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馬の様に牛の様に

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8部分:第八章


第八章

 後日美佳はまた友人に対して話すのだった。静かに。
「何ていうかね」
「何ていうか?」
「いいわね」
 最初はおのろけからだった。
「本当にね」
「あら、いきなりどうしたのよ」
「丈さんだけれど」
 その夫のことである。彼のことを言うのだった。
「あの人ね」
「あの人がどうかしたの?」
「優勝したのよ、フードファイトにね」
「へえ、よかったじゃない」
 それを聞いて微笑む彼女だった。
「優勝したなんて」
「そうでしょ?もうね」
 その明るい顔で話す美佳であった。
「あの人それで優勝は私のおかげだって」
「あんたのなの」
「そうなのよ。もう優勝したってね」
 美佳ののろけはさらに続くのだった。
「言ってね。どう思う?」
「何でそんなことを言ったのよ」
「私がね」
 そしてそのフードファイトのことを話すのであった。さらにのろけの度合が高まっている。
「あの人が負けそうになって頑張れってことを言ったらね」
「それでなのね」
「そう、それでなのよ」
 さらに話す美佳だった。
「私のおかげだってね」
「何か凄いことになったみたいね」
「凄いわよ、本当に」
 満面ににこにことした顔になっていた。
「全くね」
「あら、じゃあもうどれだけ食べてもいいのかしら」
「いいわよ。私が間違ってたわ」
 こういう考えに至ったのであった。
「どれだけ食べてもね」
「そうでしょ?沢山食べる位はいいのよ」
 友人もまた微笑んで述べるのだった。
「それに」
「そうね。些細なことだし」
 その大食は些細なことだと。そのこともわかった美佳だった。
 そうしてさらに。明るく言うのだった。
「私を愛してくれているしね」
「愛さえあれば大食もまた」
「いいものね」
 こう言って満面の笑顔でここでもロシアンティーを飲むのだった。それは優しい甘さが含まれていた。


馬の様に牛の様に   完


                2009・10・9
 
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