英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅰ篇)
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外伝~運命が改変された女神の新たなる道~後篇
~数時間後・メンフィル大使館~
「リ、リウイ様、大変です!」
数時間後ペテレーネは慌てた様子でリウイの執務室に入ってきた。
「どうかしたのかしら、ペテレーネ?」
「……まさか、”通商会議”の件を根に持った”革命派”か”貴族派”のどちらかがプリネ達に対して何かしてきたのか?」
ペテレーネの様子を見たイリーナは首を傾げ、リウイは真剣な表情で尋ねた。
「い、いえ。先程来たプリネからの緊急通信による連絡でリィンさんが新たなる異種族の方と”契約”したとの事でして……その……リィンさんが今まで契約した方達と比べるとあまりにも”規格外”な方でして…………しかもセリカ様にとっても他人事ではない方です。」
「え……セ、セリカ様と関係している方ですか?」
「セリカ様まで関係しているなんて、一体どこのどなたかしら?」
ペテレーネの説明を聞いたエクリアは戸惑い、イリーナは不思議そうな表情をし
「セリカが関係しているという事は大方、セリカが過去に契約していた使い魔の誰かではないのか?」
リウイは自分の推測を口にした後カップを手に取って紅茶を飲み始めた。
「その……リィンさんが新たに”契約”した方は”古神”――――”慈悲の大女神”アイドス様です。」
「ッ!?ゴホッ、ゴホッ、ゴホッ!?」
しかしペテレーネの口から出た予想外にして普通ならありえない人物の名と正体を聞いたリウイは驚きのあまり飲んでいた紅茶を喉に詰まらせて咳き込み
「あ、あなた!大丈夫ですか!?」
リウイの様子に気付いたイリーナは慌てた様子でリウイの背中をさすり
「ええっ!?た、確かにアイドス様が謎の復活を遂げた事はセリカ様の便りで知らされてはいましたけど、一体何故リィンさんと……」
「さ、さすがにそれはわかりません。ただわかっているのは”慈悲の大女神”がリィンさんと契約し、リィンさんの持っている太刀に”慈悲の大女神”が宿り、その影響でリィンさんの太刀が”神剣”と化したという事実だけです。」
エクリアは驚いた後ペテレーネに尋ね、尋ねられたペテレーネは戸惑いの表情で答えた。
「……つまり経緯はどうあれ、リィン・シュバルツァーは”女神”―――それもよりにもよって”古神”と契約したという事だな?」
「は、はい……」
そしてリィンが契約した相手の正体を聞いた瞬間凄まじい頭痛を感じ、頭痛を抑えるかのように片手を頭に置いたリウイの問いかけにペテレーネは恐る恐る頷き
「”古神”までも惹きつけるとは奴の女運は一体どうなっている?メンフィルが”古神”と友好を結んでいる事実が外部に漏れたら、相当厄介な事になるぞ……フウ……」
「友好を持ち掛けて来てくれた”風の女神(リィ・バルナシア)”教との交渉にも支障が出るでしょうね……」
「謎の復活を遂げたアイドス様の存在は具体的な案を思いつくまでは秘匿した方がいいかと思われます。万が一、アイドス様の復活が世界中に判明した際、セリカ様にとっても無関係ではございませんし、かつてのアイドス様によって被害を受けたレウィニア神権国を含めた”アヴァタール五大国”の反応も気になります。」
呻き声をあげるかのような声で呟いたリウイは疲れた表情で溜息を吐き、イリーナは不安そうな表情で考え込み、エクリアは真剣な表情で考え込みながら提案した、
「ああ。―――肝心の”慈悲の大女神”はゼムリア大陸にいる為、こちらが情報の秘匿に徹していれば外部に漏れる事はないだろう。―――ペテレーネ。シルヴァンに今から緊急で話し合いたい事がある事を伝えにミルス城まで行ってシルヴァンを連れて来てくれ。」
「かしこまりました!―――失礼します。」
リウイの指示に会釈したペテレーネはその場から去り
「それにしても多くの異種族達と契約している事に加えて武器に女神が宿った事といい、リィンさん、エステルさんに似てきていますね……」
「た、確かにそうね……というか私はセリカ様がどのような反応をされるのかが非常に気になるのだけど……」
苦笑するイリーナの意見にエクリアは冷や汗をかきながら答え
「”契約”している相手の正体を考えるとむしろエステルより厄介だぞ……。――まあ、光と闇の共存を目指すメンフィルとしては”古神”の一柱と友好を結ぶ事ができたという快挙を果たしたと思えばいいか。」
リウイは疲れた表情で答えた後気を取り直して真剣な表情になった。
~数日後・クロスベル市・アカシア壮~
「――帰ったぞ、シュリ。」
数日後いつものように遊撃士協会の仕事を終わらせたセリカはリタとレシェンテと共に自分が借りている部屋に戻り
「お帰りなさいませ、ご主人様。エクリア様より便りが届いております。」
「エクリアからだと?―――すぐに読もう。」
シュリからエクリアからの手紙を手渡されてその場で読んだ。
「……………………何?アイドスがリィンと”契約”しただと?」
(リィンというと……レグラムでお主が”飛燕剣”を教えた黒髪の小僧か。アイドスは一体何を考えているのだ?)
