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孤独の女王

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第二章

 ドイツ軍の者達はそうだった、だがイギリス海軍の者達はここでも言った。
「作戦は失敗か」
「沈められないか」
「やはり普通の爆弾で沈められる相手ではないか」
「戦艦だけにな」
 こう忌々しげに言うのだった。
「とにかく沈めないことにはだ」
「万が一出て来られたら厄介だ」
「沈めて楽にしておきたい」
「そう思うが」
「そう簡単には撃沈出来ない」
「忌々しいがその通りだな」
「それでは思い切ってやるか」 
 ここで将官の一人がこう言った、そしてだった。
 イギリス軍全体でティルピッツについて話されてだ、戦争の指揮を政治単位で統括する首相のチャーチルも言った。
「もうどうこうも言っていられない」
「海軍だけで、ですね」
「そうだ、そもそもこの戦争はだ」
 今イギリスが戦っているこの戦争自体がというのだ。
「海軍だけではしていない」
「陸でも空でもですね」
「全ての場所で戦っている」
 こう前にいる海軍の士官に言うのだった、己の席で葉巻を手にしつつ。
「それならだ」
「海軍だけでなくですね」
「空軍、必要とあらば陸軍もだ」
「つまりイギリスの総力を挙げてですか」
「何とかしなければいけない」
 これがチャーチルの考えだった。
「もう何年もあの戦艦を意識してだ」
「作戦にも影響を与えていますね」
「君は家の前に動かないが狼がいればどうする」
「撃ち殺します」
 軍人はチャーチルに即座に答えた。
「撃ち殺せるならば」
「そうだな、それではだ」
「ティルピッツもですか」
「総力を挙げて沈める」
「では空軍を使いますか」
「そうすべきだな、特にだ」
 ここでだ、チャーチルの目が光った。そのうえでこう言った。
「彼等の力が期待出来るな」
「その力とは」
「すぐにわかる」 
 チャーチルはここから先は言わなかった、だが。
 彼はすぐに空軍の参謀達に作戦案を要求した、そして。
 その作戦案を見てだ、まずは彼等に鋭い目を向けた。
 そのうえでだ、こう彼等に言った。
「わかった」
「ではこれで、ですね」
「いいですね」
「やってみ給え」
 空軍の参謀達に言った。
「それで沈められば何よりだ」
「はい、それでは」
「これでいきます」
 参謀達も応えた、そしてだった。
 今も軍港にいるティルピッツにだった、空から。
 爆撃機が襲い掛かって来た、港にいるドイツ海軍の将兵達はその爆撃機を見て眉を顰めさせた。
「あれはイギリス空軍の爆撃機だぞ」
「ランカスターだ」
 その翼にある四発のエンジンを観て言う。
「まさかこの基地を爆撃しにきたのか」
「ティルピッツだけじゃなく」
「基地自体を爆撃しに来たというのか」
「いや」
 ここで一人の士官が言った、既に基地内では対空迎撃用意が出来ている。
「何かおかしいぞ」
「おかしい?」
「おかしいとは」
「基地を攻撃するにはだ」
 それにしてはとだ、士官は水兵達に話した。 
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