戦国異伝
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第二百五十四話 決着その一
第二百五十四話 決着
魔界衆の者達の数はもう二百もいなかった、その残っている者達も一人また一人と倒されていく。しかし。
棟梁達はまだ残っていた、そのうちの一人楯岡道順にだ。
謙信は舟で彼の前に来てだ、こう告げた。
「魔界衆十二家の一つ楯岡家の棟梁楯岡道順」
「如何にも」
その通りだとだ、楯岡も答える。
「それがしは確かに楯岡道順」
「ならば」
「それがしを倒すというのか」
「相手にとって不足なし」
その手に刀を持ち構えて言う。
「いざ勝負」
「面白い、では御主を倒し」
楯岡も言うのだった。
「それがしは生き残ろう」
「そしてまた天下に害を為すというのですか」
「この天下は何があろうとも」
血走った赤い目での言葉だった。
「乱し続ける」
「ならはその怨み私が絶ちましょう」
「その刀でか」
「この剣は降魔の剣」
それ故にというのだ。
「この剣で貴方の怨みも絶ちましょう」
「出来ればな」
楯岡も剣を抜いた、そしてだった。
二人の戦いがはじまった、その横の舟では。
信玄が石川五右衛門と勝負をはじめていた、石川はその棍棒の様な煙管を振りそのうえで信玄を攻めるが。
信玄は軍配でその煙管を受け止めてだ、こう言った。
「わしに防がせるとはな」
「それがか」
「御主中々の者じゃな」
その腕を認める言葉だった。
「それすら出来る者は少ないというのに」
「わしは生きる」
この追い詰められた状況でもというのだ。
「だからじゃ」
「わしを倒してか」
「この煙管でな」
「そうか、煙管はか」
「わしの分身じゃ」
こう言うべきものだというのだ。
「忍術を使うだけの気はもうない」
「しかしその煙管で闘いか」
「御主を倒し逃げてやるわ」
「そうするか、ではその御主を倒し」
信玄は毅然として言った。
「天下泰平の世を見よう」
「それが御主の願いか」
「そうじゃ、それを言っておく」
こう言って戦うのだった、そして。
氏康は音羽の城戸と闘っていた。氏康は決して一歩も退かず闘い元就は元就で百地三太夫と闘っていた。
家康は無明、そして。
長政は杉谷に向かってだ、自ら槍を手にして言っていた。
「御主はわしがじゃ」
「倒すというのか」
「覚えておろう」
微動だにしない言葉だった。
「父上のことはな」
「浅井久政のことか」
「忘れた訳ではあるまい」
「あの時は上手くいくと思ったがな」
杉谷は悪びれることなく長政に返した。
「そうはいなかったな」
「危うく兄上に取り返しのつかないことをさせるところであった」
「御主も浅井家もあの時に滅ぼすつもりだった」
杉谷はこうも言った。
「しかしそれが出来ぬとはな」
「迂闊だったというか」
「しくじったと言っておく」
忌々しげにだ、杉谷は言うのだった。その手には鉄の錫杖がある。
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