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英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅰ篇)

作者:sorano
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外伝~運命が改変された女神の新たなる道~前篇(6章開始)

9月5日―――



”西ゼムリア通商会議”で起こった大波乱から数日後、いつものように依頼を終わらせたエステル達は受付に報告した後、自分達に会いたいと訪問して来た人物に会う為に遊撃士達の休憩所に向かった。



~遊撃士協会・ケルディック支部~



「ねーねー、ママ。もしかしてママやミント達に会いに来た人ってあの人じゃない?」

ミントは待機所のソファーで自分達に背を向けて座っている女性に気付いてエステルに尋ね

「多分そうね。……ん?あの後ろ姿……どっかで見た事があるような……?」

「エステルもかい?僕も見覚えがある気がするんだよ……」

「あ、ミントも。」

エステルやヨシュア、ミントは見覚えのある女性の後ろ姿に首を傾げ

(クー!?)

(なっ!?ま、まさか……!一体どうなっているの!?だってサティアは……!)

ある事に気付いたクーとパズモは驚き

「………………………一体どういう事なのか、詳細な説明をしてもらいますわよ。――――アストライア。」

呆けた表情で女性を見つめていたフェミリンスは真剣な表情で女性に問いかけた。



「へっ!?」

「ア、アストライアってまさか……!」

「サティアさん!?」

フェミリンスの口から出た目の前の女性の正体を聞いたエステル達が驚いたその時

「フフ……」

女性―――アイドスは立ち上がって微笑みを浮かべてエステル達の方へと振り向いた。



「………………」

「ええええええええええええっ!?な、ななななな、何でサティアさんが生きているの~~!?一体何がどうなっているの??」

「確かサティアさんは”影の国”でエステルの身体に宿ったんじゃあ……」

アイドスを正面から見たエステルは口をパクパクさせ、ミントは混乱し、ヨシュアは戸惑いの表情でアイドスを見つめていた。



「フフ、女神であるフェミリンスもアストライアお姉様の身体に宿る”私”の事は見抜けなかったようね。まあ、この身体はお姉様の身体だから、お姉様の神気や霊圧で私をアストライアお姉様と勘違いして当然でしょうね。」

「何ですって!?」

微笑みながら答えたアイドスの言葉を聞いたフェミリンスは驚き

「へ??」

「サ、サティアさんがお姉さん??」

「サティアさんじゃないとしたら、貴女は一体誰なのですか?」

エステルやミントは首を傾げ、ヨシュアが戸惑いの表情で尋ねたその時

「ちょ、ちょっと待って!サティアを”姉”呼ばわりしているって事はまさか貴女……―――アイドス!?」

驚きの表情のパズモがエステルの傍に現れてアイドスを見つめた。



「フフ、さすがお姉様と共に長い間一緒に旅をしていただけはあるわね。ええ、そうよ。私はアイドス。今はお姉様の名を借りてアイドス・セイルーンと名乗っているわ。」

「!!」

(ぴえっ!?じゃ、じゃあもしかして目の前の方は”影の国”で撃破した……!)

(あ、ありえん!一度滅ぼした神が蘇る等絶対にありえんぞ!?)

(い、一体どうなっているのよ!?)

微笑みながら答えたアイドスの言葉を聞いたパズモは目を見開き、テトリ、サエラブ、ニルはそれぞれ信じられない思いでアイドスを見つめていた。



「ア、アイドスってまさか”影の国”であたし達が戦ったあの訳のわからない巨大な化物!?な、何で生き返ってサティアさんとそっくりの姿をしているのよ!?」

「アハハ……まあ、普通の人達が見たら”化物”にしか見えないのはわかるけど、こうして正面で言われるとちょっとショックね……実は―――」

驚きの表情で自分を見つめるエステルの言葉に冷や汗をかいて苦笑していたアイドスは気を取り直してエステル達に事情を説明した。



「なるほど。―――という事は復活した理由は不明ですか。」

「ええ。」

事情を聞き終えたヨシュアの確認にアイドスは頷き

「……ミント。まさかとは思いますが貴女の仕業ではないでしょうね?私にかけられたブレアードの忌々しき呪いをも”戻して、元通りにした”貴女の力ならば過去のアイドスを連れてきて、かつての姿に戻す事も容易だと思われるのですが。」

「違うよ~!第一ミントはアイドスさんと会うのはこれが初めてだし、ママ達が戦った時のアイドスさんがどんな姿をしていたのかすら知らないんだよ?」

呆れた表情をしているフェミリンスに問いかけられたミントは疲れた表情でフェミリンスの推測を否定し

「アハハ……目の前のサティアさんそっくりの人があの時戦った人だなんて、正直信じられないわ……」

「それは私も同じよ……―――ねえ、アイドス。一つ聞きたい事があるのだけど。」

苦笑するエステルの意見に疲れた表情で頷いたパズモはすぐに気を取り直して真剣な表情でアイドスを見つめた。



「何かしら?」

「先程の話でセリカ達に会ったって言っていたけど………まさかとは思うけどセリカと剣を交えていないでしょうね?」

「フフ、心配しなくてもセリカやお姉様の事はもう恨んでいないから、セリカとも和解したわよ。今の私にとってセリカはお兄様でもあるんだから。」

「そう……」

アイドスの答えを聞いたパズモは微笑み

「セ、セリカがアイドスさんの兄!?……あ、そっか。アイドスさんはサティアさんの妹だから、サティアさんの身体に宿っているセリカは兄になるし、生まれ変わったサティアさんがセリカと結婚したら義理の兄にもなるわね……」

