とある科学の傀儡師(エクスマキナ)
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第28話 携帯電話
不良に絡まれている所を助けられてから数日後のこと。
湾内は、未だに助けてくれた赤髪の少年の正体が分からないままだった。
初めにルームメイトである泡浮にも何か知らないかと訊いてみるが明確な回答が得られていない。
学校は終業式を終えて夏休みに入っている。
湾内や泡浮が所属している水泳部では、今が練習の最盛期だ。
ほぼ毎日、プールに来ては少しでもタイムを縮めようと練習を熱心にしている。
湾内は、部活に来ている人を中心に赤髪の少年について伺ってみるが、誰もそんな人を知らなければ、見た事もないとのこと。
夏休みに活動している部活というのはある程度、固定化されているので赤髪の少年についての新しい情報は皆無だった。
ある日、部活で使用しているプールが一旦清掃作業が入るので一週間程度の水泳練習が休みとなった。
実質、本日で部活はお休みとなる。
最後の後片付け、用具の破損具合、不足はないかなどの先輩の確認作業に同行して、書類に書き込んでいく。
ジリジリと照りつける太陽に汗を流しながら、ペンを走らせて一年生としての責務を果たそうと奮闘している。
用具の点検がある程度終わった所で先輩から休憩して良いと言われ、自分の着替えが入っているロッカールームに入り、備え付けの椅子に水着のまま腰を下ろした。
今日は水着を着用しているが水には入っていない。
制服が水に濡れるのを避けるためだ。
慣れない初めての用具点検の疲れもあるだろうが、ここ数日の赤髪の彼についての聞き込みが何も成果が得られずに落ち込んでいる。
そんな元気のない湾内に泡浮は声をかけた。
「お疲れさまですわ湾内さん。水分をどうぞ」
買ってきた清涼飲料水を差し出した。
「ありがとうございますわ。いただきます」
正直、喉はカラカラに乾いていたのでこの差し入れは嬉しかった。
湾内は、口を開けると飲料水を喉へと流し込む。
「はあー、おいしいですわ」
日焼け防止の上着を着たまま、更衣室の窓を開けて波立っている水面を見ながらしばし涼しい風に当たる。
湾内は、喉を潤すとロッカーに入れてある自分のバッグを取り出して、携帯電話を出した。
操作しては一枚の写真見ながら、力のないため息を吐き出す。
写真には、無残に壊れた巡回用ロボットが映っていた。
あの赤髪の少年の唯一の手がかりだ。
「あの助けてくれた赤い髪の殿方を考えていますの湾内さん?」
「はい、まだ見つかりませんの」
結構、特徴的な姿だったので、すぐに見つかるかと思っていたがとんだ勘違いだった。
また、あの路地裏に行けばいるんじゃないかと考えたが、また素行の悪い男性に絡まれるのではないかと考えて二の足を踏んでしまう。
少年のことが分からないまま暗礁に乗り上げていた。
まるで、自分を助けるために現れて、事が済んだら消えてしまう絵本の王子様みたいだ。
でも物語では、最後は見えるようになって幸せになっていた。
自分もそれに倣いたい。
「でも、湾内さんを助けるために巡回用のロボットを落とすなんて、ワイルドな方ですわね」
元気のない湾内に泡浮が赤髪の少年についての話題を振ってみる。
何か自分でも友人の為にしてあげたかった。
「はい、一瞬で三人の方を倒してしまいましたわ」
赤髪の少年の事を話す時に、キラキラとした瞳で嬉しそうに話し出す。
「すごいですわ、その殿方はどちらから?」
「空から降ってきましたわ」
空からですの!?
少女コミックとは違う助け方に衝撃を受ける。
「わたくしの為に飛び降りてきましたわ」
「なかなかワイルドな方ですわね」
それはワイルドなのだろうか?
