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非日常なスクールライフ〜ようこそ魔術部へ〜

作者:波羅月
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第9話『素質』

 
前書き
一応前回の続きです。 

 
魔術部に入部し、活動を始めてて早3日。
…と言っても、真面目に活動していたのは俺だけ。
先輩方のほとんどは部室にすら顔を出していなかった。
今日だって部室には俺と黒木部長しか居ない。

ちなみに俺の活動とは黒木部長に魔術を教わることで、それを初日からずっと続けている訳だが・・・。


「部長、ホントにできるんですか?」

「魔術の基本は信ずること。信じない者には何もできないよ」


俺は毎日毎日不思議な特訓をさせられている。
精神統一としての座禅や正座はまだわかる。集中力というのは魔術に欠かせなさそうだし。

だが、掛け声やポーズの練習は必要なくないか!? どう考えても無駄な気がする! あと恥ずかしい!

・・・と以前部長に伝えたら、
「こういうのは形から入るんだよ!」
と言われた。でもやっぱ。必要ないと思う。たぶん部長の趣味だろう。


「ま、俺は習得に1年かかったがな」

「えっ!?」


ここに来て初耳である。何でそれを先に言ってくれないの!?
いや確かに時間がかかるっていうのはわかるけど、それでも1年もかかるのか…。


「正確には、“魔力の源作り”にだな」

「魔力の…源…?」


俺はたまらず聞き返す。
“魔力の源”とは何だろうか? そしてそれを作るって…?


「説明しよう。人が魔術を使うには、そのエネルギーとなる『魔力』が必要になる。えっと…RPGで言うところの“MP”かな?」

「なるほど」


頷く俺に、部長は話を続ける。


「けど魔力は使えば当然無くなる。だからその魔力を補給できる『源』がいる訳だ。すなわち湧水地点だ」

「へぇ」


一つわかったのだが、この人は説明が上手だな。具体例だってしっかりしてるし、想像しやすい。

『魔力の源』か…。つまり、俺はそれを身体に作らないと、魔術を使えても一時的でしかないという訳か。まぁ逆に言えば、それさえ作れば魔術は使えるってことか?


「察せたかな? それが君のこれからの目標だ」

「どうやったら作れるんですか?」


俺は最もな質問をぶつけた。
この人は魔力の源を持っているのだから、作り方はわかるだろう。部長が1年かけて、ようやく手に入れた魔力の源の作り方って…?


「残念ながら作る方法は見つかってない」

「はぁ?」


あまりの回答につい生意気な声が漏れる。
慌てて口を塞いだが、それを部長は読んでいたかのように笑って流してくれた。


「そりゃ驚くよな。でも、作る方法が無いだけで"宿す"方法は有るんだよ」

「え、それって…?」


作らずに宿す? 一体何が違うんだ?


「では、具体例として『橋を架ける』で説明しよう!」

「は、はぁ…」


また部長ワールドが始まった。
それでも説明が上手なんだから侮れないんだよな。


「橋を架けるにはまず材料として木材が要る。あ、作るのは木の橋ということで。そして橋の材料の木材を『魔力』としようか。そして『魔力の源』をどこかの森としよう。ならそれの宿し方は?」

「へ? えっと…つまりは魔術が橋ってことだから? それを作るために、元と言うことで材料が必要になって? さらにそれから…?」

「はいストップそこまで。ここで森の元を考えるのは難しかったか。なら視点を変えよう!」


いよいよ頭がこんがらがってきた。
さすがにここまで凝った話だと、俺の頭じゃついていけない…。


「“森を宿すもの”って言ったらわかるかな?」


森を宿す? 宿すってことは・・・含む。森を含む・・・いや違うな。
なら、宿す=生えるとして…えっと・・・あ!


「"自然"、ってことですか?」

「う~ん、まぁ正解。じゃあ次だ。森を宿すには自然が要る。もちろん橋を架けるのにも自然が必要だ。もうわかるだろ?」


自然とはどこにでも存在するもの。元々そこにあるもの。
これらの意味を照らし合わせて導き出される答え・・・


「自然…すなわち、素質」

「大正解~!」


つまり、魔術の習得には素質が必要だと。それが無ければ魔術は習得できないと。そういうことか…。
俺はがっかりし、地に膝をつく。


「まぁまぁそんなにへこむな。君に素質があるかもしれないだろ」

「どうせ無いですよ。俺は昔から“ザ・フツー”なんですから」


俺は脳は完全にネガティブ思考へと変換された。
もう立ち直ることなど無いだろう。
だって今まで俺は、普通の能力で平凡な人生を歩んできたんだ。今さら非凡なことが起こる訳がない。そう断言できる。


「じゃあ仮に君に素質があると言ったら?」

「そりゃ喜びますけど…」


喜ぶけど無いものは無いんだ。俺には魔術なんて無理なんだよ。


「でもこの部にいる奴で魔術を使えるの、俺と副部長だけなんだよな。他の奴らは魔力の源なんて欠片も持ってないし、“暇潰し”にここに来てるだけだしよ」

「えっ」


途方に暮れていた俺に、部長が追い討ちをしてくる。
アレか…? この人も人の傷を抉るタイプなのか…?

