英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅰ篇)
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外伝~遊撃士訓練への参加要請~前篇
同日、14:50―――
エリゼとハロルドの依頼を終わらせたロイド達は残りの遊撃士達の依頼をこなす為に、車でアルモリカ村に向かい、休憩している遊撃士達に話しかけた。
~アルモリカ村・宿酒場”トネリコ亭”~
「お待たせしました、リンさん、エオリアさん。……っと、メティサーナも一緒にいたのか。」
「やあ、来たね。」
「まあな。……ん?お前達は……」
「ティオちゃん!……はまだいないんだ。はあ、テンション下がるなあ。」
ロイドに話しかけられたメティサーナと共にいる東方の武道家の姿をしている女性遊撃士―――リンと共にロイド達を見回して、ある人物がいない事に気付いた整った容姿を持ち、緑のコートを身に纏う女性遊撃士―――エオリア・フォーリアは肩を落とし、エオリアの発言を聞いたロイド達はそれぞれ冷や汗をかいた。
「な、何かすみません。」
「いや……こちらこそすまない。」
申し訳なさそうな表情で謝罪するロイドにリンは苦笑しながら答え
「仕方ないわね……ティオちゃんが帰ってくるまではメティちゃんやレシェンテちゃん達で我慢するわ♪」
「うわっ!?だから、いきなり抱きつくのは止めろ、エオリア!というかメティ達で我慢するくらいなら、抱きつかなくていいだろう!?」
嬉しそうな表情で抱きついてきたエオリアにメティサーナは反論したが
「クッ、シュリさんがいる癖にメティちゃん、レシェンテちゃんに加えてリタちゃんをはべらせてる事といい、つくづくセリカさんはロイド君と並ぶくらいのリア充男ね!一人くらいわけてくれてもいいのに!」
「人の話を聞け~!」
エオリアは悔しそうな表情でメティサーナを抱きしめ続け、メティサーナは悲鳴を上げ、その様子を見守っていたロイド達は再び冷や汗をかいた。
(な、何でそこで俺の名前が出てくるんだよ……)
(……まあ、エオリアさんのいう事も一理あるわね。)
(うふっ♪”神殺し”ってもしかして、幼い女の子が好きなのかしら♪)
気を取り直したロイドは疲れた表情で呟き、エリィはジト目でロイドを見つめ、エルファティシアはからかいの表情になり
「アハハ、アネラスさんと間違いなく話があうでしょうね。」
「まあ、奴もいれば、奴等の趣味の対象になる者達は甚大な被害を受けるだろうがな……」
苦笑しながら言ったプリネの推測を聞いたレーヴェは静かな表情で答えた。
「ん?あんたは確かプリネ姫……それに銀髪のアンタはまさか……――――”剣帝”!?」
「あら。”剣帝”が”蛇”を抜けてメンフィルに降った話は知っているけど、どうしてロイド君達と一緒にいるのかしら?」
その時プリネとレーヴェに気付いたリンは血相を変えてレーヴェを見つめ、メティサーナから離れたエオリアは不思議そうな表情で二人を見つめた。
「えっと、手短に話しますが―――」
そしてロイド達は”トールズ士官学院”に入学し、特科クラス”Ⅶ組”に所属しているプリネ達が”特別実習”という形で”通商会議”の間だけ、”特務支援課”の手伝いをしている事を説明した。
「トールズ士官学院特科クラス”Ⅶ組”。―――”紫電”が担任を受け持っている例のクラスか。」
「そう言えば、クラスメイトにプリネ姫達がいる上、副担任の”剣帝”をこき使いまくっているって話を聞いた事があるわね……」
事情を聞き終えたリンとエオリアは納得した様子でプリネとレーヴェを見つめ
「うふっ♪上司にいびられて大変ね♪」
「…………………」
「ア、アハハ……」
エオリアの話を聞いたからかいの表情になったエルファティシアに見つめられて黙り込んでいるレーヴェを見たプリネは冷や汗をかいて苦笑していた。
「ハ、ハハ……」
「そ、そう言えばちょっとだけ気になっていたんだけど、他のクラスメイトの方達の”特別実習”という実習はどこで行っているのかしら?」
その様子を見守っていたロイドは苦笑し、エリィは話を変える為にプリネに尋ねた。
「他の”Ⅶ組”の人達は今でしたら”ガレリア要塞”で”特別実習”をしているはずですよ。」
「”ガレリア要塞”……!」
「”列車砲”が搭載されてある例の要塞ね。」
「ど、どうしてそんな所で実習を……!?」
