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ミラエ=アル=リフ

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第七章

 二人だけになってだ、バルダートはこうジャーファルに言った。
「謎は解けたな」
「はい、五人目の人だったんですね」
「そういうことか」
「何でもない話でしたね」
「案外な、しかし本当にヴェールだとな」
「顔わからないですからね」
 ジャーファルはバルダートにしみじみとした顔で返した。
「そうした人には好都合ですね」
「全くだな」
「ええ、まあ確かにかえって目立ちましたけれど」
「何処の誰かはわからないのは確かだしな」
「そういうことですね」
「その通りだな、ところでな」
 ここでこうも言ったバルダートだった。
「あんたのその名前な」
「ジャーファルっていうこれですか」
「それ姓なんだな」
「はい、そうですけれど」
「アラビアンナイトの方は名前だったけれどな」
「我が家はそうした名前です」
「そうか、ジャーファル家か」
 バルダートは彼の名前のことを確認してからまた言った。
「格好いいな」
「そうですか」
「ああ、いい名前だよ。それじゃあ」
 家の名前として格好いいからと言うのだった。
「その名前に負けない商売しないとな」
「そうですよね」
「それでいい奥さんも貰わないとな」
「そうですね、僕も」
「頑張れよ」
「はい、実際もう家で商売出来ますし」
 露天商からというのだ。
「精進していきます」
「そうしなよ、ただ奥さんはな」
「五人目はですね」
「ややこしくなりますね」
「あの人みたいにな」
「そうですね、噂をすれば」
 そうした話をしているとだ、道に。
 そのヴェールの女性が来た、相変わらず顔はわからないが。
 落ち着いた動きで歩いていた、ボディガードを連れて。彼女を見てだった。
 ジャーファルは微笑んでだ、バルダートに言った。
「今日もお元気ですね」
「ああ、そうだな」
「今度うちの品物も買って欲しいですね」
「うちのもな」
 笑ってこうも話すのだった、その彼女を見ながら。どういう人物かわかると謎も警戒もなく親しみを感じて。


ミラエ=アル=リフ   完


                       2016・4・29 
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