英雄伝説~焔の軌跡~ リメイク
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第58話
ヴァレリア湖の宿に到着したエステル達は仲間達と談笑していたケビンや、イオン達を見つけて驚いた後事情を聞くと、ケビン達は”四輪の塔”を調べていた所、街道で宿に向かう仲間達と出会い、情報交換をする為に仲間達といた事を説明した。
そしてケビン達と情報交換をしたエステル達はケビンの希望によって、ケビン達も一緒に休暇を過ごす事にし、エステル達は休暇を過ごし始めた。
日々の緊張から解放され、寝心地のいいベッドで爽快な朝を迎える朝……
午前中は、ボートを借りて湖上で水遊びを楽しみ……
お昼は、皆でランチを囲んだ後、腹ごなしの運動代わりに模擬戦を楽しみ……
そして午後は、釣り糸を垂れながらゆったりと時間を過ごす……
楽しくも穏やかな時間はあっという間に過ぎていった。
~3日後・川蝉亭・夕方~
「は~、遊んだ遊んだ♪」
「えへへ……。とっても楽しかったぁ♪」
「うふふ、レンも久しぶりにとても楽しんだわ♪」
「アリエッタもみんなと一杯遊べて、楽しかった、です。」
「私も。みんなとの休暇、凄く楽しかった。」
「ふふ、今回の休暇のお蔭で、心身共にリフレッシュできましたね。」
「私もこんなにも大勢の方達と一緒に楽しむのは初めてで本当に良い体験でした。」
「フフ、良い骨休みになったわね。」
「いや~、お酒も飲まずに楽しめたのは久しぶりだわ。」
女性達はそれぞれ休暇の感想を楽しそうに語り合っていた。
「とか言っちゃって……あたしたちが釣りをしている間、果実酒とか飲んでなかった?」
「あら、あんな軽いの酒のうちに入らないわよ。ねえみんな?」
エステルが釣りをしている時、酒を飲みながら見学していた事を思い出したエステルにジト目で見つめられたシェラザードは意味ありげな視線で他の女性達を見回し
「あ、あはは……」
「え、えっと……」
「答えない方が身の為、です。」
「互いの為にも答えるべきではないですね。」
「下手に答えたらレン達、何をされるかわかんないしねえ?」
「?答えたら一体何をされるの?」
シェラザードに視線を向けられた他の女性達は答えを濁している中ソフィは首を傾げ
「ふふ……。コメントは控えておきますね。それにしても……エステルさんって釣りが本当にお上手なんですね。」
クローゼは苦笑した後何匹も魚を釣っていたエステルを思い出した。
「えへへ、そうかな?」
クローゼの称賛の言葉にエステルは照れたが
「まあ、エステルがレンに勝てる唯一の取り柄だから上手で当たり前よ。」
「あんですって~!?」
レンの余計な一言を聞くとレンを睨んだ。
「ふふ、小さい頃からのこの子の趣味だからね。そういえば……ケビンさんも好調だったわね。」
「あ、うん。けっこう好きみたい。ロッド捌きとかもなかなか堂に入ってたし。もう少し腕を磨けばあたしの良いライバルになるかもしれないわね♪」
(フフ……釣り好きの所は相変わらずのようね……よくリースにせがまれて、魚を釣った後焼いて食べている所をシスターに見つかって怒られていたあの頃が懐かしいわね……)
シェラザードの言葉を聞いたエステルはレンを睨むのを中断した後嬉しそうな表情で答え、アーシアは懐かしそうな表情をしていた。
「それにしても……気付けば、もうすっかり夕方ね。」
「あ……」
アーシアの言葉を聞いてふとヨシュアと共に湖の宿で過ごした日を思い出したエステルは夕陽に照らされた窓を見つめた。
「エステル?」
「お姉ちゃん、どうしたの?」
エステルの様子にレンとティータは首を傾げ
「あ、うん……。あたし……ちょっと外で散歩してくるね。夕食までには戻るから。」
二人に話かけられて我に返ったエステルは椅子から立ち上がった。
