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英雄伝説~焔の軌跡~ リメイク

作者:sorano
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第55話

~霧降り峡谷・北西部・最奥頂上~



霧降り峡谷を登り続けたエステルたちはついに、竜の棲む洞穴を見つけた。

(ああっ……)

(いたか……!)

竜を見つけたエステルは驚き、アガットは警戒した。

(ね、眠ってるのかな?)

(そのようね。だけど私達にとっては好都合ね。)

(ああ。上手くいけば一瞬でカタを付けられる!)

眠っている様子の竜にティータは首を傾げ、ルークとアーシアは口元に笑みを浮かべ

(フン、あの銀髪の男の姿は見えないが……―――まさか臆して逃げたのか?)

(そんな風には見えないけど……とにかくレーヴェがいないのだったら絶好の機会ね。アガット、どうする?)

ジューダスの推測に首を傾げたエステルはアガットに視線を向けた。



(まずは俺1人で接近する。うまく行きゃあ、そのまま”ゴスペル”を破壊できるだろう。)

(そっか……分かった。)

(アガットさん……)

(大丈夫だ、心配すんな。失敗した時は援護を頼むぞ。)

(はいっ……!)」

(気を付けてね……!)」

そしてアガットは特殊なユニットが付けられた重剣を持って、近くの岩陰に身を隠した。

(あれか……)

”ゴスペル”を確認したアガットは、重剣についたユニットの電源を入れた。

(……行くぜ!)

アガットは眠っている竜に走って近づき

「らあああっ!」

ありったけの力で竜の額に重剣を食い込ませた!その時、”ゴスペル”にヒビが入る音がした。

「やったか……!?」

アガットの願いは通じず、”ゴスペル”から黒い光が出て、竜が目覚めた!

「チッ……浅かったか!」

竜の様子を見たアガットは舌打ちをした後、ユニットが付いた特殊な重剣を一端しまい、新しく買い直した重剣を構えた!そして竜はアガットに炎を吐いた!



「!!」

「アガットさんっ!」

「アガット!」

竜が吐いた炎を回避したアガットにティータとエステルを先頭に仲間達が次々と武器を構えて駆け寄ってきた。

「ヒビは入ったが破壊まではできなかった!こうなりゃもう1度チャンスを作るしかねえ!手を貸してくれ!」

「もちろん!」

「はいっ!」

「ああ!」

「ええ!」

「チッ、世話を焼かせるな!」

アガットの言葉にエステル達はそれぞれ力強く頷いた後、竜との戦闘を開始した!



「グオッ!!」

竜が頭を突っ込んでかみついてきたその時、エステル達は散開して回避し

「空襲剣!!」

竜の噛み付き攻撃を回避したジューダスは竜の頭に攻撃すると共に竜から離れ

「も、燃えちゃえ!!」

ティータは導力砲から炎の砲弾を放つ技―――バーニングフォースを竜の頭に命中させた!

「グオオオッ!!」

「は、はわわわっ!?」

頭を攻撃された竜は炎のブレスをティータに吐き、炎のブレスがティータを襲ったその時

「そこだぁっ!!

アガットがティータの前で重剣を叩きつけて炎の衝撃波を放って、自分達に襲い掛かってくる部分の炎のブレスを貫くと同時に竜の頭に命中させた!



「ハァァァァァァァァ……!」

竜がブレスを放っている間に竜の足元に近づいたエステルは足と足の間でコマのように回転して棒を両足に命中させ

「行け!――――インフィニティスパロー!!」

アーシアは竜の足に集中して法剣の刃を飛び回らせて攻撃し

「空破!絶風撃!!烈震天衝!斬魔!飛影斬!!―――大雪斬!!」

エステルと共に竜の足元に近づいたルークは片足を集中攻撃していた。

「グオオオオオッ!!」

足元を集中攻撃された竜は叫びながら翼を何度も羽ばたかせて足元にいるエステル達を吹っ飛ばすと共に尻尾を振るって吹っ飛ばしたエステル達を薙ぎ払い、薙ぎ払い攻撃を受けたエステル達は近くの岩に叩きつけられた。

