英雄伝説~焔の軌跡~ リメイク
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第79話
エステル達が王都に向かっていると、突如何かの駆動音が聞こえてきた。
~キルシェ通り~
「あれ……これって。」
「なんだ、飛行船のエンジン音じゃねえか……ん?」
エステルの疑問に答えたフレンだったがある事に気づくと不思議そうな表情で首を傾げ、エステル達も黙り込んだがすぐに現在王国全土は導力停止現象によって飛行船が飛べない状況である事に気づいた。
「おい、まさかとは思うが……!」
「この状況で飛べる飛行船と言えば……!」
「―――”結社”の飛行船ね。」
「―――あれだ……!」
アガットやバダックが血相を変えている中、アーシアは厳しい表情で呟き、何かに気づいたヨシュアはある方向の空を見つめた。結社が保有している紅い飛行船は次々と王都に向かっていた!
「”結社”の飛行艇……ど、どうしてこんなところに!?」
「まずい……あの方向は王都だ!」
「冗談じゃねえ!とっとと追いかけるぞ!」
そしてエステル達は急いで王都に向かい始めた。
エステル達が王都付近に到着する少し前、1隻の結社の飛空艇が王都前に降り立ち、そしてそこからブルブラン、ヴァルター、ルシオラ、ユウナ達”執行者”が飛空艇から次々と飛び降りた。
「さて……それでは始めるとしようか。」
「ったく、”剣聖”がいればちったぁ楽しめたものを……。銃が撃てない兵士なんざ肩慣らしにもならねえぜ?」
「うふふ、いいじゃない。デクノボーさんたちを倒しながら歩いていくのも楽しいと思うわ。」
「では、パテル=マテルは呼ばないようにしておきなさい。皆あっという間に逃げてしまうでしょうから。」
「あら、つまらないわね。せっかくあのキレイなお城を粉々にできると思ったのに♪」
「壊れゆく美か……それもまた悪くなさそうだ。」
ブルブラン達が談笑していると、王都から王国軍が次々と駆け付けた。
「貴様らは”身喰らう蛇”!おのれ……この状況で飛行艇を使うとは……」
「フフ、お初にお目にかかる。我が名は”怪盗紳士”ブルブラン。」
「クク……”痩せ狼”ヴァルターだ。せいぜい足掻いてもらうぜ。」
「”幻惑の鈴”ルシオラ。短い間ではあるけど、どうかお見知りおきを……」
「クスクス……”殲滅天使”ユウナよ。みんなどんな声で鳴いてくれるのかしら?」
王国軍に睨まれた”執行者”達は次々と不敵な笑みを浮かべて名乗り上げた。
「な、名乗りとは悠長なことを……!総員構え!突撃ィィィッ!」
すると王国軍は士官の号令によって勇敢に”執行者”達に挑んだ。しかし―――
「ふふ………ゆっくりお眠りなさい………花は散ってこそ花………旋風よ、砕き散らしなさい!奥義、華散風魔の舞!!」
「クカカ………ちったあ、耐えろよ?……はっ!ふんっ!おらおらおらぁ~っ!アルティメットブローッ!!」
「うふふ、逃げられないんだから、はぁっ!ユ・ラナンデス!!」
「グワアアアアアッ!?」
「ギャアアアアアアッ!?」
ルシオラ達が放ったSクラフトによって吹っ飛ばされ、地面に叩き付けられて二度と立ち上がらなくなった!
「……え。」
「―――所詮この世は夢幻。」
一瞬にしてやられた部下達の様子にただ一人残った士官が唖然としていると背後にブルブランが現れた!
「ひっ……」
ブルブランに気付いて、慌てて振り返った士官は武器を構えて迎撃しようとしたが
「せめて見せてあげよう………地獄のような甘美な悪夢を………さあ、美しく散るがいい!! フハハハハハ、さらばだ!!」
「ガハッ!?」
ブルブランのSクラフト――デスマジックを受けて地面に倒れて二度と立ち上がらなくなった!
「チッ、雑魚どもが……」
「んもう……ちょっと脆すぎるわ。」
「ふふ……贅沢は言わないの。まあ、女王陛下の親衛隊ならば少しは楽しめるのではないかしら?」
「ふむ、そう願いたいものだな。……さて。」
ルシオラの言葉に頷いたブルブランは後ろに控えていた猟兵達と人形兵器に振り返った。
「執行者はこれよりグランセル城に向かう!諸君は予定通りグランセル市街を制圧せよ!」
「了解!!」
そしてブルブラン達は王都に突撃した!
