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ソードアート・オンライン~連刃と白き獣使い~

作者:村雲恭夜
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第十一話 操られし風!あらぶるは雷鳴の獣!

 
前書き
今回はこのSAOのネタバレと雷鳴さんが何故か登場します。 

 
七十五層、コリニアの転移門近く。
クレイは今日もそこに居た。
「……今日も来ない、かぁ」
落胆した表情で、クレイはウインドウを閉じる。
クウトが消えてから二日。何時もならこの街にいる時間帯だが、クウトは姿を現さない。
キリト達に助けを求めようかと思ったりもしたが、彼らは今新婚となり、二十二層で休暇中だ。無理には頼めない。
「……いつになったら帰ってくるのさ、クウト君」
小さく呟いて、それから息を吐く。
それからドラゴン・ファングのギルドに戻ろうとしたところで。

ビーッ!ビーッ!

警戒音がなり響いた。
「えっ!?」
咄嗟に顔をあげ、左右を見る。そして、辺りのプレイヤー達を見ると、その瞬間にメッセージが届いた。

『プレイヤー諸君。ある一人のプレイヤーを殺してほしい。彼は今後のこの世界の維持に支障をきたす恐れがある。既にコリニアは圏外にされてしまった』
「……えっ!?」
そのメッセージと共に、圏外……所謂フィールドに出たと言うメッセージが現れた。
「……街が、フィールドに!」
クレイは直ぐにスクロールし、そのプレイヤーの名前を見ると、驚愕した。
「……嘘」
そして、次の瞬間、

ザンッ!

「っ!」
クレイは瞬間的に反応し、バックステップをする。
そして、そのプレイヤーを見て、非難するように叫んだ。
「何で……何をやってるの!クウト君!!」
それは、変わり果てたクウトだった。



「何で、クウト君が……」
側に居たホーリーナイトが前に出る。
途端、クウトは六本の刀を抜いて一歩を踏み出した。
「ホーリーナイト!」
『おおっ!!』
初めて叫びを上げたホーリーナイトが盾を突き出す。
モンスター専用盾ソードスキル『不屈の防壁』。
ソードスキルと言うよりは補助に近いそれは、クウトのユニークスキル«連刃»の攻撃を防ぐ。
だが、受けた盾は一撃で破砕し、ホーリーナイトのHPが三割減らされた。
「っ、やぁあああっ!!」
躊躇しながらも、短剣を取り出したクレイが攻撃する。
短剣重連続剣技«レゾナンス・リアクター»。
それはクウトの胴に入るーーー直前でクウトがクレイの腹に蹴りを叩き込む。
「うあっ!!」
吹き飛んだクレイは、辛うじてホーリーナイトに抱き抱えられて体勢を建て直す。しかし、クウトの一撃がクリーンヒットしたせいか、四割削られていた。
(これが、攻略組の……クウト君のステータス……)
ズキズキと痛む腹を押さえながら、短剣を握るクレイ。
しかし、構えさせまいとクウトが追撃する。
「■■■■■■■■ーーーーー!」
まるでバーサーカーの様な雄叫びを上げ、突貫してくるクウト。その速度はクレイの回避速度を大いに上回っている。
(駄目!間に合わないーーーー!!)
心の中でクレイは叫ぶ。
クウトの凶刃がクレイへと入るーーーーまさにその瞬間だった。

「伏せな、嬢ちゃん!」

その声で咄嗟にクレイはしゃがむと、クウトが突然爆発した。
「■■■■■ーーーー!?」
クリーンヒットにも関わらず一割しか減っていないクウトのHPを見て、クレイは言う。
「……固すぎでしょう」
「見てぇだな。これでも爆裂弾と火炎弾を交互に出した筈なんだがなぁ?」
クレイの背後から声がする。その声の主を見ようとして。
「おっと、嬢ちゃんあぶねぇ!」
肩を引かれる。
すると、そこにクウトの一撃が叩き込まれた。
「あっぶねぇ……」
クレイはその人の胸に顔を押し付けられ、その威力を感じていた。
(あの一撃……危ない所の話じゃない……!)
クレイは直ぐに顔を話すと、その人物を見た。
「え……!?」
そして、驚愕する。
何故なら、彼は『クウトと同じ顔だったのだから』。
「……ん?俺の顔に何かついてるか?」
「あ、いえ別に……」
クウトは直ぐに顔を剃らすと、短剣を構え直す。
「ま、何でも良いがね。それよりも俺がこの世界でやるべきことがこれかよ……」
最後の方は聞き取れなかったが、愚痴を言っていたのだと思う。そう思いたい。
「さて、嬢ちゃん。アイツを止めんの手伝えや」
「言われずとも、彼を止めます。だって……」
クレイは走り出しながら叫ぶ。

