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英雄伝説~焔の軌跡~ リメイク

作者:sorano
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第40話

空賊と特務兵の情報を集めていたルーク達は特務兵をラヴェンヌ村の廃坑付近で見かけたという情報を手に入れ、その真偽を確かめる為に廃坑を交代で見張っていた。



~深夜・ラヴェンヌ廃坑~



真夜中にシェラザード達が隠れて見張っていると、クーデター事件以降行方をくらませていた特務兵達が廃坑の中に入っていった。

「ふふっ……ビンゴみたいですね。」

「ええ……ようやく尻尾を掴んだわ。それにしてもラヴィンヌ廃坑とはね。上手い場所に目を付けたもんだわ。」

「うふふ、腐っても諜報活動をしていただけはあるわね。」

自分達が追っていた者達をようやく見つけた事に喜びを感じるアネラスの言葉にシェラザードは頷き、レンは小悪魔な笑みを浮かべていた。

「確か、空賊団が定期船の荷物を奪うために利用した場所でしたよね?」

「ええ、そうよ。途中にある露天掘りの場所で空賊団の一味と交戦したわ。」

「じゃあ、そこを拠点にしている可能性が高そうね。―――どうする?少し離れた場所で仮眠しているお兄様達を呼んでこようかしら?」

「――いえ。ルーク達を呼んでいる時間やギルドと軍に連絡しているヒマもないわ。とりあえず潜入して残党の規模を確かめるわよ。」

「ラジャーです。」

「はーい。」

そして3人は特務兵達を追うように廃坑に入って行った。



~ラヴェンヌ廃坑・奥~



廃坑の奥まで進んだ3人はいくつかのテントと焚き火を見つけた。

「おかしいわね……。予想通りのアジトみたいだけど……。人の気配が感じられないわ。」

「そ、そうですねぇ……。さっきの兵士たち、どこに行っちゃったのかな?」

「レン達に気付いてどこかに逃げちゃったのかしら?」

「……どうでしょうね。まあ、いいわ。とにかく慎重に調べましょう。」

そして3人は慎重に近付いて行き、テントの中を調べ始めた。

「ダメですねぇ。もぬけの殻って感じです。先輩とレンちゃんの方はどうですか?」

「レンの方も何も収穫はなしよ。」

「こっちも同じよ。留守中なのか、あるいは拠点を移った直後なのか……。せめて行き先が分かるような手がかりがあるといいんだけど。」

アネラスに尋ねられたレンとシェラザードはそれぞれ考え込んでいた。



「えっと、行き先の手がかりにはならなさそうなんですけど……。あっちのテントでこのファイルを見つけました。」

「あら、見せてみて。」

シェラザードはアネラスからファイルを受け取り、受け取ったファイルを読み始めた。

「ふーん……。妙な図面が書かれているわね。『オルグイユ』開発計画……。何かの乗物の設計図みたいね。」

「『オルグイユ』……ちょっとオシャレな名前ですね。やっぱり飛行船なんでしょうか?」

「うーん、専門家じゃないからちょっと判りかねるけど………」

アネラスに尋ねられたシェラザードは考え込みながら図面を見つめ

「……シェラお姉さん、その図面、見せてくれるかしら?ティータや博士に導力技術を習っているから図面の内容もある程度ならわかるわ。」

「ふふっ、あんたなら何の図面なのか本当にわかりそうね。はい。」

レンの申し出を聞いた後レンに図面を手渡した。



「……………………………」

手渡された図面をレンは最初からのページから集中して見続けて次々とページをめくり

「どう?何かわかったかしら?」

レンの様子を見ていたシェラザードは尋ねた。

「―――ええ。飛行船どころか、戦車の設計図みたいよ、この図面。しかも軽く見た感じ既存の戦車より遥かにスペックが高いわよ。」

「せ、戦車!?」

「………もしかして情報部がまだ王国に存在していた頃、内密に開発していたのかしら?」

レンの口から語られた予想外の内容にアネラスは驚き、シェラザードは真剣な表情で考え込みながら推測した。

「多分そうじゃないかしら。問題はその『オルグイユ』が完成したのかどうかだけど………あら?」

レンがページをめくっているとページの中にはさまっていたメモを見つけた。



「どうしたの、レンちゃん?」

「ページの間にメモがあったわ。『招待状は配り終わった。テーブルとイスも用意した。お茶会の準備はこれでお仕舞い。あとはお茶菓子を焼いてお客様が集まるのを待つだけ』」

「へ~。ほのぼのとした内容だねぇ。何だか絵本の一節みたい。」

「ふむ……どうやら何かの符牒(ふちょう)みたいね。問題は何を意味しているメッセージかなんだけど……」

レンが読んだメモの内容を聞いたアネラスは口元に笑みを浮かべ、シェラザードは考え込んでいた。するとその時

「「散って!!」」

何かに気付いたシェラザードとレンが叫んだ!

