英雄伝説~光と闇の軌跡~(FC篇)
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第63話(2章終了)
クローゼと共にルーアンとツァイスを結ぶ関所、『エア=レッテン』から始まる街道、『カルデア隧道』前まで来た。
~エア=レッテン~
「……あれがカルデア隧道の入口だね。」
ツァイスへと続くトンネル道――カルデア隧道の入口を見て、ヨシュアは呟いた。
「うん……。……そろそろお別れね。」
エステルは名残惜しそうな表情でクローゼを見た。
「はい……。あのエステルさんたちはこのまま王国を一周するんですよね?ひょっとしたら王都でまたお会いできるかもしれません。」
「え、そうなの!?」
「本当!?」
クローゼの言葉にエステルとミントは名残惜しそうだった表情を輝かせた。
「私、女王生誕祭の頃には王都に戻るつもりなんです。親戚の集まりのようなものに出席しなくてはならないので……」
「女王生誕祭というとたしか一ヶ月くらい先だね。確かに、その頃には王都に行ってるかもしれないな。」
クローゼの答えにヨシュアは少しの間、考えた後頷いて言った。
「あ、じゃあさ……。親戚の用事が終わったら王都のギルドに連絡してよ?そうすれば会えると思うから。」
「はい、必ず連絡しますね。エステルさん、ヨシュアさん、プリネさん、リフィアさん、エヴリーヌさん。本当に、ありがとうございました。みなさんがしてくださったこと、私、絶対に忘れませんから……」
「や、やだな~。水くさいってば~!」
「こちらこそ、貴重な経験をさせていただいて本当にありがとうございました。」
「うむ。お主のおかげで妹の晴れ舞台を見れたしな。なあ、エヴリーヌ。」
「ん。エヴリーヌもお礼を言っておくね。……プリネの夢を適えさせてくれて、ありがとう。」
「僕たちも君には色々と世話になったしね。おあいこって事にしようよ。」
クローゼの感謝の言葉にエステルは照れ、プリネやリフィア、エヴリーヌは逆に感謝をし、ヨシュアはプリネの言葉に続くように頷いた。
「とんでもありません……。………………………………。あの時……市長と対決した時……。私は偉そうなことを言いました。『立場に囚われている』、『自分の身が可愛いだけ』って。でも……それは私も同じだったんです。」
「えっ……?」
エステル達の感謝に謙遜しながら言ったクローゼの言葉にエステルは呆けた。
「私は逆に、自分の立場から逃げようとばかりしていました。孤児院にしても学園にしてもどこか逃げ場にしていたんです。でも……そんな私にエステルさんたちは教えてくれました。どんな時でも前向きに進んでいく決意を……。大切なものを守る強さを……。ありがとう、おかげで私も少しだけ勇気が出せそうです。」
「よ、よく判んないけど……。お役に立てたんだったらあたしとしても嬉しいかな。」
クローゼの答えにエステルは首を傾げながら答えた後、クローゼの手を握った。
「あ……」
「えへへ……元気でね、クローゼ。今度は王都で会いましょ!」
「はい……必ず。……ミントちゃん、ツーヤちゃん。元気でね。」
「はい。クローゼ……さんもお元気で。」
「うん!クローゼさんとまた会えるのか……ミント、王都に行く日が楽しみ!」
「ピュイピュイ。」
「あは、ジークも一緒に王都で会えるといいわね?」
「ピュイ♪」
エステルの言葉に応えるようにジークは鳴いた。
「……って、あんた。本当に王都に来るつもり?このあたりに住んでるんじゃないの?」
「ピューイ?」
エステルの疑問にジークは首を傾げた。
「ふふ、ジークは特別ですから。きっと会えると思いますよ。」
「うーん……。冗談で言ったんだけど。」
「はは、ジークには最後まで驚かされっぱなしだね。それじゃあ……そろそろ行くとしようか?」
ヨシュアは苦笑しながら、エステル達を促した。
「ん……そうね。」
「エステルさん、ヨシュアさん。修行の旅、頑張ってください。それから、お父様の行方が判ることをお祈りしています。」
「ピューイ♪」
「うん……ありがと!」
「君たちも元気で!」
「リフィアさん、プリネさん、エヴリーヌさん………本当にお世話になりました。いつか、本当の姿で会いましょう。」
「うむ。クローゼも息災でな。」
「また会う日を楽しみにしています。」
「ばいばい。」
「「さようなら、クローゼさん!」」
そしてエステル達はクローゼに見送られてルーアン地方から去った。
「………………………………」
クローゼは去って行くエステル達の背中を見えなくなるまで、名残惜しそうな表情で見送った。
「ピュイ。」
「うん、そうね……。また会えるよね。」
ジークの鳴声にクローゼは頷いた。その時クローゼの背後から女性の声がクローゼを呼んだ。
「―――クローゼ。お待たせしました。」
「……ユリアさん。レイストン要塞から戻ったのですね?」
「ええ、予想以上に時間を取られてしまいました。失礼ながら、その件に関してご報告をしようと参上した次第です。」
「ありがとう、ご苦労様でした。」
「ピューイ♪」
声の主――ユリアを見るとジークは嬉しそうにユリアの周りを飛んだ。
「こ、こら、ジーク。じゃれつくんじゃない。お前、護衛の使命はちゃんと果たしているのだろうな?」
ある程度飛んで満足したジークは戸惑った顔をしているユリアの肩に止まった。
「ピュイピュイ。」
「うふふ、ジークにはいつも世話になっています。ね、ジーク?」
「ピューイ♪」
「まったく調子のいいヤツだ。」
ジークの様子に溜息をついたユリアは姿勢を正し、クローゼに向き直った。
「……街道外れに『アルセイユ』を停めています。報告の方はそちらで……」
「わかりました。……学園生活もしばらくお休みですね。王都に戻る前に先生たちに挨拶しなくては……」
ユリアの言葉にクローゼは顔を暗くして元気なく答えた。そしてエステル達が去ったカルデア隧道を見た。
「(エステルさん、ヨシュアさん。おふたりに負けないよう……私、精一杯頑張りますね。)」
暗かった表情を決意の表情に変えたクローゼはユリアとジークと共にその場を去った………
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