「それでその方は?」
「わたくしを見るなり慌て、走り去って行きましたの......あの時、わたくしが勇気を持ってはっきりと話し掛けていましたら良かったですのに」
湾内と泡浮が所属する常盤台中学は都市内でも有数の名門かつお嬢様学校であるため、制服だけでも目立ち、不良に絡まれることが多いが
お嬢様学校ということで、一般の学生にも住む世界が違うとの理由で敬遠されることも多い。
そのため、赤髪の少年も湾内の制服を見て逃げ出したのではないだろうかとも考えてしまう。
「このまま一生お礼も言えずに終わってしまうのでしょうか......せめて、現実に居るってだけでも知りたいですわ」
グスンと瞳を潤わせながら、ハンカチで目元を拭く。
泡浮は、少しだけ窓の外を見やる。
湾内さんから、その殿方について話を聴いていましたが
この暑い最中に厚手の黒い服を着ていたらしいですわね......
「湾内さん。部活が終わりましたら、気分転換に喫茶店とやらに寄りませんか?」
泡浮が湾内を誘ってみた。
お嬢様なので、その手の大衆店には行ったことがなかったが、一体どんな所なのだろうかと興味はあった。
「喫茶店ですの?」
「一回だけでも行ってみませんこと?」
******
学校帰りに生涯で初めてとなる「喫茶店」とやらに湾内と泡浮がやや緊張した感じで入場した。
店員が笑顔で接客をしてくれた。
「2名様ですか?」
「!?はい2名様......ですわ」
緊張のせいか日本語がおかしくなっている。
窓際の席に移動し、物珍しげに店内を見渡す。
「わたくし、初めて喫茶店に入りましたわ」
「わたくしも、もっと怖い所かと思いましたが大丈夫みたいですわね」
デザートのケーキを注文して品物が運ばれてくるまで、二人で話しをして楽しんだ。
「あ、そういえば......その殿方の事なんですけど。目立っていたのではないかと思うのですが」
「目立っていた?どういうことですの?」
「あまり見ない服を着ていらしたんですよね。湾内さんの他にもその殿方を見たっという方が居るのではないかと」
泡浮の話にハッ気がついたように顔を上げた。
「では、この場でも訊いてみましょう」
注文したケーキを運んできた店員に、湾内は勇気を振り絞って尋ねてみる。
「あの......赤い髪で黒っぽい服を着た少年を知りませんか?」
「はい?赤い髪に黒っぽい服ですか?」
ケーキを並べながら、女性店員は少しだけ動作を止めた。
「あっ!思い出しました。確か数日前に変わった服装の子供がいましたね」
「えっ!?ほ、本当ですの?」
湾内と泡浮は、嬉しそうに顔を見合わせた。
「どんな感じでしたの?」
「確かね。あなたみたいな制服を着た人と大人の女性で来ていたかしら.....ドリンクバーで揉めていたから記憶に残ってますよ」
二人は、常盤台の制服を見下ろした。
その制服を着た人と一緒に居たということは、常盤台に知り合いが居るということだ。
「その後は?」
「申し訳ありません。その後にちょっとしたハプニングがらありましてあまり覚えてませんわ」
その後に二人が合流して、大人の女性にドリンクを零してしまい、女性が平然と脱ぎだしたので軽く店内がパニックになり、その少年が何処に行ったかまでは把握していなかった。
更に話しを聞けば、自分が助けられる直前とのことだ。
だいぶ、赤髪の少年に近づいた気がして気分が良くなる。
湾内は、自分の財布から一万円を取り出して、チップ代わりに女性店員に渡そうとするが
「ち、チップは原則的にダメなんですよ。しかもこんなに」
「わたくしの気持ちですわ。受け取ってくださいの」