「え……!」

二人の警告に驚きつつアネラスはシェラザードとレンと共に散った。すると3人がいた場所にいくつもの銃弾が放たれた!そしていつの間にか廃坑に入って行った3人の特務兵達が距離をとって、シェラザード達を囲んでいた。



「うそ……いつのまに。」

「うふふ、レン達に負けて修行でもしたのかしら?」

「ふふ、ずいぶんとアジな気配の消し方をしてくれるわね。あのアッシュブロンドの少尉さんにでも習ったの?」

「「「………………………………」」」

シェラザードの問いには答えず、特務兵達は無言で近寄って来た。

(シェラ先輩、レンちゃん……)

(ええ……どうやら普通じゃないわね。連携で一角を崩してそれぞれ残りを片付ける。できるわね?)

(お任せあれ!)

(うふふ、さっさと片付けましょう♪)

「それじゃあ―――行くわよ!」

「はいっ!」

「ええ!」

そして3人は特務兵達との戦闘を開始した!



「「……………」」

シェラザード達を包囲していた特務兵の二人は刃が付いた手甲で残像を残しながら襲い掛かる技―――影縫いで襲い掛かったが3人は散開して回避し

「四の型・改――――紅葉散華っ!!」

レンが電光石火の速さで特務兵達の背後へと駆け抜けると共に抜刀して特務兵達を怯ませた。

「……………」

味方を攻撃したレンに目標を変えた銃を持つ特務兵は銃口をレンに向けたが

「蒼波刃!!」

アネラスが放った風の刃を受けて怯み

「魔神剣・双牙!!」

アネラスの攻撃から連携してレンが二振りの小太刀で衝撃波を放って銃を持つ特務兵に命中させた。

「ハァァァァ…………!」

その時アネラスは剣に闘気を込め

「これで……終わりだよっ!!」

剣を横凪に振るって闘気によって発生した光の刃を放ち、命中させた!

「…………………」

アネラスの奥義の一つ――――光破斬をその身に受けた特務兵は悲鳴を上げる事無く地面に倒れた!



「「……………」」

一方レンに攻撃された特務兵達はレンを攻撃目標にして攻撃の構えをしたが

「そこっ!!」

真空の刃を生み出すシェラザードの鞭技――――シルフェンウィップを受けて怯み

「二の型・改―――裏疾風!双牙!!」

そこにレンが電光石火の速さで次々と斬撃を叩き込み

「―――エアリアル!!」

駆動を終えたシェラザードが竜巻を発生させるアーツを放った!

「二の型―――疾風!!」

アーツによって発生した竜巻が消えるとその瞬間を狙っていたアネラスが電光石火の速さで追撃を叩き込んだ!

「「…………………」」

アネラスの追撃に耐えられなかった特務兵達は悲鳴を上げる事も無く地面に倒れた!



