英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅰ篇)
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第69話
その後帝都を回りながら依頼を片付けていたリィン達はB班のメンバーと出会い、出会った時間がたまたまお昼時だった為、B班のメンバーと昼食を共にしてレストラン前で別れた後、残りの依頼を片付ける為に依頼人であるホテルの支配人がいるホテルに向かい、受付を訪ね、依頼内容を聞いた後これからの行動の為にホテルのロビーの一角で話し合っていた。
~帝都ヘイムダル・”デア=ヒンメル”~
「それじゃあ、準備ができたら地下道へ向かおうか。」
「ラジャ。」
「しっかり準備を整えておかないとね。」
「あら……?」
リィン達が話し合っていると聞きなれない女性の声が聞こえ、声を聞いたリィン達が振り向くとドレスを身に纏った女性が階段から降りてきた。
「クロチルダ様。そろそろお時間ですか?」
女性に気付いた受付にいる支配人は尋ね
「ええ、行ってくるわ。それよりそっちの子たちは……?」
女性は頷いた後リィン達を見回した。
「……………あっ………………あああああああああっ!?」
「……ヴィ…………ヴィ……ヴィータ・クロチルダ……!?」
「!?」
一方女性の顔を見たエリオットとマキアスは声を上げて驚き、マキアスの口から出た目の前の人物の名前を聞いたツーヤは血相を変えた。
「す、すごい…………本物だ……!!」
「ま、まさか……会える日が来るとは……!」
(ヴィータ・クロチルダ…………その名前は確かレーヴェさんの情報によってわかった結社の”蛇の使徒”の第二柱――――”蒼の深淵”……!まさかこんな所で会うなんて……!)
エリオットとマキアスが嬉しそうな表情で女性を見つめている中、ツーヤは真剣な表情で女性を見つめた。
(えっと、この人は……?)
一方エリオット達の様子にリィンは戸惑い
「ええい、君達!何をぼーっとしている!あの有名なオペラ歌手、”蒼の歌姫”クロチルダが目の前にいるんだぞ!?」
戸惑っているリィン達の様子に気付いたマキアスは慌てた様子で指摘した。
「”蒼の歌姫”……ふむ、聞いたことがあるような。」
「し、知らないのっ!?」
首を傾げている様子のラウラを見たエリオットは信じられない表情をし
「あははっ……有名だなんて言ってもオペラの世界でだけだもの。知らなくったって無理ないわよね。知名度で言ったらそちらの”薔薇”さんの方がどっちかっていうと大衆の人達に知られていると思うわよ?」
その様子を見た女性はおかしそうに笑った後ツーヤに視線を向け
「……あたしの事をご存知でしたか。」
視線を向けられたツーヤは静かな表情で女性を見つめ
「そりゃあ、世の女性の心を虜にしている凛々しい異世界の女性騎士の話くらい、私でも知っているわよ。」
「うっ…………」
女性の話からある事を思い出したツーヤは表情を引き攣らせた。
「―――ヴィータ・クロチルダ。オペラ歌手をやっているわ。よかったらご贔屓にね。」
女性―――クロチルダは自己紹介をした後リィン達に微笑んだ。
「ど、どうも……よろしくお願いします。」
(よく見ると相当綺麗な人かも……)
クロチルダに微笑まれたリィンは戸惑い、フィーはクロチルダの整った容姿を見つめ
(うふふ、隠しているようだけど、私にはわかるわ♪あの女、唯のオペラ歌手じゃないわね♪絶対腹に何か抱えているわ♪)
(ふふふ、同類だからわかるのですか?)
(失礼しちゃうわね!私は腹黒くないわよ!)