てかそれよりも今の部長の話が本当なら、もし俺に魔力が無かったら、部活動なんてやってないも同じ…!? また帰宅部に…!?


「まぁそう慌てなさんな。そんな君に面白い物を見せよう!」

「?」


俺がアタフタする中、部長は不敵な笑みを浮かべると、部室の隅においやられていた物を抱えるように取り出し、持ってきた。
放置されていたのか、随分と埃を被っている。


「何ですか、これは?」

「魔力測定器だ! 正確にはその人に眠る、魔術の素質を計る物だ!」

「……」


シュール過ぎるよ。いきなり目の前に出された物が魔力を計るって…やっぱシュール過ぎる!

驚く俺をそっちのけにし、床にドンと測定器を置く部長。それは地球儀のような形をしており、中央には黒い水晶の様な物が付いていた。


「これってどう使うんですか?」


俺は安直な質問をする。
正直胡散臭いが、もしかしたら俺には魔力があるってわかるのでは、と期待もしている。


「ここに手をかざすだけでいい」

「はい」


部長に言われた通り、測定器の丁度真上の位置に手を配置する。それだけでは、まだ何の変化もない。


「目を瞑って集中して」

「え…はい」


集中…か。
さっきまで散々部長が言っていたことだ。
集中…集中…。

何が起こるのだろうか。どうやって測定するのか。色々な疑問が俺の頭を飛び交う中、俺の手が何かを感じた。


「部長…この測定器、何か動いてません?」

「あぁ動いてるよ。測定中だ。まだ集中していてくれ」

「はい…」


どんな感じに動いているんだろう。なんか手に僅かだが風を感じる。
すると音も鳴りだした。キュイィィィンという機械音だ。


「……」

「……」


無言の時間が続く。
俺が喋れば集中が途切れるし、部長が喋っても集中は途切れる。こんな状況なんだろうが、正直気まずいな何か。早く終わってくれ…。


「あと10秒くらいな…」

「はい…」


閉じた目の隙間からふと光が見えた。発光でもしているのだろうか? だが確認する訳にはいかないので、瞑ったまんまにしとこう。

あと5…4…3…2…1…0。

音が止んだ。


「よし目を開けて良いぞ」


俺はゆっくりと目を開け、測定器を注視する。
するとさっきまで黒かった水晶が、青く輝いていた。まるで小さな星の様に。


「部長、これどうなんですか?」

「……」


光ってることに意味があるのか、光の色に意味があるのか、何も知らない俺はとりあえず部長に訊く。
だが、部長は答えず、何かを考えてるようだった。
待つのも面倒なのでもう一度声を掛けようかなと思っていると、部長が口を開いた。


「残念だが・・・」

「え…?」


「残念」。部長は今そう言った。
てことは俺に魔力は無かった…?
じゃあ俺はこれからこの部活で何をすれば・・・?



「・・・ってのは嘘で」

「へっ!?」


俺は今までの人生の中でもダントツにマヌケな声を出して驚いた。『嘘』ってことは・・・。


「いや~すごいね君。まさか俺よりも数値が高いなんて!」

「マジですか!?」


どうやらやったみたいだ! 俺には素質が有るらしい! つまり俺は魔術を使える!

人生の中でここまで喜んだことはあっただろうか。それほどまでに嬉しかった。


「部長、早く魔術使いたいです!」

「まぁ焦るな。言ったろ? 今計ったのはあくまで素質。これから先は、君自身が頑張って魔力の源を身に付けるんだ」


そうか。これはまだ最初の段階。これから努力しなきゃいけないんだ。

俺の心に火が点いた。


「部長、俺って部長より素質の値が高いんですよね」

「あぁそうだが?」

「だったら俺、部長を超える魔術師になりますよ!」


夢、ができた。
まだ部長のことなんか全く知らないし、どんな魔術を使うのかも知らない。
でも同じ場所に立てた以上、俺は精一杯努力して部長を超えたい!
こんなに熱くなったのも一生の中で初めてだ。だからこれが、俺の夢なんだ!


「部長…いや師匠、指導お願いします!」

「そこまで言われると何か新鮮だな。けど、俺のことは部長でいいよ。こちらこそよろしく!」


俺と部長は固い握手をした。

 
 

 
後書き
はて。何かがイメージと違います。
やはり、自分の文才のせいでしょうか?

まぁどうでもいいか。
次は授業を1つやっていきます。何をするかはお楽しみで。

今回も読んでくださった方、ありがとうございます! 
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