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英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅰ篇)

作者:sorano
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第153話

9月22日―――



~トールズ士官学院・グラウンド~



「―――学院祭の準備、やっと始まったみたいね。去年のトワたちみたいなステージをやるみたいだけど音楽の方向性は決まったの?」

「うーん、検討中ですね。ただ、演奏担当のメンバーとボーカル担当のメンバーについては上手くわけられそうな感じです。」

サラ教官の問いかけにエリオットは考え込みながら答え

「………異種族達によるステージも”Ⅶ組”の出し物として提案した上、教官達全員を納得させて許可を貰った手腕には驚いたが……肝心の異種族達は楽器の演奏はできるのか?ほとんどの者達が楽器とは縁のない者達に思えるが。」

「おうよ!意外にも楽器を演奏できる連中が多くて何とかなりそうだぜ。ちなみにボーカル担当は俺の提案でアイドスのソロに決まったぜ!何せ”女神”の歌なんだから、盛り上がる事間違いなしだぜ!」

レーヴェの問いかけに対してクロウは力強く頷いて答えた。



「アハハ、アイドスさんは女性として凄い美人でもありますから、間違いなく盛り上がるでしょうね……」

「女神様が公衆の前で歌を歌うなんて、きっと歴史上初でしょうね……」

「ううっ、今でも本当に大丈夫なのか、不安だわ……間違いなくお父様は頭を抱えるでしょうし、セリカ様が知ったら、どう思われるかしら……」

「セリカもそうだけど同じ女神のフェミリンスが知ったらどういう反応をするかすっごく気になるね、キャハッ♪」

(フフ、確かにその通りね。)

ツーヤとセレーネは冷や汗をかいて苦笑し、プリネは疲れた表情をし、エヴリーヌは口元に笑みを浮かべ、アイドスは微笑み

「楽器か……ロクに触ったこともないが。」

「んー、ボクも無いかなぁ。」

「さすがに経験者じゃないとそちらは厳しそうですね……」

楽器を触ったことのないマキアスとミリアムは難しそうな表情で考え込み、エマは不安そうな表情をした。



「うーん、去年のステージは見たけどなかなかインパクトあったからねぇ。ステージ衣装のコーディネートはクロウとリィンで詰めてるんだっけ。何とかなりそうなの?」

「いえ、まだデザインの検討段階です。」

「おお、バッチリだぜ♪」

サラ教官の問いかけに対し、リィンとクロウは同時にそれぞれ異なった答えを口にした。



「やれやれ……先行きが不安だな。」

二人の答えを聞いたレーヴェは呆れ

「……大丈夫なんでしょうね?」

「まあ、リィンの良識に期待するしかなさそうだな。」

不安そうな表情をしているアリサの言葉にラウラは静かに答えた。



「は~、いいわねー。あたしもあと5歳若かったら君達に混じって青春を謳歌できたんだけどなー。」

自分達を羨ましがるサラ教官の発言を聞いたリィン達は無言でサラ教官を見つめた。

「な、何よその反応?」

生徒達の反応を見たサラ教官は慌て

「だってねぇ?」

「サラ、サバ読み過ぎ。」

「図々しいにもほどがあるな。」

「確か教官って、20代のちょうど半ばだったような……」

アリサとフィー、レーヴェは呆れた表情で指摘し、リィンは考え込み

「お、お兄様。女性の年齢を口にするのは失礼ですよ?」

セレーネはサラ教官を気にしながら焦った表情でリィンを見つめて指摘した。

「フッ、5年前だとしても卒業しているんじゃないか?」

「クロウみたいに留年していたら、卒業していないんじゃないの?」

「エ、エヴリーヌお姉様……」

「本人を目の前でそんな事は言わないであげてください……」

ユーシスは静かな笑みを浮かべ、エヴリーヌの推測を聞いたプリネとツーヤは冷や汗をかき

「おいこら、エヴリーヌ!俺はまだ留年していないぞ!?」

「”まだ”って事は、可能性はあるじゃないか……」

エヴリーヌを睨んだクロウの言葉を聞いたマキアスは呆れた表情で指摘した。



「ええい、お黙り!女は20代後半からが本番!男は渋ければ渋いほどいい!ま、負け惜しみなんかじゃないんだからねっ!?」

サラ教官はリィン達を睨んだ後焦った表情で答え

(見事なまでの負け犬の遠吠えだな……)