「っ……!女神よ、我らにお慈悲を……―――セイクリッドブレス!!」

仲間達と共に身体に伝わる痛みを耐えながら立ち上がったアーシアは星杯のペンダントから癒しの光を発して周囲の仲間達の傷や自分の傷を回復し

「集気砲!!」

エステルは周囲に漂う”気”を集めて自分や自分の周囲にいる仲間が負った傷を回復していた。



「覚悟はできたか!?デモンズランス・ゼロ!!」

その時ジューダスは上空へと跳躍し、異空間から現れた暗黒の巨槍を投擲して竜の身体に命中させ、ジューダスの術に命中した竜は標的をジューダスに変えて落下して無防備になっているジューダスにドラゴンブレスを放とうとしたが

「えいっ!!」

「グオッ!?」

ティータが導力砲から放った煙幕弾―――スモークカノンの砲弾が頭に命中した瞬間に発生した煙によって怯んだ。

「ふおらあああっ!!」

その隙にアガットは竜の足元に炎の闘気を纏った重剣を叩きつけて炎の衝撃波を発生させて攻撃し

「らああああっ!!」

そのまま重剣を左から右へと薙ぎ払う技―――レンチングスイングで追撃し、アガットが攻撃している間にエステルやルーク、ジューダスが詰め寄り、アガットと共にそれぞれ竜の足を攻撃し始めた!

「瞬迅爪!秋沙雨!翔舞煌爆破!!」

エステルは突撃から連続突き、跳躍して棒を叩きつけて衝撃波を発生させる技へと連携し

「双牙斬!紅蓮襲撃!ぶっ潰れちまいなあ!魔王地顎陣!!」

ルークは斬り下ろしから斬り上げ攻撃と共に跳躍した後炎の闘気を纏った蹴りで追撃して着地した後剣を竜の足に叩きつけて衝撃波を発生させる技へと連携し

「幻影刃!まだだっ!爪竜連牙斬!千裂虚光閃!」

ジューダスは電光石火の速さで斬撃を叩き込んだ後休む暇もなく次々と剣技を繰り出して竜の足に叩き込み

「それっ!――――ロストメビウス!!」

「えいっ!――――ダークマター!!」

後方にいるアーシアとティータはそれぞれの遠距離攻撃武器で竜の頭に攻撃した後駆動を終えたオーブメントでアーツを放って追撃していた。



「グオオオオオオオッ!!」

エステル達の総攻撃を受けた竜はその場で激しく足踏みして暴れ出し、足踏みによって竜の足元にいる4人はそれぞれ傷を負ったが

「が、頑張って!!」

ティータが導力砲から特殊調合によってできた回復の砲弾がエステル達の上空で爆発して癒しの光を降り注がせて4人の傷を回復した。

「グオオオオッ!!」

一方竜が咆哮を上げると上空から巨大な球体がゆっくりと降り始め

「―――!不味いわ!我が右手に有りし星の杯よ、天より授かりし輝きもって我らが盾となれ………」

巨大な球体からとてつもない力を感じたアーシアは血相を変えた後星杯のペンダントを掲げて聖句を呟いた。そして巨大な球体が地面に降りて大爆発を起こしたその時

「女神よ、我らに守りの加護を!―――グラールスフィア!!」

アーシアの味方全体に絶対防壁を付与する法術が発動し、竜が放った古より伝わりし術――――プレッシャーエクスプロージョンを防いだ!



(坊ちゃん、準備は整いました!今です!)

「僕の前から消え失せろ!―――ブラックホール!!」

爆発が収まるとジューダスは力を溜め終えたシャルティエを掲げて術を発動した。

「グオオオオオオッ!?」

ジューダスが発動した術によって発生した巨大な暗黒の空間は強烈な吸い込みで竜の動きを制限すると共に吸い込みと同時に発生する暗黒の刃で竜の身体を傷つけていた。

「みんな、今よっ!」

「一気に決めるぞ!」

動きが鈍くなった竜の様子を見たエステルとルークが号令をかけると、二人や仲間達はそれぞれの奥義を一斉に叩き込み始めた!