「あ、あれは……!」
「……急ごう!」
王都前に到着したエステル達は倒れ伏した兵達に気付くと兵士達に駆け寄った。
「こ、こいつは……」
「ヒデェな……」
倒れ伏している兵達を見たアガットとフレンは厳しい表情をし
「不幸中の幸いか……全員酷い傷を負っているが生きてはいるな。」
「まずは手当てをするわよ!」
バダックは兵士達が全員生きている事に気づく、アーシアは真剣な表情で提案した。
「そ、その必要はない……」
するとその時倒れていた士官がよろよろと立ち上がった。
「おい、大丈夫か!?」
「あ、あんたたちは遊撃士だな……。今しがた……”結社”の執行者どもがここを通っていったばかりだ……。どうやら狙いは…………グランセル城にあるらしい……」
「やはり……」
「その他の敵部隊は市街を制圧しているらしい……。……頼む……街と城を……」
最後の力をふり絞ってエステル達に情報を伝えた士官は気絶して地面に倒れた。
「エステル……!」
「うん……!兵士さんたちには悪いけど先を急がせてもらいましょ!」
士官の想いを無駄にしない為にエステル達は急いで王都に入った。
~王都グランセル~
エステル達が王都に入った時には、すでにあちこちから火の手が上がり、戦場と化していた。
「ひ、ひどい……!」
「メチャクチャね……」
「クソが……!」
王都の様子を見たエステルは信じられない表情をし、アーシアは周囲を睨み、アガットは舌打ちをした。
「……来る!」
その時自分達に向かってきた人形兵器達に気づいたヨシュアは警告し、仲間達と共に戦闘を開始し、協力して人形兵器達を撃破した!
「はあはあ……ど、どうしよう……。こんな状況じゃいったい何をしたらいいのか……!」
「―――皆さん!?」
戦いを終えたエステルが声を上げたその時、戦闘の気配を感じ取ったエルナンがギルドから出て来て、エステル達の元に駆けつけてきた。
「エルナンさん!」
「いい所に来てくれました!女王陛下の用件で王都に来てくれたんですね!?」
「はい……状況は?」
「現在、軍の守備隊が東街区と西街区で交戦中です。かなり厳しい状況ですが今は任せるしかないでしょう。皆さんは、城に向かった執行者たちを追ってください。」
「で、でも!」
「市街の方はいいのか?」
エルナンの指示を聞いたエステルは周りを見回して反論し、フレンは訊ねた。
「この付近の街路にいた人々はギルドに避難してもらいました。他の街区でも、軍の部隊が避難誘導をしているはずです」
「そうなんだ……。……だったら申し訳ないけど城の方に急がせてもらうわね!」
「ええ、よろしくお願いします。武運を……くれぐれも気を付けてください。」
そしてエステル達はグランセル城に向かった!
~グランセル城前~
エステル達がグランセル城に向かったその頃、次々と兵達をなぎ倒し続けてきた執行者達が城門の目の前まで来た。
「あら……城門が閉じちゃっているわね。」
固く閉じられている城門を見て、ユウナが意外そうな表情をした。
「ふむ、旧い城のようだから人力でも開閉可能なのだろう。かなり大変ではあっただろうが。」
「ふふ……ご苦労様といったところかしら。」
「どうする?やっぱりパテル=マテルを呼ぶ?」
「おいおい。あんなデカブツ呼ばれたら俺たちが楽しめねえだろうが。ここは俺に任せとけや。」
城門の破壊方法をユウナが提案すると、ヴァルターが凶悪な笑みを浮かべて進み出た。
「あら………何をするつもりかしら?」
「クク……ま、見とけって。」
ルシオラに尋ねられたヴァルターは城門に手を当てると気を練り始めた。
「コオオオオオオオッ……フン!!」
気を練り終えたヴァルターが練り終えた気を解放すると城門の一枚が一瞬で瓦解した!
