英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅰ篇)
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第134話
同日、17:30――――
~ガレリア要塞・軍事演習場~
「―――さて。これより”特別演習”の説明をしておく。本演習には”アハツェン”と軍用飛行艇の自動操縦による連携で目の前の二人を相手する事になる。当然実弾を使う。」
「ちょ、ちょっと待ってください!相手は生身なのに実弾を使うんですか!?」
「幾ら何でも危険すぎじゃ……万が一当たったら、二人共死んじゃうよ……?」
クレイグ中将の説明を聞いたアリサは血相を変え、エリオットは不安そうな表情をし
「……その件に関してはリウイ陛下直々より心配は無用とお達しの事だ。逆に操縦者達が死傷しない為に、自動操縦で相手する事を推奨したくらいだ。」
「ええっ!?」
「ふええ~っ、あの二人って、そんなに凄いんだ……」
「ハハ、闇夜の眷属がどのくらい凄いのかお手並み拝見だな。」
ナイトハルト少佐の説明を聞いたアリサは驚き、ミリアムは目を丸くし、クロウは苦笑した。
「……普通ならありえないけど、フェミリンスさんの件があるからな……」
「”アハツェン”の砲撃を結界で余裕で防いでいたしね。」
「フン、闇夜の眷属の中でも”最強”と謳われている種族の力を見るちょうど良い機会だな。」
「…………………」
マキアスは疲れた表情で呟き、フィーは真剣な表情で答え、ユーシスは鼻を鳴らした後真剣な表情でエヴリーヌとベルフェゴールを見つめ、エマは黙って二人を見つめていた。
「さてと――始めるか。これより本日の”特別演習”を始める!」
そして”特別演習”が始まると、”アハツェン”の部隊が2人に向かって怒涛の砲撃を放った!旧式戦車をも易々と破壊する砲撃は二人を木端微塵にするかと思われたが―――
「うふふ、大した威力ではないわね。これなら上位魔術の方がまだ威力があるわよ。」
「ふわ~あ……」
なんと二人はそれぞれ結界を展開して砲撃を防ぎ続けて無傷だった!”アハツェン”と軍用飛行艇は連携して怒涛の砲撃を二人に放ち続けたが、結界は罅すら入らなかった。
「嘘っ!?」
「旧式戦車をも容易に破壊した”アハツェン”の砲撃を……」
「うわ~……ガーちゃんでも、あそこまで強固な結界ははれないよ……」
二人の様子を見たアリサは驚き、ラウラは信じられない表情をし、ミリアムは表情を引き攣らせた。
「さ~てと。さっさと片付けちゃいましょう。」
「ん。」
そしてベルフェゴールに視線を向けられたエヴリーヌは頷いた後弓に魔力の矢を番え
「うざい蠅は撃ち落してあげるよ、キャハッ♪―――アン・セルヴォッ!!」
なんと膨大な魔力と闘気を込めたエネルギーの矢を放ち、魔神の力が凝縮された矢をその身に受けた軍用飛行艇は矢に貫かれて爆発を起こしながら地面に落下し
「すごい――――ねこパンチ!!」
軍用飛行艇の背後に転移魔術で現れたベルフェゴールは強烈な一撃を叩き込んで、残りの一台の軍用飛行艇を地面に勢いよく叩きつけ、地面に叩きつけられた飛行艇からは煙が上がった!
「「なあっ!?」」
生身のエヴリーヌとベルフェゴールが易々と軍用飛行艇を撃墜したという信じられない出来事にクレイグ中将とナイトハルト少佐は驚いて声を上げ
「………………」
「お、おいおいおいっ!俺達、夢でも見てんのか!?」
「ぐ、軍用飛行艇を弓矢や素手で撃ち落すなんて信じられないっ!」
サラ教官は口をパクパクさせ、クロウとアリサは信じられない表情で声を上げた。
「行くわよ♪それっ!!」
そしてベルフェゴールは空中からクラフト―――ごろごろで強襲すると数台の”アハツェン”はまるでダンプにはねられたかのように勢いよく吹き飛ばされ
「くふっ♪――――どっかーん!」
空中へと転移したエヴリーヌが両手に掲げた膨大な魔力を振り下ろすと、魔術―――二つ回廊の轟雷が発動し、アハツェン達の頭上の空間が歪んだ後凄まじい雷の雨が降り注いだ後連鎖爆発が起こり、アハツェンを次々と破壊し始め
「遅い遅い!―――ねこアッパー!!」
アハツェンの砲撃を高速で飛び廻って回避しながらアハツェンに詰め寄ったベルフェゴールはアッパーカットでアハツェンを空へと打ち上げ
「―――烈風脚!!」
更に空へと打ち上げたアハツェンを蹴り飛ばしてまだ無事なアハツェンにぶつけて2台のアハツェンを破壊した!
