英雄伝説~光と闇の軌跡~(SC篇)
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第55話
~メンフィル帝国・帝都ミルス・マルーダ城内・謁見の間~
「これよりツーヤの叙任を行う。……ツーヤ!」
「はい!」
リフィアに呼ばれたツーヤは敬礼をして、シルヴァン達の正面に来て、片膝をついて跪いた。そしてシルヴァンが玉座から立ち、ツーヤに近付き重々しい口調で話し始めた。
「……貴殿を今から我が妹、プリネの専属侍女兼護衛騎士に命じる。また、位を与えるにあたって、貴殿に”ルクセンベール”の名を与える。」
「ハッ。ありがたき幸せ。皆様に比べ、まだ若輩の身ですが、粉骨砕身の心でプリネ様に仕えさせて頂きます!」
跪いて頭を下げているツーヤは頭を上げて、凛とした表情で答えた。
(ご、護衛騎士と専属侍女を兼任するって……それって、凄く大変じゃないの!?要するにユリアさんとヒルダさんの役割に似たことを一緒にするようなものじゃない!!)
(ええ………ツーヤちゃん、本当に立派になりましたね……)
(ツーヤちゃん、凄い!)
(はう~……なんだかツーヤちゃんが遠い存在に見えて来たよ……)
その様子を見ていたエステルは驚いてクロ―ゼと小声で会話し、ミントははしゃぎ、ティータはツーヤを見ていた。
「……サフィナ、プリネ。前に。」
「ハッ。」
「はい。」
シルヴァンに呼ばれたサフィナとプリネはそれぞれ返事をし、サフィナは何かの紋章が描かれた外套と、外套の上に置かれてある外套に描かれてある紋章の首飾りを、プリネは神々しい雰囲気を持つ刀をそれぞれ両手に持って、シルヴァンの横に並んだ。
「今から貴女は”ルクセンベール”家の者にして当主。気高き竜騎士であり、ミレティアの英雄であった我が母、ティファーナに恥じない”騎士”になるように。」
「はい。」
そしてサフィナは跪いているツーヤに持っていた外套を羽織らせ、そして首飾りをかけた。
「ツーヤ……本当に立派になったわね。ルーアンで出会った幼い貴女がまさかここまで立派になるとは思わなかったわ。」
「そんな……あたしはマスターの”パートナー”としてマスターのお傍にいても恥ずかしくないよう、頑張っただけです。……これからもマスターのお傍にいてもいいですか?」
「ええ………こちらこそ、お願いね。」
ツーヤに微笑んだプリネは神々しい刀をツーヤに渡した。
「これは………確か孤児院から旅立つ時、先生から貰った刀ですか……?」
刀を渡されたツーヤは驚いた表情で渡された刀を見て尋ねた。
「ええ。ユイドラ領主、ウィルフレド様が刀に失われた”力”を見事、復活させてくれました。刀に彫られてある銘を信じるのならその刀の名は”アルフ”。聖なる力を感じますから、”聖刀アルフ”がその刀の真の名かもしれませんね。」
「……………そんな凄い刀をあたしが使ってもいいのでしょうか?」
プリネの説明を聞いたツーヤは驚いた表情をして尋ねた。
「余の大事な妹を守るお前だからこそ、持つべき刀だ。その聖なる力を宿した刀でプリネに剣を向ける者達を斬り払うがよい!」
「…………はい!」
リフィアに言われたツーヤは刀――”聖刀アルフ”をプリネから受け取った後、跪いた状態でプリネに受け取った刀を差し出して言った。
「マスター。この剣で貴女を守り、貴女を襲う敵を斬り払います。どうか我が剣に貴女の祝福を…………」
「……ツーヤ・ルクセンベール。貴女の心、”謳われし闇王”と””闇の聖女”の娘であるこの私、プリネ・K・マーシルン、確かに受け取りました………どうか、この剣で私を守って下さい………」
そしてプリネは差し出された刀の鞘に口づけをして、ツーヤに返した。
「みんな!”空の守護者”の名を継ぎしメンフィルの次代を担う新たな仲間に歓迎の祝福を!」
パチパチパチパチパチ………!