「わあ……!凄いわ、ヴァルター!」
「泰斗流の奥義……寸勁ね。」
「フフ……相変わらず見事な技だ。」
「ククク……大道芸みたいなもんさ。さて、もう一枚行くとするか。」
そしてヴァルターは残っている一枚の城門を破壊し、ブルブラン達と城に突入した。
~グランセル城内・エントランス~
一方城門が破壊される様子を親衛隊やリベール王家の者達が見ていた。
「まさか城門が……」
「くっ、もう保たんか……。クローディア!女官長!い、急いで陛下を女王宮にお連れするがいい!」
ヒルダが信じられない表情をしている中、デュナン公爵はクローゼ達に振り向いて指示をした。
「お、小父様……」
「デュナン……貴方。」
デュナン公爵が残る事を悟ったクローゼは信じられない表情をし、アリシア女王は真剣な表情でデュナン公爵を見つめた。
「わ、私とてリベール王家の一員だ!その権威を侵そうとする者を黙って見過ごすことなどできぬ!ユリアとレイシスがおらぬ今、ここの指揮は任せてもらおう!」
「で、ですが……」
「ええい、グズグズするな!きゃつらは、陛下とそなたの身柄を奪おうとしておるのだ!女王と王太女の身柄をな!」
「!!」
デュナン公爵の言葉によって自分が為すべき事を指摘されたクローゼは真剣な表情になった。
「今、そなたが優先すべきは陛下とそなた自身を守ること!己の使命を全うするがいい、小娘!」
「小父様……分かりました。お祖母様、ヒルダさん!急いで女王宮に向かいましょう!」
「ええ……分かりました。デュナン……くれぐれも無事で。」
「ハハ、神をも恐れぬ狼藉者、返り討ちにしてご覧に入れよう。」
「……どうかご武運を。フィリップもどうか気を付けてください。」
「お気遣い、痛み入れます。」
そしてアリシア女王達は女王宮に急いで向かった。
「……閣下、お見事でした。このフィリップ、今この時ほど閣下にお仕えして良かったと思ったことはありませなんだぞ。」
「ふ、ふん、大げさなヤツめ。」
アリシア女王達が去った後、自分を感心している様子のフィリップの言葉を聞いたデュナン公爵は鼻を鳴らした。するとその時、最後の城門が破壊され、ブルブラン達が城内に入って来た!
「き、来おったか……!」
「ふむ、何という鬼気……。どうやら魔人の類いのようですな。閣下……わたくしが倒されたらどうか構わずにお逃げください」
「なに……!?」
フィリップの警告にデュナンが驚いたその時、フィリップはレイピアが収められている鞘を取り出すと助走をして2階から飛び降り、執行者たちの前に立ちふさがった。
「フィ、フィリップ殿!?」
「あら、細目のオジサン?」
「なんだァ、てめえは?」
「デュナン公爵閣下の執事にして元・王室親衛隊大隊長、フィリップ・ルナールと申します。」
フィリップの行動に親衛隊員とユウナが驚いている中ヴァルターに睨まれたフィリップは腰に刺しているレイピアを抜いた!
「昔取った杵柄……どこまで通用するかは分かりませぬがせめて一太刀は浴びて頂きますぞ。」
「ほう……」
「はは……これは面白い!」
「フフ……少しは楽しませてくれそうね。」
フィリップの言葉を面白がった執行者達はフィリップと親衛隊との戦闘を開始した!
~グランセル城前~
「こ、これって……」
グランセル城に到着したエステルは破壊された城門を信じられない表情で見つめた。
「これは……多分素手で壊した跡だ。恐らく”痩せ狼”の絶招技……」
「マジかよ……」
「シャレにならないねぇな……」
ヨシュアの推測を聞いたアガットとフレンは信じられない表情をした。
「なんていうか……。強さの次元が違うんですけど……。……って感心している場合じゃないわ!何とか連中に追いつかないと―――」
「エステル!」
ヨシュアが警告したその時エステルたちに向かって銃弾が撃たれた。すると先を阻むかのようにグロリアスで戦った機械兵器――ペイルアバッシュが3体現れた!
「この忙しい時に限って……!」
「時間稼ぎが狙いね……」
機械兵器の登場にバダックとアーシアは厳しい表情をした。
「ブチ壊すぞ!」
そしてエステル達は機械兵器達との戦闘を開始した!