「そっか……。遅くなったら、あんたの分は山分けにさせてもらうわよ?」
「あはは、分かってますって。それじゃあ、また後でね。」
そしてエステルは部屋を出ていった。
「あ……。シェラさん、あの……」
「大丈夫よ、ティータちゃん。できれば今はそっとしておいてあげて。」
「もしかしてヨシュア、ですか?」
「アリエッタさん。」
ティータが遠慮気味に尋ねた事にシェラザードは頷き、アリエッタがふと呟いた疑問を聞いたアーシアは静かな表情でアリエッタを見つめ
「あ……」
「……………」
「失言、でした。」
クローゼは不安そうな表情をし、レンは目を伏せて黙り込み、アリエッタは静かな表情で呟き
「?もしかしてエステルは以前、ヨシュアとここで過ごした事があるの?」
「ええ。そういえば、あの時も……こんな風に夕日が綺麗だったわね。」
ソフィの疑問に頷いたシェラザードは思い出すかのように呟き
「……………私も少し散歩してきます。」
ステラは椅子から立ち上がってエステルを追うように部屋を出て行った。
~桟橋~
「は~……ほんと綺麗な夕焼けね~。あの時と同じだわ……」
桟橋まで来たエステルはかつて空賊事件の時に泊まりに来て、その時の情景――夕方に同じ場所でハーモニカで”星の在り処”を吹くヨシュアを思い浮かべた。
「………………………………」
そしてエステルは何を思ったか、ヨシュアから渡された夕陽に照らされ、黄金に輝いているハーモニカを荷物から取り出した。
「空も水も夕焼けもあの時と同じなのに……。みんなと一緒にいてすごく楽しいのに……。やっぱり……全然違うよね。」
ハーモニカを見ながらエステルは溜息を吐いた。
「あーあ、ダメだな……。自分のペースで追いかけるってせっかく答えを出したのに……。これじゃあ、ヨシュアにも笑われちゃうよね。また、練習してみようかな?」
そしてエステルはハーモニカで”星の在り処”を吹き始めた。
~~~~~~~~~~~♪
エステルが吹いたハーモニカは間違いはなく、正しい曲だった。
~~~~~~~~~~~♪
そしてエステルは”星の在り処”を吹き終えた。
「できた…………」
今まで何度練習しても吹けなかった曲を吹き終えた事にエステルは驚いた。
「―――懐かしい曲ですね。」
その時ステラがエステルに近づいてきた。
「ステラさん……」
「今の曲は”星の在り処”、ですよね?リベール人のエステルさんがどうしてエレボニアで昔流行っていたその曲を知っているのですか?」
「えっと、ヨシュアがいつもこのハーモニカで吹いていた曲なんだ。」
「そうだったんですか…………」
エステルの答えを聞いたステラは黙り込んだ。
「えっと……シェラ姉達から聞いたけどステラさんって、”剣帝”―――レーヴェの幼馴染なんだよね?」
「ええ、それがどうかしましたか?」
「その……ずっと聞きたいと思っていたんだけど……ステラさんもヨシュアの事を知っているの?」
「………どうしてそう思われたのですか?」
「うん……ヨシュアはロランス少尉―――レーヴェのことを気にしてた。顔は分からないのに誰だか知っているみたいで……。それでいて正体を知ろうと必死になっていた気がする。」
「なるほど……………記憶を失っていてもあの子は頭の片隅でレーヴェの事を覚えていたのですね。」
エステルの話を聞いたステラは静かな様子で答えた。
「!!やっぱりヨシュアの事を知っているの!?」
「ええ……とは言っても、あの子が”結社”に入る前の頃しか知りませんが……」
「それでもいいわ。あたしはヨシュアの辿ってきた軌跡をどうしても知っておきたい。その気持ちは本当だから。」
「……わかりました。――――当時ヨシュアは遊撃士を目指して剣の練習をするレーヴェをヨシュアの姉と共に見守っていました。」
「へっ!?ゆ、遊撃士!?レーヴェが!?しかも”姉”って……ヨシュアにお姉さんがいたの!?」
