英雄伝説~光と闇の軌跡~(FC篇)
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第52話
家族以外の同世代の仲間とともに起き、学び舎に行く朝……
午前中は、他の生徒と一緒に授業に参加させてもらい……
昼はランチを共にしながら他愛のないおしゃべりを楽しみ……
そして、放課後は厳しい稽古が夜まで続く……
忙しくも楽しい学園生活は瞬く間に過ぎていった。そんなある日。
~ジェニス王立学園・音楽教室~
「あら?」
学園祭に使う楽器を運んでいたエステル達だったが、ある楽器を見つけたプリネが声をあげた。
「どうしたの、プリネ。」
「ええ……ヴァイオリン……この学園にも置いてあるんですね。」
ヨシュアの質問に答えたプリネはヴァイオリンを手に持って感慨深く言った。
「吹奏楽部が演奏をする時に使いますから数は少ないんですが、置いてあるんです。もしかして、プリネさん。ヴァイオリンが弾けるんですか?」
「ええ。期間はそんなに長くありませんでしたが侍女見習いの方といっしょに、淑女の嗜みの一つとして楽器は一通り学びました。その中でも一番気にいって、今でもたまに弾いている楽器がヴァイオリンなんです。」
説明し尋ねたクロ―ゼの言葉に答えたプリネは微笑んで答えた。
「へ~……ねえねえ、ちょっと弾いてもらってもいいかな?」
「フフ、じゃあ1曲だけですよ?」
期待するような目をしているエステルに微笑んだプリネはヴァイオリンを弾き始めた。
~~~~~~~♪
「なんて綺麗な旋律……」
プリネの演奏に耳を澄ませたクロ―ゼは感動した。
「え……この曲って……」
「………………」
一方ヴァイオリンを聞いていて曲がわかったエステルは驚いた。また、ヨシュアは自分にとって馴染み深い曲をヴァイオリンで弾いているプリネの姿を驚いて凝視した。
~~~~~~~♪
(………なん………だ………ろう……?どこかで見た事ある光景なのに……思い出せない……)
ヴァイオリンを弾いているプリネの姿にヨシュアは既視感を感じ何かを思い出そうとしたが、頭の中に霧がかかり思いだせなかった。
~~~~~~~♪
(!?……今……のは……一体………)
ヴァイオリンを弾いているプリネの姿と一瞬自分と同じ琥珀の瞳を持ち、腰まで届いた美しい黒髪をなびかせ、ハーモニカを吹く優しげな女性の姿と重なったようにみえたヨシュアは困惑した。そしてプリネの演奏が終わった。
~~~~~~~♪
「……ふう。ご静聴、ありがとうございました。」
ヴァイオリンを弾き終わったプリネは一礼した。
パチパチパチ………!
一礼したプリネにエステルとクロ―ゼは拍手をして称えた。
「すばらしい演奏でした……!」
「うんうん!ヴァイオリンは初めて聞いたけどプリネ、凄っごく上手いわ!」
「フフ、ありがとうございます。」
感動したクロ―ゼの言葉と最大限に自分を称えるエステルの言葉にプリネは照れた。
「それにしても今の曲はなんという曲なんでしょうか?」
「『星の在り処』だよ。そうだよね、プリネ?」
「え?そんな曲名だったんですか?」
「へ………?もしかしてプリネ、曲名もわからず弾いていたの!?」
曲名を聞くクロ―ゼにプリネに代わって答えたエステルだったが、曲を弾いた本人のプリネが知らないのを知り、エステルは驚いた。
「はい。今の曲が私の一番得意な曲なんですが、恥ずかしながら曲名もわからなかったのです。さまざまな曲の楽譜が載っている本をレスぺレント地方全ての領から入手して調べたのですが、どの楽譜の曲も今の曲ではなかったのです。」
「じゃあ、どうやって弾けたの?」
「なんと言えばいいのでしょう……?まるで昔から知っているみたいに今の曲が頭に浮かび、自然と弾けたのです。お父様が言うには『もしかしたら、お前にその曲の弾き手の魂が宿っているのかもしれないな』らしいです。」
「へ~………それにしても、『星の在り処』をプリネが弾けたのは驚いたよね、ヨシュア?」
「………………」
「ヨシュア?」
プリネの言葉に呆けた声を出した後ヨシュアに言ったエステルだったが、ヨシュアは何の返事もせずプリネを見続けていたのでエステルは首を傾げた。
「ヨシュア?ねえ、ヨシュアってば。」
「……!どうしたの、エステル。」
エステルに肩をゆすられ我に帰ったヨシュアはエステルに聞き返した。
「どーしたも、こーしたも……ヨシュア、さっきからプリネの姿をかなり凝視してたみたいに見えたよ?」
「ああ、その事か。……プリネが一瞬昔の知り合いに見えたから思いだしただけだよ。」
