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頑張れフェレット

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4部分:第四章


第四章

「おい兄弟、あれ見ろよ」
「あれって!?」
「だからテーブルの上だよ」
 そこを見るように言うのだった。
「あそこにいたぞ、あそこに」
「あっ、本当だ」
 見ればその通りだった。蜘蛛がそこにいた。彼等の騒ぎをよそにテーブルの上を呑気に這っているのだった。その八本の足で。
「あそこにいたのか」
「一体今まで何処に?」
 それは彼等にはわからないことだった。
「糞っ、しかしいるとわかったからには」
「ああ、兄弟」
 トレーパーがブライアントに言ってきた。
「捕まえよう、いいな」
「勿論だ。それじゃあ」 
 こうして彼等はすぐに箪笥の上から飛び降りた。ここで無意識のうちにカーテンに爪をかけてしまい派手に切ってしまった。しかしそれは彼等の気付かないことだった。
「蜘蛛め、逃がさないぞ!」
「覚悟しろ!」
 口々にこう言いながら蜘蛛に向かうのだった。
「今度こそ捕まえてやるからな」
「僕達を甘く見るなよ」
 こんなことを言いながらテーブルに向かいそうして蜘蛛を捕まえようとする。しかし何とここで蜘蛛は上に上がってしまったのだった。
「えっ!?」
「嘘だろ!?」
 しかし嘘ではなかった。蜘蛛はするすると自分の糸を使って上に上がっていく。そうして天井にぺたりと張り付いてしまったのだった。
「僕達を馬鹿にするのか!」
「それで逃げられると思っているのか!」
 彼等は馬鹿にされたと見てこう抗議した。
「このままじゃ終わらないぞ!」
「見ていろ!」
 そしてまた上に上がる。そうしてそこからジャンプして蜘蛛に襲い掛かろうとする。だがそれは天井から吊られている蛍光灯のボンネットに当たりそれを叩き落すだけだった。だが彼等はそれが落ちても無事だった。そうしてまた上に上がろうとするが蜘蛛はまた何処かに行ってしまった。
「今度は何処に行ったんだ!?」
「また消えたのか!?」
 ブライアントもトレーパーも下に降りたうえで必死に周囲を見回す。
「おのれ、今度は逃がさないぞ」
「覚悟しろ、覚悟」
 あれこれと探す。しかし今度は中々見つからなかった。そうして彼等で探し回っているうちに。部屋の扉が開いたのだった。
「まずは御飯をあげてですね」
「そうだね」
 桜と洋介の声だった。
「それから僕達の晩御飯にしようか」
「はい、そうしましょう」
 そんな話をしていた。この時まで彼等は普通の日常の中にあった。だが居間の中を見た途端に。その表情を見る見るうちに一変させたのであった。
「な、何ですかこれは!」
「地震があったのかい!?」
 桜も洋介もその居間の有様を見て思わず叫んだ。何もかもが壊されて荒れ果てていてどうしようもない有様になってしまっていたからだ。
「空き巣が入ったとか!?」
「それもあるよね」
「あっ、御主人達だよ」」
「帰られたんだね」
 ブライアントとトレーパーは二人を見てまずは顔を見合わせたのだった。
 
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