カミ―リの言葉をきっかけにその場にいる全員が大きな拍手をした。
「おめでとう、ツーヤちゃん!」
「お、おめでと~!今のツーヤちゃん、凄くカッコイイよ!」
「おめでとうございます、ツーヤちゃん!先生達が知ったら、きっと喜びます!」
拍手をしながらミントやティータ、クロ―ゼは嬉しそうな表情で言った。
「おめでとう。これからも一緒にプリネを守ろうね。」
エヴリーヌは口元に笑みを浮かべて拍手をしながらツーヤに言った。
「フフ………”聖刀”が闇夜の眷属を守るなんて、おかしな話ね。光と闇の共存を謳うメンフィルだからこそ、ありえる事なのでしょうね。」
エリザスレインはその様子を苦笑しながら見ていた。
「ハハ………まさかこんな名誉ある場面に使われるとは思わなかったよ。」
「フフ……きっとあの刀もこんな場面で使ってもらえて、誇りに思っているでしょうね。」
口元に笑みを浮かべているウィルにセラウィは微笑みながら言った。そしてプリネ達は元の場所に戻り、シルヴァンは玉座に座った。
「………次に異世界の客人達に我が妹、プリネを救った褒美を取らせる!……まずは遊撃士シェラザード・ハ―ヴェイ、アガット・クロスナー、ジン・ヴァセック。前に。」
「っと。まずはあたし達ね。……はい!」
「ハッ。」
「……………」
シルヴァンに呼ばれたシェラザードはジンと共に返事をして、黙っているアガットと共にシルヴァン達の正面に来た。
「遊撃士の貴殿等にはまず報酬として、それぞれに貴殿らの世界の通貨である20万ミラ。そして魔術効果が籠った装飾品を授けよう。遊撃士は時には民を守るため、戦うと聞く。今後の仕事で役立てるといい。」
「ありがとうございます。」
「ハッ。ありがたき幸せ。謹んでお受けします。」
「……俺達は遊撃士として当然の事をやったまでだ。ただ、それだけだ。」
(もう、アガットたら………お礼の一つぐらいは言いなさいっての……)
シルヴァンの言葉にシェラザードとジンは恭しく頭を下げて答えたが、アガットはいつものように仏頂面で答えたので、それを見たエステルは呆れて溜息を吐いた。
「ルース。」
「ハッ。………どうぞ。お受け取り下さい。」
シルヴァンに呼ばれたルースはシェラザード達にそれぞれ20万ミラを渡し、そしてそれぞれに何かの腕輪を渡した。
「これは一体……?」
渡された腕輪を見て、シェラザードは首を傾げた。
「シェラザード殿がお持ちになっている腕輪は”魔力の腕輪”。”魔力再生の指輪”を元に我等メンフィルが開発した装飾品です。……効果はその名の通り、所有者の失った魔力を自動的に治癒しますが効果は指輪の2倍で魔力を回復すると共に、所有者の魔力を上げる効果、そして魔術攻撃に対する耐性を上げる効果があります。」
「へえ……魔術を使うあたしにとってはありがたい品だわ。大切に使わせて貰うわ。」
ルースの説明を聞いたシェラザードは頷いた後、渡された腕輪を装着した。
「俺とアガットが渡された腕輪はシェラザードが渡された奴と微妙に違うようだが……?」
「ジン殿とアガット殿に渡した腕輪は”闘気の腕輪”。そちらはシェラザード殿に渡した腕輪の効果の闘気版と言った所です。所有者の闘気を自動的に上げ、また腕輪の魔術効果により所有者の物理攻撃、物理防御を上げる効果を持っています。」
「ほう………俺とアガットにとってはまさにピッタリな品だな。ありがたく使わせて頂こう。」
「……一応、礼を言っておく。ありがとよ。」
ルースの説明を聞いたジンは感心した後、アガット共にお礼を言い、2人はそれぞれ腕輪を装着した。そして3人はエステル達の元まで下がった。
「次に我がメンフィルの同盟国の姫、クロ―ディア・フォン・アウスレーゼ姫!」
「はい。」
シルヴァンに呼ばれたクロ―ゼは返事をした後、周囲の人物達に会釈をした後、凛とした表情でシルヴァン達の前まで歩いて来た。
「10年前の件と言い、リベールには世話になってばかりだな。」
「そんな……お互い様です、シルヴァン陛下。私達リベールは陛下達、メンフィルに返し切れない恩があるのですから……」
シルヴァンの言葉にクロ―ゼは謙遜しながら答えた。
「フッ、そうか。……さて、クロ―ディア姫。貴女は何が望みだ。」
「……………私の望みは唯一つ。陛下達、メンフィルが私達リベールと末永く友好を続けてくれれば、それだけで十分です。」
シルヴァンに尋ねられたクロ―ゼは微笑みながら答えた。
「クロ―ゼ………」
「さすがはお姫様ね………自分の事より”国”を優先するなんて………」
クロ―ゼの答えを聞いたエステルは感動した様子でクロ―ゼを見て、シェラザードは感心していた。
「フム……なら、クロ―ディア姫。貴女が生きている限り、メンフィルは何があっても今の関係を崩さない。貴女が逝き、貴女の子孫の代になってからはその時、貴女の子孫達を見て判断しよう。それでどうだ?」
