英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅰ篇)
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第128話
同日、11:20―――
七耀歴1204年――――初秋。新クロスベル市長にして、IBC総裁、ディーター・クロイスが提唱した『西ゼムリア通商会議』が始まった。
西の大国、エレボニア帝国からは”鉄血宰相”ギリアス・オズボーンに加え、粋人として知られるオリヴァルト皇子―――
東の大国、カルバード共和国からは庶民派として支持を集めているサミュエル・ロックスミス大統領―――
北東にあるレミフェリア公国からは若くして国を治めるアルバート大公―――
南西にあるリベール王国からは女王代理としてクローディア王太女――――
異世界の大国、メンフィル帝国からは”聖魔皇女”として名高く、メンフィル皇帝の次期継承者でもあるリフィア皇女に加え、”英雄王”リウイ皇帝と”闇の聖女”ペテレーネ神官長の娘の一人であるレン皇女――――
いずれも国賓クラスのVIP達が今まさにクロスベルに集まりつつあった。
~クロスベル駅~
駅に到着したエレボニア政府関係者専用の鉄道からはエレボニア帝国政府代表”鉄血宰相”ギリアス・オズボーン宰相がレクターや数人の将校達と共に現れて一課の刑事の先導によって、どこかに向かい、宰相達が向かうと、同じように列車からエレボニア帝国皇帝名代、オリヴァルト・ライゼ・アルノール皇子が黒髪の軍人や将校と共に出た後、一課の刑事の先導によってどこかに向かった。
~東クロスベル街道~
東クロスベル街道からは多くの車両に守られるにように囲まれた白いリムジンの中にはカルバード共和国政府代表、サミュエル・ロックスミス大統領が女性の補佐官―――キリカ補佐官と共に乗っており、リムジンはクロスベル市に入った。
~クロスベル国際空港~
空港にはリベール王国の高速巡洋艦”アルセイユ”やメンフィル帝国の巨大戦艦”グロリアス”が停泊し、アルセイユからは王国親衛隊隊長や親衛隊員と共にリベール王国王太女、クローディア・フォン・アウスレーゼが、グロリアスからはメンフィル帝国の親衛隊員やメンフィル機工軍団団長シェラ元帥と共にメンフィル帝国皇帝名代リフィア・イリーナ・マーシルンが専属侍女長であるエリゼを連れて現れ、リフィアに続くように皇帝名代補佐、レン・H・マーシルン皇女が現れ、親衛隊員達やシェラ元帥と共に歩き出してクローディア王太女と合流して会話をしながら歩いていた。すると空港の入口で護衛や秘書と共にレミフェリア公国国家元首、アルバート・フォン・バルトロメウス大公がやって来て、クローディア王太女やリフィア皇女達と共に会話をした後どこかに向かった。そしてその様子を記者達が空港内から写真を撮っていた。その後各国の首脳たちを乗せたリムジンは警察車両の先導によってある場所に向かった。
~???~
その後ある場所に到着し、リムジンから降りてきた各国の首脳達はクロスベル自治州共同代表、ヘンリー・マクダエル議長とディーター・クロイス市長と挨拶をしていた。
(……す、凄いな…………)
その様子を離れた場所で見守っていたロイドは驚きの表情で呟き
(ええ……さすが一国をまとめあげる人達ばかりね。)
エリィはロイドの言葉に頷いた。
(しかし”鉄血宰相”か……かなりガタイがいいじゃねぇか。)
(フフ、共和国の大統領の方は飄々としたタヌキって感じだね。)
ランディは目を細めてオズボーン宰相を見つめ、ワジは静かな笑みを浮かべてロックスミス大統領を見つめていた。
(リベールのクローディア王太女も素敵ですね……それにあのユリア准佐をこんな所で見られるなんて……!)