「ダメです!受け取れません」
まだ喫茶店のシステムをあまり理解していないようである。
取り敢えず、赤髪の少年はこの近くに居ることがなんとなくわかってきた。
先輩により言い渡された濾過タンク点検の日に湾内にとって運命の日となる。
******
そして現在。
湾内さんがサソリに告白するという波乱の展開に病室に衝撃が走った。
「言ってしまいましわ」
顔を赤らめて、幸せそうにサソリのベッドの脇に立っている湾内。
手は自分の頬に付けて、照れ隠しをしているようだ。
「ど、どういう事よサソリ!」
サソリのベッドに備え付けてあるテーブルに手を置いて、御坂が前のめりになる。
「こっちが聞きたいくらいなんだが」
サソリは、ベッドの上であぐらをかいて頬杖を付いている。
「OKするの?しちゃうの?」
佐天がやや興奮したように、サソリに詰め寄る。
「わたくしが言うのもなんですが、湾内さんは気が効きますし、良い子ですのよ」
フワリと口に手を当てて、上品そうに笑みを浮かべている泡浮。
チラッとサソリは、横に居る湾内を見上げた。
サソリの視線に気が付いて、顔を伏せてモジモジしている。
サソリは、眉間に皺を寄せて考え込んだ。
さて、この娘をどうするかだな
あの時の事を目撃しているわけだし
下手に扱うと厄介な事になりそうだ
まだ、大蛇丸についての情報は無しに等しい
面倒な事になったな
「ごめん!湾内さん」
隣に居た湾内をズラして、御坂がサソリに近づいて耳打ちをする。
「アンタ、黒子の事はどうするの?」
「今考えている......ん?!何で白井が出てくんだ?」
「そりゃー、ねえ」
うわー、どっかで見た事があるような超鈍感男だわ
こりゃ、黒子大変よ
経験者は語るってね
「あ、あのう。サソリさん」
湾内が意を決したようにサソリの右手を握りしめる。
「なんだ?」
「お返事を聞かせて貰えないでしょうか?」
「付き合うとかか?お互いのこと知らねえことだらけだろ。少し考える」
はっきり断るのは怖いため
あくまで、湾内を傷付けないための弁だった。
「お互いを知るですか......わかりましたわ!サソリさん携帯電話のアドレスを教えて頂けませんか?」
?
初めて聴く単語に、サソリはいつもみたいに疑問を口にした。
「あどれす?なんだそれ」
サソリが首を傾げた。
「ああ!そうだったわ」
その会話を聞いていた御坂が思い出したようにポケットから一台の携帯電話を取り出して、サソリの前に置いた。
「はい」
「なんだこれ?」
「これが携帯電話よ。ほら、前にあたしが黒子に連絡していたじゃない」
AIMバースト戦の際にサソリを逃すために御坂が白井に連絡するのに使ったものだ。
「これを使っていたのか」
「アンタ見てたでしょ......あっ!ちょうど、目が見えなかった時か」
しまったしまったと頭を掻く御坂だったが、サソリの隣に居る湾内が血相を変えて、サソリの顔をじっと近づいて見る。
「目が見えなかったのですの!サソリさん、これは何本に見えますの?」
サソリの前で指を二本左右に揺すっている。
「今は、見えているから大丈夫だ」
サソリの前に出された携帯電話を手に取ると佐天が興味深げに中身を見ていく。
まだ写真もロクにない初期設定のままだ。
「御坂さんが買ったんですか?」
「そうよ。ないと不便だと思ってね」
「そういえば、契約をなさってましたわね」
学校から病院に来る前に御坂は、携帯電話を契約し、サソリに渡そうと考えていた。
この電子化された社会では携帯電話は必需品よ。
ひとまずにサソリに手渡してみるが
眠そうな目のまま、携帯電話を手にすると画面を見たり、振ってみたりする。