手紙の内容を読み終えたセリカは一瞬固まった後すぐに我に返ると眉を顰め、ハイシェラは考え込み
「ええっ!?ア、アイドス様がですか!?」
「何!?一体何故そんな事になったのじゃ!?」
「リィンさんというと……確か主が”飛燕剣”を教えたという方ですよね?」
セリカが口に出した驚きの内容を聞いたシュリとレシェンテは声を上げ、リタは目を丸くして尋ねた。
「ああ。―――なるほど。アイドスが共に歩むと言っていた相手はリィンだったのか………………………………」
「あ…………」
セリカが呟いた言葉を聞いたシュリはアルゼイド子爵邸でアイドスが口にしたアイドス自身の未来を思い出して呆けた声を出し
「一体何故奴は唯の人間と契約したのじゃ?」
「フフ、それはアイドス様自身の考えだから、私達にもわからないよ。―――それより主、先程からずっと考えていますけど何か気になる事があるのですか?」
首を傾げているレシェンテの疑問に苦笑しながら答えたリタは黙って考え込んでいるセリカを見つめて尋ねた。
「いや……アイドス自身が選んだ相手であるリィンがアイドスを幸せにしてやっているのかが少し気になっているだけだ。サティアが今この場にいればアイドスが幸せに生きているかどうかをきっと気にしているだろうしな。」
(クク、口では否定している癖にアイドスを妹として認めている証拠だの。)
リタの問いかけに答えたセリカの答えを聞いたハイシェラは口元に笑みを浮かべ
「まあ……フフ、きっと大丈夫ですよ。アイドス様が選んだお相手なのですから。」
「というかサティアの姿をしているアイドスと契約したリィンとやらに嫉妬しているのではないか?大方契約の方法も”性魔術”じゃろうし。」
「クスクス、確かにそれはあるかもしれないね。―――初めてみましたよ、主が嫉妬している所なんて。」
シュリは目を丸くした後微笑み、レシェンテの推測を聞いたリタは微笑みながらセリカを見つめ
「…………別に嫉妬等していない。サティアの姿をしていても全くの別人だ。」
(ハハハハハハハッ!すぐに答えを返さなかったのが嫉妬している証拠だの!)
一瞬黙った後答えたセリカの様子を見たハイシェラは大声で笑い
(……だから、嫉妬等していない。)
ハイシェラの念話を聞いたセリカは口元を僅かにピクピクしながらハイシェラに念話に送った。
リィンと契約したアイドスも後にベルフェゴール達のようにリィンに力を分け当たえる為、時折”性魔術”を施すようになり……アイドスは愛する男性と結ばれる幸せを感じながら、リィンに自分の力を何度も分け与えていた。
また、アイドスは最終奥義を除いた”飛燕剣”の全ての剣技、奥義を習得していた為、リィンは時折アイドスに”飛燕剣”の稽古をつけてもらうと共に凄腕の剣士でもあるアイドスと模擬戦をしていつか戦う強敵との戦いに備えた。
更にリィンが”古神”であるアイドスと友好を結んだ事を知ったメンフィル帝国はリィンがシュバルツァー家の後を継いだ際、予定していた”伯爵”ではなく”侯爵”に上げる事を決定し、その事を知らされたシュバルツァー男爵夫婦は養子であるリィンがメンフィル帝国に自分達の跡継ぎとして認められるどころか、既にメンフィルも認める程の功績を残した事に喜んでいたという。
こうして……多くの人々に驚かれながらもリィンは心強き仲間を手に入れ、現世にて謎の復活を遂げた”慈悲の大女神”は新たなる道を歩み始めた…………!
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