「またそれ~?あっやしい~……」
ヨシュアの言葉にエステルは疑った。
「あの……さっきから気になったのですが、エステルさんとヨシュアさんは今の曲を知っているんですか?」
「うん。だっていっつもヨシュアがハーモニカで弾いていた曲だもん。」
「曲名は『星の在り処』だよ。」
2人の会話に割って入って尋ねたプリネの言葉に、エステルとヨシュアは頷いた。
「『星の在り処』…………そういえば以前、ヴァレリア湖で休憩してい時夕方に聞こえたハーモニカは……」
「僕だよ。エステルに頼まれてね。」
「そうなんですか。………同じ曲を知っているなんて、偶然って身近にあるものなのですね。」
「そうだね、僕も驚いたよ。」
プリネの言葉にヨシュアは同意するように頷き、お互いの目を見つめ合った。
(………あれ?なんだろう……?今、胸が締め付けられるような痛みがしたのはなんで……?)
見つめ合っているヨシュアとプリネを見てエステルは不思議そうに無造作に胸を抑えた。
「あの………そろそろ作業を再開しませんか?速く持って行かないとジル達に妖しがられますし。」
「あ、そうですね。」
クロ―ゼの言葉にハッとしたプリネは頷き、エステル達と共に作業を再開した。
そしてエステル達の学園生活はさらに過ぎて行き、ついに学園祭前日となった。
~ジェニス王立学園・講堂内舞台~
「わが友よ。こうなれば是非もない……。我々は、いつか雌雄を決する運命にあったのだ。抜け!互いの背負うもののために!何よりも愛しき姫のために!」
紅騎士ユリウス――エステルはレイピアを抜いてセリフを言った。
「運命とは自らの手で切り拓くもの……。背負うべき立場も姫の微笑みも、今は遠い……」
蒼騎士オスカー――クロ―ゼは辛そうな表情でセリフを言って剣も抜かず立ち尽くした。
「臆したか、オスカー!」
「だが、この身に駆け抜ける狂おしいまでの情熱は何だ?自分もまた、本気になった君と戦いたくて仕方ないらしい……」
自分を叱るエステルに答えるかのようにクロ―ゼはレイピアを抜いて構えた。
「革命という名の猛き嵐が全てを呑み込むその前に……。剣をもって運命を決するべし!」
クロ―ゼがレイピア構えるのを見て、エステルも構えた。
「おお、彼らの誇り高き二人の魂、女神達もご照覧あれ!!女神達よ……誇り高い2人の剣士達にどうか祝福を!………2人とも、用意はいいな!?」
エステルとクロ―ゼの間にいた騎士団長ザムザ――白を基調とした芝居用の騎士服を着、純白のマントを羽織ったプリネがセリフを言いながら片手を天井に向けて上げ、エステルとクロ―ゼの顔を順番に見た。
「はっ!」
「応!」
「それでは………始めっ!」
「……………」
「……………」
「……………」
そして3人はその場で動かずジッとしていた。
「は~っ……」
「ふう……」
「ほっ………」
しばらくすると3人は一息ついた。
「やった~っ♪ついに一回も間違わずにここのシーンを乗り切ったわ!」
「ふふ、迫真の演技でしたよ。」
「ええ、これなら明日の本番も大丈夫ですね。」
「えへへ、クローゼやプリネにはぜんぜん敵わないけどね。セリフを間違えたこと、ほとんど無かったじゃない?」
自分を称えるクロ―ゼやプリネの言葉にエステルは照れた後、言った。
「私はずいぶん前から台本に目を通していましたから。」
「私の場合は主役のお二人と違ってセリフの数は少なかったですから、なんとかすぐに覚えられただけです。」
「そんな……謙遜する事ないですよ。それより色々と稽古をつけてくれてありがとうございました、プリネさん。お陰でエステルさんの動きに付いていけそうです。」
「ふふ、私は少し助言しただけですよ。クローゼさんは基本がしっかりしていましたから。」
「うんうん!その気になれば、いつでも遊撃士資格を取れると思うよ?」
「ふふ、おだてないで下さい。」
プリネとエステルの言葉にクロ―ゼは照れた。そして3人は椅子が並べられた講堂を見渡した。
「いよいよ、明日は本番ですね。テレサ先生とあの子たち、楽しんでくれるでしょうか……」
「ふふ、本当に院長先生たちを大切に思ってるんだ……。まるで本当の家族みたい。」
「ええ、まるでテレサさん先生とは本当の親子のように見えましたし、子供達の本当の姉にも見えましたしね。」
「………………………………」
エステルとプリネの言葉にクロ―ゼは突然黙った。
「あ、ゴメン。変なこと言っちゃった?」
「いえ……。エステルさんとプリネさんの言う通りです。家族というものの大切さは先生たちから教わりました……。私、生まれて間もない時に両親を亡くしていますから。」