~空中庭園~
エステル達が機械兵器達との戦闘を開始していたその頃、執行者達は空中庭園に到着した。
「ふむ……あれが女王宮のようだ。」
「つまり終点というわけね。」
「他愛もねえ。歯ごたえがあったのはあのジジイくらいじゃねえか。」
「ふふ、確かに……中々の達人だったわね。」
「でも、ユウナたち4人相手に勝ち目があるわけないじゃない。おバカさんもいい所だわ。」
「フフ、そう言うものではない。誇り高き忠義とは彼のような者を言うのだろう。それにデュナン公爵とやらも少々噂とは違っていたようだ。」
フィリップの強さをルシオラとヴァルターが感心していた中、単独で挑んだフィリップの無謀さに呆れていたユウナに指摘したブルブランはデュナン公爵の事を想い出した。
「そうね、少なくとも放蕩者には見えなかったわ。すぐに気絶してしまったのはご愛敬だったけれど……」
ブルブランの意見にルシオラが頷いたその時
「うふふ、それでも以前と比べると見違えるように成長しているわよ?今のあのオジサンなら王族の一員として及第点をあげてもいいと思うわよ。」
何とレンの声が聞こえてきた!
「え………」
レンの声を聞いたユウナが呆けると女王宮からルーク、レン、リオン、ソフィが姿を現した!
「”焔の剣聖”に”戦天使の遊撃士(エンジェリック・ブレイサー)”………!?導力停止現象以降シェラザード達と別行動をしている事は報告に入っていたけど、ここで現れるとはね……!」
「クカカ……”紅蓮の塔”でやり合ったガキ共もいるじゃねぇか。」
ルシオラが厳しい表情でルーク達を見つめている中、ヴァルターは凶悪な笑みを浮かべてソフィとリオンを見つめ
「……私は子供って言われるような年齢じゃないよ。むしろ貴方達よりずっと年上。」
「フン、その”ガキ共”にはまさか僕も入っているのか?ならば、容赦はせんぞ。」
(と言うか坊ちゃんは今まで敵に対して容赦をしたことはないと思うのですが………)
ヴァルターの言葉に対してソフィは静かな表情で答え、鼻を鳴らしてヴァルターを睨むリオンにシャルティエは苦笑しながら指摘した。
「まさかここまで父さんの読み通りとか、父さんの先を読む力はマジで凄すぎだろ………」
「うふふ、さすがパパよね♪」
「ほう。と言う事は君達がここにいるのはやはり”剣聖”の差し金か。」
ルークとレンの会話を聞いたブルブランは興味ありげな様子でルーク達を見つめて呟き
「大正解♪”導力停止現象が起こってから、結社が王都に襲撃してアリシア女王もしくはクローディア姫を拉致する事も”パパは推測して、それの対抗策としてレン達がここにいるのよ♪で、貴方達はまんまと”罠”に引っかかったって事♪」
「”罠”ですって……?―――どういう事かしら。」
笑顔で答えたレンの答えが気になったルシオラは真剣な表情で訊ねた。
「あら、まだわからないのかしら?ここで貴方達”執行者”達を”一網打尽”にすればリベールに来ている”結社”の戦力を大幅に低下させられるでしょう?」
「ま、一網打尽にできなくても少なくても俺達ならお前達を”確実に撃退できる”って考えて、このメンツになった訳だ。」
「フン、しかも銀髪の剣士は来ていないようだな?奴を欠いた貴様ら等雑魚に等しい。」
「これ以上貴方達の好きにはさせない!」
レンは不敵な笑みを浮かべてブルブラン達を見つめ、ルークは口元に笑みを浮かべて答え、レーヴェがいない事に気づいたリオンは鼻を鳴らして嘲笑し、ソフィは決意の表情でブルブラン達を睨んだ。
「舐めやがって……」
「やれやれ……随分と甘く見られたものだな。」
自分達が弱く見られた事を不愉快に感じたヴァルターとブルブランは表情を歪め
「………クスクス、確かにユウナ達がここに来る事まで読まれて対策を取っていた事はちょっと驚いたけど”剣聖”は肝心な事を見落としているわよ、レン?」
真剣な表情で黙り込んでいたユウナは不敵な笑みを浮かべてレンに問いかけた。
「あら、何を見落としているのかしら?」
「うふふ、”教授”の指示じゃないけどユウナが”執行者”の権限で一個中隊の猟兵達を動かしたわ。その猟兵達はどこに向かって、何をしていると思う?」
