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英雄伝説~焔の軌跡~ リメイク

作者:sorano
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外伝~オーバルギア開発計画~前篇

―――リベル=アーク崩壊より2ヶ月後――――







~ツァイス市内~



「あれ………?えっと……何の音?」

中央工房に向かっていたティータは突然聞こえて来た音に首を傾げた時、ティータの目の前にそれぞれ男性と女性が乗った何かの機械が降りて来た!

「ええ~~~っ………!?え、え、えっと………?」

「「しゅごー……」」

突然の出来事にティータが戸惑っていると機械に乗っていた怪しいゴーグルを付け、整備服を着た男性と女性がゆっくりと近づいて来た!

「え、えとえと……あ、あの。……ど、どなたですか!?」

「しゅごおぉ………」

「あ、あう……」

怪しい人物に近づかれたティータが本能的に危険と判断して後ずさったその時

「………ははは。ティータ、久しぶりだね。」

男性は苦笑しながら口を開いた。



「へ………?」

「……あら、この子ったら。私達の声、忘れちゃった?」

そしてティータが呆けていると女性は男性と共にゴーグルを取って、素顔を露わにした。

「お、お……お父さん!お母さん!!」

「うふふ……久しぶりね、ティータ。」

「ごめんよ。少し驚かそうと思って。」

女性――ティータの母、エリカ・ラッセルと男性――ティータの父、ダン・ラッセルはそれぞれ懐かしそうな表情でティータを見つめた。



「も、もう!びっくりしちゃったよ!いきなり空を飛んで来るんだもん。そ、それにそんなゴーグル付けてるし………2人とも、帰ってくるならちゃんと連絡してよね!」

「………………………」

「………お母さん?えっと、どうかしたの?」

何も答えずジッと見つめるエリカにティータは戸惑ったその時

「ティータ………ああ、かわいい!やっぱりこの子はかわいい!!ぎゅううううううぅっ………!!」

エリカは突然ティータに抱きつき、嬉しそうな表情でティータを強く抱き締めた。

「お、お母さん………ちょっと苦しい………」

「ダン、やっぱり産んでよかった。私はいま幸せよ……!」

「そうみたいだね。じゃあ僕も、挨拶していいかな?」

「そ、そうね。確かにあなたにも権利があるわ。」

ダンにティータを可愛がる順番を譲ったエリカがティータから離れるとダンはティータに近づいた。



「ティータ。………ただいま、随分大きくなったね。」

「……うん。お帰りなさい、お父さん、お母さん。」

「はあ……やっぱりかわいいわ~!!どーれもう一度………♪」

「も、もうお母さんってば………」

「エリカさん、抱き締めるのは着替えてからの方がいいよ。その整備服には色々なセンサーが仕込んであるからね。」

再びティータを抱きしめようとするエリカの行動を見たティータは呆れ、ダンは諌めた。

「あ、ああ……そうだったわね。じゃ…………先に済ませてしまいましょうか。さあ……例の赤毛男はどこかしら?」

「えっと………??赤毛って、アガットさんのこと?」

エリカの口から出た予想外の人物を聞いたティータは首を傾げて訊ねた。



「そう、ソレよソレ。リベールに帰ってきたからには、一度アイサツしておかなきゃね~。……索敵モード・オン………対象、赤毛98%。………」

「アガットさんならまだボースだと思うけど………えっと、お母さん?いきなりどうしたの??」

目を妖しく光らせたエリカが周囲を警戒しているとティータがエリカが探している人物はいない事を伝え、エリカの行動に首を傾げていた。

「チッ………ツァイスにはいないのね。まあいたならいたで大問題だけど………」

「まあまあエリカさん。来月にでも2人で出向くことにしよう。僕も一度、会っておきたいからね。」

舌打ちをしてジト目になってまだ見ぬアガットに対する恨み言を呟いているエリカをダンは苦笑しながら諫めていた。

「……そーねぇ……クーデター騒動に”輝く環”事件。リベールでも色々あったのよね。その間、ティータが随分お世話になったみたいだし……ククク………きっちりお礼させてもらわないと。」

「えへへ、じゃあ今度紹介するね。アガットさんの家って、小さいけど暖かくてすごくいいところなんだよ。」

再び目を妖しく光らせ、不気味な笑いをしているエリカに気づいていないティータは無邪気な笑顔を浮かべて答えた。



「え…………」

「…………」

ティータが家族以外の男性の家を訊ねた事がある事を知ったダンとエリカは驚いて呆けた後

「ぎりいッ………!!」

エリカは怒りの表情で強く歯ぎしりをした!