ステラの口から語られた驚愕の事実を知ったエステルは信じられない表情で声を上げた。
「ええ。――――”カリン・アストレイ”。それがヨシュアの姉の名前です。ちなみにそのハーモニカは元は彼女の物だったのです。」
「ええっ!?こ、このハーモニカってヨシュアのお姉さんの物だったの!?」
ハーモニカの真の持ち主がヨシュアの姉である事を知ったエステルは驚きの表情でステラを見つめて尋ねた。
「はい。………”ある事件”によって彼女は命を失ってしまったそうなのですが……彼女が死ぬ直前にそのハーモニカを彼女はヨシュアに手渡したそうです。……カリンが常にヨシュアの傍にいるという意味を込めて。」
「そうだったんだ………ヨシュアのバカ……そんな大切な物、あたしに押し付けるんじゃないわよ……」
ステラの話を聞いたエステルは呆けた後小声でヨシュアに恨み言を言った後気を取り直してステラの話を聞き、疑問に思った事を尋ねた。
「えっと、さ。カリンさんが死んだ原因の”ある事件”……聞いてもいいかな?」
「……申し訳ないのですが……その事についてはイオン様達からも誰にも教えないように固く禁じられていますので、話せないのです。」
「ええっ!?な、なんでヨシュアのお姉さんが死んだ事件にイオンさん達―――ううん、”星杯騎士団”が関係しているの!?」
「国家間の問題が絡む為、中立の立場を取っている星杯騎士団―――いえ、七耀教会はその事について関わる事もそうですが第三者に教える事も許されないとの事です。」
「”国家間の問題”って……あ、そう言えばアガットがラヴェンヌ村の慰霊碑でモルガン将軍に”ハーメル”の事について聞いた時そんな答えが返って来たって言っていたけど……もしかしてその”ハーメル”がヨシュアのお姉さんが死んだ事件に関係しているの?」
「………ええ。」
「そっか……」
ステラの答えを聞いたエステルは残念そうな表情で肩を落とした。
「……あの、エステルさん。エステルさんがヨシュアを探している話を聞いた時からずっと訊ねたいと思っていたのですが……もしヨシュアに会えたその時、エステルさんはどうするおつもりなのですか?」
「え……」
ステラに突如尋ねられたエステルは呆けた表情でステラを見つめた。
「…………ヨシュアが”結社”に入っていた事情はイオン様達を通して知っていますし、ヨシュアがエステルさん達の前からいなくなった理由もある程度事情を知るケビンさんから聞いています。ずっと一緒に笑い合って来たエステルさん達の前から姿を消す程の決意を持つヨシュアにもし会えたその時……どんな言葉をかけて連れ戻すつもりなんですか?」
「………………………………。ひっぱたいても連れ戻すって思い込んだこともあるけど……。さすがに、そんな無茶が本当にできるとも思えないし……。正直言うと、あたしの言葉はヨシュアに届かないかもしれない。」
ステラに尋ねられたエステルは悲しそうな表情で答え、溜息を吐いた。
「それが分かっていても……ヨシュアを追いかけるんですね?」
「うん……。ヨシュアの背負った事情とかあたし自身の至らなさとか色々なことを考えたんだけど……。結局、いくら考えてもヨシュアに何て言ったらいいか思いつかなかったの。だから―――その言葉は会ってから見つけることにする。」
「え……」
エステルの答えを知ったステラは驚いた様子でエステルを見つめた。
「だって、あたしの想いはあたしだけのものじゃないから。ヨシュアと一緒にいる間に自然と育ってきたものだから。だから……ヨシュアに会えたら初めてそれは浮かんでくると思う。あたしだけが伝えられるヨシュアへの言葉を―――」
「………………………………」
「だから、会えないうちからウジウジ悩むのは止めにしたの。えへへ、さっきみたいに感傷にひたることはあるけど……。それは乙女の特権ということで同じ女の子同士、勘弁してくれないかな?」