「彼は、私の大切な人ですから!!」

そして、本来は決して交わることのない二人が、『クウト』と言う人間を止めるために、共闘する。



クウトサイド

「……っ」
クウトは目を覚ます。
「ここは一体……。て言うか俺確か……」
クウトは頭を押さえながら、思い出す。
連刃の副作用、獣化、そしてーーーー
「……操られた、って訳だったな」
クウトは催眠結晶によってその身をシュラウドに奪われていた。
シュラウドによって造られた電子人格『Gaeto』を使い、何かをしようとしていた。それは途中から断片した記憶から知ることが出来た。
「……くそっ。早くこっから出ねぇと!」
立ち上がるも、ふらついて膝を折る。
「……っ。思ったより精神面と肉体面にガタが来てやがる。シュラウドのせいか……!」
連刃には、本来副作用は存在していない。ならばなぜ、精神等を汚染する副作用が在ったのか。
いや、そもそも何故クウトがそんなものを作ったと思っていたのか。
答えがナーヴギアだ。
ナーヴギアなら、比較的人の精神等を汚染する物をその本人に流せる効果も持っている。つまり、ナーヴギアさえあれば人を操ることや人格を変えることも不可能でない。これは、茅場晶彦から直接過去に聞いたことがあった。
最も、茅場晶彦はそれを嫌っていたが。
「……動け、動けよ」
脚に命令する。腕に命令する。身体に命令する。
だが、動かない。動いてくれない。まるで自分の身体ではないかのように。
そして声がする。

『テメェはそこで、守れなかった人のことを思いながら絶望するんだな』

自分の声であって声でない。それがより一層クウトを焦らせた。
「動けよ!俺の身体だろうが!!動いてくれ!!」
願いは虚しく空間に響く。
響く。
響く。



それから何分、いや何時間だろうか。
クウトはその体勢のまま声を上げていたが、やがて声を止めた。
無駄だと悟ったからだ。誰も聞いていないと悟ったからだ。
彼の眼はもう、絶望していた。
耳に聞こえる幻聴。今まで彼が救えなかった人間(プレイヤー)達の声。
そして、クウトは立つのを諦め、その場に伏した。
そして、その眼をゆっくり、ゆっくりと閉じようとしーーーー

『諦めるのはダメーーーーーー!!!!』

女の子の声でその精神を覚醒させた。
「何だ……!?」
顔をあげ、光の方に腕を伸ばす。
あともう少し、もう少しで手が届く。
「とど、けぇ!!」
最後の力を振り絞り、声をあげて『それ』に手を伸ばした。
そしてーーーーーー