「ははは、まあまあ落ち着いて落ち着いて。ティータも、無闇に刺激しないようにね。」

「へ………???」

ダンに忠告されたティータは何の事かわからず、不思議そうな表情をした。

「アガットさん……アガットさん………!?……お、おのれ……!私のティータによくも!!」

一方エリカは怒りの表情で呟いた後、どこかに向かい、入れ替わるようにラッセル博士が2人に近づいて来た。

「?な、なんじゃ、これは。」

「あ、お祖父ちゃん。あのね………」

状況が理解できていないラッセル博士にティータが説明しようとしたその時、ダンが進み出て頭を軽く下げた。



「お義父さん……ご無沙汰しております。帰国の連絡もせずに申し訳ありませんでした。」

「いやいやダン君、そんなことはどーでもええんじゃ。それよりもなんじゃ、この装置は……?見た所ブースターを装備した乗り(ビーグル)のようじゃが………」

ダンに謝罪されたラッセル博士は笑って流した後見覚えのない機械の事を訊ねたその時

「私が開発した有人着陸装置(ランディングユニット)よ。導力技術の無い辺境に行くとね、飛行船の発着場はおろか、空き地すらないことも多いのよ。ウチの船で出かけても、着陸できないでしょ?……だからこれを使うワケ。ふふん、お久しぶりね。アルバート・ラッセル。まだ生きてたみたいで何よりだわ。……生憎、今回の勝負は私の勝ちみたいね。」

エリカが近づいて来て機械の説明をし、不敵な笑みを浮かべてラッセル博士を見つめた。

「フン、またケチ臭いものを作りおって。エリカ、その程度の発明でこのワシに勝てるとでも思っとるのか!?そのユニット、見た所有効稼働はせいぜい5分じゃ。それではハナシにならん。実用化できんのー。」

「あーら残念。わたくし、今日はコレでカルバードの国境付近から飛んできたのよ?」

「な、なぬ!?」

勝ち誇った笑みを浮かべてエリカが発明した機械の欠点を指摘したラッセル博士だったが、その欠点を否定する答えがエリカの口から出ると驚いて声を上げた。



「ククク……確かにこのユニットの飛行能力は限られているわ。……だけど。だけどよ、アルバート・ラッセル。船から導力式カタパルトで射出すれば約120セルジュを飛行可能なの。今回は導力回路を改良して382,2秒の稼働を記録したわ!」

「!120セルジュ、382,2秒……じゃと!?」

「おーっほっほっほ!さすがに驚いたようね。老人には少し、刺激が強すぎたかしら~?」

自分の説明を聞いて驚いているラッセル博士を見たエリカは笑った後、勝ち誇った笑みを浮かべた。

「むきー!!何を言うか!!ワシが開発したカペルに較べればこんなもの、オモチャに過ぎんわ。わっはっは~、こんなものワシなら昼寝しながらでも作れそうじゃの~。」

「な、なにをっ……!このクソジジイが……!」

ラッセル博士の指摘を聞いたエリカは怒りの表情を浮かべた後

「ふぬっ……!」

「ぬううっ……!

ラッセル博士とつかみあった!