「………十分です。ありがとうございます、シルヴァン陛下。これからもよろしくお願いします。」
「………今回の件の礼として、私個人から貴女には我がメンフィルに古くから伝わり、かつては父上が使った武器、”ロイバキュラ”を授けよう。ファーミシルス。」
「ハッ。」
シルヴァンに呼ばれたファーミシルスはある細剣を持って、クロ―ゼの前に来た。
「どうぞ、お受け取り下さい。実戦でも十分使える武器なのでご自身の護身として使って下さって構いませんし、魔法剣でもありますから修練を続ければ、いつかリウイ様のように魔法剣技が使えるかもしれませんわ。」
「……私のような未熟者がリウイ陛下が使われていた剣を頂くなんて、恐れ多いですが……ありがたく、受け取らせて頂きます。」
ファーミシルスから風の魔力の加護を受け、”魔法剣”でもあるレイピア――”ロイバキュラ”を受け取り、シルヴァン達に頭を下げた後、エステル達の元まで下がった。
「……次にティータ・ラッセル!オリビエ・レンハイム!」
「は、はい!」
「フッ……ボクの番か。」
リフィアに呼ばれたティータはおどおどした様子で返事をし、オリビエは髪をかきあげて返事をした。
「ティータちゃん、頑張って!」
「う、うん……!」
ミントに元気づけられたティータは頷いた後、シルヴァン達の前に来た。
「実は2人には何をあげればいいのかよくわからないのよ。何がいいかしら?もしよければ、この場で望みを言ってもらえるかしら。」
カミ―リは気不味そうな表情で言った後、ティータとオリビエに尋ねた。
「えと………………そうだ!あのあの……一つだけ、あるんですけど、いいですか?」
カミ―リに尋ねられたティータはその場で考えた後、何かを閃いたような表情をした後、シルヴァン達を見て尋ねた。
「ああ。」
「えっと………いつか、”魔導”技術を学ばさせて下さい!」
「ほう。さすがはラッセル博士の孫娘だな。やはり導力以外の技術に興味があるのか。父よ。それぐらい構わないだろう?」
ティータの望みを聞いたリフィアは感心した後、シルヴァンに尋ねた。
「ああ、いいだろう。我がメンフィルの魔導技術開発部に君がいつでも留学できるようにしておこう。勿論、滞在費等は全て私達メンフィルが負担しよう。……留学をすれば数年………もしくはそれ以上の年月をほとんどメンフィルで暮らす事になるだろう。家族と相談し、魔導技術を学ぶ覚悟できたのならいつでもメンフィル大使館に来るといい。その時に君を案内しよう。」
「はい!ありがとうございます!」
シルヴァンの話を聞いたティータは明るい表情をして、頭を下げた。
「オリビエ・レンハイム。貴殿の望みは何だ?」
ティータから視線をオリビエに代えたシルヴァンはオリビエの正体を知っていた為、何を望むか警戒し、目を細めて尋ねた。
「フッ。そんなのは勿論、決まっています。」
(嫌な予感………)
髪をかきあげて言うオリビエの様子を見て、エステルはジト目でオリビエを睨んだ。
「不世出の天才にして漂泊の演奏家であるこのボクにとっては、貴方達メンフィルが開催するパーティーに”演奏家”として呼んで頂ければ、このボクにとって最高の報酬です♪」
そしてオリビエはいつもの調子で、笑顔で答えた。
(あ、あ、あのスチャラカ演奏家は~!!こんな時にどうして、あんなふざけた事言っているのよ~!)
(ま、まあまあ……落ち着いてよ、ママ。)
(少しは分相応の事を言うと期待したあたしがバカだったわね………)
オリビエの望みを聞いたエステルは怒り、ミントはエステルを宥め、シェラザードは疲れた表情で溜息を吐いた。
「………それだけでいいのか?」
「勿論それだけです♪パーティーを開く時はぜひこの”ボク”をお呼び下さい。」
シルヴァンに尋ねられたオリビエは紳士のような動作で恭しく頭を下げて、言った。
「………いいだろう。今夜を除いて、現在予定されているパーティーは数ヵ月後に行われる婚礼の式だから、その時に貴殿を”演奏家”として招待させて頂こう。その時の貴殿の演奏の腕を見て、今後のパーティーにも招待するか決めさせてもらおう。」
「おお……!そのようなパーティーにこのボクを招待して頂くなんて、演奏家として冥利につきます♪最高の演奏をさせて頂きますので、ご安心下さい。……ちなみにどなたの式になるのですか?」
「………その件は後でこの場にいる全員に発表させてもらう。」
「フッ。ならば楽しみに待たさせて頂きます。」
そしてティータとオリビエはエステル達の元まで下がった。
「最後に……遊撃士エステル・ブライト!同じくミント・ブライト!」
「「はい!」」
そしてリフィアに呼ばれたエステルとミントは返事をした後、シルヴァン達の正面に来た…………
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