「これで決めるっ!はっ!はぁぁぁぁぁぁぁぁ!せぃ、やっ!たぁぁぁ!!」

エステルは奥義――――桜花無双撃で攻撃し

「この一撃で沈め!――――ハアッ!!」

ルークは奥義――――無想覇斬で攻撃し

「行くぜっ!うおぉぉぉぉ!うらっ!せいっ!はぁっ!ダイナストゲイルっ!」

アガットは重剣による連携攻撃の奥義―――ダイナストゲイルで攻撃し

「―――この奥義にて全てを決する!今万感の思いをこの技に込めて………!魔人闇(マリアン)!!」

ジューダスは心から愛する者の名を付けた奥義で攻撃し

「か、覚悟してください!い、行きます!やあぁぁぁぁぁ!」

ティータはラッセル博士から借りているラッセル家秘蔵の火薬式の大型の銃で惜しみなく弾丸を放つ奥義――――カノンインパルスで竜の頭目掛けて集中攻撃し

「これで終わらせるわ!刃よ、行けッ!まだまだっ!―――奥義!ヘヴンサウザンド!!」

アーシアは法剣の刃を飛び回らせた後ボウガンから次々と矢を放ち、更に飛び回っていた刃が戻って元の姿に戻った法剣に膨大な法力を溜めて巨大な光の剣と化した法剣で薙ぎ払う連携奥義にしてアーシア最大の奥義――――ヘヴンサウザンドで攻撃した!



「グオオオオオッ!?」

エステル達の奥義を次々と受けた事によって竜は地面に倒れたが

「グオオオオオオオオオ―――――ッ!!」

すぐに立ち上がり、暴れ出した!

「あ、あう……」

「くっ……。普通ならとっくに倒れているはずなのに……!!」

「まだ立てるのかよ!?」

暴れ出す竜の様子にティータは不安そうな表情をし、エステルとルークは唇を噛みしめて竜を睨み

「無限の生命力……教会に伝わる伝承通りね……!」

「チッ、見た目通り体力”だけ”は無駄にあるようだな……!」

真剣な表情で竜を見つめながら呟いたアーシアの話を聞いたジューダスは舌打ちをした後、竜を睨んでいた。



その時アガットは周りを見て、高台を見つけ、ある提案を思いついた。

「ティータ!閃光弾を持ってるか!?」

「ふえっ……はいっ!」

アガットに突如呼ばれたティータは一瞬戸惑った後頷いた。

「そいつで竜のスキを作れ!エステル、ルーク、アーシア、ジューダス!一瞬でいい、お前達は動きを止めろ!」

「ええっ!?」

「何をする気だ!?」

エステルとルークがアガットの指示に驚いたその時、アガットはジャンプして、高台へと登り、先程まで使っていた重剣をしまった後、ユニットを付けた特殊な重剣を取り出し重剣のユニットを起動させて、構えた。



「あ……」

「なるほど……そういう事ね。」

「フン、僕が手を貸してやる事、ありがたく思え!」

アガットの行動を見て察したティータは呆け、アーシアは静かな笑みを浮かべ、ジューダスは鼻を鳴らした。

「ティータ!当てないで撃ち上げちゃって!あたしたちで動きを止めるから!」

「うんっ……!」

そしてティータは閃光弾を竜の頭上に撃った!閃光弾が放った光に竜は一瞬気を取られ

(今だ……!)

竜の様子を見たエステル達は一斉に竜に近づいて総攻撃を仕掛けた後、素早く散開した。すると竜は咆哮を上げながら地面に倒れた!



「………………………………。」

倒れ行く竜の様子を見たアガットは石のアクセサリーを強く握りしめた後、重剣を構え、そして!

「これで決まりだ!!らあぁぁぁぁぁぁ……!ふおらぁ!」

その場で力を溜めた後高台からさらに高くへと跳躍し

「うおぉぉぉぉぉぉ……っ!だぁぁぁぁっ!」

空中で竜の姿を形どった凄まじい闘気を纏い、そして!

「行くぜっ!ドラゴンダ――――イブ!!」

竜の額に付いている”ゴスペル”めがけて、突進した!



常人離れした跳躍から繰り出される、炎を纏った奥義――ドラゴンダイブを竜の額に付いている”ゴスペル”に命中させると重剣は真っ二つに割れ、”ゴスペル”も完全に壊れた!



「やった……!」

「”ゴスペル”が壊れたわ……!」

ゴスペルが壊れるのを見たエステルとアーシアは明るい表情をし

「ハア……何とかなったか。」

(これでマリアンに再び降りかかるかもしれない一番の脅威は退けられましたね、坊ちゃん。)

「フン。」

ルークは安堵の溜息を吐き、ジューダスはシャルティエの念話を聞きながら鼻を鳴らしてシャルティエを鞘に収め

「ア、アガットさん!?だいじょうぶですかっ!?」

ティータは地面に膝をついているアガットを不安そうな表情で見つめた後エステル達と共にかけよって声をかけた。



「どうやら……上手くいったみてえだな。」

「うんうん!大成功よ!」

「やるじゃねえか、アガット!」

「まさに”重剣”のアガットね。」

「フン、それなりにやるようだな。」

アガットにかけよったエステル達はそれぞれ賛辞の言葉をかけた。

「ヘヘヘ……。竜も何とか倒せたし、一件落着といった所か―――」

エステル達の称賛にアガットが照れたその時

(…………見事だ………………)

