英雄伝説~焔の軌跡~ リメイク
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外伝~鉱夫達の救出~前篇
~ジェニス王立学園・中庭~
その後エステル達は先に行くクルツ達を見送ろうとしていた。
「クルツさん、アネラスさん。カルナさんにグラッツさんも。今回は本当に手伝ってくれてありがとう。」
「あはは……水臭いこと言いっこナシ!」
「ああ、これも同じ遊撃士としての務めさ。」
「フフ、やっと湖畔での借りを返せた気分だよ。」
「また何かあったらいつでも力になるからな。」
エステルにお礼を言われたアネラス達はそれぞれ笑顔を浮かべて答えた。
「ふふ、期待してるわね。」
「皆さんはこの後、どちらに向かう予定ですか?」
アネラス達の答えを聞いたシェラザードは微笑み、ヨシュアは尋ねた。
「クローネ峠を抜けてボース方面に向かうつもりさ。今回のような事件が起きないよう各地の見回りをしながらね。」
「そうか……」
「そちらの方はお願いね。」
「あのあの……気を付けてくださいね。」
クルツの話を聞いたジンは頷き、アーシアは微笑み、ティータは応援の言葉を贈った。
「はは、お前さんたちもな。」
「この状況が続く以上、地道にやるしかないからね。」
「ああ、せいぜいお互い気張るとしようや。」
ティータの言葉にグラッツは頷き、カルナの言葉にはアガットが力強く頷いた。
「そうだ……ねえ、エステルちゃん。」
「ん、なに?」
アネラスに言われたエステルは首を傾げた。
「今回一緒に戦っていて感じたことなんだけど……。エステルちゃんの動き、迷いがなくてのびのびしてた。まっすぐに成長してるなあって正直、感心させられちゃったよ。」
「や、やだな~。おだてても何も出ないわよ?それにアネラスさんだって凄く腕が上がってたじゃない。」
「そりゃあ実戦を繰り返せばね。でも、エステルちゃんの場合、武術の腕だけじゃなくて心の芯まで強くなった気がする。それは多分、ヨシュア君を捜す旅の過程で自分の道を見つけたからだと思う。本当に……強くなったね。」
「アネラスさん……」
「えへへ、ライバルとして私も負けてられないかな。機会があったらまた一緒に戦おうね?今度は私がエステルちゃんをビックリさせてあげるから!」
「あはは……うん!楽しみにしてるからね!」
その後、シェラザード達も一足先にルーアン支部に戻り…… 王都から来てくれたジークも再びクローゼの元に帰っていった。エステルたちは、学園のみんなに挨拶してから出発し、徒歩で数日間をかけてロレントに向かい、ロレントのギルドの通信器を使えるようにした後ロレント地方の郊外はどうなっているかを確かめる為ブライト家やパーゼル農園の様子を確認した後最後にマルガ鉱山に向かい。鉱山の中に入って行った。
~マルガ鉱山~
「うう~む……こりゃ参ったぞ。」
「あの、どうかしたの?」
エレベーターの前で唸っている様子の鉱夫が気になったエステルは鉱員に話しかけた。
「おお、誰かと思えば遊撃士の姉ちゃんか。いつぞやは世話になったねえ。」
「あはは、懐かしいわね。」
「七耀石の運搬に来て、落盤が起きた時のことだね。確かに懐かしい話だけど思い出話をしてる場合じゃないよ。」
「おっと、そうね。」
「ああ、実はエレベーターが動かなくなっちまってよ。坑道にいる親方たちと交替もできねえ状態なんだ。」
「確か坑道で何かの工事をしていたそうね?」
鉱夫の話を聞いたアーシアは自身が知るマルガ鉱山の状況を鉱員に確認した。
「ああ、例の落盤で開いた穴を塞ぐ作業をやってる所だったんだ。骨組みはもう入れちまったけど地盤を固める処理がまだでよう。」
「例の落盤で開いた穴って……」
「うん、僕らが来た時に魔獣の巣とつながった所だね。」
鉱夫の話を聞いたエステルとヨシュアはかつての出来事を思い出した。
