう少し肩の力を抜いた方がいいと思うが。」
メイベル達を見送った市民は顔を上げると、何かを見つけた。
「……なんじゃ、あれは?」
~遊撃士協会・ボース支部~
「ふむ、魔獣が怯えたり、やたらと暴れておったか……。何とも気になる話だのう。」
「うん、何だか不気味よね。そういえばアガット。前にもボース地方で同じようなことがあったとか言ってたよね?」
「む、そうなのか?」
エステルの話を聞いたルグランはアガットに尋ねた。
「ああ……まあな。爺さんがボースに来る前の話さ。」
「あれ、ルグラン爺さんって前からここにいるんじゃないの?」
アガットの話を聞いたエステルは意外そうな表情をして、ルグランに尋ねた。
「わしがこの街に来たのは『百日戦役』が終わった後じゃよ。かつてリベールの遊撃士協会はグランセルにしかなくてな……。各地方に支部が作られたのは戦争が終わってからなんじゃ。ちなみにわしは、10年前までは王都支部の受付をしてたんじゃよ。」
「へえ~、そうだったんだ。」
リベールでの遊撃士協会の歴史を聞いたエステルは意外そうな表情をした。
「……その『百日戦役』の直前だ。魔獣の様子がやたらとおかしかったっていうのはな。」
「へ……?」
「なんじゃと……?」
アガットの説明を聞いたエステルとルグランが首を傾げたその時
ズドン!!
辺りを響き渡らせる轟音がすると同時に地面が激しく揺れた!
「な、なんじゃあ!?」
「な、なに今の!?」
「外だ……確かめるぞ!」
轟音に驚いたエステル達はギルドを出た。
~ボース市~
「ああっ!?」
エステル達が外を出ると、そこには巨大な竜がマーケットの屋根に乗っていた!
「はわわっ……」
「なんて大きさ……!」
「こいつは……竜か!?」
竜を見たティータは慌て、シェラザードは竜の大きさに驚き、ジンは竜がいる事に驚いた。
「はい……古代竜です!昔からリベールのどこかに棲息していると伝えられていましたが……」
クローゼはジンの言葉に頷きながら、不安そうな表情で竜を見ていた。
「お、大きい………ミント達が”竜化”した時の数倍の大きさはあるよ………!」
「うん…………きっと長い年月を過ごして来た証だね…………」
ミントは竜の大きさに驚き、ツーヤはミントの言葉に頷いた。
「………まさかこのような竜がこの世界にいたなんて………!」
「…………あの竜、”邪竜”ほどではないけど、かなりの力を秘めているよ………少なくても魔神一柱分ぐらいの強さはあると思う。」
プリネは竜を見て信じられない表情をして、リタは真剣な表情で竜を見ていた。
「いやはや、たまげたねぇ。」
オリビエは感心したような言葉を言いながらも、真剣な表情で竜を見ていた。
「まさか……こいつも『結社』の仕業か!?」
アガットが竜を睨んで言ったその時
「……まあ、否定はすまい。」
アガットの言葉に答えるかのように、銀髪の青年――レーヴェがいつの間にか、ボースマーケットの上にいた。
「!!」
レーヴェを見たプリネは驚いた!
「あ……!」
「てめぇは……!?」
「特務部隊隊長、ロランス・ベルガー少尉!」
一方エステルも驚き、アガットはレーヴェを睨み、シェラザードはレーヴェを睨みながら、かつてレーヴェが名乗っていた偽名を叫んだ。
「フフ、それはただの偽名だ。執行者No.Ⅱ。『剣帝』レオンハルト。以後、そう呼ぶといいだろう。」
執行者No.Ⅱ、『剣帝』レーヴェは不敵な笑みを浮かべて、名乗り上げた!
「『剣帝』……レオンハルト。」
「なるほど……『獅子の果敢』か。すると『獅子』というのはキミの愛称だったわけだね。」
エステルはレーヴェの本名を呟き、オリビエは納得した表情で言った。
「あ、あんですって~!?」
「貴方が『レーヴェ』……」
「……………………………」
オリビエの言葉を聞いたエステルは驚き、クローゼは不安そうな表情でレーヴェを見て、プリネは悲痛そうな表情でレーヴェを見ていた。
「……いささか不本意だが、仲間内ではそう呼ぶ者は多いな。まあ、お前たちも好きなように呼ぶがいい。」
「……舐めやがって……」
レーヴェの言葉を聞いたアガットはレーヴェを睨んでいた。
「グオオオオオ―――ッ!!」
その時、竜が雄たけびを上げた後、口から炎のブレス――竜の息吹を吐いて、近くの建物を焼いた!ドラゴンブレスによって、いくつかの建物が火事になり、隣の建物へと次々と燃え広がった!
