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英雄伝説~焔の軌跡~ リメイク

作者:sorano
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第110話

~隠者の庭園~



「………ケビン………ケビン………聞いているの?」

「!!あ~………スマンスマン。ちょっとボーッとしてたわ。」

リースに声をかけられ、何かを思い出していたケビンは驚いた後苦笑しながら謝罪した。

「………大丈夫?」

「無理もない………ここに来てから、あまりにも色々な出来事があったからな。」

「す、少し休んだ方がいいんじゃないですか………?」

「ギルバートとの戦闘からずっと戦い続きだったからな。無理は禁物だぜ。」

「そうね。それに今後も先程戦ったような悪魔達が待ち構えている可能性はあるのだから、疲れているのなら休むべきよ。」

「ハ~、わたしだって疲れているのに、もう休憩するなんて、情けないわね~。」

(俺達の中で一番遅いタイミングで現れたアニスさんがそれを言う資格はないと思うんだけどな……)

リース達が心配している中、呆れた表情で溜息を吐いたアニスの言葉を聞いたロイドは疲れた表情で心の中で指摘した。



「はは、心配いらへんって。とりあえず………ここらで一旦、情報の整理をしとこうって話やったな。」

「うん………そうだけど。」

「あの”黒騎士”という男、思っていた以上に多くの情報を我々にもたらしてくれた。まずは、我々がいるこの異空間の名前だが………」

「”影の(ファンタズマ)”………あの黒いお兄さん、そんな風に言ってましたね。」

「ああ………なかなか思わせぶりな名前や。ただ、七耀教会の伝承から取ったわけでは無さそうやな。」

「………うん。聞いたことのない言葉かも。それから”王”という存在。」

ティータの話を聞いた後に答えたケビンの意見にリースは頷いた後”黒騎士”が去り際に口にした人物の名を思い出した。

「ああ、察するにそいつが今回の一件を仕掛けた黒幕ってことなんやろう。ずいぶんオレ達の事を嗅ぎまわっているみたいやけど………」

「………そういえばあの男、気になることを言ってたな。リース殿の姉やロイド君の兄、そしてアニス君が主がどうとか………」

「…………っ……………」

「「…………………」」

(リース……ケビン……)

ユリア大尉が口にした言葉を聞いたリースとケビン、そしてロイドとアニスはそれぞれ暗い表情や真剣な表情で黙り込み、アーシアは辛そうな表情でリースとケビンを見つめた。



「すまない、立ち入るつもりは無かったんだが…………」

「………いや。」

「………確かに私には姉が一人いました。ルフィナ・アルジェント。私達と同じく………星杯騎士だった人間です。」

「リース…………」

リースの説明を聞いたケビンは真剣な表情でリースを見つめた。

「過去形ということは既に………?」

「ええ、騎士団の任務中に殉職しました。5年ほど前の事です。」

「「……………………」」

ユリア大尉に説明しているリースをケビンは真剣な表情で黙って見つめ、アーシアは複雑そうな表情で黙り込んでいた。



「そうだったのか……しかしどうしてあの男がルフィナ殿の事を………?」

「………わかりません。姉がどんな仕事をしていたのか私は知りませんでしたから………ケビンはどう?」

ユリア大尉に尋ねられたリースは暗い表情で答えた後、ケビンに尋ねた。

「……………………すまん。オレにも見当が付かへん。ただ、ルフィナ姉さんはとんでもなく優秀な騎士やった。腕前もそうやけど……その判断力、交渉力を買われて幾つもの事件に関わったはずや。あの男もそういった事件で姉さんと知り合ったのかもしれん。」

「そう………」

「そうか………ロイド君とアニス君はあの男の事は……?」

「すみませんが、俺もわかりません。生前の兄貴はどんな事件に関わっていたのかも知らなかったですし……」

「……………(少なくても、俺が関わった事件にあんな怪しげな野郎はいなかったな……)」

ユリア大尉に訊ねられたロイドは疲れた表情で答え、フレンは考え込んでいた。

「生前と言う事はロイド君の兄も………」

「………はい。3年前に事件の捜査中に殉職しました。」

「……当然わたしもあんな男、知らないし、わたしの世界では一度も見た事はないわよ。」

「そうか……」

「そう言えば……黒騎士は先程アニスがアニスの主の最後を見届けたって言っていたけど、もしかしてアニスの”主”―――”導師”という方は……」

ロイドの後に答えたアニスの答えを聞いたユリア大尉は重々しい様子を纏って頷き、ある事に気づいたアーシアは複雑そうな表情でアニスを見つめた。



「………………」

「ごめんなさい……立ち入った事を聞いてしまって……」

辛そうな表情で黙り込んでいるアニスの様子を見て、アニスの”主”が既に死んでいる事を悟ったアーシアは申し訳なさそうな表情で謝罪した。

「いずれにせよ、現時点でははっきりしないという事か………」

「そうですな。それに『敵』がオレたちの出方を伺っているのは確かみたいや。この先は、これまで以上に注意する必要があるでしょうな。」

話を戻したユリア大尉の言葉にケビンは真剣な表情で頷いた。

「そんじゃ、そろそろ探索を再開するか?」

「あ、待って。その前にさっき手に入れた”封印石”、だっけ?その中に入っている人を解放しようよ。もし中に入っているその人がわたしの予想している人物だったら、この先の探索で滅茶苦茶心強い存在になるよ。」