ベルフェゴールとリザイラはそれぞれ念話でクロチルダの事について話し合っていた。
「ところで、あなたたちの制服……どこかの学校の生徒さんね?もしかして、私のサイン目当てでわざわざ来てくれたのかしら?」
「は、はい、それはもうっ!!」
「それ以外に用事などあり得るわけがありません!」
クロチルダに尋ねられたエリオットは嬉しそうな表情で、マキアスは真剣な表情で断言し
「いやいや、違うだろ!?コホン、え、えっと……俺達はトリスタにあるトールズ士官学院の者です。今日はその、実習でこちらに来ていまして。」
二人の断言を呆れた様子で否定したリィンは気を取り直して説明した。
「ふふっ、それは残念。あ、でも士官学院っていうことは、もしかして……例の地下道の魔獣の件を手伝ってくれるのかしら?」
「そだね。ま、仕事はこれからだけど。」
「ぼ、僕達に任せてください!」
「きっとやり遂げてみせますから!」
クロチルダの疑問に冷静な様子で答えたフィーとは逆にマキアスとエリオットは興奮した様子で答えた。
「うん、助かるわ。私も話を聞いて不安だったから。それにしても、実習か……今時の学校では面白いことをやっているみたいね。」
「はは………さすがにウチくらいだと思いますが。」
「いけない、次のリハーサルが押しているんだったわ。悪いけれどこれで失礼するわね。」
「いや、こちらこそ呼び止めてしまいました。」
「ふふ、いい息抜きになったわ。大変だと思うけど……実習、頑張ってね。―――ああ、そうだ”蒼黒の薔薇”さん。」
「……あたしに何か?」
クロチルダに名指しされたツーヤは不思議そうな表情でクロチルダを見つめ
「―――時間ができたら是非会いに来てって、”レオン”に伝えておいて♪」
「…………わかりました。本人には伝えておきましょう。」
「ふふっ、よろしくね。」
静かな表情で頷いたクロチルダは微笑んだ後その場から去って行った。
「はああああ~……っ。雑誌で見るより何倍も綺麗だったねえ……!」
「うむ……さすがに本物は違うな……!」
クロチルダが去った後溜息を吐いたエリオットの言葉に頷いたマキアスだったが
「―――ってああ!?結局サインをもらい損ねた!?」
ある事に気付いて心底後悔した様子で声を上げた。
「……残念だったね、それは。」
「そんなにもあの人のサインが欲しかったんですか……」
マキアスの反応を見たフィーとツーヤは呆れ
「……しかし、大した女性だな。単に容姿が美しいだけではなく、相当な器の広さを感じた。」
ラウラは感心した様子でクロチルダが去った方向を見つめた。
「ああ、そんな感じだったな。”蒼の歌姫”ヴィータ・クロチルダか……はは、俺も何だかファンになっちゃいそうだ。」
(む。今のは聞き捨てならないわね~?私達やエリゼ達がいるのにまだ足りないのかしら♪)
(ふふふ、今の言葉を妹君達に伝えたらどのような反応をするのか見物ですね。)
考え込みながら呟いたリィンの言葉を聞いたベルフェゴールは興味ありげな表情をし、リザイラは静かな笑みを浮かべた。
「あれ?そういえばさっき、クロチルダさん、去り際にツーヤに伝言して行ったけど……」
「確か”レオン”という人物に向けて時間ができたら是非会いに来て欲しいみたいな事を言っていたよな……?……ん?レオン……って、まさか!?」
ある事が気になったエリオットの疑問を聞いて考え込んだマキアスは驚きの表情でツーヤを見つめ
「も、ももも、もしかしてレオンハルト教官の事!?」
エリオットは混乱した様子で尋ねた。
「た、多分そうだと思います。レーヴェさんとクロチルダさんがどんな交友関係なのかは知りませんが…………」
真剣な表情の二人に尋ねられたツーヤは戸惑いの表情で答え
「ううっ、レオンハルト教官とクロチルダさんがどんな関係なのか凄く気になる………!」
「レオンハルト教官の性格だと二股はありえないと思うから、恋人の可能性はないとして…………クッ、どんな関係なのか思いつかない……!学院に戻ったらレオンハルト教官にすぐに確かめよう……!」
「うん……!それでレオンハルト教官にクロチルダさんのサインがもらえるように頼み込もう……!」
「ア、アハハ…………」
そして興奮した様子で会話するマキアスとエリオットの様子を見たツーヤは冷や汗をかいて苦笑した。
「うーん?」
「ん、どうしたフィー?」
「……や、多分何でもない。」
「……とにかく、手配魔獣を退治しに行かなくちゃな。準備を整えて右側の扉に行こう。」
その後準備を整えたリィン達は依頼内容である特定の魔獣の退治の為にホテルの地下道の探索を開始した。
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