「キャハッ♪エヴリーヌも負けないよ♪壊れろ壊れろ壊れろ――――ッ!!」
ベルフェゴールの活躍を見たエヴリーヌは不敵な笑みを浮かべた後ベルフェゴールと共に凄まじい勢いでアハツェンを破壊し続けた!
「これが”魔神”の”力”か……」
「あ、圧倒的すぎるよ……」
「あんな”力”が戦場で猛威を振るえば、相手が”兵器”であろうと、瞬く間に”敵”は蹂躙されて全滅するでしょうね。」
二柱の”魔神”の圧倒的な力を見たガイウスは重々しい様子を纏い、エリオットは不安そうな表情をし、サラ教官は厳しい表情で呟き
「あの、アリサさん。”アハツェン”でしたか?あの戦車は耐久力は本当にあるのですか?あまりにもあっさりと壊され続けていますけど……」
「あるに決まってるでしょう!?導力トラックに衝突されても、平然としているくらいの耐久力はあるのよ!?」
戸惑いの表情のセレーネの疑問にアリサは目の前の信じられない出来事に混乱しながら答えた。
「ベルフェゴールやエヴリーヌが強い事はわかっていたけど、ここまで滅茶苦茶強いなんて非常識にもほどがあるぞ……」
「これがメンフィルが保有している”最強”の”力”か。確かにこれ程の”力”なら、たった一人でも国すらも容易に滅ぼせるな……」
マキアスは表情を引き攣らせ、ユーシスは重々しい様子を纏って呟き
「ああ……―――それとリウイ陛下は”魔神”の力を御父上から受け継いでいるから、メンフィル皇家の人達はそれぞれ”魔神”の力を持っているんだ。」
「家族揃ってあんなとんでもない力があるとか、”化物”っつーか、”魔王”一家と言ってもおかしくないんじゃねえか?」
「ふえ~……あんなのを見たら、”大陸最強”って謳われていたエレボニア帝国が”井の蛙”だって事を思い知らされるよね~。」
リィンの説明を聞いたクロウは表情を引き攣らせ、ミリアムは目を丸くして圧倒的な力を見せつける二柱の魔神を見つめ
「………”次元”が違うとはこの事だな。」
「”最強”という言葉すら生温いね。――――”最強”ではなく”最凶”だよ。」
「”魔王”の”力”は決して人では計れない事が証明された瞬間ですね……」
ラウラとフィー、エマは重々しい様子を纏って呟いた。
「……なるほどな。意趣返しの意味も込めて”これ”が狙いで、リウイ陛下は宰相閣下の要請を引き受けたのか……」
「?どういう事でしょうか、中将。」
重々しい様子を纏って呟いたクレイグ中将の言葉が気になったナイトハルト少佐は不思議そうな表情で尋ね
「―――部下達の顔を見て見ろ。」
「え―――――!?」
クレイグ中将に促されたナイトハルト少佐が兵士達の顔を見ると血相を変えた。
「な、なんなんだよ、あの二人は……!」
「あれがメンフィルの”力”なのか……!?」
「あんな化物連中に勝てる訳がねえよ……」
兵士達はそれぞれ表情を青褪めさせて恐怖の表情や絶望した様子でベルフェゴールとエヴリーヌを見つめ
「くっ………!まさかメンフィルの”狙い”というのは……!」
「ああ―――かつて”大陸最強”を誇った我々エレボニア帝国軍にメンフィルへの対抗心を持つ事が”無駄なあがき”である事と敵対すれば、どのような”結果”が待ち受けているのかを思い知らせる為だろうな。さすがに”これ”を見せられれば、今のエレボニア帝国軍では絶対に敵わない事くらい、わしでも理解できる。これはもはや”戦争”ではない。―――ただの”蹂躙”だ。リウイ陛下の助言通り、自動操縦にしておかなければ、多くの死傷者達が出ただろうな。もし、実際に戦う事があればわしでも降伏するだろうな……」
戦意を失くしている兵達の様子を見て悔しそうな表情で唇を噛みしめているナイトハルト少佐の言葉にクレイグ中将は重々しい様子を纏って答えた。
「と、父さん!?」
クレイグ中将の弱気な発言にエリオットは驚き
「なっ!?中将閣下ともあろう方が何を弱気な事を仰っているんですか!?」