「おう、そこの穴のことさ。あの後すぐ親方が、発破で埋めちまったんだが………魔獣の巣に繋がってる物騒な場所だからなぁ。きちんと工事しようってそういう話になったわけさ。」
「なるほど……それでリッジさんに警備を要請したんですか。」
「でも、そんな工事の最中に停止現象が発生したわけよね。……何も起きていないといいんだけど。」
「不味いわね……ここは下に降りて状況を確認た方がいいわ。」
状況が不味い事になっている可能性がある事にエステルは不安そうな表情をし、アーシアは真剣な表情で提案した。
「おう、もちろんそうして欲しいトコだが……でも、どうやって下に降りるつもりなんだ?肝心のエレベーターが動かねえんだぜ?」
「む、むう……そう言えばそうだったわね。」
「あれもオーブメントで駆動している機械だからね。」
「あ、あの……他に下に行く方法はないんですか?」
「何言ってやがる。あれば俺がとっくに使ってるぜ。」
「あう……そ、そーですね。」
自分の疑問に対して当然の正論を答えられたティータは疲れた表情で呟いた。
「でも、だからって諦める訳には行かないわ。こうしてる間も鉱夫さんは地下で待ってるんだから。」
「そうだね。ここはどうにかしないと……」
「すまねえが、知恵を貸してくれ。きっと親方たちも助けを待ってるはずだ。」
そしてエステル達はエレベーターに近づいて試しにスイッチを押したが何の反応もしなかった。
「やっぱり動かない……」
「エレベーターの制御キーは挿してあるから、起動しない理由はやっぱり導力停止現象の影響ね。」
「……………」
「ん……?ティータ、どうかした?」
エレベーターを見つめて真剣な表情で考え込んでいるティータが気になったエステルはティータに声をかけた。
「う、うん……ちょっと思ったんだけど……あの、このエレベーターは駆動部内蔵型ですよね?」
「え……?あ、ああ………確かにその通りだぜ。」
「あ、やっぱり……」
鉱夫に確認したティータはエレベーターに近づいてエレベーターの装置を調べ始めた。
「えと、制御キーの差込口はここだから……駆動オーブメントはちょうどこの辺りかな?標準的な設計なら、たぶんここにあると思うけど……」
「う、う~む……」
「フフ、さすがティータね。」
真剣な表情で考え込んでいるティータの独り言を聞いたエステルとアーシアはそれぞれ苦笑していた。
「な、なんだか異様に機械に詳しいガキだな、おい。」
「うん……どうにかなりそうです。」
「どうにかなりそうって……」
「もしかしてエレベーターを動かせるのかしら?」
「……はい、たぶん。あの零力場発生器を使えばきっと動くと思いますよ。」
「え、発生器で?」
ティータの意外な提案にエステルは目を丸くした。
「うん、発生器をエレベーターの駆動部にできるだけ近づけるの。うまくいけば、停止現象の効果を一時的に無効化できるはずだよ。」
「なるほど………その手があったね。さっそく試してみよう。」
「う、うん!やってみるね。」
ティータは零力場発生器をエレベーターの操作盤に押し当てた。すると怪しげな黒い光が操作盤から放たれた。
「う、うおっ!?」
「あ……こ、この光って……」
「ゴスペルと同じ光ね……」
「……干渉が起きてるようですね。」
「…………」
その場にいる全員が見守っていると光は消えた。
「き、消えちまったぞ……」
「ふう……たぶんこれでうまく行ったと思うけど……」
そしてティータが安堵の溜息を吐いたその時エレベーターが動き始めた。
「はわっ!?」
「う、動いたっ!?」
「内部のオーブメントに導力が戻ったみたいだ。早く乗り込もう。行くなら今しかない。」
「フフ、ティータのお手柄ね。」
「お、俺もついて行くぜ!」
「急いでください!」
動き始めたエレベーターを見たその場にいる全員は急いでエレベーターに乗り込んだ。
「そ、それじゃー行きます!」
「わわっ!?わ、わ、わ、わ……」
エステル達を乗せたエレベーターはゆっくりと下へと降りて行くと、何とゼノとレオニダスがその場に現れた!