「ああ、もう……また始まっちゃった……お母さん、お祖父ちゃんってば……!」

二人の行動を見たティータは呆れた後、2人に近づいて諌めようとした。一方エリカと博士はティータの言葉に耳を貸さず、つかみあった状態で会話を始めた。

「資料を読んだわよ、アルバート・ラッセル……ティータをあんなに危険な目にあわせておいてよくもヌケヌケと……おまけに悪い虫まで寄りつけて……!!」

「な、なんじゃい……今の今まで、大陸中をほっつき歩いとったのはそっちじゃろ……お前に非難されるような筋合いは無いのう……!」

「お、お父さん。何とかしてよ~!」

二人の喧嘩を見たティータはダンに助けを求めた。

「ははは、大丈夫だよ。2人とも、久しぶりに会って照れてるだけなんだから。」

「で、でもこんなところで喧嘩しちゃったら、通行の邪魔にもなっちゃうし……」

「うーん、そうだね。ランディングユニットも格納しなきゃいけないし……この2人も家の方に連れて帰らないとね。ティータ、手伝ってくれる?」

「うん、了解っ!」

そしてティータとダンは喧嘩をしているエリカとラッセル博士を引き離した後、用事を済ませ、家族そろって家に戻った。



~ラッセル家~



「ふう、やっぱり我が家はいいわね~。」

玄関をくぐった白衣姿のエリカは嬉しそうな表情で呟いた後、椅子に座った。

「ダン、コーヒーお願い。ミルクたっぷりで。」

「はいはい。砂糖は3つだね。」

「あ、わたしも手伝うね。」

エリカの要求に頷いたダンはティータと共にコーヒーを作り始めた。

「相変わらず邪道じゃのう。コーヒーはブラックに限るわい。」

「フン、これだから頭の固い老人は……」

「邪道を邪道と呼んで何が悪いんじゃ?おまけに、まだ砂糖を3つも入れとるのか。はぁ~、嘆かわしいのう……」

「ムカッ………」

呆れて溜息を吐いているラッセル博士をエリカが睨むと、ダンとティータがコーヒーを持ってきた。

「ほらほら、エリカさん。ご注文のものだよ。」

「はい、熱いうちに飲んでね。」

「チッ、一時休戦ね……」

「どーれ、頂くとするかのう……」

そしてティータ達は家族揃って、一息ついた。



「ふう………さてと。アルバート・ラッセル。……お土産は?」

「ミヤゲ?どーしてワシが土産を用意せにゃならんのじゃ?外国旅行を満喫しとったのはお主らのほうじゃろ。」

外国に行っていたエリカに土産を要求されたラッセル博士は不思議そうな表情で指摘した。

「むっ………ユリア様と一緒にアルセイユに乗ったくせに……ユリア様の写真とかハンカチとか制服のボタンとからもらってきてよ!」

「せ、制服のボタン……!?」

「はは、エリカさんは士官学校時代からのユリアさんファンだからね。」

エリカが欲しがっている物を知って信じられない表情をしているティータにダンは苦笑しながら説明した。

「エリカよ、くだらんこと言っとるヒマがあったら論文の一つにでも目を通したらどうじゃ。まったく、これじゃから……」

「……いま、ユリア様達を侮辱した?」

呆れた表情で言ったラッセル博士の言葉を聞いたエリカは静かな怒りを見せて、席を立ってラッセル博士を睨んだ。



「さー、なんのことじゃ?ユリア大尉とはアルセイユ搭乗中によくお茶した仲じゃからのう。うむ、彼女はなかなか見どころのある………」

自分を睨むエリカにラッセル博士が勝ち誇った笑みで話し続けたその時、エリカはラッセル博士の胸ぐらを掴んだ。

「このクソジジイが……その減らず口を塞いでくれるわっ……!