「聞こえているわよ、生徒と恋仲になっている教師の風上にもおけないこの犯罪者!ロリコン剣士!」

小声で呟いたレーヴェの言葉を聞いたサラ教官はレーヴェを睨み

「フッ、教師の風上にもおけないという言葉はそっくりお返しする。」

「そだね。それに関してはサラにも言える事だね。」

「それと、俺とプリネ皇女の年齢はそれほど離れていない。幼い者を恋愛の対象としている者に対しての呼び方はむしろ”重剣”に当てはまる事だと思うが?」

「レ、レーヴェ……」

「アガットさんが知ったら間違いなく烈火の如く怒りますよ……」

サラ教官の指摘にレーヴェは静かな笑みを浮かべて答え、レーヴェの意見にフィーは頷き、プリネとツーヤは冷や汗をかいた。



「こ、こいつらは……!―――コホン。まあ学院祭は楽しみだけど気持ちは切り替えてもらうわよ。来月は特別実習だけじゃなくて実技テストの方もなし。だから今回は”区切り”としてちょっと頑張ってもらおうかしら?」

レーヴェとフィーを睨んだサラ教官は気を取り直した後説明し、そして武器を構えた!



「まさか……」

「……試合の相手は教官ご自身というわけか。」

武器を構えたサラ教官を見たラウラは驚き、ガイウスは静かに呟いた。

「ええ、5月の実技テストの再現ということになるかしら?今回ばかりはあたしも本気を出させてもらうわ……まずはリィン―――2名を選びなさい!」

「っ……はい!」

サラ教官に指名されたリィンは息を呑んだ後アリサとラウラを選び、戦闘配置につくとサラ教官は膨大な闘気を纏ってリィン達に銃口を向けた。



「さすがに本気みたいね……」

「紛れもない達人相手……せめて胸を貸してもらおう。」

「……とにかく俺達の全力をぶつけるしかない。」

「―――準備はいいわね。入学して半年、君達ならそろそろやれる筈よ……サラ・バレスタインという”壁”―――見事乗り越えてみなさい!」

「はいっ!」

そしてサラ教官との模擬戦を開始したリィン達は激戦の末、協力してようやくサラ教官を地面に膝をつかせる事ができた。



「はあっ……はあっ……」

「はあはあ……な、何とか勝てた……?」

「フフ、3人がかりでやっとではあったが……」

戦闘を終えたリィン達はそれぞれ息を切らせ

(フッ、エステル・ブライト並みの成長の速さだな……)

戦いの様子を見守っていたレーヴェは静かな笑みを浮かべ

「やれやれ……半年でここまで来たか。まさか、あれほど息の合った連携を見せるまでに、大きく成長していたとはね……ふふっ……教官冥利に尽きるわね。」

サラ教官は苦笑した後静かな笑みを浮かべて立ち上がった!

「―――さあ!次はプリネ、ツーヤ、エヴリーヌ!あんた達はレーヴェが相手よ!残りの3組はプリネ達の後に3人ずつ呼んであたしが相手するから準備をしておきなさい!」

その後それぞれの実技テストを終えるとサラ教官は疲労のあまり、地面に倒れ込んだ。


「はあっ……はあっ……」

地面に倒れ込んでいるサラ教官は息を切らせ、その様子を見守っていたリィン達は冷や汗をかいた。

「ば、化物か……やはり遊撃士という連中は化物ばかりなのだな……」

ユーシスは信じられない表情でサラ教官を見つめ

「ど、同時じゃなかったとはいえこの数を相手にここまで……」

「は、反則と言ってもおかしくないくらい強すぎですよ……」

マキアスとセレーネは疲れた表情でサラ教官を見つめた。



「……次元が違うな。我らも一層、精進せねば。」

「ああ……」

ラウラの言葉にリィンは頷き

「フッ、また腕を上げたな……」

「フフ、それはレーヴェもよ。」

「エヴリーヌさんとプリネさんの3人がかりでようやく勝てましたからね……」

「……フン。どれだけ強くても”神格者”にならない限りエヴリーヌは絶対に認めないんだから!」

レーヴェとプリネは微笑み合い、ツーヤは苦笑し、エヴリーヌは鼻を鳴らして不愉快そうな表情でレーヴェを睨んだ。



「あー……さすがにクッタクタ……委員長、せっかくだから膝枕でもしてくれない……?」

「ええっ……!こ、ここでですか!?」

「ちょっと教官……」

「フフ……まだ余裕があるようだな。」

「あはは……そんな冗談が言えるくらいだもんね。」

サラ教官の言葉を聞いたエマは慌て、アリサは呆れ、ガイウスとエリオットは苦笑していた。



「いやいや……正直、ちょっと感心したわ。―――これで心置きなく実習地が発表できるわね。」

サラ教官が呟いた言葉を聞いたリィン達が顔色を変えたその時

「……よっと。さ、受け取りなさい。」

サラ教官は起き上がってリィン達に実習地とメンバーが書いてある紙を配った。





『9月特別実習』







A班:リィン、アリサ、フィー、マキアス、エリオット、ツーヤ、セレーネ、クロウ



   (実習地:鋼都ルーレ)