「…………………」
ユウナの問いかけに対してレンは真剣な表情で黙り込み、何も答えなかった。
「クスクス、その猟兵達の目的はね……”剣聖”の妻――――つまりレンの大切なママを拉致する事よ♪うふふ、ユウナ達にかまっていていいのかしら♪」
「あ~………普通ならそう言う反応をして当然なんだが……」
「フン、双子だけあって考えている事は同じという事か。」
「……………お互いの事が良くわかるのに、二人はどうして仲良くできないの……?」
不敵な笑みを浮かべるユウナの言葉を聞いたルーク達は一瞬黙り込んでいたが口を開いたルークは言い辛そうな表情で答えを濁し、リオンは鼻を鳴らし、ソフィは複雑そうな表情でレンとユウナを見比べていた。
「……?何よ、その反応は。どうして全然焦っていないの?レンの大切なママが攫われるかもしれないのよ!?」
一方ルーク達の反応が気になったユウナは真剣な表情で声を上げた。
「クスクス……フフ…………―――――アハハハハハハハハッ!」
するとその時笑いを噛み殺していたレンが突然大声で笑い始めた。
「な、なにがおかしいのよ!?」
「うふふ、だってユウナ達が王都を襲撃する事を予測していたパパが……いえ、”結社”がパパを警戒してパパを身動きが自由にできない軍に復帰させるように仕向けた事を知っていたレンが”その程度の事”を予想できないと本気で思っていたのかしら?」
「え………」
レンの問いかけを聞いたユウナは呆け
「クスクス、ユウナが動かした猟兵達なら今頃”殲滅”されていると思うわよ?レンが雇ったママの護衛――――”西風の旅団”に。」
「!!??」
凶悪な笑みを浮かべて答えたレンの話を聞いたユウナは信じられない表情をした。
~同時刻・エリーズ街道~
「な、何故こんな化物共が……何故奴等の情報を……提供してくれ……なかったのですか……”殲滅天使”……様…………グフッ!?」
同じ頃ブライト家に続く街道には結社の猟兵達の死体や人形兵器の残骸が散乱しており、生き残っていた最後の猟兵はフィーの銃撃が喉元に命中した事によって止めを刺されて絶命して地面に倒れ
「殲滅完了。前よりは多かったけど、やっぱり大した事無かったね。」
「フッ、貴様らのような三流の猟兵如きでは”西風”の守りは決して突破できん。」
フィーは猟兵達の死体を呆れた表情で見つめ、レオニダスは口元に笑みを浮かべて呟いた。
「なんや、もう終わってしまったんか。相変わらずあっけない連中やな。」
するとその時別働隊がレナを狙った時の対策として一人でブライト家にいるレナを陰ながら護衛していたゼノがブライト家がある方向から現れた。
「ゼノ、護衛対象から離れて大丈夫なの?」
「ああ。あの家の周囲には別働隊に対する罠を仕掛けてあるから、ちょっとくらいは離れても大丈夫や。……最もその別働隊もけえへんから拍子抜けやで。ったく、せっかく仕掛けた罠も発動せんかったら後で回収せなあかんから、仕事が終わるまでに一回くらいは引っかかって欲しいで。」
「……仕掛けた罠は全部ゼノが回収してよ。わたしはめんどいから、手伝わないよ。」
ゼノの答えを聞いたフィーは自分も罠の回収を手伝わされると思い、ジト目になって先に自分は手伝うつもりがない事を答えた。
「ちょっ、嘘やろ!?俺一人で回収していたら軽く2,3時間はかかるで!?」
「……雑談はそこまでにして仕事に戻るぞ。新手が来る可能性はまだ残っているのだからな。」
そしてレオニダスは二人の会話を打ち切らせて二人と共にブライト家に向かい、再び陰ながらのレナの護衛に戻った。
~空中庭園~
「”西風の旅団”……”赤い星座”と並ぶ大陸最強の猟兵団の片割れね。一体どうやって彼らを……―――いえ、”Ms.L”でもある貴女なら彼らが”依頼”を請けてくれる”報酬”を用意する事も可能でしょうね。」
「クカカ、まさか奴等を雇うとはな。確かに奴等が相手なら強化プログラムの猟兵如きじゃ勝てねぇし、隊長クラスの奴等は”執行者”とも渡り合える強さらしいから、もし執行者達が”剣聖”の妻の確保をしようとした時も俺達も撃退される可能性もあるな。”殲滅天使”の双子の姉だけあって中々考えているじゃねぇか。」