「え……」
「……………」
クローゼの言葉にエステルは驚き、プリネは真面目な表情に直して黙った。
「裕福な親戚に引き取られて何不自由ない生活でしたが……家族がどういうものなのか私はまったく知りませんでした。10年前のあの日……先生たちに会うまでは。」
「10年前……。まさか『百日戦役』の時?」
「はい、あの時ちょうどルーアンに来ていたんです。エレボニア帝国軍から逃れる最中に知っている人ともはぐれて……。テレサ先生と、旦那さんのジョセフさんに保護されました。」
「そうだったのですか………」
「戦争が終わって、迎えが来るまでのたった数ヶ月のことでしたけど……。テレサ先生とおじさんは本当にとても良くしてくれて……。その時、初めて知ったんです。お父さんとお母さんがどういう感じの人たちなのかを。家族が暮らす家というのがどんなに暖かいものなのかを……」
「クローゼ……」
「………………」
昔を懐かしむように語るクロ―ゼにエステルは何も言えず、リウイとペテレーネ、リフィア達に愛されて育っても、後継者がいながら初代皇帝の娘である自分がいれば本当なら後継者争いが起こってもおかしくないのに、そういった事はなく、リフィアを含めシルヴァンやカミ―リ、ほかの腹違いの兄や姉達から可愛がられ正式な皇女に扱われている自分がどれだけ恵まれているかを理解しているプリネは黙って耳を傾けていた。
「す、済みません……。つまらない話を長々と聞かせてしまって。」
「ううん、そんな事ない。明日の劇……頑張って良い物にしようね!」
「私も精一杯がんばらせていただきますので、明日の劇……絶対に成功させましょう!」
「……はい!」
エステルとプリネの心強い言葉にクロ―ゼは微笑んで頷いた。そしてクロ―ゼはある事を思い出し、2人に尋ねた。
「そういえば……ミントちゃんとツーヤちゃんの事……お二人はどうするか決められましたか……?」
「あ、そのことね。プリネやヨシュアと何度も相談してやっと決めたわ。」
「私はツーヤちゃん。エステルさんはミントちゃんの”パートナー”になってこれからの人生を共に歩むつもりです。」
「そう………なんですか………」
エステルとプリネの答えにクロ―ゼは表情を暗くした。
「クロ―ゼや孤児院のみんなは寂しがると思うんだけど、これだけは譲れないわ。………どういえばいいんだろう……?ミントちゃんに出会ってからなんとなくミントちゃんをずっと見守りたい気持ちになるのよね。」
「ええ。それにツーヤちゃん達は私達をずっと待っていたんです。だったらそれに答えてあげるのが”パートナー”というものでしょう?」
「………………………エステルさん、プリネさん。」
少しの間目を閉じて考えたクロ―ゼは口を開いた。
「はい。」
「何?クロ―ゼ。」
「私が言うのは筋違いかもしれませんが………2人の事を……大事にして下さい……」
「モチのロンよ!だってあたしはミントちゃんにとってはお母さんなんだから!まだ16歳のあたしが母親をやるなんて無理があるけど、ミントちゃんがいい大人になるよう頑張って育てるわ!ヨシュアは最初、反対してたけど最後には納得してくれたから大丈夫よ!」
「私もツーヤちゃんが立派な大人になれるようお父様達といっしょに大事に育てるつもりです。だから安心して下さい。」
「(エステルさんならきっとミントちゃんを大事に守ってくれるでしょうね……ツーヤちゃんの未来もメンフィル皇女のプリネさんの傍にいれば華々しく明るい未来になるでしょう……この人達なら………)ありがとう……ございます………」
エステルとプリネの答えにクロ―ゼは目に溜まっていた涙をぬぐって笑顔で答えた。
その後ヒロイン役をするヨシュアの演技の上手さの話に花を咲かせていたエステル達はヨシュアやハンスと合流した後、明日の本番の景気づけにいっしょに夕食をするためにヨシュアとハンスを席をとっておいてもらうために先に食堂に行かせ、学園長に呼ばれたジルを迎えに行った。
~ジェニス王立学園・学園長室・夕方~
「なるほど……。それはいいアイデアですよ!さすが学園長、冴えてますねぇ。」
「ははは……。おだてても何も出んよ。それでは、リストの方は君に任せても構わないかね?」
会話をしていてある提案をしたコリンズにジルは喜び、それを見たコリンズは尋ねた。
「はい、任せてください!……あの~……できれば例の異世界の大使も呼べればな~って思っているんですが。」