「セ、セリカさんに妹って……全然想像できないな……」

「そうかな?それを言ったらフェミリンスさんの場合、エクリアさんやプリネさん達にとって凄い昔のお祖母ちゃんじゃない!」

「そこで何故私を引き合いに出すのですか……」

アイドスがセリカを”兄”呼ばわりした事に驚いたエステルだったがすぐに納得し、ヨシュアは冷や汗をかいて表情を引き攣らせ、首を傾げたミントの話を聞いたフェミリンスは呆れた表情で指摘した。



「クスクス、他人事(ひとごと)みたいに言ってるけど、貴女にとっても他人事じゃないわよ、エステル。だって、貴女は未来の私の”お母様”なのだから。」

「え”。」

「ええっ!?」

「なっ!?」

「た、確かにサティアさんを産む事が決まっているエステルはアイドスさんにとってもある意味”母親”になるけど……」

「遥かに年下の娘を”母”呼ばわりする女神なんて、前代未聞ですわ……」

アイドスに微笑まれたエステルは表情を引き攣らせて呆けた声を出し、ミントとパズモは驚き、ヨシュアは苦笑し、フェミリンスは呆れた表情で呟いた。



「フフ、これからは親娘として仲良くしましょうね、お母様。」

「な、なななななな、何でそうなるのよ!?というかサティアさんの姿や声であたしを母親扱いしないでよ~!滅茶苦茶違和感を感じるし、第一あたしは子供どころか結婚もまだなのよ!?」

「そんな……お母様ったら酷いわ……今まで孤独に生きて来た私にもようやく親娘という”絆”ができたと思ったのに、会って早々いきなり否定するなんて……」

「ちょっ、そんなつもりはないわよ!?というかアイドスさん、あたしをからかっているでしょう!?もしかして”影の国”で戦った時の仕返しのつもり!?」

悲しそうな表情をしているアイドスを見たエステルは慌てた様子で答えた後ある事に気付いてアイドスをジト目で睨み

「え、え~と……」

「ねえねえ、パズモさん。アイドスさんって昔からああいう性格なの?」

「そんな事を私に言われてもわからないわよ……アイドスがどういう人物であったのか、サティアに尋ねた事もないし……」

「ハア……エステルに会いに来た理由はまさかそのような下らない理由ではないでしょうね?」

その様子を見守っていたヨシュアは冷や汗をかいて苦笑し、ミントに尋ねられたパズモは疲れた表情で答え、溜息を吐いたフェミリンスは呆れた表情で問いかけた。



「フフ、そうね。それじゃあそろそろエステルに会いに来た一番の目的を果たしましょうか。―――私のせいで引き裂かれたお姉様とセリカを救ってくれてありがとう、エステル。」

「へっ!?べ、別にお礼を言われる程の事はしていないわよ~。あたしは人として当然の事をしただけだし。」

アイドスに突如お礼を言われたエステルは戸惑った後苦笑しながら答え

「……世界が貴女のような”人”で満ち溢れていれば、争いのない世界になっていたのでしょうし、貴女のような”人”と出会っていれば私もかつてとは違う道を歩んでいたでしょうね……」

「アイドス……」

エステルの答えを聞いた後静かな表情で呟いたアイドスの言葉を聞いたパズモは複雑そうな表情でアイドスを見つめた。



「えっと……アイドスさんはこれからどうするつもりなの?」

「フフ……――私も”人”を良く知る為に、貴女のように多くの”絆”に溢れた”人”と共に行動するつもりよ。」

エステルに尋ねられたアイドスは優しげな微笑みを浮かべて答えた。



「へっ!?ちょ、ちょっと待って!まさかアイドスさん……!」

「―――私のように”人”と”契約”するつもりですか?」

アイドスの話を聞いてある事を察したエステルは驚き、フェミリンスは尋ね

「ええ。そしてできる事ならいつかその人には私の”使徒”になってもらいたいと思っているわ。」

「”使徒”というと……」

「エクリアさん達みたいな人になってもらうって事だよね?」

「……一体誰と”契約”するつもりなの?」

アイドスの説明を聞いたヨシュアとミントは考え込み、パズモは目を丸くして尋ねたが

「フフ、近い内に必ずわかる時が来ると思うわ。―――それじゃあね。アストライアお姉様の事、よろしくね。」

「ちょっ、アイドスさん!?」

アイドスは答えを誤魔化してその場から去って行った。



「行っちゃった……」

「どうする、エステル?今なら追いつけるけど。」

アイドスが去って行く様子をミントは呆けた様子で見守り、ヨシュアはエステルに尋ねたが

「ううん、いいわ。何となくだけどまた会えるような気がしてきたし。」

エステルは静かな笑みを浮かべて首を横に振って答え

「フフ、もしかしたらエステルに宿っているサティアの魂が告げているのかもしれないわね。」

「……そうかもしれませんわね。」

エステルの答えを聞いて優しげな微笑みを浮かべるパズモの意見にフェミリンスは静かな笑みを浮かべて頷いた。


 
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