「ふう、何なのこいつら……。倒したはいいけど……どうにも奇妙な手応えだわ。」

地面に倒れた特務兵達をシェラザードは眉を顰めて見つめ

「うーん、何か危ない薬でもやってるんじゃないんですか?前にルーアンの不良グループが薬で操られていたって聞きましたけど。」

「確かエステルたちが解決したっていう事件よね?でも、何かそう言う風には思えないのよね。まるで人形でも相手をしていた気分よ。」

アネラスの推測を聞いたレンが首を傾げたその時3人の背後から拍手が聞こえてきた。

「あはは、スゴイスゴイ。お姉さんたち、なかなか優秀な遊撃士だねぇ。」

拍手に気付いたシェラザード達が振り向くとそこにはピンク色のスーツに黄緑色の髪を持ち、片方の頬に何かの紋様を刺青にしている少年がいた。

「あなた……」

「うふふ……。執行者No.0。『道化師』カンパネルラ。『身喰らう蛇』に連なる者さ。」

「あ……」

「また現れたわね……ロレント、ルーアン、ツァイスを合せば4人って所かしら?」

少年――――”道化師”カンパネルラが自己紹介をするとアネラスは不安そうな表情をし、レンは警戒した様子でカンパネルラを睨んだ。



「あなた……何でこんな場所にいるの?特務兵の残党と一緒に何をしようとしているわけ?」

「うふふ、今回の僕の役割はあくまで『見届け役』なんだ。具体的な計画のことを僕に尋ねるのは筋違いだよ。というか僕も知らないしね。」

「『見届け役』ですって?」

カンパネルラの口から出た予想外の答えを聞いたシェラザードは眉を顰めた。

「ま、『お茶会』に参加するなら急いだ方がいいかもしれないよ。どこで開かれるかは知らないけど少なくともここじゃないのは確かさ。それとも、ここで僕と一緒に夜明けのコーヒーでも飲もうか?」

「………………………………」

「うふふ、お誘いは嬉しいけどお断りするわ。レンは紅茶派だし。」

飄々とした様子で答えるカンパネルラの態度をシェラザードは警戒し、レンは小悪魔な笑みを浮かべて答えたが

「へえ?やっぱり”あの子の姉”だけあって好みも似ているみたいだね♪」

(レンに妹……?)

「!………………………」

興味深そうな表情で自分を見つめて言ったカンパネルラの言葉を聞いて目を見開いた後冷たい視線で黙ってカンパネルラを睨み、シェラザードは眉を顰めてレンに視線を向けた。



「え、えっと君……。まだ若いみたいだけど本当に『結社』の人間なの?悪いことは言わないからそんなの止めちゃったほうがいいよ。」

「うふふ、優しいお姉さんだなぁ。でも、道化師のことを笑い者にするのならともかく……心配するのはマナー違反だね。」

「え……」

カンパネルラの言葉にアネラスが驚いたその時、カンパネルラは指を鳴らした。すると倒れていた特務兵達が起き上がった!

「う、うそ!?」

「そんな……完全に戦闘不能にしたはずよ!」

「…………………」

起き上がった特務兵達に二人が驚いている中、レンは真剣な表情で特務兵達を見つめて考え込んでいた。

「うふふ、だから君たち遊撃士ってのは甘いんだよね。やるんだったら徹底的に壊すつもりじゃないと♪」

そしてカンパネルラはもう一度指を鳴らすと特務兵達は自爆し、身体がバラバラになった!



「な、なんてことを……!」

「ひどい……こんなのって……」

(バラバラになっているのに血が飛び出ていない……?もしかして……人形??)

バラバラになった特務兵達を見たシェラザードとアネラスが悲痛そうな表情をしている中、血も流していない特務兵達の遺体を見つめていたレンは眉を顰めていた。

「あはは、驚いた?なかなかよく出来たビックリ箱だろう?うふふ、これにて今宵のショウはおしまいさ。それでは皆様、ご機嫌よう。」

バラバラになった特務兵達を見て青褪めているシェラザード達に楽しそうな表情で答えたカンパネルラは一礼をし、消えようとし

「待ちなさいッ!」

カンパネルラの行動に気付いたシェラザードは鞭を震ったが、命中する事はなくカンパネルラは一瞬にして姿を消した。



「………………………………」

「………………………………。シェラ先輩、レンちゃん……あの……」

「……ええ……。苦痛を感じずに逝けたのならいいんだけど……。いずれにせよ……このままにはしておけないわね。アネラス、悪いんだけどシーツを調達してきてくれる?レンはルーク達を起こして事情を説明してこっちに連れてきてもらえないかしら。」

「わかったわ。」

シェラザードの指示に頷いたレンはその場から去り始め

「は、はい……!あれ……?」

同じように頷いたアネラスは特務兵の遺体の腕の部分を拾って驚き、声を聞いたレンは立ち止まってアネラスを見つめた。

「ちょ、ちょっと!?」

「あの、シェラ先輩、レンちゃん……この腕……作り物みたいなんですけど。」

「えっ……!?」

「―――やっぱりね。血も流していないからおかしいと思っていたのよ。」

アネラスの答えを聞いて驚いたシェラザードが特務兵の残骸を調べている中、レンは納得した様子で頷いた。



「歯車にゼンマイ……それに結晶回路の破片……ひょっとしてこれ……」

「自律的に行動する導力人形……いわゆる人形兵器ってヤツやろうね。」

残骸を見てシェラザードが呟いたその時、3人以外の声が聞こえ、テントの後ろから声の主――ケビンが現れた。

「えっ……」

「あなた、確か……!」

「エステルの事を教えてくれた神父さんよね?」

「おっと、オレのこと覚えとってくれたみたいやね。改めて―――七耀教会の巡回神父、ケビン・グラハム言いますわ。シェラザード・ハーヴェイさんとアネラス・エルフィードさん、レン・ブライトちゃんやね?物は相談なんやけど……お互い、情報交換せぇへんか?」