そしてフレンが先に進むように促したその時アニスが提案をした。



「せやな………って、まるでアニスちゃん、次に解放されるのが誰かわかっているみたいな言い方やけど………」

「もしかして心当たりがあるのですか?」

「まあね。」

ケビンとリースに訊ねられたアニスは頷いた後ケビンから貰った封印石を解放した。すると今までのように光の球が降りて来て、そこから青を基調とした軍服を身に纏った長髪の眼鏡の男性が現れようとした。

「軍服……?と言う事はまさか、軍人か……?」

「フウ……これで今後の探索は楽になるな~。」

現れようとした人物が身に纏う軍服を見たユリア大尉は眉を顰め、アニスは安堵の溜息を吐いた。

「くっ……―――何者です!?何が目的で襲撃を…………は?」

そして光の球から現れた男性は目を開いて顔を上げるとバックステップをすると同時に空間から槍を取り出して迎撃の構えをしたが、ケビン達に気づくと呆けた。



「……?アニス、これは一体どういう状況ですか?」

「お久しぶりです、中将~♪中将もこのわけのわからない状況に巻き込まれて、助かりました~♪」

ケビン達を見回した後周囲の状況を見回した男性に訊ねられたアニスは笑顔を浮かべて男性を見つめ

「へ……ちゅ、”中将”って……」

「まさかそちらの男性は将軍クラスの軍人なのか……!?」

男性に向けたアニスの言葉を聞いたケビンは呆け、ユリア大尉は驚きの表情でアニスに訊ねた。

「フム………まずはこれが一体どういう状況なのか、教えて頂けますか?」

一方男性は考え込んだ後冷静な様子でケビン達に訊ねた。その後ケビン達は自己紹介を行い、状況を説明した。



「……………なるほど。状況から考えますと今回の状況に陥ったのはその”方石”が原因の一つと思われますが……しかし、貴方方とは異なる世界の私やアニスまで巻き込まれたとなると、厄介な事になったかもしれませんね。」

「?それは一体どういう事ですか?」

男性の答えが気になったロイドは不思議そうな表情で訊ねた。

「その”方石”の”効果範囲”です。」

「ふえ……”効果範囲”??」

男性の答えを聞いたティータは首を傾げた。

「………巻き込まれた人物は私達の世界やアニス達の世界どころか、他の世界の人達まで巻き込まれた可能性もある……という事ですか?」

「ええ、その通りです。」

そして推測を口にしたアーシアの確認の言葉に男性は頷いた。



「確かに異世界人の二人の事を考えたらその”方石”がこの状況に巻き込んだ人物は無限大に広がるな……って、そう言えば軍人さん。あんた、名前は?」

「これは失礼……―――マルクト帝国軍第三師団師団長ジェイド・カーティス中将と申します。以後、お見知りおきを。」

フレンに名前は訊ねられた男性―――ジェイドは恭しく礼をして自己紹介をした。

「その若さで師団長―――それも”中将”という大任を務めておられるのですか……!」

「ハッハッハッ!それ程でもありませんよ。貴女もその若さで王族の親衛隊に所属し、”大尉”を任命されているのですから、さぞ優秀な方なのでしょうね。」

驚いた様子で自分を見つめるユリア大尉の言葉を聞いたジェイドは声を上げて笑った後ユリア大尉を称賛した。

「きょ、恐縮です。」

「中将~、さりげなく年を誤魔化そうとするなんて、ズルイですよ♪」

「おや、私は年を誤魔化した覚えはありませんが?」

からかいの表情のアニスに見つめられたジェイドは笑顔で返し

「へ……年を誤魔化しているって、どういう事なんだ?」

アニスの言葉が気になったロイドはアニスに訊ねた。



「だって、中将は今年で40歳になるんだから”若い”って言われるのは間違っているでしょう?」

「ええっ!?」

「よ、40歳って……若作りにも程があるだろう!?」

「お母さん達より年上なのに、どう見てもお母さん達より年下にしか見えないです……」

アニスの答えを聞き、見た目は若い青年にしか見えないジェイドが既に中年の年齢に差し掛かっている事にロイドとフレンは驚き、ティータは信じられない表情でジェイドを見つめた。