プリネの説明を聞いたロイドは驚き、エオリアは真剣な表情で呟き、エリィは信じられない表情で尋ねた。
「まあ、士官学院って言ったら軍人のタマゴを育てる所だからね。よく考えたらおかしな話ではないよ。」
「確かに言われてみればそうですね……」
リンの推測にエリィは静かに頷き
「そう言えばサラとやらとエステル達は知り合いのようだが、やはり遊撃士同士として、エオリア達も顔見知りなのか?」
「ええ、サラさんとはエレボニア帝国の出張の仕事の時に少しの間だけ組んだ事があるわ。」
「へ………」
「士官学院の担任が遊撃士ですか……?」
メティサーナの質問に答えたエオリアの話を聞いたロイドは呆け、エリィは不思議そうな表情で尋ねた。
「ああ。2年前の襲撃事件のせいで帝国の圧力によってエレボニア内の遊撃士協会はほとんど休業状態でね。元遊撃士達は他の地方の支部に移ったり、他の職に就職したりしているんだ。それで”紫電”―――サラ・バレスタインもその一人さ。」
「まあ、そのエレボニアに圧力をかけられた原因はどこかの誰かさんが育てた”猟兵団”の襲撃とどこかの誰かさんのお仲間さん達の妨害活動のせいなんだけどねぇ?」
リンと共に説明したエオリアは意味ありげな表情でレーヴェを見つめた。
「え。もしかしてその襲撃した犯人は……」
エオリアの話が気になったエリィは驚きの表情でレーヴェを見つめ
「―――当時の俺が鍛えてやった”ジェスター猟兵団”と奴等を補佐する形で遊撃士達の前に立ちはだかった”執行者”達だ。」
レーヴェは静かな表情で答えた。
「え、え~と……」
「あら。じゃあ遊撃士達にとって、貴方は因縁がある相手なのね。」
レーヴェの答えを聞いたロイドは冷や汗をかいてレーヴェを見つめ、エルファティシアは目を丸くした。
「ハハ、”剣帝”というか”蛇”自体が因縁の相手なんだけどね。それにエステル達の活躍のお蔭で帝都―――ヘイムダルの支部とケルディックがメンフィル領になったお蔭で復活した支部、そして同じメンフィル領のセントアークにある支部を中心にエレボニア帝国での活動を再開したし、”剣帝”自体は直接関わっていないから、あたし達はそれほど気にしていないよ。」
「へ?」
「エステルさん達の活躍、ですか……?」
苦笑しながら答えたリンの話を聞いたロイドとエリィは首を傾げた。
「フフ、帝都の夏至祭の時に起こったトラブルでたまたま観光に来ていたエステルさん達が活躍して、それがきっかけになったそうです。」
「―――それ以前に”四大名門”によって不当に拘束された者を救出後その者を守る為に領邦軍を相手に大暴れをしたがな、」
「ええっ!?」
「エステルさん達がし、”四大名門”相手に逆らったんですか!?」
プリネと共に説明したレーヴェの話を聞いたロイドとエリィは驚き
「ちなみにその時はメティも共に戦って、多くの愚かな者達を薙ぎ払ってやったぞ!」
メティサーナは胸を張って答えた。
「ねえ、その”四大名門”とやらはそんなに凄いのかしら?」
「ええ。エレボニア帝国では皇族に次ぐ絶大な権力を持っている貴族なんです。」
エルファティシアに尋ねられたエリィは答え
「なるほどね。まあ、”姫神”がいるんだから、例え権力者でも勝てないわよ。」
「た、確かに……というか、エステル達、相変わらず大活躍しているようだな……」
「フェミリンス様は”女神”ですからね……武力で制圧しようと思っても返り討ちにされるのが目に見えてますし、加えてエステルさんとミントさんがメンフィル帝国の後ろ盾がありますから、例え”四大名門”でも強気には出れなかったんでしょうね。」
エルファティシアの答えを聞いたロイドとエリィは冷や汗をかいて納得した。
「えっと、話がそれてしまいましたがリンさん。早速依頼の話を聞きたいんですけど……」
「ああ、説明させてもらう。といっても単純な話さ。付き合ってもらいたいのは他ならぬ私達自身の訓練―――つまりは私とエオリアのペアとアンタたちとで手合せをしたいんだ。」
「手合せということは……実戦形式で戦うわけですね。」
「でも、どうしてまた今になってそんな依頼を?」
依頼内容を聞いて疑問に思ったエリィは尋ねた。
「そりゃあ、ちょっと前だとヒヨッコ過ぎたからじゃない?」
エオリアの答えを聞いたロイド達は冷や汗をかき
「確かに返す言葉もありませんが……」
「ええ、胸に突き刺さるわね。」
「以前は日陰者の存在の上、一課からも疎まれる存在で精神的に大変だったそうね?」
ロイドとエリィは疲れた表情で答え、エルファティシアはからかいの表情で尋ねた。
