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ドリトル先生北海道に行く

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第八幕その九

「違うよね」
「これ稗だよ」
 ジップが匂いを嗅いで言いました。
「匂いでわかったよ」
「うん、確かにね」
「これはお米のお酒じゃないわね」
 チープサイドの家族も言います。
「また別のお酒ね」
「どうやらね」
「稗はね」
 ポリネシアが言うには。
「また珍しいわね」
「というか稗なんて」
 それこそと言ったのはホワイティでした。
「日本では人が食べるのは珍しくない?」
「日本人はお米大好きだからね」
 ダブダブもこのことはよく知っています。
「主食はお米だけれど」
「やっぱりアイヌの人は農業とは縁が薄いし」
 トートーも言います。
「寒いからお米が採れなかったせいかな」
「お米も本来は暖かい場所のものよ」
 ガブガブはこのことを一家の家政婦として知っています、食べものを買うことも彼女のお仕事だからです。
「だから北海道では昔はお米はなかったのね」
「だから稗のお酒なんだね」
 チーチーは皆のお話を聞いて納得しました。
「そういうことだね」
「成程、稗のお酒」
「今じゃ確かに珍しいね」
 最後にオシツオサレツが二つの頭で言いました。
「日本はお米だから」
「そこも違うね」
「うん、日本でお米以外のお酒となると」
 それこそとです、先生も言います。
「焼酎があるけれどね」
「あれは薩摩芋だね」
「薩摩芋から造ったお酒だね」
「そうしたお酒もあるけれど」
「こうしたお酒もあるんだね」
「アイヌの人達のお酒だね」
「そう、そして元々はね」
 今度はその和えものや他のお料理を見ての言葉です。
「お醤油も使ってなくて油脂を味付けに使っていたんだ」
「ああ、お醤油もなんだ」
「なかったんだ」
「言われてみればそうだね」
「お醤油も本土の人達のものだから」
「それでだね」
「そうだよ、お塩は前から使っていただろうけれど」
 それでもというのです。
「お醤油やお味噌は最近まで使っていなかったんだ」
「アイヌ料理では」
「そうなんだね、やっぱり」
「お味噌もだね」
「なかったんだね」
「そうだったんだ」
「うん、アイヌ料理も時代によって変わっていて」
 そしてというのです。
「このお料理は最近の調味料も使っているみたいだね」
「ちょっとお醤油の匂いするね」
「確かにね」
「お味噌も」
「日本人にとって欠かせない調味料の匂いもね」
「流石に昔の味の完全に忠実な再現はないね」
 そこは理解して言う先生でした。
「食べる人達にとっても作る人達にとっても」
「お醤油やお味噌がないと」
「日本人にとってはだね」
「舌に合わない」
「そういうものだね」
「そうだね、じゃあね」 
 それならとお話してでした、そのうえで。
 先生達は皆でそのアイヌ料理を食べるのでした。
 皆食べてです、まずはこう言いました。 
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