「もちろん招待状は送ったが期待はしないでくれよ?リベールが異世界との交流を始めてから、何度か招待状は送ってはいるが学園祭に一度も顔を出した事もなく、後日に多忙という理由で来れなかった事の謝罪の返事の手紙が来るぐらいだからな。………将来的に”闇夜の眷属”の子供達を学園に迎え入れて子供達同士仲好くなって、種族や異世界人との隔たりをなくす礎になってほしいものなのじゃが……その提案を話す機会を作るためにも送っているのじゃ……」
ジルの言葉にコリンズは溜息をつきながら答えた。
「そうですか……まあ、余り期待せず待っています。もしかしたら今回に限って来てくれるかもしれませんし。」
「そうだといいのだがな………とにかくリストの件は任せるよ。」
「はい!」
ジルとコリンズが会話をちょうど終えた時エステル達が入って来た。
「失礼しま~す。」
「あ、すみません……。まだお話中でしたか?」
「いやいや。ちょうど終わったところだよ。実はなぁ……」
「ああ、学園長!喋っちゃダメですってば!明日の楽しみが減っちゃうじゃないですか!」
エステル達に先ほどの会話の内容を話そうとしたコリンズだったがジルが慌てて口止めをした。
「な、なんなの?あからさまに怪しいわね。」
「ジルったら……。また何か企んでいるの?」
ジルの様子を訝しげに思ったエステルとクロ―ゼは首を傾げた。
「ふっふっふ……。それは明日のお楽しみよん。そうだ、プリネ!」
「なんでしょう?」
「プリネは明日の学園祭の事……お父さん達に話している?」
「いえ。今は家を出てお姉様達といっしょに旅をしていますから知らないと思います。」
「ふ~ん……じゃあ、プリネのお姉さん達がプリネのお父さん達に話している可能性はあるんだ?」
「どうでしょう?……もしかしたらお父様達に今回の学園祭の事を話しているかもしれませんが、それがどうかしましたか?」
「ううん!そんな大したことではないから気にしなくていいわ!(もしかしたら、プリネのお父さんが来るかもしれないわね……プリネは貴族らしいから、もしプリネのお父さん達が来たら寄付金が期待できるわね。)」
「??」
ジルの意味ありげな言葉にプリネは首を傾げた。
「それより、どうしたの?ひょっとして私に用?」
「ええ、実は……」
聞き返したジルにクロ―ゼは明日の景気づけを兼ねて食堂で小さなパーティーをする事を言った。
「あら、いいじゃない。それじゃ、明日の学園祭の成功を祈って騒ぐとしますか。パーッとやりましょ、パーッと!」
「ふふ、あまり羽目を外して明日に差し障りがないようにな。」
はしゃいでいるジルにコリンズは苦笑しながら言った。
「はい。」
「それじゃ、ジル。食堂に行こっか。」
「ヨシュアさんやハンスさんも待っていますよ。」
「うん、行きましょ。」
そしてエステル達は食堂に向かい、にぎやかな一時を過ごし……最後に、劇の成功を祈ってソフトドリンクで乾杯した。その後寮に戻ってから、明日のために早めに眠りについた。
~メンフィル大使館・執務室・夜~
「今日の分はこんなものか………」
ゼムリア大陸にあるメンフィル領の政務書類をある程度終わらせたリウイは一息ついた。そこにドアをノックする音が聞こえた。
コンコン
「誰だ?」
「私です、リウイ様。入ってもよろしいでしょうか?」
「ペテレーネか。入って来て構わん。」
「失礼します……」
静かに入って来たペテレーネは淹れ立ての紅茶が入ったカップをリウイの机に置いた。
「お疲れ様です。リウイ様。よろしければ、どうぞ。」
「すまないな。………ふう。」
「今日も一日、お疲れ様です。リウイ様。」
「お前もな。まあ、皇帝をやっていた頃に比べれば仕事の量は少ないがな……」
「フフ……シルヴァン陛下は今の倍以上の書類を捌いているそうですね。さすがリウイ様とシルフィア様のご子息様です。」
「シルヴァンには俺の後を継げるよう、俺自ら教育したからな……あれぐらい一人でこなしてもらわなければレスぺレントの覇権を握る皇帝にはほど遠い。」
リウイの言葉にペテレーネは微笑みながら答えた。そしてある事を思い出し、懐から手紙を出しそれをリウイに渡した。
「そういえば……このような招待状が来ていましたが。」
「見せてみろ。…………………ああ、いつもの招待状か。もうそんな時期になったのだな……」
「確か毎年来ていますよね……?ジェニス王立学園祭の招待状。」
「ああ。こちらを拠点にしてから色々あって、忙しかったからな。今までは断っていたが、今回はどうするか……」
リウイが考えていた時、執務室に備え付けてある通信機が鳴った。
ジリン、ジリン!ジリン、ジリン!