レンの話を聞いたルシオラは真剣な表情で呟き、ヴァルターは感心した様子でレンを見つめた。
「……ッ………!うふふ、ユウナ達にその事を言っちゃってもよかったのかしら?ユウナ達がレンが猟兵達を雇っている事を猟兵の雇用を法律で禁止しているリベールに教えてあげたらレンはリベールに捕まって、今まで積み上げてきた信用や実績も全部無くなるわよ?」
一方唇を噛みしめて黙り込んでいたユウナはすぐに不敵な笑みを浮かべてレンに問いかけた。
「ホント、浅はかねぇ……そんな単純な問題にレンが対処していないと本気で思っていたのかしら?既にレンが”色々な所に手を回して”リベール人のレンが猟兵を雇ってもいいように手配したから、レンは法律違反をした訳ではないから捕まらないわよ♪というかそもそもお姫様達もレンがママの護衛の為の猟兵を雇っている事を知っていて、不問にしているから全然問題ないわよ♪」
(まあ、グレーゾーンギリギリだけどな……)
「!!」
小悪魔な笑みを浮かべているレンの答えを聞いたルークは声に出さずに苦笑し、ユウナは目を見開いた。
「フッ、どうやら姉君の方が一枚上手だったようだね?」
「……”元”よ。それ以上ユウナを不愉快にするような事を言うならレンより先に貴方を”殲滅”するわよ、ブルブラン。」
「おっと、これは失礼した。」
ブルブランに視線を向けられたユウナは殺気を纏ってブルブランを睨んだ。
「うふふ、これでわかったでしょう?レンとの”格の違い”を。”元”とは言え、”妹”が”姉”に勝てると本気で思っていたのかしら?」
「……うふふ、そんな事を言っていられるのも今の内よ。――――導力停止現象で銃やアーツを封じられた事で本来の戦い方をほとんど封じられた元おねえちゃんが”執行者”のユウナに太刀打ちできると本気で思っているのかしら?」
レンの挑発に対してユウナは激怒せず、不敵な笑みを浮かべて大鎌を構えてレンを見つめて問いかけた。
「ホント、どこまでも浅はかな元妹ねぇ……レンの”もう一つの二つ名”を忘れたのかしら?」
「え………」
「”戦天使の遊撃士(エンジェリック・ブレイサー)”の”もう一つの二つ名”………?――――!!」
レンの問いかけにユウナが呆けている中、レンのもう一つの二つ名を思い出したルシオラが目を見開いたその時!
「―――遊撃士協会所属B級正遊撃士にして”アルバート流”奥伝並びに”八葉一刀流”二の型奥義皆伝……”小剣聖”レン・ブライト。道と義に従い、これより祖国リベール王国を襲撃した”賊”共の撃退を開始するわ。―――覚悟はいいわね?」
レンは”剣仙”ユン・カーファイから授かり、工房で強化した焔と氷の力をそれぞれ宿している二振りの小太刀―――”火燐”と”霜麟”を構えて更に気功技―――軽功で自身を強化して不敵な笑みを浮かべてユウナ達を見つめ
「同じくA級正遊撃士にして”アルバート流”奥伝並びに”八葉一刀流”七の型奥義皆伝……”焔の剣聖”ルーク・ブライト!”執行者”達の撃退を始めるぜ!」
「―――リオン・マグナス。この僕を敵に廻した事を心の奥底から後悔するがいい!」
「―――ソフィ・ラント。私の事を知ってもなお私を受け入れてくれた私の新しい友達や友達の国は私が守る!」
レンに続くようにルーク達もそれぞれ名乗り上げて武器を構え、それぞれ全身に膨大な闘気を纏った!
「クハハハハッ!面白くなってきたじゃねぇか!」
「ハハハハハッ!それでは始めるとしよう……希望という名の宝石を手に入れる為の血肉湧き踊る最後の試練を!」
凶悪な笑みを浮かべて笑うヴァルターに続くように声を上げて笑ったブルブランは高々と叫んでルーク達との戦闘を開始した!そして戦闘を開始したルーク達はそれぞれが相手する執行者――――ルークは”幻惑”ルシオラに、リオンは”怪盗紳士”ブルブランに、ソフィは”痩せ狼”ヴァルターに、レンは”殲滅天使”ユウナに向かい、それぞれの戦闘を開始した!
ページ上へ戻る