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おぢばにおかえり

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第二十八話 誤解のもとその一

                          誤解のもと
 商店街に入ってから二人で話を本格的にはじめました。横に並んで歩きながらです。やっぱり私の方から声をかけて話をします。
「それでね」
「はい」
「何で奥華にいるんだったっけ」
「大叔母がようぼくなんです」
 どうやら信者さんというだけではないみたいです。
「大叔母のお友達の人が布教所の人で」
「そうだったの」
 これはまた意外なことでした。
「布教所の。へえ」
「そこが奥華のだったんですよね」
「本当にお引き寄せだったのね」
「そうなるんですか」
「そうよ。それってやっぱりあれ?」
 阿波野君の顔を横から見上げて尋ねます。
「阿波野君が生まれる前よね」
「すっごい前ですよ。何でもうちの親父が」
「お父さんお幾つ?」
「四十一です」
 それを聞いて頭の中で計算しました。阿波野君が今十五、今年で十六になるからつまり。お父さんは。
「若いわね。二十五で子供いたのね、お父さん」
「ええ。お袋は二十で」
 もっと若いです。
「二十!?またそれって」
「若いでしょ。今三十六ですよ」
「三十六でこんな大きい子がいるなんて。苦労したでしょうね」
「冗談抜きででかいから邪魔だっていつも言われています」
 それはよくわかります。阿波野君とにかく背が高いです。横にも広くないだけそれはましですけれど。それでも大きいとかなり邪魔になるというのは聞きます。
「掃除とか家事さぼってると」
「それ位しなさい」
 本当にいい加減な子です。
「家事をやるのも大事なのよ」
「そうなんですか」
「それもひのきしん」
 こう言いました。
「というか家事こそはじゃない。何ずぼらなことしてるのよ」
「っていうか面倒臭いですし」
 出ました、こういう子の定番。やっぱり面倒臭いとのことです。
「それで家でゲームとかしていたら」
「怒られるのね?邪魔って」
「はい」
「当たり前よ」
 私の家にもゲームはありますけれどそれでも。まずは家事をしないと話になりません。男の子ってこんなのかしらって内心思いながら話を続けます。
「それ位。しなさい」
「しないと駄目ですか」
「働くってどういう意味がわかってるの?」
「さあ」
「はたを楽させる、よ」
 おみちの言葉です。
「お父さんやお母さんの助けになりなさい、ちょっとは」
「勉強以外にですか」
「そうよ」
 それこそが家族の務めなのに。何ていい加減なんでしょう。
「そういうこと。これから気をつけなさい」
「まあ一応は」
「ここではっきり答えないのが駄目なのよ」
 きつい目で阿波野君を見上げて言いました。
「はっきりとね。どれだけいい加減なのよ」
「掃除って毎日しないと駄目なんですか」
「当たり前よ」
 ひょっとして本当に全然掃除しないのかしら、と話をしていて不安になりました。やっぱり最低限一日一回は掃除をしないと駄目だと思うんですけれど。
「じゃあまあたまには」
「これから毎日しなさいっ」
「先輩は厳しいなあ」
「厳しいんじゃなくて当然よ」
 というか当たり前なんですけれど。
「それ位。ほこりは少しずつ積もるのよ」
「はい」
「それを毎日少しずつ払っていく」
 心のほこりを払うという意味もあります。 
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