おぢばにおかえり
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第二十八話 誤解のもとその五
「じゃあどうも」
「ええ。それにしてもね」
「何ですか?今度は」
「何でもじゃないわよ」
こう阿波野君にまた返します。
「さっきの言葉といい」
「ええ」
「どうしてそんなのなのよ」
「どうしてっていいますと?」
「まあここじゃ何だからね」
話す場所を変えることにしました。お店の前です。人様の通行の邪魔になりますしこちらもぶつかってソフトがべちゃり、なんてことになったら困りますから。
「場所変えましょう」
「お店の中ですか?」
「ええ、そうよ」
そこで話さないと何にもなりません。
「そこでね。いいわね」
「わかりました。それじゃあ」
「入ってね」
「はい」
こうしてお店の中に入って横に並んでソフトクリームを食べながら。また阿波野君に対して言いました。
「さっきの言葉だけれど」
「それですか」
「正直言って訳わからないんだけれど」
「じゃあそれでいいです」
やけにあっさりと返してきました。
「それならそれで」
「いいの?」
「ええ、今は」
そう言いながら少しだけ寂しそうでした。
「それでまあ。いいかなって」
「また訳がわからないんだけれど」
「そうですか?」
「そうよ。けれどまあいいわ」
何かよくわからないまま私もここは納得することにしました。
「阿波野君がいいっていうんなら」
「どうもです」
「ところでね。話変えるけれど」
「何ですか?」
「このソフト美味しいでしょ」
今度阿波野君に尋ねたのはこのことでした。
「特にミックス。どうかしら」
「ええ、これはかなり」
「いいでしょ」
「いいですね。何か病みつきになりますよ」
「御礼よ」
ソフトを先から舐めながら答えました。
「さっきのね」
「相談所に行ったことですか」
「そうよ。おかげで助かったから」
「それはまたどうも」
「お婆さんやけに気に入ったみたいだしね」
言いながら阿波野君を見ます。
「阿波野君のことが」
「いやあ、昔からなんですよ」
今度はこんなことを言い出します。阿波野君のソフトの食べ方も見ますけれどこの子のは本当に食べているっていう感じでした。
「昔からなんですよね、本当に」
「何が昔からなの?」
「ですから。おばさんとかお婆さんにですね」
「もてるの?」
「はい、いつもなんですよ」
何か随分と有り難いことです。天理教では女の人が物凄く強いからです。けれど天理高校は男の子の方が多いんですけれど。
「おばさんやお婆さんに好きになってもらえるんです」
「何でなの?」
「いや、僕もよくわからないんですけれどね」
自覚はないみたいです。
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