ドリトル先生北海道に行く
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第十幕その四
「名前をウルといいますが」
「その羆さんがですか」
「非常に大きな身体でして」
「あまりにも大きいと」
先生はそのことを聞いてすぐに言いました。
「冬眠も難しくなりますね」
「はい、そのことです」
「そうですか、やっぱり」
「実はウルは毎年冬眠に苦労していました」
そうだったというのです。
「それで毎年洞穴を私と一緒に探していましたが」
「その洞穴がですか」
「遂に入られる穴がなくなりました」
「それは大変ですね」
先生もお話を聞いて神妙なお顔になりました。
「何とかしないと」
「夏のうちに一緒に冬眠出来そうな洞穴を探していましたが」
「それが遂になくなったのですか」
「それで困っていまして」
「では」
「はい、お力を借りたいのです」
是非にという言葉でした。
「貴方が動物の言葉がわかるのなら」
「彼の話を聞いてですね」
「私と一緒に考えて下さるとです」
「そうですか、では」
「はい、今からです」
それこそというのです。
「ウルのところに来てくれますか」
「わかりました」
先生は穏やかな笑顔でシホレさんの言葉に頷きました。
「それでは」
「有り難うございます、ではこちらに」
「はい、それでなのですが」
「それでとは」
「シホレさんはこの辺りの村に住んでおられるのですね」
「そうですが」
シホレさんは先生の質問にすぐに答えました。
「生まれた時から」
「では屈斜路湖のことも」
「ずっと見てきています」
「ではクッシーのことも」
「私も見たことがありますが」
「ではやはり」
「あれは鮭ではないでしょうか」
シホレさんこう先生に答えました。
「そう思いますが」
「鮭ですか、そういえば」
ここで先生も思い出したことありました、それは何かといいますと。
「アイヌの伝承に大きな鮭のお話もありますね」
「今の尺で百メートル程の」
「神様の様な鮭ですね」
「それで全身が輝いていてです」
そしてというのです。
「姿を現せば水面がお日様の様に輝く」
「そうした伝承もありましたね」
「アイヌ民族の古い伝承です」
「だからですか」
「私は鮭だと思いました」
とても大きなです。
「そう思ったのですが」
「そうですか」
「水面を泳ぐ巨大な影を見まして」
「そういえば」
先生がまた思い出したことはといいますと。
「本州にもタキタロウのお話がありますね」
「ああ、先生前に言ってたね」
「秋田県だった?」
「ある湖にいる」
「大きなお魚だね」
「うん、大きさは色々言われているけれど」
先生は皆にもお話します。
「剥製もあって実在は確かだけれど」
「それでもなんだ」
「滅多になんだね」
「見られないんだね」
「そうなんだ、幻の魚って言われているんだ」
そのタキタロウはというのです。
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