「いや~、まさかあんな裏技を思いつくなんて、中々賢いチビッ子やな~。」
「……フィーもあの機転の良さは見習うべきだな。―――それよりもどうする?」
エレベーターを動かしたティータの手腕をゼノと共に感心していたレオニダスはゼノに視線を向けて訊ねた。
「そりゃ勿論行くに決まっているやろう?”依頼人”の代理人として現れた”銀”から”追加の依頼”に対する”報酬”も受け取ってんから。」
「フッ、そうだな。」
そして二人は人間離れした動きでエレベーターが降下して行った場所の壁を蹴りながら下へと降り始めた。
「ふう………」
「な、なんでこんなガタつくのよ……」
「えへへ、オーブメントの出力が全然足りてないもので……」
下の階層に到着したヨシュアは一息つき、ジト目で文句を言うエステルにティータは苦笑しながら答えた。
「おっと、灯りが用意してあるじゃねぇか。……坑道の方も静かなもんだ。もしかすると、俺達の考えすぎだったかも……おんやあ?」
周囲を歩いて状況を確認していた鉱夫は何かに気づくと声を上げた。
「どうかしましたか?」
「ああ、誰かこっちに来るんだよ。おお、なんだよ。ありゃティントの奴じゃねえか。お~い、ティント!そんなとこでどうしたぁ?」
鉱夫が声を上げたその時鉱員が見つめている方向から他の鉱夫が慌てた様子で走って来た。
「お、おい………何を焦ってやがる?」
「う、うしろ……」
「……は?」
「だ、だから後ろだってば!」
鉱夫の警告に首を傾げた鉱員が後ろに振り向くと何と魔獣達が鉱夫に近づいてきていた。
「ふ、ふおおおおおっ!!」
そして鉱夫が悲鳴を上げたその時ヨシュアが一番近くの魔獣の前に現れて牽制攻撃を放って自分達との距離を空けさせた。
「ふ、ふえぇ……こ、こんなに一杯。」
「ハア、甲殻系の魔獣か……アーツが使えない状況で正直物理攻撃に対しての防御力が高い相手は正直面倒なのよね………」
魔獣達の数の多さにティータは不安そうな表情で呟き、アーシアは疲れた表情で溜息を吐いた。
「まさか、また魔獣の巣が?」
「だと思うけど……考えてる暇はどうやらなさそうだね。――――!?上から誰か来る………!」
「へ……?」
何かの気配に気づいて声を上げたヨシュアの言葉に呆けたエステルが後ろへと振り向くと上層から壁を蹴って降りてきたゼノとレオニダスが着地した!
「到着っと。……ん?何やようわからんけど、取りあえず俺達の力が必要の事態のようやな?」
「……加勢する。遅れるなよ、遊撃士共。」
そしていきなり加勢してきたゼノとレオニダスと共にエステル達は魔獣達との戦闘を開始した!
「ハァァァァ……!フン!!」
魔獣達の突進したレオニダスはクラフト―――グラウンドバスターを放ち、凄まじい衝撃波を受けた魔獣達は怯んだ!
「喰らえやっ!!」
その隙を逃さないゼノはクラフト―――マーダーショットで数体の魔獣達を倒し
「烈震天衝!!」
「えいっ!!」
ゼノに続くようにエステルは広範囲を攻撃するクラフトで、ティータは導力砲で砲撃して残りの魔獣達を追撃し
「朧!!」
「そこっ!ハァッ!セイッ!これで終わりよっ!!」
ヨシュアは背後からの奇襲で魔獣を倒し、アーシアはボウガンに仕込まれた隠し刃で連続攻撃を叩き込んだ後最後に矢を射って止めを刺した!
「何とか撃退できたわね……って、貴方達って誰??」
「!!その紋章は………!」
「―――なるほど。貴方達がレナさんの護衛の依頼を請け負っている”西風の旅団”の猟兵達ね。」
戦闘終了後エステルは不思議そうな表情でゼノとレオニダスを見つめて問いかけると、二人のジャケットに刻み込まれてある紋章に気づいたヨシュアは目を見開き、アーシアは真剣な表情で二人を見つめて呟いた。
「へっ!?―――あっ!」
「なんや、もうそこまでバレとったんかい。」
「さすがは遊撃士協会だな。」
アーシアの言葉を聞いて目の前の二人がレンが雇った猟兵達である事がわかったエステルは驚きの表情で声を上げ、ゼノは目を丸くし、レオニダスは感心した様子でエステル達を見つめた。
「……何故僕達の加勢を?確か貴方達は”結社”がリベールから撤退するまでは母さん―――レナ・ブライトの護衛の依頼を請け負っているとの情報ですが……」
「それに確かレナさんを護衛している猟兵は貴方達を含めて3人いるという話で最後の一人の”西風の妖精”の姿が見当たらないわね……」
「姫は俺達の代わりに”剣聖”の妻の護衛をしとるから、こっちには来とらんで。」
「お前達に加勢したのは”依頼人”から”追加の依頼”があった為だ。」
ヨシュアとアーシアの疑問にゼノとレオニダスはそれぞれ答え
「へ?追加の依頼??何なのそれ。」
「栗色のツインテールの嬢ちゃん――――エステル・ブライトを中心とした遊撃士達がロレントを訪れた際、ロレント地方で俺達の加勢が必要と思われる事態になった際に一度だけ手を貸して欲しいって言う依頼を、”依頼人”は俺達と同じ依頼を請けていた奴を代理人にして俺達に依頼したんや。ご丁寧にも”剣聖”の妻の護衛の依頼の時同様、報酬前払い付きでな。」
「ええっ!?」
(”西風の旅団”と同じ依頼を請けていた人物というのは”銀”の事でしょうね。)
(ええ、間違いないかと。)
「えとえと……ちなみにその依頼に対する報酬は幾らもらったんですか?」
ゼノの説明を聞いたエステルが驚いている中、アーシアとヨシュアは小声で会話し、ティータはゼノ達に訊ねた。
「……団の関係者でもない部外者に詳細な金額は教えられないが、依頼内容の難易度とは釣り合わない莫大な金額とだけ言っておく。」
(レンちゃんは一体幾ら支払ったんだろう……?)
