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英雄伝説~光と闇の軌跡~(FC篇)

作者:sorano
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外伝~幼き竜達~

~マーシア孤児院~



エステル達がマノリア村を出た頃、孤児院に住んでいる2人の少女がテレサに頼まれた買物から帰って来た。

「た・まご♪た・まご♪今日~はど~んな料理にな~るかな♪」

買った物が入った籠を持って無邪気に独自の歌を歌っている少女の一人の容姿は太陽のように輝く黄金の長い髪をゆらして、紅耀石のような赤い瞳で誰からも可愛がられるような容姿をしていた。

「ミントちゃん、楽しそうだね。私も楽しい気持ちになっちゃいそう。」

「えへへ、だって今日の晩御飯のおかずに卵があるんだよ!ミント、卵が大好きだもん!」

歌を歌っている少女――ミントの喜びを自分の喜びのように感じている少女の容姿もミントにまけず劣らず可愛らしい容姿だが明るい性格のミントとは逆に物静かに見え、髪や瞳も黄金の髪と赤い瞳のミントとは逆に、夜空の様な長く美しい黒髪と水耀石のような透き通る青い瞳を持っていた。

「そうやってはしゃぐのもいいけど、足元をよく見ていないとこけちゃうよ?」

「大丈夫だよ!ミント、ツーヤちゃんと同じみんなの中では一番上のお姉さんなんだもん!………きゃっ!」

黒髪の少女――ツーヤの言葉にミントは笑顔で答えた後、足元にある出っ張った石につまずいた。

「ミントちゃん!」

つまずきかけたミントをツーヤは支えて、助けた。

「ありがとう、ツーヤちゃん!」

「だから言ったんだよ?足元をちゃんとよく見て歩かないとって。でないとさっきみたいにつまずいて大好きな卵を割っちゃうよ?」

「ごめん、ごめん。でも、その時はツーヤちゃんが助けてくれるんでしょ?だったら大丈夫だよ!」

「もう、ミントちゃんったら……」

ミントの言葉にツーヤは苦笑したが悪い気持ちではなかった。実はこの2人の少女は”百日戦役”後森の中で倒れている所をテレサ夫妻に拾われ、ずっと孤児院のお世話になって来た少女達なのだが耳は人間とは違い尖っていた。2人は同じ場所に倒れていてお互いの事は知らなく、また記憶がなかったが孤児院で過ごす中記憶がないことを気にせず、お互い同じ境遇だったため、意気投合していつの間にか無二の親友になっていた。マーシア孤児院に住んで長い時が過ぎても全く成長しない2人の事をテレサはいくらなんでもおかしいと思ったが、2人の耳を見て”百日戦役”後に現れた異世界の種族――”闇夜の眷属”と思い、人間とは異なる種族の”闇夜の眷属”は成長も自分達人間とは違うと思い、気にしなくなったのだ。



「テレサ先生、ただいま~!」

「今戻りました。」

2人は孤児院のドアを開け、ミントは元気よく、ツーヤは落ち着いた口調で言った。

「あら、ミントにツーヤ。お帰りなさい。」

食器を洗っていたテレサは帰って来た2人の声に気付き、手を止めて身につけているエプロンに手をふいた後、2人に近づいた。

「はい、先生に言われた物を買って来たよ!」

ミントは嬉しそうな表情で買物籠をテレサに手渡した。

「ふふ、ありがとう。………うん、ちゃんとメモ通りの物を買って来たようね。そうそう、今日クロ―ゼが来てアップルパイを焼いてくれたわ。あなた達の分は残してテーブルの上に置いてあるわ。」

「本当!?クロ―ゼさんの焼いたアップルパイってすっごく甘くておいしいから、ミント、大好き!」

「2人とも帰ったらまず、手を洗いなさい。」

「はい。ミントちゃん、手を洗いに行こう。」

「うん!」

そして2人は手を洗って来た後、テーブルの傍にある椅子に座った。

「はい、アップルパイにハーブティーよ。」

「ありがとうございます、先生。」

「わーい♪クロ―ゼさんのアップルパイだ♪」

2人は皿にのっているアップルパイを美味しそうに食べた後、ハーブティーを飲んだ。



「あれ?」

「どうしたの、ミントちゃん?」

ハーブティーの入ったカップに口をつけたミントは呑むのをやめて、首を傾げた後集中した。いつもと違う様子の親友が気になりツーヤは声をかけた。

「このカップ……ママの香りがする!先生、もしかしてミントのママがここに来た!?」

ミントはカップについていた僅かな魔力に気付き、顔色を変えてテレサに尋ねた。ミントの持っていたカップは先ほどエステルが使っていたカップで、エステルがハーブティーを呑んだ際、エステルは無意識に微量な魔力を出していたのでその時、エステルの微量な魔力がカップに付着したのだ。

「ミントのお母さん……?いいえ、今日ここに来た女性のお客様はクロ―ゼと遊撃士のエステルさんですよ。」

ミントの言葉に首を傾げたテレサだったが、それらしき人物が思い当たらず今日孤児院に来た客の名前を告げた。

「エステルさん……」

一方テレサに告げられた客の名前をミントは忘れないように呟いた。

「ミントちゃん、もしかして………」

自分とミントしかわからないある事に察しがついたツーヤは驚いた表情になった。

「先生、そのエステルさんって人はどこにいるの!?ミント、会いたい!」

「……どうしたの、そんなに血相を変えて?いつも楽しそうにしているあなたらしくないわよ?」

「そのエステルさんって人、ミントのママの気がするの!ずっと待っていたママにミント、会いたいの!」

「エステルさんがミントのお母さん………?ミント、嘘をついてはいけませんよ。」

エステルを思い浮かべたが、ミントの親とは思えずテレサはミントを諭した。



「先生!」

自分の言っている事が本気にしてもらえずミントは声を荒げた。

「……先生、お願いします。そのエステルさんって人とミントちゃんを会わせて下さい。」

「ツーヤ?あなたまで…………わかりました。明日、ギルドに連絡してエステルさんがこちらに来るように頼んでみますね。だから、いい子にして待っていなさい。」

普段自分からは何も頼まないツーヤにまで嘆願されたテレサは少しの間考えて、答えた。

「本当!?ありがとう、先生!」

「よかったね、ミントちゃん。」

「うん!ママってどんな人なんだろう……優しい人かな……?」

エステルに会えるかもしれない事に喜んだミントは未だ姿がわからないエステルの姿を幸せそうな表情で連想し、会うのを楽しみにした。予想外の早さで望んでいた形とは違う形でエステルと会う事を知らずに……… 
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