突如、エステル達の頭に声が響いた。



「え……」

「い、今の声は……」

「何だ、この声……?頭に直接響いてきたぞ……!?」

「どこから聞こえてきた!?」

突然の出来事にエステルやティータ、ルークは戸惑い、アガットは周囲を見回し

「………もしかして。あの竜かしら?」

「何?」

アーシアが呟いた言葉を聞いたジューダスが眉を顰めたその時、竜はゆっくりと起き上がった!

(見事だ……人の子達よ……我が名は”レグナート”。この地に眠る竜の眷族(けんぞく)だ。)

「あ……」

「これは……お前が喋っているのか!?」

「剣の次は竜かよ……」

竜――レグナートの念話にエステルは呆け、アガットは驚いた表情で尋ね、ルークは疲れた表情をしていた。

(私は、おぬしらのような発声器官を持っていない。故に『念話』という形で語らせてもらっている。おぬしらはそのまま声に出して語りかけるがいい。)

「そ、そうか……」

「ふえぇ~……」

「こ、言葉が通じるのなら確認したいんだけど……。もう、あたしたちと戦うつもりはないのよね?」

(うむ、あの(はたらき)に操られていただけだからな。よくぞこの身を戒めから解き放ってくれた。礼を言わせてもらうぞ。)

「あはは……ど、どういたしまして。」

竜に感謝されるという珍しい体験にエステルは苦笑していた。



「フン……礼はいい。俺たちがここまで来たのはてめぇを解放するためじゃねえ。これ以上の被害を防ぐためだ。」

「―――同感だ。第一僕は貴様を葬るつもりでそいつらに手を貸していたのだからな。」

「おい、アガット……それにジューダス……」

「竜を相手に失礼すぎよ。」

竜であるレグナートに敬意を払わないアガットとジューダスの態度を見たルークは冷や汗をかき、アーシアは呆れた表情で指摘した。

(私が被害を与えてしまった街や村の事だな……。意志を奪われていたとはいえ、確かに私にも責任があるだろう。さて……どう償ったものか。)

「ま、まあ、悪いのは”結社”の連中なんだし……。ケガ人は出ちゃったけど、亡くなった人もいなかったし……。誠意さえ伝われば許してもらえると思うわよ?」

罪悪感を持っているレグナートを見かねたのかエステルは慰めの言葉を言った。

(ふむ、誠意か……。このような物で伝わるか自信はないのだが……。人の子よ、もう少しこちらに近付いてはもらえまいか?)

「う、うん?別にいいけど……」

「……ったく、何だってんだ。」

そしてエステルとアガットがレグナートに近づいたその時、大きな金色の結晶がエステルとアガットの手に現れた。



「な……」

「わぁ……!」

「金色の輝き……。空の力を秘めた金耀石(コルティア)の結晶ね。」

「だ、だけど……普通のと比べると大きすぎねえか!?」

「フン、竜の力とやらか。」

突然の出来事にアガットは驚き、金色の結晶を見たティータは目を輝かせ、目を丸くして言ったアーシアの言葉を聞いたルークは戸惑った様子で声を上げ、ジューダスは鼻を鳴らした。

(私が付けた爪痕の償いだ。どうか、おぬしらの手から街と村の長に渡してもらえぬか?)

「な、なるほど……。うん、そういう事なら―――」

「―――駄目だな」

レグナートの頼みにエステルは頷こうとしたその時、アガットは目を伏せて断った。



「ちょ、ちょっと!?」

「アガットさん……」

(ふむ、やはり物では誠意は伝わらぬという事か?)

