英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅰ篇)
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外伝~”盗獅子”との出会い~
~ブレアード迷宮~
「あ……!あの赤い宝石は……!」
「依頼人が迷宮に落としてしまった宝石っぽいね。」
物品を見つけたエマは驚き、フィーは呟き
「フム、なら速やかに回収するか―――」
ラウラが物品に近づこうとしたその時先程まであった物品が消えると同時に獣族の娘が物品が消えた場所にいて、物品を物色していた。
「くんくんっ……ん、中々価値のありそうな宝石ね♪って、あら?ワタシを見ているようだけど何の用かしら?この宝石はあげないわよ?」
嬉しそうな表情で宝石を懐に入れた娘は驚きや信じられない表情で自分を見つめているプリネ達に気付いた。
「―――申し訳ございませんがその宝石は元の持ち主がいますので返してください。」
(ム?奴は………………―――何故こんな所に奴がいる?)
プリネは静かな表情で申し出、娘をよく見たアムドシアスは眉を顰め
「ふふふっ、”怪盗”は一度手に入れた宝物をそう簡単に手放さないわよ♪」
娘はからかいの表情で答えた。
「”怪盗”だと……?」
「まさか”怪盗紳士”?」
(……さすがの奴でも異性に変装する事はできないと思うが……)
娘の言葉を聞いたラウラは眉を顰め、フィーはジト目で尋ね、レーヴェは真剣な表情で娘を見つめた。
「ふふふっ、ワタシはヴァレフォル。神出鬼没、大胆不敵、愛と正義の怪盗。畏怖と敬意を込めて、”盗獅子”と呼ぶ人もいるわね。」
そして娘―――ヴァレフォルは口元に笑みを浮かべて自己紹介をした。
「あ、愛と正義の怪盗、ですか……?」
「滅茶苦茶胡散臭い。」
「フン、盗賊の類か。なら遠慮や交渉の必要はなさそうだな。」
ヴァレフォルが名乗るとエマは戸惑い、フィーは呆れ、ユーシスは鼻を鳴らして剣を構え、仲間達も続くように武器を構えた。
「ちちちっ、ワタシを、そこら辺の泥棒と一緒にしないで。泥棒とは、私欲を満たすために盗みを働く者のことよ。そして怪盗とは、己の信念のために、敢えて盗みを働く高潔な意志を持つ者のことよ。」
ユーシスの言葉を聞いたヴァレフォルは胸を張って自慢げに答えた。
「心根が悪い娘には見えないが……」
「戯言を……」
「フン、盗みを正当化するただの言い訳だ。」
ヴァレフォルの言葉を聞いたガイウスは戸惑い、ラウラとユーシスは真剣な表情でヴァレフォルを睨み
「……やっぱ、”怪盗紳士”とどことなく似ているね。」
「えっと……その”怪盗紳士”というのはバリアハートで出会ったブルブラン男爵の事ですよね?確かに言われてみればどことなく似ているような…………)
(……まあ奴の信念は”美”を盗む事だから、目の前の奴の方がまだマシと言った所か。)
フィーはジト目になり、エマは戸惑い、レーヴェは呆れた表情で見つめていた。
「んー、その様子だとまだ怪盗の事を良くわかっていないようね?いい?怪盗は人を困らせる泥棒と違って、盗みに入る前に挑戦状を出すし、盗んだ後には犯行の証を残すのが流儀よ。挑戦状を出す以上、それは盗む者と盗まれる者との間で行われる正々堂々とした真剣勝負。その戦利品を頂くのは勝者として当然の権利でしょ。それに、怪盗は人を困らせるような盗みはしないわ。倉庫や迷宮の奥に眠っているお金や道具をちょっとだけ借りて、貧しい人に配るのがお仕事なんだから。正体を隠し、人知れず悪と戦う正義の怪盗、それがワタシ、”盗獅子”ヴァレフォルよ。」
ヴァレフォルの説明を聞いたほとんどの者達は冷や汗をかいて呆れ
「なるほど……それなら問題ないか。」
「阿呆。問題がありまくりだ。」
「まず盗みをする時点で既に犯罪だ。戦利品等自分の盗みを正当化する唯の言い訳だ。」
静かな表情で納得したガイウスにユーシスは呆れた表情で指摘し、ラウラは真剣な表情でヴァレフォルを見つめた。
「挑戦状を出す事や犯行の証を残す事と言い、まさに”怪盗紳士”だね。」
「アハハ……」
「やれやれ……奴のような存在が異世界でもいるとはな……」
ジト目で呟いたフィーの言葉を聞いたエマは苦笑し、レーヴェは呆れた表情で溜息を吐いた。
「―――お話はわかりました。ヴァレフォルさん、貴女の信念を曲げる形で申し訳ないのですがどうか先程貴女が拾った宝石を私達に渡してくれませんか?その宝石がないと困る人がいるんです。勿論無料で譲ってくれとは言いません。ヴァレフォルさんが望む金額を用意できるかどうかわかりませんが、出来る限りのお金を用意させてもらいます。」
「ちちちっ、わかっていないわね~。怪盗は戦利品をそう簡単に譲らないわ。でもそうね……貴女達は可愛いし、特別にワタシに勝てたら譲ってあげてもいいわよ♪」
プリネの話を聞いたヴァレフォルは答えた後全身に膨大な闘気や魔力を纏って短剣を構えた!
「何……っ!?」
「”風”が彼女に集まっている…………!?」
「っ!?油断するな……!目の前の者は見た目とは裏腹にかなりの実力を秘めている……!」
「この圧倒的な感じ……ベルフェゴールと対峙した時に似ている……!」
ヴァレフォルの様子を見たユーシスとガイウスは驚き、ラウラは息を呑んだ後警告し、フィーはヴァレフォルを最大限に警戒し
「”ヴァレフォル”…………?――――!!まさか……ソロモン72柱の一柱――――”地獄公”のヴァレフォル!?」
「ソロモン72柱……という事は”魔神”か。今の戦力だと厳しいかもしれんな……!」
ある事に気付いたプリネは信じられない表情でヴァレフォルを見つめ、レーヴェは真剣な表情でヴァレフォルを見つめた。
「ええっ!?ま、”魔神”ですか!?じゃ、じゃあ彼女はアムドシアスさんやベルフェゴールさんと同じ”魔王”……!」
プリネとレーヴェの話を聞いたエマは驚き
「フン、早速”聖獣”としてのお前の力を見せつける時が来たようだな!―――力を貸せ、アルバレア号!!」
「――お願い、アムドシアス!!」
ユーシスとプリネはそれぞれ心強き使い魔達を召喚した!
「ふふっ、戦闘はあんまり好きじゃないけど可愛い娘も何人かいるしちょっとだけ遊んであげるわ♪」
「―――”Ⅶ組”B班、これより”魔神ヴァレフォル”との戦闘を開始します!相手が一人だからと言って絶対に油断しないで下さい!!」
「おおっ!!」
そしてプリネの号令を合図にB班のメンバーはソロモン72柱の一柱にして世界各地に数々の伝説を残している伝説の怪盗――――”盗獅子”ヴァレフォルとの戦闘を開始した!
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