「ああっ!?」
「街を焼くつもり……!?」
竜の行動にエステルは驚き、シェラザードはレーヴェを睨んだ。
「……やれやれ。手間をかけさせてくれる。」
一方レーヴェは溜息を吐いた後、竜の背に乗った。
「ま、待てやコラ!」
「どこに行くつもり!レーヴェ!!」
レーヴェの行動を見たアガットとプリネは制止の言葉を叫んだが
「?(何だ?まるで”あいつ”に呼びかけられた気がしたが………)……今回の実験は少しばかり変則的でな。正直、お前たちの手に負える事件ではない。王国軍にでも任せて大人しくしておくのだな。」
レーヴェは一瞬戸惑ったが、すぐに気を取り直してアガット達に答えた後、竜を舞い上がらせ、エステル達に背を向けた。
「クソがあああああああああああああ―――っ!!」
アガットの悔しさの叫びを背にレーヴェを乗せた竜は飛び去って行った!
「ど、どうしよう……。このままだと逃がしちゃう!」
飛び去って行く竜を見たエステルは慌てた様子で言った。
「……俺はこれからあのデカブツを追跡する。お前らは軍が来るまで被害状況を確認してろや。」
「えっ……!?」
「アガット?」
アガットの指示にエステルとシェラザードは驚いた。
「後でまた連絡する!」
そしてエステル達の返事も聞かず、アガットは竜が去って行った方向を走って追って行った!
「アガットさん!?」
「ちょ、ちょっと!?」
アガットの行動にティータとエステルは驚いた。
「き、君たち!いい所にいてくれた!」
その時、市民の一人がエステル達に近づいて来た。
「頼む、手を貸してくれ!瓦礫の下敷きになった人や逃げ遅れた人がいるんだ!」
「なに!?」
「あ、あんですって!?」
市民の言葉を聞いたジンとエステルは驚いた。
(レーヴェ………どうしてこんな事を…………)
プリネは悲しそうな表情で俯いていた。
「プリネ!どうしたの!?早く逃げ遅れている人達を助けるわよ!」
「……………はい。ただ、私とリタさん、ツーヤは燃えている建物の消火活動と傷ついた市民の方達の手当てに廻ります!」
エステルの言葉に我に返ったプリネは頷いた後、リタとツーヤを見て言った。
「………そうだね。建物の消火をする為に、ここは冷却魔術を使える私達の出番だね。」
プリネの言葉を聞いたリタは頷いた。
「わかった!そっちはお願いするわ!ミント、貴女もプリネ達を手伝って!確か貴女も吹雪のドラゴンブレスが使えたわよね!?」
「う、うん!わかった!」
エステルの指示にミントは頷いた。
「みんな、行くわよ!」
そしてエステル達はプリネ達を残して、ボースマーケットに急いで向かった。
「私達も急いで、建物の消火をしましょう!」
「はい!」
「「うん!」」
そしてプリネ達は燃えている建物群に向かった。
「………かなり燃え広がっているね。一回で消せるといいんだけど……」
リタは次々と燃え広がっている建物群を見て、真剣な表情で呟いた後、魔術の詠唱を始めた。
「………パラスケヴァス!!」
そしてプリネはパラスケヴァスを召喚した!
「お願いします!貴方の水のブレスで、燃えている建物の消火の手伝いをしてください!」
「………………!」
プリネの頼みに頷いたパラスケヴァスは大きく息を吸った!
「ツーヤ!貴女は”竜化”して、水か吹雪のドラゴンブレスで消火してもらえるかしら!?確か貴女は”水竜”だったわよね!?」
「はい!お任せ下さい!!ハァァァァァァァァ……………………!!」
プリネの指示に頷いたツーヤは両手を空へと上げて身体全体にすざましい魔力を溜めて光に包まれ、そして!
「グオオオオオッ!!」
光が消えるとツーヤがいた場所には家屋ほどの大きさの青い竜――”竜化”したツーヤが現れた!