ケビンと邂逅したシェラザード達はケビンの事情を聞き、情報交換をした後、ケビンと共にある場所に向かった。一方その頃、ボースの街道でも特務兵達が集団で行動していた。



~西ボース街道~



「―――おとなしくして、シェルスロー!!」

木の陰から現れたソフィが跳躍して特務兵達の頭上から光子の短剣を降り注がせて怯ませ

「―――ジューダス!」

そしてソフィが叫ぶと反対側の木の陰からジューダスが特務兵達に向かって疾走し

「塵も残さん!」

特務兵達の目の前で暗黒の炎を纏った剣と小剣を振り上げ

「奥義!浄破滅焼闇!!」

暗黒の炎を纏った剣と小剣を同時に振り下ろし、暗黒の炎を放ち、放たれた暗黒の炎は特務兵達の身体を焼き尽くし

「闇の炎に抱かれて消えろ!」

奥義を放ち終えたジューダスが特務兵達に背を向けると特務兵達の身体はバラバラになり、バラバラになった特務兵達の身体は暗黒の炎によって燃やし尽くされた!



「―――さよなら。」

「時間の無駄だ。」

レン達が廃坑で戦った特務兵の姿をした人形兵器の殲滅を確認したソフィとジューダスが呟いたその時

「―――さすがですね。僕の出番は必要なかったですね。」

ヨシュアが二人に近づいてきた。

「一体いつまで狩らせるつもりだ?こいつらで20体目だぞ。」

「そうですね……そろそろ狩りつくしたと思います。王国軍も動くだろうし、このあたりが引き際でしょう。」

不愉快そうな表情をしたジューダスに尋ねられたヨシュアは考え込んだ後淡々と答えた。



「―――しかし”結社”とやらは”囮”を使って何を考えている?」

「……もしかしてあのメモに書いていた”お茶会”?」

ジューダスの疑問に続くようにソフィは首を傾げて呟き

「ええ、恐らくそうでしょう。それより……―――二人とも今までありがとうございました。これでお二人にしてもらう事は全て終わりました。」

「フン、ようやく自由の身か。」

「飛行艇の奪還は本当に貴方達だけでできるの?」

ヨシュアに言われたジューダスは鼻を鳴らして答え、ソフィは確認した。



「ええ。それよりソフィ。先程依頼した通り、エステル達の事をお願いするよ。」

「……うん。バルバトスが現れた時ヨシュアの代わりにエステル達を守ればいいんだよね?ラントに帰る前にできればあの男を排除しておきたいから、私がエステル達の傍にいる間は任せて。」

ヨシュアに見つめられたソフィは故郷や家族を守る為にもバルバトスを討つ決意をし

「フン、しかし話に聞くところによるとそいつらは一度奴と出会い、見逃されたそうだな?奴が”雑魚”扱いする以上、もう2度とそいつらの前に現れる事はないと思うがな。」

二人の会話を聞いていたジューダスは眉を顰めて鼻を鳴らした。



「………ジューダスさんの話ではバルバトスは”英雄”と称えられている人達や”強者”の前に現れると言います。”結社”を追う彼女達が”執行者”と対峙したその時、現れる可能性は非常に高いと思いますので。」

「………それに人は成長し、その人が成した偉業で人々から”英雄”って称えられる事があるよ。実際にアスベル達や私も人々にそう称えられていた。ヨシュアの話だとエステルはこの国で起こったクーデターを止める中心人物になったんだよね?だったらエステルの前に再び現れる可能性も充分にあるよ。」

(坊ちゃん。スタンやカイル達も最初は弱かったですけど、後に”英雄”と呼ばれる器になったことは坊ちゃんが一番良く知っているでしょう?だったらここは、そのエステル・ブライト達に同行する事もアリだと思うんですが……)

「……………チッ、勝手にしろ。僕は僕のやり方で奴を追い、この手で止めを刺す。」

ヨシュアとソフィ、そして愛剣であるシャルティエの話を聞き、自分が親友と認めている男やその息子の事を思い浮かべたジューダスは舌打ちをした後その場から去り

「「………………………」」

そしてソフィとヨシュアもそれぞれ違う方向の道を進んで、その場から去って行った。 
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