ナイトハルト少佐は信じられない表情で声を上げた。
「――ならば、ナイトハルトよ。お前は今のエレボニア帝国軍があの”力”に対抗できると本気で思っているのか?戦車どころか軍用飛行艇の砲撃すらも無傷で防ぎ、戦車や飛行艇を容易に破壊するまさに”無敵かつ最強”と言ってもおかしくない相手に。実際に戦えば、攻撃も通じない相手に一矢すら報いる事もできずに、ただ悪戯に兵を死なせるだけだぞ。」
「それは………」
しかしクレイグ中将の指摘に反論がないナイトハルト少佐は複雑そうな表情で黙り込んだ。
「うふふ、そろそろ終わりにしてあげましょ♪」
「キャハッ♪一つ一つ潰して行くのもめんどくさくなってきたもんね♪」
そしてベルフェゴールとエヴリーヌはそれぞれ空中で大魔術の詠唱を開始し、滞空して動かない二人を好機と判断した残りのアハツェンは次々と砲撃したがそれぞれの膨大な魔力による結界に守られている二人は傷一つつかなかった。
「――全部潰す!闇の深淵にて重苦に藻掻き蠢く雷よ………」
エヴリーヌが大魔術の詠唱を始めると、突如空の上の雲の中から巨大な球体が雷をほとばしらせ、ゆっくりとアハツェンの部隊の頭上へと降りて来た。
「彼の者に驟雨の如く打ち付けよ………!グラビティ―――――ブレス!!」
そしてアハツェンの部隊に降りて来た球体は周囲にあるアハツェンの残骸も包み込んで雷を迸らせ、最後には爆発し雷を全方向へと飛ばしてさらに広範囲のアハツェン達を巻き添えにすると共に大地震を起こして消えた!エヴリーヌの大魔術――グラビティブレスの威力はすさまじく、アハツェン達がいた場所は巨大なクレーターとなり、塵一つすら残っていなかった!
「うふふ、私の情熱の炎に耐えられるかしら?我焦がれ、いざなうは焦熱への儀式!そに捧げるは、炎帝の抱擁!!」
ベルフェゴールが詠唱を終えると、戦場全体に煉獄の炎が包み込み
「―――――イフリート――――キャレス!!」
そしてベルフェゴールの声を合図に、巨大な火柱が空に向かって上がると共に戦場にあるアハツェンと軍用飛行艇の残骸や、まだ残っているアハツェンを全て焼き尽くし、炎が消えると、地面は黒焦げになり、アハツェンや軍用飛行艇は塵すら残っていなかった!
「……………………………」
二人の大魔術の威力をその目に焼き付けた全員は呆けた表情で黙り込んだ。
「ふわ~あ。つまんない戦いだったね。」
「まあ、”神”や”魔神”以外が相手ならある程度は対抗できるけど、あんな砲撃、結界があれば大した脅威じゃないわね。」
するとその時エヴリーヌとベルフェゴールが転移魔術でリィン達の傍に現れた。
「うふふ、どうかしら、ご主人様?改めて私と”契約”してよかったと思うでしょう?」
「あ、ああ……―――お疲れ様、ベルフェゴール。」
「うふふ、どういたしまして♪」
そしてリィンの労いの言葉を聞いたベルフェゴールはリィンの身体に戻り
「くふっ♪これでわかったでしょ?魔神……ううん、リウイお兄ちゃんが作った”国”の”力”を。言っておくけど、リウイお兄ちゃんはエヴリーヌよりも、もっと強いし、あんな玩具、シェラ達の魔導兵器による軍団―――”機甲軍団”にとっては唯の動く的だよ?」
エヴリーヌは不敵な笑みを浮かべてその場にいる全員を見回し、その場にいる全員は返す言葉がなく、黙り込み
「……貴重なものを見せて頂き感謝する、”魔弓将”エヴリーヌ殿。――――これにて”特別演習”を終わりとする!」
全員が黙り込んでいる中、クレイグ中将が重々しい様子を纏って答えた後終了の号令をかけた。
メンフィル帝国の目論見通り、二柱の”魔神”はかつては”大陸最強”を誇ったエレボニア帝国軍に様々な”楔”を打ち込んだ。
リィン達がエレボニア帝国軍の合同軍事演習を見学し始めていたその頃、ロイド達は依頼人から依頼内容を聞いていた。
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