「それを俺達と同じ支援課のエルファティシアさんが言いますか?」
「……エルファティシアさんが支援課に所属した頃は、見直されていた頃でしたから、そんな事が言えるんですよ……」
エルファティシアの質問にエリィと共に疲れた表情になったロイドは指摘し
「はは、まあいいじゃないか。その代わり今はもうアンタたちの実力を認めてるんだ。それこそ、私達が肌で感じておきたいと思う程にね。」
リンは苦笑しながらロイド達をフォローした。
「ちょうど私とリンの空き時間が重なることもわかって今しかないって思ったの。スコットとヴェンツェルには悪いんだけどね。」
「あはは、あの二人までいたらさらにとんでもない事になっていそうですけど。」
「こら、エオリア。ご主人様達の事を忘れているぞ!」
「アハハ、さすがにセリカさん達が相手だとロイド君達が可哀想よ?」
「あはは、お気遣いして頂きありがとうございます。でも確かに、こんな機会滅多にないですね。」
「で、どうする。受けてくれるかい。」
「ええ、できればそのつもりですけど……場所はどうするつもりなんですか?」
模擬戦の場所が気になったロイドはリン達に尋ねた。
「ああ、それなりに広くて生活の邪魔にならないってことで村の入口を考えている。村長の許可も取ってあるからいつでも使っていいとのことだ。既に準備ができてるんならすぐにでも始めたいんだが……」
「装備や買い物は大丈夫?準備が必要だったら待つけど。」
「そうですね……―――準備は出来ているのでさっそく移動してもいいですか?お二人の手合わせ、正式に引き受けさせていただきます。」
「ふふ、そうこなくっちゃ!」
「それじゃ、さっそく訓練開始ね!」
その後ロイド達はリン達と共に村の入口に移動した。
~アルモリカ村・入口~
「それにしても……結構ギャラリーがいるんですね。」
仲間達と共に入口に移動したロイドは入口付近にいる村人たちを見て驚いていた。
「ああ、どうやら話が広まってしまったようだ。」
「まあ、こんな田舎にとっては面白い話だしねぇ。」
ロイドの言葉に頷いたリンとエルファティシアはそれぞれ苦笑していた。
「へへっ、遊撃士は無敵だぜ。警察なんか、ちょちょいのちょい、ってな。」
「ちょちょ?ちょちょい、ってなにー?」
「えっと、つまり相手にならないってことだよ。でもどうかな。特務支援課のお兄さんたちもかなりやると思うけど。」
「おおっ、バリバリ燃えて来ただァ!なあ、村長はどっちに分があると思うだよ?」
「ふむ、そうじゃな……どちらにも普段からお世話になっておるからの。」
村人達はそれぞれ興味津々な様子で会話しながらロイド達を見つめていた。
「そ、村長さんまで……」
「やれやれ、完全に見せ物になっているな。」
「アハハ……」
村人達の様子を見たエリィとレーヴェは呆れ、プリネは苦笑していた。
「っていうか、手合わせの話は村長さんしかしてないんだけどね。」
「まあ、こういった田舎だとそういう刺激的な情報が回るのは早い証拠だな……」
エオリアは苦笑しながら村長を見つめ、メティサーナは呆れた表情で答えた。
「ふふ、まぁたまにはこんなのもいいじゃないか。さて、さっそく手合わせと行きたい所だけど。まずは形式を決めないとね。」
「う~ん、パターンは色々あると思うけど……ここはやっぱり2人一組―――2対2の戦闘でしょ。」
「ああ、私もそれで行きたいと思ってる。そちらは大丈夫かい?」
エオリアの意見に頷いたリンはロイド達に確認を取った。
「ええ、お二人の依頼ですし問題はありませんが……誰が出るかはこちらで決めていいんですか?」
「ああ、任せるよ。ただしロイド、アンタだけは確定で頼む。」
「え……?」
リンの提案にロイドは不思議そうな表情をした。
「はは、そんなに驚く事じゃないだろう?私達は別に個人の身体能力だけを見たいわけじゃないんだ。ロイドを中心とした特務支援課の結束力……それを見せてもらいたいのさ。」
「そうそう、なのに肝心のリーダーがいないんじゃ意味がないでしょう?」
「は、はあ……とりあえず、そういうことなら了解です。」
二人の話を聞いたロイドは戸惑ったがすぐに気を取り直して頷いた。
「そういう事でしたら私とレーヴェは手を貸さない方がいいですね。」
「確かにそうだな。」
「そうなると私かエルファティシアさんのどちらかだけど……ロイドはどちらをパートナーに選ぶのかしら?」