ノエルは嬉しそう表情でクローディア王太女達を見つめ
(リフィア殿下の傍に控えているメイドの方はどなたかしら?確かリフィア殿下お付きの侍女はいないとお姉様から聞いた事があるけど……)
エリィは不思議そうな表情で首を傾げてエリゼを見つめていた。
(あの人達もヴァイスやリセルが”影の国”で出会った戦友達ですか…………)
(フフ、貴方にとっては懐かしい人達ばかりじゃないの?ヴァイスハイト。)
一方アルはクローディア姫やリフィア、オリヴァルト皇子達を順番に視線を向け、エルファティシアは視線を向けた後ヴァイスに微笑み
(ああ…………フッ。皆、元気そうだな…………)
エルファティシアの言葉にヴァイスは頷いた後静かな笑みを浮かべていた。
「―――各国首脳の皆様。ようこそ、遠路はるばるクロスベルへいらっしゃいました。クロスベル市の市長、ディーター・クロイスであります。」
その時クロスベル市の新市長であり、クロスベル国際銀行―――通称”IBC”の総裁も務めているディーター市長が各国からのマスコミのカメラによるフラッシュにたかれながら説明を始めた。
「この度は『西ゼムリア通商会議』に参加して頂き、誠に有難うございます。通例ならば、この場で歓迎の意と共に開会宣言をさせて頂くところですが……その前に、この記念すべき日にことよせて皆様のお時間を頂きたいと思います。」
各国の首脳達を見回したディーター市長は背を向け、シャッターに覆われた巨大な建物を見つめ、各国の首脳や周りの人物達もディーター市長に続くように建物を見つめ
「―――ご紹介申し上げます。クロスベル市の新市庁舎として。貿易・金融都市クロスベルを象徴する新たなランドマークとして。何よりも、大陸全土の平和と発展に貢献する国際交流センターとして。皆様にお披露目させていただく、大陸史上初の超高層ビルディング―――”オルキスタワー”であります!」
そしてディーター市長が笑顔で叫ぶとシャッターが開かれ、超高層ビル――――”オルキスタワー”が現れ、さらに花火がオルキスタワーの周囲に打ちあがった!
「こ、これが……”オルキスタワー”……!」
「概要は知っていたけどここまで壮麗だったなんて……」
「な、なんだか見てるだけで圧倒されそうですね……」
「こちらの世界は私達の世界と違って科学的な事が特に発展しているとは思っていたけど、まさかここまで高い建物を作るとはね……」
オルキスタワーを見上げたロイド、エリィ、ノエル、エルファティシアは驚き
「ああ……見事としか言いようがないな。」
「これほどの存在感があるビルでしたら、必ずクロスベルの象徴になるでしょうね……」
ヴァイスは静かな笑みを浮かべて呟き、アルは驚きの表情で呟き
「あり得ねぇだろ……どんだけミラがかかってんだよ。」
「フフ、気の遠くなるようなミラが投入されたんだろうねぇ。」
ランディは溜息を吐き、ワジは静かな笑みを浮かべていた。
(いやはや……さすがに度肝を抜かれたねぇ。)
(……技術の進歩というのは凄まじいものだな……)
一方オリヴァルト皇子は驚きの表情でオルキスタワーを見上げ、オリヴァルト皇子の隣にいる黒髪の軍人―――ミュラー少佐は目を伏せて呟いていた。
(……まるでリベル=アークを思い出してしまいますね……)
クローディア姫は懐かしそうな表情でオルキスタワーを見上げ
(ええ……さすがに中枢棟ほどの高さではありませんが……)
クローディア姫の隣にいるユリア准佐は静かな笑みを浮かべて頷いた。
(うむ!見事じゃ!まさかこれほど見事な建物を建造するとは……我等メンフィルも負けていられんな!オルキスタワーに負けぬほどの立派な城を建てねばな!)
(もう、ミルス城だって威厳があって立派じゃない……)
目を輝かせてオルキスタワーを見つめるリフィアの発言を聞いたエリゼは呆れた表情で指摘し
(クスクス。”平和の象徴”ねぇ?”教団”の裏に隠れていた黒幕である者がよく言えたものだわ。)
(…………………………)
レンは小悪魔な笑みを浮かべた後目を細めてディーター市長や傍にいるディーター市長の娘であり、市長を務めている影響で多忙のディーター市長に代わってIBCの事業運営を引き受けているマリアベルを睨み、シェラ元帥は何も語らず周囲を警戒していた。
(はっはっは、何とも豪気じゃないか!キミの報告を受けていたがまさかここまでとはなぁ!)
一方ロックスミス大統領は豪快に笑いながら隣にいるキリカ補佐官に話しかけ
(ええ、私も実物がここまでとは思いませんでした。さすがはIBCの資本力と言ったところでしょうか。)
話しかけられたキリカ補佐官は頷いた後口元に笑みを浮かべた。
(フフ、実際大したものだ。この因縁の地にこれほどの大伽藍を築くとはな。)
オズボーン宰相は感心した後口元に笑みを浮かべ
(んー、とりあえず一度、屋上に登ってみたいねぇ。市長さんに頼んでみたら登らせてくれっかなァ?)