折りたたみ式なので、開いたり閉じたりしてみる。
「流石にこれは無かったんじゃない?」
ニコニコとしながら、御坂が訊いた。
「レベルアッパーの件じゃ、色々世話になったからね」
「ああ」
佐天は、御坂の言葉で思いついたように手を叩いた。
そうだわ
あたしもサソリや御坂さん達にお礼しないといけないかも
何をしたら喜んでくれるんだろ。
「番号とアドレスはあたしの方で勝手に設定してあるから」
「ほう、よく分からんな」
「あの......サソリさん、よろしければ電話番号とメールアドレスを教えて貰って良いですか」
手をちょっとだけ挙げて、湾内がサソリに言った。
「御坂が勝手にやったから、御坂に訊けよ」
「逐一、覚えてないわよ。貸して」
ピッピと携帯電話を操作するとサソリの電話番号とアドレスが出てきた。
「教えて良いの?」
「んー、別に構わんが」
「ありがとうございます」
サソリのアドレスを開いて湾内は自分の携帯電話に新規登録するためにカバンから取り出した。
「一応、あたしのも登録してあるけどね。一回テストしてみようかしら」
御坂は、メールを開いて作成すると「テスト」と打ち込んで、サソリの携帯電話にメールをした。
湾内が持っている携帯電話が突如として震え出した。
「ふわ!」
「ご、ごめん湾内さん」
「大丈夫ですよ。開いてみますね」
湾内が操作をしてメールを開いた。
急に妙な機械が震えたので、サソリの興味が強くなり、湾内の持っている携帯電話に近づいた。
「?!どうなってんだ?」
怪訝そうな顔で覗き込む。
「さ、ささサソリさん近いですわ!」
サソリは今、湾内と伸ばした腕にある携帯電話の間へと移動しており、必然的に二人の距離があり得ないほど近くなっていた。
サソリが振り返ると湾内の顔がすぐ近くにあった。
憧れのサソリの顔が自分の鼻先に当たりそうになって、顔が沸騰しそうに真っ赤に染まる。
サソリの髪の匂いがして、体温が急上昇していく。
「くぅ」と犬みたいな声を出す湾内。
「あっ!見えないだろ離すな」
「!?」
限界とばかりに腕を伸ばして、サソリから離れようとするが、サソリが湾内の腕を掴んだまま離さない。
サソリは首を傾げて、その湾内の言葉を無視するように至近距離で携帯電話の画面を注視する。
「これぐらい我慢しろ。えっとこの文はお前が書いたのか?」
画面を向いたまま、サソリが御坂に質問した。
「そうよ。あたしの携帯からこうやって文章が送れるのよ......ってかサソリ、そろそろ湾内さんを離してあげないと」
「ん?」
御坂の言葉に手を握ったまま、サソリは湾内を振り返りながら見た。
顔を真っ赤にして、眼が座っているかのように不安定に斜め右下を見続けている。
「悪い、そんなに強く握ってねえと思ったんだが」
サソリは湾内から手を離して、携帯電話を自分の手に入れた。
湾内は、ぽーとしながら握られた自分の腕を見つめ、ハニかんでいる。
この子(サソリ)
無自覚でここまでやるとは!
天性の女泣かせだわ
やるわね
佐天が冷静に分析をした。
携帯電話を持ってきて、ベッドに戻ると御坂を見上げた。
「どうやる?」
「じゃあ、その練習から始めようか」
サソリに力強く握られた湾内は、椅子に座りながら動悸が激しい自分を落ち着かせるように深呼吸をしている。
「大丈夫ですの湾内さん?」
「顔真っ赤ですよ」
「大丈夫です。少し驚いてしまいまして」
「てか、実質登録できてないわよね......また後で見せてもらう感じにします?」
「それも大丈夫です......完璧に覚えましたから」
「!?」
お、覚えた!?