B班:エマ、ラウラ、ユーシス、ガイウス、ミリアム、プリネ、エヴリーヌ



   (実習地:海都オルディス)





「これは……」

実習地を見たリィンは驚き

「あ、お姉様と一緒です♪」

「う、うん。それはあたしも嬉しいんだけど……」

自分と一緒である事に喜んでいるセレーネの言葉に頷いたツーヤは心配そうな表情でプリネを見つめ

「やったね♪ようやくプリネと一緒になれたよ♪」

「フフ、私も嬉しいですよ、エヴリーヌお姉様……」

嬉しそうな表情をしているエヴリーヌに視線を向けられたプリネは苦笑しながら自分が向かう実習地を見つめた。



「ルーレに、オルディス……それぞれ帝国の五大都市か。」

「そ、そうなんだけど……」

ガイウスの言葉を聞いたエリオットは戸惑いの表情で頷いて言葉を濁し

「ル、ルーレもそうだがオルディスといえば……」

「……人口40万を誇る帝国第二の巨大海港都市。貴族派のリーダー的存在、『カイエン公』の本拠地だな。」

マキアスは疲れた表情でミリアムとプリネに視線を向け、ラウラは真剣な表情で呟いた。



「じょ、冗談は止めてもらおう!この状況で、貴族派最大の都にこのガキに加えて、”通商会議”の件でどう考えてもカイエン公の恨みを買っていると思われるプリネまで連れて行けと……!?」

その時ユーシスは怒鳴ってミリアムとプリネに順番に視線を向け

「た、確かに……」

「そのチビッコにとったら完全に『敵地』だし、世界中にカイエン公爵の醜態をさらしたプリネはカイエン公爵から間違いなく恨まれているだろうしな。」

「下手したら火あぶりかも。」

ユーシスの指摘を聞いたアリサは不安そうな表情になり、クロウは納得し、フィーは心配そうな表情で二人を見つめ

「……プリネ皇女に関してはアルバレア公爵の件もある事に加えて”魔弓将”まで同行している為、さすがに2度も同じ過ちは犯さないと思うがな。」

フィーの推測を聞いたレーヴェは静かな表情で答えた。



「んー、大丈夫だと思うけど。オルディスなら何度か潜入してるし、みんなも一緒にいることだし♪」

「それにプリネを襲う奴等がいたらエヴリーヌが皆殺しにしてあげるよ、キャハッ♪その為の”権限”があるんだし♪」

「お、お姉様……」

ミリアムとエヴリーヌは無邪気な笑顔を浮かべ、エヴリーヌの言葉を聞いたプリネは冷や汗をかいた。



「くっ……何を呑気な!」

二人の答えを聞いたユーシスはミリアムとエヴリーヌを睨み

「……さすがに心配だな。」

「そうですね……かなり遠方にある街ですし。」

リィンの言葉にエマは心配そうな表情で頷いた。



「まあ、その辺りの事は色々考えてるから安心なさい。ただ、テロリストの件といい、安穏とできる状況じゃないわ。オルディスもそうだけど……当然、ルーレの方もね。」

リィン達に助言したサラ教官はアリサを見つめ

「っ……」

見つめられたアリサは息を呑んで真剣な表情になった。



「ルーレといえばRFグループ……でも、都市を管理するのは”四大名門”のログナー侯爵か。」

「ゼリカの頑固親父だな。”四大名門”の中でも強硬派路線と聞いているが……」

「……ええ、だけどルーレ周辺には帝国正規軍の軍需工場なんかもあるわ……RFグループは中立だけど微妙な状況になっていると思う。」

リィンとクロウの言葉に頷いたアリサは複雑そうな表情で説明し

「そ、そうなんだ……」

「何も起こらなければよいのですが……」

「けっこうキナ臭そう。」

「バリアハートの時のように”貴族派”が露骨な事をしてこないといいのですが……」

アリサの説明を聞いたエリオットとセレーネは不安そうな表情をし、フィーとツーヤは真剣な表情になり

「父さん達もこの時期にどうしてそんな実習先を……」

マキアスは呆れた表情で呟いた。するとその時サラ教官は手を叩いて自分に注目させた。



「さっきも言ったけどそのあたりは一応考えてるわ。来月は学院祭で、特別実習もなし。その意味で―――今回の実習もこれまでの”総括”と言えるわね。」

サラ教官の話を聞いたリィン達は驚いた後表情を引き締めた。

「備えるべきに備えて……そして胸を張って臨みなさい。君達がこれまで築き上げた”Ⅶ組”の成果に恥じないためにもね。」

「はい……!」

サラ教官の説明を聞いたリィン達は互いの顔を見合わせて力強く頷いた。



そして数日後……いよいよ”総括”ともいえる9月の”特別実習日”が来た…………!






 
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