(というかあの娘の金銭感覚は一体どうなっているのよ……)
レオニダスの答えを聞き、仲間達と共に冷や汗をかいたティータとエステルはそれぞれ疲れた表情で小声で呟いた。
「お、おい……遊撃士さん。」
「も、もう出て行っても大丈夫か?」
その時後方に避難していた鉱夫達がエステル達に訊ねた。
「あ、うん、大丈夫よ。」
「はあ~、ありがとう助かったよ。君達のおかげでまたおいしくゴハンが食べられるさ。」
「こら、バカ。なに悠長なこと言ってやがる。親方たちはどうした?まずそいつを教えやがれ。」
「うん、とにかく今は状況を把握するのが先決ね。」
「やはり事故が起きたんですか?」
「う、うん……そうなんだ。昨日の工事中に魔獣避けの導力灯が消えちゃってね。仕方ないから工事を中断してここで待機してたんだよ。そしたら今朝、現場から魔獣の大群が溢れ出して……ブルル、ぼ、僕も危うく食べられちゃう所だったよ。」
事情を話し終えた鉱夫は救援が来なかった時の自分の事を考え、思わず身体を震わせた。
「ちょっと待った。ギルドから警備に来た遊撃士がいたはずでしょ?」
「あ、ああ……そのお兄さんが僕らのために時間を稼いでくれてたんだ。けど、最後にはあの人もま、魔獣の群れに飲み込まれて……」
「!!」
「そ、そんな……!?」
「不味いわね……」
「……すぐに行動すべきですね。」
鉱夫の話を聞いたエステル達はそれぞれ血相を変えた。
「とにかく鉱夫の人達の救助が最優先の課題ね。リッジを助けに行くにはそれが済んでからの話ね。」
「……ん、了解よ。心配だけど、それがあたし達の使命だもんね。」
「ぼ、僕はお腹が減って飛び出して来ちゃったけど……きっと親方たちはまだどっかに隠れてるはずだよ。」
「全部で何人いたのかしら?」
「後4人いるはずだ。遊撃士の兄ちゃんを入れれば5人さ。」
「了解したわ。すぐに捜索を始めましょ。」
「うん、急ごう!」
「は、早く戻って来てよ~。」
そして鉱夫達が安全圏に待機し始めるとエステルは二人に訊ねた。
「えっと……二人ともあたし達を手伝ってくれるって事でいいのよね?」
「そう捉えてもらって構わん。」
「それにさっきの魔獣達のタイプを考えるとアーツや導力銃が使えない状況で火力が高い武器を使う俺らの加勢はそっちにとってもありがたいやろ?」
「そ、そう言えば……二人とも今まで見たことないゴツイ武器を使っているようだけど……」
レオニダスの後に答えたゼノの問いかけを聞いたエステルは呆けた表情で二人の武器を見つめた。
「―――火薬式銃剣の”ブレードライフル”とガントレットに火薬式の機関砲が加えられた”機械化手甲”。どちらも猟兵御用達の武器工房の特注品の火薬式の武器ね。」
「火薬式の武器にそんな武器があるんだ……」
アーシアの説明を聞いたティータは興味ありげな様子で二人の武器を見つめていた。
「……エステル、鉱夫の人達やリッジさんを少しでも早く助ける為にも二人の加勢の申し出は受け入れるべきだ。二人とも間違いなく”執行者”クラスの強さの上既に僕達に加勢するという”依頼”に対する”報酬”も支払われているから、彼らは僕達にとって心強い味方だ。」
「た、確かに……今の戦闘も二人がいてくれたお陰で滅茶苦茶早く終わったし……―――わかったわ。えっと、そう言う訳だから鉱夫の人達とリッジさんを救出するまでの間になるけど、お願いね!」
ヨシュアの説明を聞いたエステルは先程の戦闘を思い返した後二人を見つめ
「任せとき。―――おっと、自己紹介がまだやったな。”西風の旅団”連隊長”罠使い(トラップマスター)”ゼノや。商売敵と共闘するのは初めてやけど、”依頼”に対する”報酬”も受け取ってんから仕事はキッチリこなすから、大船に乗ったつもりでいていいで。」
「同じく”破壊獣(ベヒモス)”レオニダス。短い間にはなるが”西風”の”力”をその目に焼き付けるといい、遊撃士共。」
こうしてゼノとレオニダスを加えたエステル達は鉱夫達とリッジの救出活動を始めた。
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