レクターは興味深そうな表情でオルキスタワーを見上げていた。
「―――それでは改めまして。首脳の方々、およびこの場にいる全ての関係者の立会の下―――『西ゼムリア通商会議』の開催を宣言させていただきます!」
そしてディーター市長は振り向いて各国の首脳達に宣言した。
「……大したものですね。」
その様子を建物の屋上で見守っていたカルバード共和国に根付く裏組織―――”黒月”のクロスベル支部長の補佐を務めている青年――ラウは感心し
「フフ、素晴らしい。この光景を見ただけでもクロスベルに来た甲斐があったというものです。」
ラウの傍にいた眼鏡の青年―――”黒月”のクロスベル支部長ツァオ・リーは笑顔で言った後不敵な笑みを浮かべた。
「……殊勝なことを。―――まあいい、私は行くぞ。どうも奇妙なネズミどもが入り込んでいるようだからな。」
その時全身黒づくめの仮面をつけた男――――カルバード共和国では伝説と化している暗殺者――”銀”は鼻を鳴らした後ツァオ達に背を向けた。
「ええ、そちらはお任せします。それと、明日のイベントには是非とも協力をお願いしますよ?貴方が来てくださるだけで相当な箔が付きますからね。」
「フン、まあいいだろう。」
ツァオの言葉に答えた銀は空間の中に溶け込むようにその場から消えた。
「ふう……相変わらず神出鬼没ですね。あの気まぐれさえなければこちらも助かるのですが……」
「フフ、どうやら気まぐれというわけではなさそうです。”彼”がこちらに協力してくれるタイミングにはルールがある……それを見極めておけば滅多に断られたりしませんから。」
「そ、そうなのですか?しかし、そのルールとは一体……?」
ツァオの説明を聞いたラウは驚きの表情で尋ねた。
「フフ、まだヒミツです。」
しかし尋ねられたツァオは笑顔で答えを誤魔化し、そして眼鏡をかけ直し
「―――ここまでは段取り通り。明日のイベントの成功のため、もうひと頑張りしておきましょう。」
不敵な笑みを浮かべて言い
「は!」
ツァオの指示にラウは頷いた。
「うっわーっ!あのビル、とんでもないね~!ねえねえ、シャーリィたちでブッ壊せたりしないかな!?」
一方裏通りにある建物の屋上からオルキスタワーを見つめていた”猟兵団”―――”赤い星座”の部隊長を務め、”血染めのシャーリィ(ブラッディシャーリィ)”の異名で恐れられているシャーリィ・オルランドは物騒な事を口にした。
「フフ……気持ちはわかるが止めとけ。いずれあのビルにも役立ってもらうつもりだからな。」
シャーリィの言葉を聞いたシャーリィの父親であり、ランディの叔父でもある”赤い星座”の副団長―――”赤の戦鬼”シグムント・オルランドは口元に笑みを浮かべて答えた。
「むー、残念。まあいいや、街の方をブラついてくるね?あのビルのせいですごく賑わってるみたいだし♪」
「ああ、行ってくるがいい。」
そしてシグムントの返事を聞いたシャーリィは身軽な動作で建物から降りて行った。
「はは……さすがお嬢だぜ。よっぽどあのビルが気にいったんスかね?」
その様子を見ていた”赤い星座”の部隊長の一人は感心した様子で呟いたが
「フフ、それもあるだろう。だがそれよりも―――血の予感に酔ってるんだろうさ。」
「……!」
「……なるほど。シャーリィ様らしいかと。」
シグムントの推測を聞いて同じ部隊長を務めている者と共に感心していた。
「クク……さすがは俺の娘。どうやら明日はたっぷりと愉しませてやれそうだ。」
そしてシグムントは口元に笑みを浮かべた後、不敵な笑みを浮かべてオルキスタワーを見つめていた。
「かくして運命の塔は顕れ、数多の因縁を巻き込みながら螺旋を描いてゆく―――フフ、ブルブランがいかにも好きそうな場面だな。まあこれだけのイベント、彼なら勝手に見に来てそうだけど。」
一方その頃片腕の少年は端末の画面にオルキスタワーを映しながら端末を操作していた。
「おっと、来た来た。」
そして少年が呟くと端末の画面に何かの図面が出てきた。
「ウフフ……あとは”彼ら”に渡すだけか。それじゃあ、せっかくだからお愉しみの準備もしとこうかな♪」
それを見た少年は嬉しそう表情で言ったが
「ウフフ、盗み聞きしていないで出てきておくれよ。久しぶりの再会だろう?」
ある気配に気付いて後ろへと振り向いた。
「相変わらず喰えない奴だ。」
すると扉が開かれ、レーヴェが部屋に入ってきた。
「やあ、”剣帝”、久しぶりだね。”蒼の深淵”殿が寂しがっていたよ?近くにいるのに、全然会いに来てくれないって♪」
「―――既に俺は”結社”を抜けた身。”敵”と馴れ合うつもりはない。」