「そういう意味じゃねえ。この大きさだと………1つ、1千万ミラといった所か。1万分の1でいい。これと同じ結晶を寄越しな。」

「へ………?」

アガットの訳のわからない提案にエステルは首を傾げた。

「犯罪でも絡まない限り、遊撃士を雇うのは有料でな。品物の運搬料だったら1000ミラ貰えりゃ充分だ。それさえ払えば引き受けてやるよ。」

「あ……」

「まったくもう……。素直じゃないんだから。」

「ったく、一瞬ビビっただろうが……」

「フフ、竜の依頼を請けるなんて、歴史上初めてかもしれないわね。」

(ふむ、そういう事か。それでは受け取るがいい。)

アガットの説明にティータは安心し、エステルとルークは呆れながら安堵の溜息を吐き、アーシアは微笑み、レグナートは頷いた後、アガットの手に小さな金色の結晶を出した。



「よし……契約成立だな。この2つは、責任をもって村長と市長に届けてやるぜ」

(うむ、頼んだぞ。ふふ……しかし、先ほどの一撃は中々だったぞ。銀の剣士と戦っていた時は何とも頼りなかったが……。一皮剥けたようではないか。)

「なっ……」

「まさか廃坑の事を覚えているのか?」

レグナートの念話を聞いたアガットは驚き、ルークは目を丸くして尋ねた。

(操られてはいたが、意識は残っていたからな。小さき娘よ。おぬしの勇気と健気さにはなかなか感服させられた。ふふ……だから人間というのは面白い。)

「あ、あう……」

「あはは、意外とお茶目な所があるじゃない。」

レグナートの念話にティータは照れ、エステルは苦笑した。

(ふむ、そしておぬしは……。なるほど、道理で覚えのある匂いがするわけだ。”剣聖”の娘だな?)

「へ……!?」

「おいおい、どうしてオッサンを知ってやがる!?」

レグナートの口から出た意外な人物の異名を聞いたエステルは呆け、アガットは戸惑った様子で尋ねた。



(20年前、眠りにつく時、最後に会った人間の1人だ。剣の道を極めると言って無謀にも挑んできたのだが……。いまだ壮健でいるのか?)

「う、うん……。ピンピンしてるけど。……まさか竜とまで知り合いとは思わなかったわ。」

「さ、さすが父さん……」

「フフ、”剣聖”も昔は相当無茶をしたようね?」

レグナートの説明を聞いたエステルとルークは苦笑し、アーシアは微笑み

(なるほど……もしかしてエステルに”素質”があるのは父親の影響かもしれませんねえ。その”剣聖”とやらがどれ程の腕前かわかりませんが、一人で竜に挑み、生きているんですから、相当の腕前のようですしね。)

「…………………」

シャルティエの推測を聞いていたジューダスはエステルに視線を向けて黙り込んでいた。



(フム……そしてお主は教会の”騎士”か。随分と懐かしい匂いがする。)

「―――アーシア・アークと申します。一身上の都合で”星杯騎士団”から離れ、遊撃士の身となっていますが……女神(エイドス)の眷属たる御身に会え、”星杯騎士”として……空の女神(エイドス)の一信者として光栄です。)

アーシアはその場で会釈をし、レグナートに微笑み

(ほう?”闇”の面も見せる教会の騎士が遊撃士とは、随分と変わり者なのだな?)

「フフ、よく言われます。」

レグナートの念話を聞き、微笑みで答えた。

(そしてそこの紅髪のお主と黒髪のお主………お主達からは”幻の至宝”によく似た気配を感じるな………)

「へっ!?ま、”幻の至宝”!?」

「―――どういう意味だ。」

レグナートに名指しされたルークは戸惑い、ジューダスは目を細めてレグナートを睨んで尋ねたが

(すまぬがこれ以上は言えぬ。”幻の至宝”は我が同胞(はらから)が行く末を見守っているとは言え、”盟約”により、人の子達には教えられん。)

「言えないんだったら、意味深な事を言うなよな~。」

「フン、蜥蜴如きがこの僕を試そうとしているのか?」

レグナートの答えを聞いたルークは疲れた表情で溜息を吐き、ジューダスは鼻を鳴らしてレグナートを睨んだ。

「だから喧嘩を売るのは止めなさいってーの。あ、そういえば……。ねえ、”レグナート”。ちょっと聞いてもいいかな?」

ジト目でジューダスに視線を向けて注意したエステルはある事を思い出し、それを聞く為にレグナートに視線を向けた。



(ふむ、なんだ?)