「ミント、先ほどエステルさんがおっしゃっていましたが、貴女も吹雪のドラゴンブレスが使えるのかしら?」
「うん。ミント、水属性が得意なツーヤちゃんみたいな威力はないけど、吹雪のドラゴンブレスが使えるから、ミントも”竜化”する!ハアアアアアアアアアア………………!!」
オーブメントを駆動させながらのプリネの疑問に答えたミントも”竜化”し、白銀の竜になった!
「行きます………!全てを凍てつかせ!コキュートス!!」
そしてプリネのアーツが発動し、アーツによって発生した吹雪や氷が燃え広がっている建物の火の威力を少しだけ弱め
「「氷金剛破砕撃 (ダイヤモンドアイスバースト)!!」」
さらにミントとツーヤはそれぞれすざましい吹雪のドラゴンブレスを吐いて、弱まっている火をさらに弱め
「大海に呑まれなさい!デネカの大海!!」
「…………………!」
リタが放った水の魔術とパラスケヴァスが放ったブレス――アクアブレスによって、燃え広がっていた建物の火は完全に鎮火した!その後プリネ達は火事によって傷ついた市民の手当てや、火事によって崩れた瓦礫に埋もれている市民の救助を始めた。
~ボースマーケット内~
「ひ、酷い……」
一方ボースマーケットに到着したエステル達はマーケット内の惨状に一瞬呆けた。
「……まずは、役割分担を決めなくちゃ!シェラ姉!クローゼとティータと一緒に逃げ遅れている人たちを誘導して!」
そして気を取り直したエステルはシェラザード、クローゼ、ティータに指示をした。
「ええ、分かったわ!姫様、ティータちゃん、西口の方に向かうわよ!」
「はい!」
「わ、わかりましたっ!」
エステルの指示に頷いたシェラザード達は行動を開始した。
「………パズモ、永恒!!」
さらにエステルはパズモとサエラブを召喚した!
「パズモは他にも瓦礫にはさまれている人がいないか確かめて、それでもしいたら、あたしに知らせて!それと天井にも気を配って、もしシェラ姉たちが誘導している人達に瓦礫が落ちてきたら、魔術で破壊して!」
(わかったわ!)
「永恒はシェラ姉たちが誘導している人達の中に歩けない人や子供がいたら、背中に乗せて運んで!」
(承知!)
エステルの指示に頷いたパズモとサエラブもそれぞれ行動を開始した。
「ジンさん、オリビエ!あたしたちは瓦礫の撤去を手伝いましょ!」
「おお!」
「フッ、了解だ。」
そしてエステル、ジン、オリビエも行動を開始した!
「お願い!返事をしてちょうだい!」
メイベルは瓦礫の下にいる人物に悲痛な表情で叫んだ。
「くっ……駄目だ……」
「僕たちだけの力じゃ……」
市民達が瓦礫をどけようとしたがビクともしなかった。
「メイベル市長!」
「き、君たちは……!」
「エ、エステルさん!」
そこにエステル達が近づいて来た!
「手伝いに来たわ!誰か下にいるのね!?」
「リ、リラが……。リラがわたくしをかばってこの瓦礫の下に……!」
「!!!」
メイベルの説明を聞いたエステルは驚いた。
「このくらいだったら1人で持ち上げられるだろう。ちょいとそこから離れてくれ。」
「あ、ああ……」
「た、頼みます。」
ジンの言葉に頷いた市民達は瓦礫から離れ、そしてジンは瓦礫の下に手を入れた。
「……フンッ!」
そしてジンは瓦礫を持ち上げた!
「リラ!?」
瓦礫の下にいたリラを見つけたメイベルは声を上げた。
「う……あ……。……お嬢……さま……」
所々傷を負い、血を流しているリラはメイベルの姿を見て、安堵の表情をした後、気絶した。
「おお、生きてるぞ!」
「ああ、リラ!!」
「オリビエ!リラさんを運ぶのを手伝って!」
「フッ、任せておきたまえ。」
そしてエステルはオリビエと協力して、リラを瓦礫から少し離れた場所に運んだ。
「早く治療しないと……!テトリ!ニル!」
リラの状態を見たエステルはテトリとニルを召喚した!
「2人はリラさんに治癒魔術をお願い!」
「わかりましたわ!………癒しの息吹!!」
「はい!……大地の恵み!!」
エステルの指示に頷いたニルとテトリはリラに治癒魔術をかけ始めた。
その後エステル達は分担して市民達をボースマーケットから非難や手当てをした後、報告の為にギルドに向かった…………
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