辺りは白に染まる。



光が収まると、クウトはSAOの姿に戻っていた。しかし、その手には連刃仕様の刀たちが握られている。
「……これは一体。それに、コイツらなんで……」
その疑問を解消する前に、声がクウトを呼ぶ。
「全くー、私を置いていくとかダメなんだから!!」
声の方へ向くと、その人物は姿を現す。
蒼い長い髪に、蒼い瞳。その身体は女性の物で在り、大人のそれと同じだった。
しかし、ただ違うのは身丈以上ある大剣と槍、そしてその背にある蒼い羽のような物だ。
「……アレ?マスターもしかして解らない?」
「……女の子にマスター呼ばわりはされたことはないな」
連刃仕様の刀たちを構え、警戒心を強めるクウト。
しかし、女性は溜め息を付いて言う。
「落ち着いてよ来人。漸く此方に来れたんだから」
その言葉にクウトが固まる。
「来人……だと?」
その名を知っているのは極少数。つまり、現実サイドの知り合いである。
「はぁ……。私だよ、解らない?」
クウトは正直に首を振ると、女性はまたも溜め息を付いた。
「まぁ無理ないか」
大剣と槍を消して、女性は言う。
「カーディナルだよ、来人。正確には、人の心を学び中のモンスターAI『バハムート』の中にいるカーディナル、『フィアナ』だよ!」
「……カーディナル!?」
クウトーーーーーー来人はそれに思い当たる。
モンスターAI。
彼らは世界中の伝承から生み出された、プレイヤー補助のモンスターだ。ティミングを必要としない代わりに、ある特殊な条件と特殊なクエストをクリアしなければならない。
しかし、その条件とクエストをクリアすればモンスターを手に入れられるわけではなく、各階層に現れるそのモンスターに会わなければ行けない。バハムートーーーーーー『フィアナ』もその一人。
竜王バハムートーーーーーー嘗て伝説では大海魚と言われた伝説の魔獣。
奇しくも、日本では大海魚ではなくドラゴンの王として定着してしまい、フィアナもそれに倣ってドラゴンと定義されている。
但し、その力は確かに竜王を名乗るだけの力を持ち、故に彼女は最強のモンスターAIの地位に着いている。
「……フィアナ、感謝はするがどうにかならなかったのか?絶望しかかったぞ?」
「マスターはそんな弱い人間じゃ無いでしょうに。心配はしてないよ、信頼してるもん」
えへんと言うように胸を反らす。まぁ、大変目に保よ、いや毒なんだが。
「……で、どうするつもりだよ。俺の身体は乗っ取られるわ、精神は此方に来るわ散々だが?」
「うん、だから戻すよ?シュラウドって子のシステムにも穴は在ったしね」
「穴?」
クウトは聞き返す。すると、フィアナは大剣を呼び出して言う。
「うん、母様(カーディナル)の言うことだと、連刃は“アレ”を上書きして造られた物だから、アレは使えるよ。後、母様からちょっと色々借りてきたし」
「……茅場晶彦が聞いたら何やってるんだフィアナ君!?って驚くぞ」
「あー、うん。父様なら言うね、絶対」
アハハと空笑いするフィアナ。
「でもま、多目に見てくれるでしょ。だってこのゲームをデスゲームにしたの、父様じゃないし」
……今、サラッと問題発言してなかったか、この竜王(カーディナル)
「……あ、ヤバい。これ秘密なんだっけ?」
「おい今すぐ出てこいカーディナル!!」
クウトは叫ぶ。しかし返事はない。
「……まぁ、ともかくアレは使えるからホロウ経由して急いでアインクラッドに帰還しよう!」
「おい待て駄竜王!?説明をしてもらえるんだろうな!?」
「終わったら父様に連絡してみるよ」
「つーことは茅場晶彦も居んのか!?」
「あ、また失言しちゃった♪」
クウトは頭を押さえながら思う。

何故、この駄竜王(フィアナ)が俺の相棒なのだろうか、と。 
 

 
後書き
クウト「ちょっと待てや駄竜王!?何だよ本編の話は!!」
フィアナ「アハハ……。いや、口が軽いってやっぱ痛いね♪」
クウト「自覚あんのかい!」
フィアナ「AIだからねー。それより、私達の説明を、ってカンペ出てるよ?」
クウト「メタイなおい!?まぁいい。
モンスターAIと言うのは本編で触れた通り、伝承等から生まれた、自律稼働AIを持ったモンスターだ。言ってしまえば、メンタルヘルス・カウンセリング・プログラムの戦闘要因的な立ち位置な訳だが、条件としてある特定のクエスト・条件を満たし、そのモンスターに会わなければならない。普通に手に入れたんじゃつまらんだろ?」
フィアナ「因みに、バハムートは私フィアナだよ!条件はボスを単独撃破することと、クエスト『竜王の眼』をクリアすること。クウトは竜王の眼をクリアしていてかつ、ボスクラスのモンスター、ザ・ヴォーパルリザードを単独撃破していたから条件を満たしていたよ!」
クウト「後々で気付いたんだけどな。んで、バハムートの他に上げるとすると、『七つの大罪嫉妬』リヴァイアサン、『世界樹に寄生する毒竜』ニーズヘッグ、『神を喰らいし魔狼』フェンリル、『神秘の一角獣』ユニコーン、『人の姿を持つ獅子』ナラシンハ等々、種類は豊富!挙げたのは一部だけどな」
フィアナ「でも、この中ではマスターは誰が好きなの?」
クウト「うーん……強いて挙げるとするなら二人、いや三人かな。『神秘の一角獣』ユニコーン、『人の姿を持つ獅子』ナラシンハ、最後に『ゾロアスターの魔竜』アジ・ダハーカ!」
フィアナ「……どうせ攻撃だけが取り柄のない子ですよ私は。回復能力無いし、腕は二本しか無いし、複製出来ませんしぃ」
クウト「まぁ、バハムートは竜王だからこれといって特殊な能力は無くても良いだろ?その攻撃性こそ個性なんだから」
フィアナ「っ……!それを言うからマスターは皆から女を落とす男って呼ばれるんですよ……」
クウト「フィアナ……?」
フィアナ「さ、さぁ気を取り直して次回予告です!次回、竜王の刃、暴風の再来!」
クウト「釈然としねぇが……まぁいいか。暴風戦王、押して行くぞ!!」 
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