支え合うもの
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第二章
「間違いないな」
「どっちもどっちですか」
「あの奥さんも愛人いるな」
涼平は依頼主についても言った。
「旦那さんも気付いていないだろうけれどな」
「お互いに」
「やれやれだよ、奥さんが俺に仕事を依頼してきたのは」
涼平はここでシニカルに笑って言った。
「離婚して慰謝料を多くふんだくりたい」
「まさにそれですね」
「自分のことは隠して相手の秘密を掴んでな」
「それをネタにですね」
「慰謝料を少しでも多くふんだくる為だよ」
「生臭い話ですね」
「それが人間だけれどな」
このことは笑って言った涼平だった。
「欲ってやつがあるからな」
「その欲が人間を生臭くさせるんですね」
「そして俺達もこの仕事が出来てるんだよ」
弁護士稼業がというのだ。
「この通りな」
「人間が生臭いからですね」
「成り立つ商売もあるんだ、じゃあこれからは」
「はい、ご主人の身元調査ですね」
「本来は探偵さんの仕事だけれどな」
「俺がそれですから」
実は智久は探偵でもある、つまりこの事務所は弁護士と探偵が一緒にいるのだ。
「ちょっと調べてきます」
「頼むな、じゃあ俺はな」
「依頼主の奥さんにですね」
「色々言うな、それじゃあこの仕事もな」
「無事に成功させましょう」
「二人でな」
こう話してだった、智久は早速だった。
依頼主の夫の身元調査をはじめた、それで彼がよく行くバーに行くとだ。
馴染みのホステスがいて彼女とホテルに入る場面を撮影出来た。そして。
涼平は依頼主の妻、大島保奈美にこう言った。女優が出来る位の妙齢の美女だが目の光はよくない感じだ。
その彼女にだ、涼平は事務所で二人で話をしている時に言った。
「奥さん、くれぐれもです」
「くれぐれも?」
「自分のことはお話されないで下さいね」
こう念を押すのだった。
「裁判の間は」
「私のといいますと」
「奥さんから出したもらった資料ですが」
離婚裁判に必要なものをだ。
「何かおかしいと思いまして」
「おかしい」
「お金の出方が」
涼平は笑みを消して自分の前に座る保奈美に言った。
「妙に多いといいますか」
「貴方まさか」
「こう言っては何ですが」
涼平は言葉を選びながら話した。
「あれですよね、奥さん」
「調べられましたか?」
「まさか、依頼主のプライベートまでは調べません」
涼平もこのことは言う。
「仕事とは関係ないですから」
「そうですか」
「ですが」
それでもとだ、ここでこう言うのだった。
「察しまして」
「私が出した資料を調べるうちに」
「全て私に任せて下さい」
裁判に関することはというのだ。
「そうすれば上手くいきます」
「間違いなくですね」
「はい」
こう保奈美に言うのだった、真剣な顔で。
「確実に」
「では」
保奈美も頷いた、こうしてだった。
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