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浜辺にいこう
それから僕はレイアと少し話して、部屋にお互い戻る。
睡魔がすぐに僕を襲ってきたので、ふらふらとした足取りで布団に潜る。
「明日、“ニートナ備忘録”で強そうな技を3つ程度見繕っておこう」
謎の海流の動き。
変な怪物がいると困る。
最悪その怪物と僕は戦わないといけない。
そうしないとこの世界を安定化させる装置? だか何だかに魔力を投入できないし。
僕の責任は重大だ。でも、
「レイアがあんなふうに笑ってくれるなら少し頑張ってみよう。違う、勢威いっぱい頑張らないとな」
僕はそう一人呟いて瞳を閉じる。
温かい布団の中で僕は、心地よい眠りについたのだった。
次の日は朝寝坊をしてしまった。
宿の扉を叩かれる音と、
「早く起きなさいよ、もう朝よ!」
「ふわっ!」
エイダの大きい声がして僕は飛び起きる。
そして慌てて服を整えて飛び出した。
「ごめん、何だか気持ちが良くて」
「いい気なものね。大物だわ」
エイダが嘆息するように言って、リリアとレイアが小さく笑っている。
僕は恥ずかしい気持ちになった。
今日は、色々と大変な一日なるはずなのに、寝過ごしてしまった。
それから僕達は近くの店で朝食を取り、とりあえずはお昼になりそうなサンドイッチのたぐいと瓶詰めの飲み物を購入する。
他に少し保存性のいい肉やビスケットといった焼き菓子などの食べ物を購入した。
それらの準備を終えてから僕たちは馬車に乗り込む。
その岬へ朝から行く人はそれほど多くないようだ。
ちなみに岬には、街があるらしい。
海辺であるのでそこそこ貿易が盛んなのだそうだ。
ただ最近は海流の変化で、あまり貿易が行われなくなっているらしいが。
そういった話を、同じ馬車にのっていた人達の雑談で僕は聞いていた。
とは言うものの僕にはすべきことがあったので全部を聞いているわけではなかったのだが。
「えーと、ふむふむ、これがこうで」
「……く、この魔道書、私が読もうとするとやはり逃げるわね」
エイダが悔しそうに呟く。
そして僕の読んでいる魔導書が身を捩らせたり動いたりするので僕はとても読みにくい。
しかも今僕は強力な技が必要でそれを必死に探っている最中なのだ。なので、
「エイダ、今は止めてください。僕は今、その下流の変化に化物がいた場合の対処に関して考えて学んでいるのです」
「……なるほど、そういった可能性もあるのか。リリア、そういった怪物が出るって話はある?」
そこでエイダが話を振るとリリアが首を振り、
「無いわ。怪物がいるといった話はない。でも」
「でも?」
「生まれかけているのかも」
ふと、深刻そうな声でリリアがポツリと呟く。
どうやら僕は頑張らないといけないようだ。
その可能性も考えて僕はどうにか三つほど強力な魔法を覚える。
そしてそのうちの一つはすぐに使うことになった。つまり、
「岬から船が出れない?」
リリアがミナトにいた船を管理するおじさんにそれを聞いて、顔を青ざめさせる。
どうやら海流の動きが激しいらしい。
だから僕はその話をしてくれた人にお礼を言って、
「とりあえず浜辺に行こう」
そう提案したのだった。
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