からかいの表情の少年に話しかけられたレーヴェは静かな表情で答えた。
「久しぶりに会ったのにつれないな~。ちなみに前々から聞きたかったんだけどさ。”姫君の中の姫君”のどこに惚れたわけ?君に限って容姿や性格で惚れるとはとても思えないし。あ、そう言えば彼女、いつの間にか君の元想い人の名前に変えていたよね?もしかしてそれが関係あるのかい?」
「―――それ以上耳触りな戯言をほざくつもりなら、この場で斬るぞ。」
少年に興味ありげな表情で見つめられたレーヴェは目を細めて魔剣を鞘から抜いて構え
「アハハ、怒らせちゃったかな?まあいいや。お詫びに良い事を教えてあげるよ。」
レーヴェの様子を見た少年は苦笑した後ある事を教えようとしたが
「――――二大国のテロリスト達が”通商会議”に仕掛けてくる情報なら既に掴んでいるぞ。」
「あれ、もう知っていたんだ。―――じゃあ、もう一つだけ良い事を教えてあげるよ。次の”計画”に”第七柱”や彼女の部隊も参加するよ?」
レーヴェの答えを聞いて目を丸くした後すぐに気を取り直して口元に笑みを浮かべて答えた。
「!!”鋼の聖女”と”鉄機隊”か……」
「ウフフ、もしかしたらどちらかと会うかもしれないね。特に”神速”が君や君が受け持っているクラスメイトの一人に激しい対抗心を抱いているし。」
「―――”鉄機隊”の”神速”がだと?―――アルゼイドか。”鉄機隊”と”鉄騎隊”……やはり”鋼の聖女”は……」
「ウフフ、その事については女神のみぞ知る、だね。―――それじゃあ、またね♪」
そして少年は炎に包まれてその場から消えた。
「……―――”幻焔計画”。”福音計画”の時よりクセのある連中が集まりそうだな。」
少年が消えた後レーヴェは目を細めて自分が知る強敵たちの姿を思い浮かべた後、部屋から出て行った。
「す、すごいわ……!」
「あのビル、IBCのテコ入れでやっと完成したんだっけ!?」
「まさかあんな綺麗なビルが建てられていたなんて……!」
「やっぱディーター市長はやる事がデカすぎるぜ!」
百貨店”タイムズ”の屋上でオルキスタワーを見つめていた市民達は興奮し
「す、すっげ――――ッ!なあなあアンリ!探検に行ってみようぜ、探検!」
「ま、また怒られるってば~!まあ……気持ちはわからなくもないけど。」
「……ス、スゴイの……」
「た、確かに凄いビルだな……カルバードじゃ考えられないぞ!うーん、ウチがこの街にこだわるのもわかる気がする……」
子供達がそれぞれはしゃいでいる中、東方風の服を身に纏う子供は驚いた後考え込んでいた。
「ふふっ……みんな、すごく盛り上がっているね。あんなにおっきなビルを見たら、誰だってそうなるよ。……ね、キーアちゃん?」
その時黒髪の眼鏡をかけた少女が碧き髪を持つ少女に話しかけたが
「……………………」
少女は何も答えず呆けた表情でオルキスタワーを見つめていた。
「キーアちゃん……?どうしたの?」
「あっ――――ゴメンね、シズク。えっとね、すっごく大きいよね!?色も青と白でキレーでスラッとしててカッコよくて!」
はしゃいでいる様子の友人を少女は微笑ましそうに見つめたが
「……でも……」
「?どうしたの?」
(なんでだろ……はじめて見るはずなのに……キーア、あのビル……どこかで見た事がある気がする。)
「キーアちゃん……?」
不安そうな表情で考え込んでいる少女を心配そうな表情で見つめていた。
「あれがオルキスタワー……」
「凄く高いビルですね……」
その時屋上にプリネとツーヤが現れてオルキスタワーを興味ありげな表情で見つめ
「あら、あの娘達は確か……」
「”特務支援課”が預かっている少女―――キーアちゃんで、隣の黒髪の娘は”風の剣聖”の娘のシズクちゃんでしたね。」
碧き髪の少女―――キーアに気付いたプリネは目を丸くし、キーアの傍にいる黒髪の眼鏡をかけた少女―――シズク・マクレインにも気付いたツーヤは静かな表情で答えた。
「ふえ……?あっ!プリネとツーヤだー。」
その時プリネ達に気付いたキーアが無邪気な笑顔を浮かべてシズクと共にプリネ達に近づいてきた。
「フフ、久しぶりだね、キーアちゃん、シズクちゃん。」
「は、はい。でも、どうしてお二人がクロスベルに……?」
ツーヤに微笑まれたシズクは緊張した様子で答えた後ある事に気付いて首を傾げ
「フフ、実は――――」
プリネは微笑みながらツーヤと共に二人に事情を説明し始めた。
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