「どーじゃ、羨ましいか?羨ましいかの~?」

「もう、2人とも!すぐに喧嘩するんだから………………………………」

再び喧嘩を始めた二人を見たティータは席を立ったが、じっと二人を見つめた。

「………ティータ?どうかした?」

ティータの様子に気付いたダンは席を立って、不思議そうな表情でティータに近づいて尋ねた。



「う、ううん……こうやってお母さんとお祖父ちゃんが取っ組み合いしてるのを見るのも……え、えへへ……久しぶりだなぁと思って……」

「うん、そうだね………」

ティータの言葉に頷いたダンはティータと共に微笑ましい表情で喧嘩をしている2人を見つめた。そして少しの間見つめていたダンはティータに視線を向けてある提案をした。

「ティータ、後で一緒にお買い物に行こうか。今日の夕飯は僕が作るよ。」

「えっ、本当……?……お父さんの作るご飯も久しぶりだね。」

「しばらくはお仕事も入ってないからね……今日からしばらく僕がご飯を作ります。」

「え、えっと………じゃ、じゃあ私も手伝うね……」

「あはは………よろしくね、ティータ。」

その日の夕食は、とびっきりのご馳走だった。ティータは久しぶりに家族に囲まれ、幸せな時間を過ごした。そして夕食後……



~夜~



「ティータ、もういいよ。あとはやっておくから、今日はもう休みなさい。」

「ううん、このくらいいつもやってるから。お父さんこそ、先に休んでいいよ。本当はお仕事、大急ぎで片づけてきたんでしょ?」

「え、ええっと……はは、ティータも鋭い事を言うようになったね。わたしももうすぐ13だよ。子供じゃないんだからぁ。」

「こ、これは……!」

二人が夕食後の後片付けをしていると工房がある部屋からラッセル博士の驚いている様子の声が聞こえてきた。



「エリカよ、本気でこれを作るつもりなのか?」

「……そのために帰って来たのよ。こんなものを制作できるのはリベールの中央工房(ZCF)しかない。少なくとも私はそう信じているわ。」

驚いた様子で問いかけて来たラッセル博士の言葉にエリカは真剣な表情で答えた。

「む、むう……しかしじゃな……」

「……お母さん?お祖父ちゃん?」

エリカの意志を知ったラッセル博士が唸り声を上げたその時ティータが工房に入って来た。



「あらティータ、まだ起きてたの?もう12時回ってるんだから、早く寝なさい。」

「えっと、それって設計図……?なにない、わたしにも見せて。」

エリカの言葉にティータは答えず、エリカ達に近づこうとしたが、エリカが道を阻んだ。

「ほら、お風呂上りなんだし風邪引いちゃうじゃない。」

「ええ~わたしにも見せて見せて!」

エリカの指摘を聞いたティータは頬を膨らませた後、ラッセル博士の傍にある設計図らしきものを何とか見ようとしたがエリカに阻まれた。

「すごく複雑そうだけど……その右隣のやつって、オーバルエンジンだよね。かなりコンパクトなタイプ……あ、新しい飛行船かな?それとも………お母さん、わたしにも見せてよ!」

「ああもう、この子ったら。相変わらず、機械のことになると目の色変わっちゃうのね……」

「……お母さん!?誤魔化さないで!!」

苦笑しているエリカを見たティータは頬を膨らませて声を上げた時、ダンも工房に入って来た。



「こちらは片付きました。そろそろ始めましょうか。」

「あらダン、丁度いいところに。この子、頼むわね。」

「ああ、そうだね。もう遅いし……」

「ええ~っ!?」

ダンの言葉を聞いたティータは不満そうな表情で声を上げた。そしてダンはティータに近づいた。

「さっ、ティータ。」

「ちょ、ちょっとだけでいいから見せて!あのコンバーターのトルクが小さいのが気になる……」

「(うーん、ちょっと見ないうちにパワーアップしてるな……)ほらほらティータ、もう寝ようね。」

「で、でもぉ~……」

ダンの言葉を聞いたティータは渋々寝室に行こうとしたが、3人の会話が気になり近づいたがダンに気付かれ、翌日には絶対教えてくれることを約束し、ダンと共に寝室に向かった。



「いい、お父さん。……絶対だよ!わたしが知らない内に作っちゃダメだからね!」

「うん、わかってるよ。女神様に誓って約束は守ります。おやすみ、ティータ。」

「う、うん……おやすみ……なさい……すー、すー………」

(ティータは時々、エリカさんと同じ事を言うね。)

ようやく眠りについたティータを優しい笑顔で見守っていたダンがリビングに降りると、リビングではラッセル博士とエリカが何かの会話をしていた。

「………というわけじゃ。」

「”身喰らう蛇”か……やっぱり想像以上の技術力を持っているみたいね。」

「……まあの。正直、連中の技術力はワシらのそれを遥かに超えておる。人形兵器(オーバーマペット)、”ゴスペル”、そして”グロリアス”………まあワシも、”身喰らう蛇”の技術力には心当たりはないわけでもないが……で、なんじゃお主ら。藪から棒に……連中の資料は一通り送ったはずじゃが?」

「実は……僕達も知っているんですよ、”身喰らう蛇”を………」

ラッセル博士の疑問に、二人が会話している間に椅子に座ったダンは真剣な表情で驚くべき事実を口にした。



「な、なんじゃと!?」

「はっきりと遭遇したわけじゃありません。しかし彼らは猟兵団や特定の資産家などを通し、確実に勢力を伸ばしている……ここ数年、大陸辺境を回ってそれをひしひしと感じます。」

「……だから、帰って来たのよ。まさかリベールに来るとは思わなかったから、今回は後手に回っちゃったけど……私達は一刻も早く、これを完成させる必要があるわ。」

そして翌日、目覚めたティータはダンの朝食を食べた後、中央工房に向かい、途中で出会ったマードックに2人の居場所を聞き、エリカに昨日から気になっていた事を聞く為にエリカがいる演算室に向かった。 
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