「ん?こんな時間に誰だ?」
鳴り続ける通信機に首を傾げたリウイは受話器をとった。
「……こちらメンフィル大使館、執務室。」
「久しぶりだな、リウイ!」
「………リフィアか。どこからここにかけた?」
「ん?今はルーアンのギルドの通信機でそちらにかけているが何かあるか?」
「いや、今はどこにいるか気になっただけだ。……それにしてももう、ルーアンか。件の少女の修行の旅は順調のようだな。それで俺に何の用だ?」
「うむ!実はな……」
リフィアは興奮した様子でプリネがエステル達といっしょに学園祭の劇に参加することを説明した。
「ほう、プリネが学園生活に参加した上、劇の役に……」
「うむ!一度だけ学園にプリネに会いに行ったが、学園生活を楽しそうに話してくれたぞ。」
「フッ、そうか。後で学園長に礼の手紙を書かねばな………」
リフィアの報告を聞いたリウイは口元に笑みを浮かべた。
「そんな事をするより、直接こちらに来て礼を言ったらどうだ?ちょうど明日はエステル達が受けた依頼内容を実行する学園祭だ。学園祭は観光の一つで学園関係者以外の民達も客として来るそうだからな。ペテレーネを連れてこちらに来たらどうだ?ティア殿も帰省のためにルーアンに来ているし、ティア殿を迎えに行くためにもどうだ?」
「ほう……ティアもルーアンにいるのか……考えておこう。」
「うむ!」
そしてリウイは受話器を置いた。
「あの、リウイ様。相手の方はリフィア様のようでしたが……」
「ああ。プリネがこの招待状に書かれてある学園祭で出す劇に役者として参加するそうだ。」
「え!?どうしてそんな事に……?」
リウイの説明に驚いたペテレーネは聞き返した。そしてリウイはプリネが学園祭に参加する経緯や学園で短期間学園で生活していた事をペテレーネに伝えた。
「そうだったのですか……あの子もいい経験ができてるようで、何よりです。」
「そうだな。…………ペテレーネ、急ぎの政務はあるか?」
「いえ。今のところは特にないです。」
「そうか………ふむ。毎年招待状を貰っていることだし、今年は行ってみるか?例の学園祭に。」
「え!?私も共にしてよろしいのですか!?」
リウイの提案にペテレーネは驚いて声を出した。
「あたりまえだ。お前の娘でもあるプリネが参加しているのだしな。それにプリネが学園祭に参加することを言ってから、招待状に何度も目が行ってるぞ。」
「あう……すみません………」
リウイに指摘されたペテレーネは顔を赤くして縮こまった。
「気にするな。俺もプリネが劇に参加する事に少し興味が惹かれていたしな。息抜き代わりに行ってみるか。」
「はい!早速定期船のチケットの手配をしてきます!」
「おい、こっちの通信機を使えば………言っても無駄か。フッ…………」
リウイの言葉を聞いたペテレーネは自分の部屋に備え付けてある通信機を使って定期船のチケットを予約するために、急いで部屋を出た。その様子をリウイはいつものペテレーネらしくない行動に苦笑した。
そして学園祭当日…………!
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