「………………………………」
照れた表情で自分を見つめるエステルをステラは呆けた表情で見続け
「フフ、ヨシュアには本当に勿体ないくらい、素敵な女性ですね、エステルさんは……カリンも大切な弟がこんな素敵な女性に思いを寄せられる事を知れば、きっと喜ぶでしょうね。」
やがて優しげな微笑みを浮かべてエステルを見つめた。
「ア、アハハ……幾らなんでもそれは褒めすぎだって。」
「フフ…………そうだ、お礼になるかどうかわかりませんが、そのハーモニカを貸してもらえませんか?エステルさん。」
「あ、うん。別にいいけど……」
「フフ、ハーモニカを吹くのは本当に久しぶりですから、下手になっていたらごめんなさいね?」
渡されたハーモニカを手に持ったステラはエステルに視線を向けて苦笑した後懐かしそうな様子でハーモニカを見つめた後エステルが先程奏でていた曲――――『星の在り処』を吹き始めた。
~~~~~~~~~~~♪
(あ…………………)
ステラが吹いている姿がヨシュアと被ったエステルは呆けた後ジッとステラを見つめた。
~~~~~~~~~~~♪
そしてステラは決して間違える事無く、『星の在り処』を吹き終えた。
「フウ。久しぶりでしたけど、意外と吹けるものですね……え。エ、エステルさん!?どうしたんですか!?」
自然と涙を流して自分を見つめるエステルに気付いたステラは驚いてエステルを見つめ
「あ……えへへ……ステラさんとヨシュアの姿が被っちゃって、勝手に涙が出て来ちゃった。ハーモニカを吹いているステラさんの姿……ヨシュアとすっごく似ているし。何でかしら?ヨシュアのお姉さんのカリンさんならまだわかるけど、ヨシュアのお姉さんじゃないステラさんとヨシュアが似ているなんて。」
ステラに声をかけられ、我に返ったエステルは涙をぬぐって苦笑した後不思議そうな表情で首を傾げた。
「え、えっと……他人の空似じゃないですか?それよりもさっきの私とヨシュアは、そんなにも似ていたのですか?」
「うん!さっきのステラさんを見てヨシュアが女装をした時を思い出したくらいよ。」
「え……?ヨ、ヨシュアが女装、ですか?一体どうしてヨシュアがそんな事を?」
ヨシュアが女装をした事があるという信じられない話を聞いたステラは冷や汗をかき、表情を引き攣らせた。
「えっと実は遊撃士の依頼でクローゼが通っている学園祭の出し物で劇をする事になってね。その時生徒会長のジルの提案で、男子と女子の本来やるべき役割を交換するって趣向でね。あたしとクローゼが騎士役をやって、ヨシュアがお姫様役をやったんだ!それと情報部の目を盗んで女王様に会う時にも女装をしてあたしと一緒にメイドになったの。」
「まあ……そんな事が。フフ、その場面を観れなかったのは非常に残念です。……あ。ハーモニカを返すのを忘れていましたね。」
エステルの説明を聞いたステラは微笑んだ後、エステルにハーモニカを返した。
「そう言えば……ステラさんはヨシュア達の昔の事を知っていたけど、もしかしてステラさんもその”ハーメル”って所に住んでいたの?レーヴェと幼馴染って事はヨシュアやヨシュアのお姉さんとも幼馴染だったんでしょう?」
「うっ。そ、それは……」
エステルの疑問を聞いて唸り声を上げたステラが言葉を濁していたその時
「あれ?何か近づいて来ていない?」
「え……?」
何かに気づいたエステルの言葉に呆けた後エステルと共に湖を見つめると、人が倒れているボートが桟橋に近づいてきた。
「クルツさん!?」
ボートの中で倒れているクルツを見たエステルは驚き
「と、とにかく引き上げて治療をしないと……!私は皆さんを呼んできます!」
「うん、お願いっ!」
そしてステラは慌てた様子で助けを呼びに行った。
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