「まあ、中将の若さはホントに謎なんだよね~。人の生き血をすすって若さを保っているんじゃないかって、疑惑もあるくらいだよ?」

「い、生き血をすする……」

「アニ~ス、根も葉もない話を口にして皆さんに私の印象を誤解させないでください。」

意味ありげな笑みを浮かべてジェイドを見つめるアニスの推測を聞いたユリア大尉は表情を引き攣らせ、ジェイドは口元に笑みを浮かべてアニスに指摘した。



「………………」

「リース?どうしたんや?」

その時真剣な表情でジェイドを見つめている様子のリースが気になったケビンは不思議そうな表情で声をかけた。

「……ジェイド中将。先程黒騎士は『”ネクロマンサー”と共に次なる苦難に臨むがいい』と言い、貴方が入った封印石を置いていきました。黒騎士の話通りならば貴方は”ネクロマンサー”―――私達の世界では”死霊使い”を意味する人物という事になるのですが、何か心当たりはありますか?」

「……そう言えばそんな事を言っていたわね……」

リースのジェイドへの質問を聞いたアーシアは黒騎士が去り際に残した言葉を思い出した。

「やれやれ………その”黒騎士”や”王”とやらが何者かは知りませんが、異世界の私達の情報まで把握しているとは、相当厄介な相手のようですね。」

するとジェイドは溜息を吐いた後真剣な表情で呟き

「……その様子ですと心当たりがあるんですか?」

ジェイドの様子を見たケビンは真剣な表情で訊ねた。そしてジェイドはかつて自分が複製譜術―――”フォミクリー”の理論を開発し、とある事情で”フォミクリー”を利用した人―――”レプリカ”という生きた存在を生み出したが結果は失敗。その後も完全な人の再生を目標に”フォミクリー”の研究を続けていたが、友人でもある現在のマルクト皇帝の説得によって研究を放棄し、以後心を入れ替えて生体レプリカを禁忌とし、自分が”ネクロマンサー”と呼ばれたのは過去”フォミクリー”の研究者として有名であった事が原因で戦場で骸を漁るといった噂が流れた事から”ネクロマンサー”という異名で呼ばれている事を説明した。



「”複製”した生きた存在―――”レプリカ”……”複製”の技術自体もありえないのに、人を”複製”する技術まで異世界にあるなんて………」

「しょ、正直夢物語のような話だな……」

「ソフィ君やリオン君の世界の技術といい、異世界は凄まじい技術だらけだな……」

「こうなると生体兵器を創ったソフィの世界の技術の方がまだ可愛い方だな……」

(私達の世界で実現したら彼は間違いなく”外法”扱いされるでしょうね……)

話を聞き終えたティータとロイドは信じられない表情をし、ユリア大尉は真剣な表情で呟き、フレンは疲れた表情で呟き、アーシアは複雑そうな表情で考え込み

「…………ジェイド中将。その技術は人が決して手を出してはいけない”禁忌”の類の技術と理解して、貴方はその”レプリカ”という存在を生み出したのですか?」

「お、おい、リース。」

真剣な表情でジェイドを見つめるリースの質問を聞いたケビンは冷や汗をかいた。



「ええ。数々の問題点、それを行いたいことが私にもありました。若かったのでしょうねぇ、当時の私は。」

「中将…………」

ジェイドの事情をよく知るアニスは複雑そうな表情をし

「…………………」

「こらこら、リース。そう睨んだらあかんやろ。本人もその事は反省している上、二人の世界とは異なる世界の”部外者”のオレ達に口を出す権利はないで。」

厳しい表情でジェイドを睨むリースをケビンは疲れた表情でリースを諫めようとした。

「けど、ケビン。生きた存在を複製化した技術者なんて私達にとっては。」

ケビンに諫められようとしたリースは反論したが

「リース。」

「…………………ごめん、軽率だった。………申し訳ありません、ジェイド中将。事情も知らず、ただその技術を”悪”と決めつけてそれを生み出した貴方を敵視してしまって……」

真剣な表情のケビンに見つめられるとジェイドに謝罪した。

「いえいえ、私は全く気にしていませんし、”フォミクリー”は事実人が決して手を出してはいけない”禁忌”の技術ですから貴女が私を敵視するのも無理はありません。――――それよりも私も自分達の世界に帰還する為にも今後の探索に加わらせて頂きますので、今後ともよろしくお願いします。」

「よろしくお願いしますわ。――――そんじゃ、準備ができたら探索を再開しよか?」

そしてジェイドの申し出に頷いたケビンは仲間達を見回した。



その後ジェイドを仲間に加えたケビン達は人数がある程度増えたので何名かを待機させて、休憩させることにして探索メンバーをケビン、リース、アーシア、ユリア大尉、アニス、ジェイドのメンバーに編成した後ベヌウを倒した先に現れた転移陣の近くの石碑まで方石で移動し、そして転移陣の中に入って、新たなる場所に転移した―――― 
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