英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅰ篇)
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外伝~雷天の覇者との契約~
~吸雷の暗礁領域~
「な、何なの今の攻撃!?」
「あまりにも早すぎて何も見えませんでした……」
「も、もしかしてあれがサラ教官の”本気”……?」
サラ教官の圧倒的な攻撃を見たアリサは驚き、セレーネとエリオットは呆け
「ハハ……さすがサラ教官だな。」
「ええ。さすがは帝国の中でも指折りの実力持ちの元遊撃士ですね。」
「これで普段の生活態度がまともなら、教官として完璧なんだがな……」
リィンは苦笑し、ツーヤは微笑み、マキアスは呆れた表情で溜息を吐き
「わあ~、凄い凄い!」
「ええ……まさに”達人”の技ですね。」
はしゃいでいるミルモの言葉にメサイアは頷き
「へえ?やるじゃない。見直したわよ。」
「……どうやら今の一撃を受けて正気に戻ったようですね。」
ベルフェゴールが感心している中、常に殺気を放ち続けていたバルディエルの気配が穏やかさを戻した事に気付いたリザイラは静かな笑みを浮かべてバルディエルを見つめた。
「飢えが…………渇きが………消えた……?長きに渡る苦悶が、このような形で取り払われるとはな……―――感謝するぞ、人の子達よ。」
正気に戻ったバルディエルは自分の状態に驚いた後リィン達を見回して感謝の言葉を述べた。
「え、えっと……」
「もう戦うつもりはないのよね……?」
バルディエルの態度にエリオットとアリサは戸惑い
「ああ、どうやらそのようだ。」
リィンの言葉を合図にツーヤとサラ教官を除いたⅦ組の面々は疲弊した様子で地面に跪いた!
「よ、よかった~……」
「私達、よくあんな相手に勝てたわよね……」
「つ、疲れました……」
「本気で死ぬかと思ったぞ……」
地面に跪いたエリオット達はそれぞれ疲れた表情で安堵の溜息を吐き
「アリサ、大丈夫~?」
アリサの様子を見たミルモは心配そうな表情でアリサに近づき
「ふふっ、久しぶりの歯ごたえのある奴だったわね♪」
「ハア……ハア……アハハ……”はぐれ魔神”と戦って、あまり疲弊していないなんて、さすがは”紫電のバレスタイン”ですね……」
未だ余裕の笑みを浮かべているサラ教官を見たツーヤは息を切らせながら苦笑していた。
「あ、あの……貴方は天使でありながら、どうしてこのような暴虐をつくしたのですか?」
「ふふふ、とても”正義”の象徴である天使のやる事とは思えませんね。」
「そうね。しかも”主天使”って言ったら、天使階級で言うと”第四位”だから相当高位の天使じゃない。」
不安そうな表情で問いかけたメサイアの言葉にリザイラとベルフェゴールはそれぞれ頷いた。
「我にとっての正義など、死滅して久しい。我は主を持たず、現神と戦い続けて来た。貴様らの分類にあわせるならば、”はぐれ魔神”とでも呼ぶべき存在だ。」
「その割には自我すら保ててなかったようだけど?」
バルディエルの説明を聞いてある事が気になったベルフェゴールは問いかけた。
「現神に対抗する力を手に入れるため……我は先史文明期の遺物を、体内に取り込んだのだ。その代償が、あの様だがな。力を維持するために、我が肉体は、光と雷を求め続けた。やがて我に付き従う者たちすら食らいつくし、何人をも寄せ付けぬ、異形と化してしまった。せめてもの抵抗として、この領域を生み出して、自らを閉じ込める事しかできなかったのが、悔やまれる。」
「ならもうこの空間を維持する必要はないでしょ?さっさとあたし達を解放しなさい。」
重々しい様子を纏ったバルディエルの説明を聞いたサラ教官は真剣な表情で指示した。
「そうだな。改めて礼を言おう。自我を失っていたとはいえ、我は貴様らに敗れた。共に戦う仲間は既に亡く、戦うべき敵は、既に覇権を手にしている。もはや我一人で覆せる状況ではないのだろう。今更、現神に下るつもりにもならぬ。―――人間、貴様の名は。先程の紫電を纏いし一撃……見事だった。」
「―――サラ・バレスタイン。かつては”紫電のバレスタイン”とも呼ばれていたわ。」
バルディエルに問いかけられたサラ教官は静かな表情で答えた。
「フッ……”紫電”か。―――いいだろう。我と同じ”雷”を名乗りし者よ、我を解放した礼にこれより我は貴様の軍門に下ろう。」
「なっ!?」
「ハアッ!?」
「ええっ!?ま、まさかサラ教官の使い魔になるんですか!?」
そして不敵な笑みを浮かべたバルディエルの言葉にリィンやサラ教官、ツーヤが声を上げて驚いたその時
「我は、光さえも喰らう”雷天の覇者”バルディエル。”紫電”よ、我が雷光の力を存分に振るうがいい。」
バルディエルは光の球体となってサラ教官の身体の中に入った!
「ね、ねえ今の光景って……」
「お兄様達に仕えている使い魔の方々がそれぞれの主に戻る光景と同じですね……」
その様子を見ていたエリオットとセレーネは信じられない表情をし
「へえ?よかったじゃない、はぐれ魔神を従えるなんて♪」
「ふふふ、さすがはご主人様の教官と言った所ですか。」
「おめでとうございます、サラ様。」
「えっと……もう大丈夫なようだし、私は戻るね!」
ベルフェゴール達はそれぞれの主の身体の中に戻り
「サ、サラ教官がさっき戦った天使を従えるって……」
「ただでさえ反則的な強さなのに、あんな化物までサラ教官に手を貸したら、誰も敵わないんじゃないか!?」
「た、確かに……」
アリサは表情を引き攣らせ、マキアスは疲れた表情で指摘し、マキアスの言葉にリィンは冷や汗をかきながら頷き
「え、えっと……よかったですね、サラ教官。心強い仲間を手に入れることができて。」
ツーヤは苦笑しながら祝福の言葉を贈った。
「全然良くないわよ!男があたしに無許可であたしの身体に住み着くなんて!……………――――まあ、このあたしに従うのなら、こき使いまくらないと駄目ねぇ?”雷天の覇者”か何だか知らないけど、このあたしに従うなら、色々と覚悟してもらわないとねぇ?」
ツーヤの言葉を怒りの表情で声を上げて否定したサラ教官はすぐに気を取り直して不敵な笑みを浮かべ、”はぐれ魔神”をも使いっぱしりにするつもりでいるサラ教官のとんでもない発言を聞いたリィン達は冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。その後バルディエルがいた場所にあった転移魔法陣によってリィン達は元の場所へと戻り、街に帰還して依頼人に頼まれていた素材を渡した後課題も全て終えたので、明日に備えて休む為に城へと戻って行った。
こうして……ユーシス、エマ、サラ教官の3人は異世界の訪問にてそれぞれ心強き仲間を手に入れた……!
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