「えっ!ひょっとして、サソリの携帯番号とメールアドレスのこと?」
「はい。メールアドレスが長くて時間が掛かりましたが、一字一句覚えてます。では登録しますね」
慣れた感じで携帯電話に入力すると、サソリ宛にメールを開いて「テストです」と入力して送信した。
直後震える携帯電話。
「ん?」
「あら、湾内さんから来たわね。それも登録しておきなさい」
やっぱ、伊達に常盤台行ってないわこの人達
あれだけの短時間で数字と英記号を覚えてしまう、記憶力が凄いわ
携帯電話に登録し終わった湾内は、嬉しそうに新規登録された「サソリさん」という項目を眺めていた。
「湾内さん、良いの?」
佐天が質問した。
「はい?」
「簡単に男の人にアドレス教えちゃって」
「サソリさんになら別に構いませんわ」
ふふ、世間知らずのお嬢様らしい発言ね
この世界には、そんな無防備な事をすればどんな事になるかを教えてあげないと(大半がテレビやネット調べ)
甘い、甘いわよ
さすがの常盤台もそんな事までは教えないようね
「もしも、サソリが湾内さんが困るほど大量のメールを送ってきたらどうします?」
ビシッと指を伸ばして、湾内を指した。
「そうでしょうか?」
湾内が携帯電話を片手にサソリの方を見た。
「こんなちは......くそ、また間違えた。ボタンが小さ過ぎる」
メールに悪戦苦闘していた。
「消す時は、このボタンを押して消すのよ。違う違う!その下よ」
「全部似たようなボタンにしやがって、ここか?」
「あ!そこは」
唐突に電源が切れる携帯電話。
御坂が頭を抱えた。
「ごめん、ここまでとは思わなかったわ......お年寄り用のラクラクフォンにすれば良かったわ」
「ちっ!」
サソリのイライラが頂点に達したのか、携帯電話を振りかぶって床に叩きつけようとした。
「だめだめ!落ち着いて!もう一回しっかり教えるから!」
「こんなまどろっこしいのいらねえよ」
必死に携帯電話の小さなボタンと格闘しているサソリに、佐天は苦笑いを浮かべた。
「あれを見ちゃうと心配しなくても良さそうですね」
結局の所、なんとかメールを打てるようにはなったがサソリ本人は、かなり疲れたようにグッタリと壁に背中をくっ付けて頭を掻いた。
時刻は夕方を回っていた。
「このめーるとやらを送る時は、『はい』か『いいえ』で答えられる文面で寄越せ」
「悲しい宣言ね」
メールの講習だけで今日が終わってしまった
電話機能は後日かしら
「その文字だったら対応できそうだ」
疲れきった顔で半眼も加速度的に強くなっている。
「分かりましたわ」
湾内は力強く宣言した。
「佐天さんすみません。わたくし達はそろそろ門限がありますので帰りますね」
泡浮が荷物を手にしながら優雅に椅子から立ち上がった。
「そうね.......流石に二日連続で門限破る勇気は出ないわ」
「サソリさん!何か困った事がありましたら、連絡をくださいね。すぐに駆けつけますから」
「ああ、はいはい」
あー、しまった
この娘をどうするか考える時間が無かった
写輪眼が復活すれば、幻術でなんとかなるかな?
まあ最悪、あの娘が嘘を付いているってことにすれば問題なしか
オレがアレを落とした証拠があるわけじゃねえから......
「あのサソリさん!」
グイッと顔を近づけると湾内は、自分の携帯電話の画面をサソリに見せつける。
そこには、無残に壊れた巡回用ロボットが映っていて......
「わたくし嬉しくって!ずっと写真で残してありますの!」
サソリの眠そうな眼が画面を見ると大きく見開いた。
「はっ?!」
!!?
こ、コイツ!
ちゃっかりと証拠を残してやがった
「湾内さーん、帰るわよ」
「はい!では失礼しますね」
「ま、待て!」
サソリが慌て体勢を立て直そうと前に身体をズラすが、負傷した左腕にテーブルの端が当たり痛みに顔を歪ませた。
「いだだ!」
「だ、大丈夫?」
病室の扉が閉まり、部屋にはサソリと佐天だけとなった。
「じゃあ、あたしもついでにサソリのアドレスを登録しておくわね。それにしても、なかなかないわよ女子中学生とメル友なんて恵まれているわね......あれ?」
佐天が見ると頭を抱えてサソリは、何か悩んでいるように項垂れていた。
やべえ
本格的にやばいかもしれん
まさか、証拠を残していたとは......
付き合うって言うのも裏がありそうだな
暫く様子を見るか
下手に動くのマズイな
「さてと、登録も終わったしあたしも部屋に戻りますかね」
サソリの携帯電話をテーブルの上に置いた。
「ああ」
やっぱ、考えているのかな?
湾内さんのこと
もし、二人がお付き合いをしたら彼氏、彼女の関係か......
まあ、サソリは根は優しいし 、あたしから見てもかっこいいし。
湾内さんは、フワフワしていて女の子っって感じだから似合いのカップルになりそうかも
二人っきりでデートをしたり、買い物したりするのかな
ズキ!
佐天の胸によく分からない痛みが走った。
えっ?
なんで、サソリと湾内さんの事を考えると胸がズキズキと痛むの?
ページ上へ戻る