プリネとレーヴェの会話を聞いていたエリィは考え込んだ後ロイドに視線を向け
「ああ、そうだな……―――エリィ、一緒に戦ってくれるか?」
「え、ええ。私はいいけど、エルファティシアさんじゃなくていいのかしら?実力で言えば、エルファティシアさんが上だけど。」
ロイドの答えを聞いて戸惑った後尋ねた。
「ああ。組むとしたら支援課ができた当初からずっと一緒にやってきたメンバーの方が、連携しやすいしな。」
「わかったわ。」
ロイドの説明を聞いたエリィは納得したが
「あら♪恋人だから、息ピッタリになるの間違いじゃないかしら♪」
「エ、エルファティシアさん!」
「……お願いしますから、仕事中に茶化さないで下さい。」
からかいの表情で言ったエルファティシアの言葉にエリィは顔を赤らめて慌て、ロイドは呆れた表情で指摘した。
「フフ、どうやら決まったようね!」
「二人とも、武器を構えな。」
リンの言葉を合図にそれぞれのペアは武器を構え
「メティちゃん、合図をお願い。」
「わかった。―――――始め!」
メティサーナの号令を合図にロイドとエリィはリンとエオリアとの戦闘を開始した。カルバード共和国のある流派の武道―――”泰斗流”の技を修めているリンと様々な医療技術を駆使してリンの援護とロイドとエリィに対する攪乱攻撃をするエオリアのコンビは厄介だったが、ロイドとエリィは二人で協力して苦戦しつつ、二人を戦闘不能にした。
「―――そこまで!勝者、ロイド&エリィ!」
戦闘不能になった二人を見たメティサーナは終了の号令をかけ
「ふう……やったか?」
「ええ……でも、まだまだ余力を残しているみたいね。」
ロイドは安堵の表情をし、エリィが呟いたその時二人は立ち上がった。
「ふふ、驚いた。結構やるじゃないか。」
「うんうん、思っていた以上に息が合っててビックリしたわ。」
「あはは……余裕そうですね。」
自分達に感心するリンとエオリアを見たロイドは苦笑し
「二人ともクロスベルに所属している遊撃士だけあって、中々の腕前よね。」
「ああ。”嵐の銀閃”や”重剣”よりは腕は立つな。」
プリネとレーヴェは興味ありげな表情でリンとエオリアを見つめていた。
「ふふ、手を抜いたのは事実だがそんなに余裕ではないさ。ま、とにかくいいものを見せてもらったよ。」
「えっと……ではこれで訓練終了でいいんですよね?」
「ふふ、まあそう焦らないでおくれよ。」
「そうね。本当なら支援課のみんなと対戦する事も考えていたけど……”剣帝”が一緒なら話は別だわ。」
「へ……」
エオリアの答えにロイドが呆けたその時
「せっかくこうしてかの”剣帝”とも手合わせをする機会が巡ってきたんだ。”執行者”の中でも相当の腕前を持つアンタと手合わせできる絶好の機会を逃す訳にはいかないよ。」
リンは不敵な笑みを浮かべてレーヴェを見つめた。
「え、えっと、もしかして次の相手は……」
「うふっ♪指名されちゃったみたいね♪」
「ア、アハハ……」
「正気か?そいつはかなり強いぞ?」
冷や汗をかいているエリィと共にエルファティシアはからかいの表情になってレーヴェを見つめ、プリネは苦笑し、メティサーナは不思議そうな表情をし
「ああ、次の対戦相手は私とエオリアのペアと”剣帝”。アンタとの対決でお願いするよ。」
「数は私達が上だけど、貴方ほどの使い手が自分が不利だとは言わないわよね?」
リンは頷いて答え、エオリアはレーヴェを挑発した。
「ほう?消耗している状態でこの俺とやり合おうとは……―――随分と舐められたものだな。」
一方レーヴェは興味ありげな表情をした後目を細めて二人と対峙し
「ふふ、別にアンタの事を舐めてはいないよ。―――破!」
リンは苦笑した後全身に闘気を纏った!
「凄い……力が迸ってる!」
「東方武術の”気功”か。……まあ、”不動”や”痩せ狼”ほどではないが。」
リンが纏っている闘気を見たエリィは驚き、レーヴェは静かに呟いた。
「ハハ、さすがにあの二人と比べれば私はまだまだだけど……そう簡単にはやられないよ?―――エオリア!」
「了解!」
リンの言葉に頷いたエオリアは治癒アーツで自分達の傷を完全回復した。
「メティちゃん、もう一回合図をお願い!」
「わかった。――両者、構え!」
メティサーナの号令によってそれぞれ武器を構えて対峙し
「―――始め!」
そしてメティサーナの号令を合図に模擬戦を開始した!
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