「あなたに”ゴスペル”を付けたのは、あのレーヴェっていう男なのよね?”実験”とか言ってたけど……一体、何の実験だったか分かる?」

(ふむ……誤解を解いておくが。漆黒の(はたらき)を私に付けたのは、あの銀の剣士ではない。『教授』と呼ばれていた得体の知れぬ力を持つ男だ。)

「ええっ!?」

「なんだと……!?」

竜を操ってボース地方に大きな被害をもたらせた張本人と思われる人物の行動を聞いたエステル達は驚いた。

(銀の剣士は、『教授』の供としてここに現れた。そして私が暴走してからは、被害が大きくなりすぎぬよう様々な手を尽くしたのだ。彼が暴走を押さえなければ私は街や村を破壊し尽くすまで止まらなかったに違いない。)

「う、うそ……」

「野郎……どういうつもりだ。」

「フン、どういう理由であろうと、マリアンを傷つけた愚か者は許さん。」

レグナートの説明を聞いたエステル達が信じられない思いを抱えている中、ジューダスは鼻を鳴らして厳しい表情をしていた。



(そして、『教授』の目的はただ1つ。あの(はたらき)が私に効くかどうかを見て完成度を確かめたかったのだろう。”輝く環”の”福音”としてな。)

「な……!?」

「ハアッ!?」

「か、”輝く環”!?」

「ちょ、ちょっと待って!もしかして”輝く環”がどういう物か知ってるの!?」

レグナートの念話を聞いたアガットやルーク、ティータは驚き、エステルは血相を変えて尋ね

「…………………」

アーシアは真剣な表情で黙ってレグナートを見つめた。

(………………………………。それは、何処にもないが(あまね)く存在しているものだ。無限の力と叡智と共に絶望を与える存在でもある。それを前に出した時……人は答えを出さなくてはならぬ。)

「へ……」

「どういう意味なのでしょう?」

(私から言えるのはここまでだ。これ以上の関与は古の盟約により禁じられている。おぬしらを助けることも彼らを止めることもできない。)

アーシアの問いかけに対してレグナートは何も答えず、翼をはためかせた。

「わわっ……」

「お、おい!?」

(さらばだ、人の子と異界の者達よ。おぬしらが答えを出した時、私はもう一度姿を現すであろう。その時が来るのを祈っているぞ。)

そしてレグナートは空へ飛び去っていった。



~ボース地方・上空~



一方その頃、モルガン将軍、ユリア、ナイアル、ドロシーはアルセイユの艦首にて連絡が来るのを待っていた。

「ずいぶん遅いですねぇ。エステルちゃんたち、大丈夫なのかな~。」

「まさか、返り討ちにあったんじゃねぇだろうな……」

「その場合、危機を知らせにジークが戻ってくるはずだ。今は彼らを信じて待つしかない」

「ですがねぇ……」

「………………………………。夕刻まであと1時間……それを過ぎたら突入を開始する。大尉、準備をしておけ。」

「了解しました……」

その場にいる全員はエステル達から連絡が来ない事に不安な気持ちを抱えていた。するとその時

(その必要はない。)

突如、4人の頭の中に声が響いた。



「な、なんだぁ!?」

「今のは……!?」

「どこから聞こえたのだ!?」

「あれ~?なんか大きいのが下から上がってきますよ~?」

突然の事にナイアル達が驚いている中、ドロシーが何かに気付いた。

「なにっ!?」

すると下から飛んで上がって来たレグナートがアルセイユの前に姿を現した。

(リベールを守る(つわもの)たちに告げる。我が名は『レグナート』。古よりこの地に眠る竜の眷族だ。悪しき者に操られていたが遊撃士たちによって解放された。詳しい事情は彼らから聞くといい。)

モルガン将軍達に念話を送ったレグナートは返事も聞かず、さらに上空へと飛び立った。



「………………………………」

「はわわ~……。見えなくなっちゃっいましたねぇ。」

「えっと……。追いかけないんですかい?」

あまりにも驚く出来事にモルガン将軍は呆け、 ドロシーは呑気に呟き、ナイアルは遠慮気味にユリアに尋ねた。

「……あの高度まで行かれたらお手上げだ。”アルセイユ”が無事でも我々の方が窒息してしまうだろう。」

「やれやれ……。これは、あやつらから徹底的に顛末を聞き出さなくてはならんな。」

ナイアルの疑問にユリアは溜息を吐いて答え、モルガン将軍は溜息を吐いた後、口元に笑みを浮かべた。



こうして、ボース地方を騒がせた古代竜の騒ぎは幕を閉じた。エステル達は、モルガンに詳しい事情の説明を求められ……ようやく解放されてから、レグナートから預かった金耀石の結晶を市長と村長にそれぞれ届けた………… 
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