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世界をめぐる、銀白の翼

作者:BTOKIJIN
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第一章 WORLD LINK ~Grand Prologue~
  うたわれるもの ~戦闘・守護の決意~



「なんだ、その姿は!?」

「気にすんなよ。誰からくるんで?皆で来んのかな?」

「貴様などオレ一人で十分だ!」

「オボロさん!」

「エルルゥは下がってろ!」


バッ!

響鬼に変身した蒔風に、オボロが腕を広げて迫る。
軽業師のような身軽な動きで蒔風を翻弄し、両手の二刀で斬りかかっていき

ギィ!ギャリリリリリ!


が、蒔風は音撃棒でその斬撃をすべて受けきった。

「なに!?オレの攻撃がみきられて」

「鍛えてますから!フンッ!」


ドカカッ!

「ぐぅう!」


音撃棒が、オボロの腹部に減り込む。
たったその一撃で、オボロは簡単に吹き飛んだ。

その身軽さとスピードのために鎧をつけないオボロはモロに食らい、悶絶する。


「ぐっ、あ・・・・」

「くっ・・・次は某が!」

「トウカさん・・・・・だっけ?いいぜ、こいよ!」

「はぁっ!」


トウカが一気に迫り、居合切りを蒔風に放つ。
急に懐に入られた蒔風は

「あっぶな!」

後退しながらそれをかわす。


「はぁぁぁぁぁぁぁ・・・・・はぁあ!」

そして音撃棒の先端に気を込め、それを炎とし、トウカに投げつける。
トウカはそれに驚くが、凄まじい剣速でその炎を霧散させた。

霧散した炎の向こう側から蒔風が音撃鼓を投げつけ、トウカにセットする。


オン、オォォォォォォン

「ぐ、なに?・・・これしきっ!」

「音撃打・爆裂強打の型ぁ!」


トウカが音撃鼓に捕われながらも蒔風に切り掛かる。
が、実力を発揮しきれない状態では敵わず、蒔風はその斬撃を弾き、力の限り太鼓に撥をブチ当てる。


ドダゴン!

「うぐあっ!」

ドサッ、ドォン!


トウカの体が飛び、音撃によって爆発が起こる。

この音撃の型は、強烈な音撃一発(左右一撃ずつを同時に叩き込む)ことで、文字通り強烈な音撃を叩き込むものだ。


「トウカさん!!!」

「大丈夫ですよ。威力は抑えてますし、爆発も演出程度です。気絶してるだけですよ」




離れた所でカルラはクロウに話し掛ける。

「クロウ、あなた行きます?」

「出来れば御一緒願いてぇな」

「よろしくてよ。さて、行きますわよ!」

「応!」


カルラが大きく跳び、蒔風の手前の大地に向かい大剣を叩き付ける!
カルラの大剣は剣と言うよりも金棒に近く、斬るよりも叩き潰して引きちぎる物である。

ドッガァ!


地面が否、大地が砕け、粉塵が舞う。
その中からクロウが日本刀を肥大させた、野太刀を蒔風にぶちあてる!


蒔風はそれをガードするが、あまりの威力に地面を転がり、飛ばされた。


「ちっ、時間もあるし、そろそろ・・・・」


カァァァァァァァ・・・・

蒔風の体が戻っていく。


「あら、諦めましたの?」

「いえいえ。むしろこれからで・・・・獅子天麟!」


蒔風がその背に三本の剣をだし、抜いて合わし、一本の大剣、バスターソードの形をした獅子天麟をその手に持つ。


「!?一体どこからだした!?」

「だーかーら、気にすんなっての。では、大剣祭だ。はぁぁぁぁぁぁぁ!」


蒔風がクロウに突っ込んでいく。
クロウは蒔風の攻撃を予測して、防御する。

はたしてその動きは正しかった。
蒔風が剣で攻撃したならば、だが。


蒔風は獅子天麟を突きの体制で構えていたが、それをクロウに行き着く前に地面に向け、突き立てる。
そして棒高跳びのように獅子天麟を飛び越え、全身のバネを使い渾身の飛び蹴りをかました。

そこに切り掛かるカルラの剣を、身体を捻って回転、後ろ回し蹴りで弾く。

カルラの手が痺れ、動きが止まる。
大剣を落とすことはなかったものの、動かせなくなってしまう。


「とどめに!!力を借りるぜ、古泉君っ!」


その手に赤い玉が現れ、蒔風がそれをカルラに投げつける。
とっさにカルラは大剣を手放し、その攻撃を避けるが、さらに第二射が襲いかかり、爆発した。


「くああああああああああああああああああ!!!」

「くっ、カルラ!!」

「らぁ!!さらにだ!!」


ギァン、ギィィィィィィィィィ・・・・バッ、バァァァン!!


「仮面ライダー、轟鬼。えいやぁ!!!」


ドムッ


クロウの腹部に音撃弦を突き立て

「音撃斬・雷電激震!!」


蒔風が音撃弦を鳴らす。
その音撃はクロウの鎧に響いて、それを弾き飛ばす!!!

ドパン!!!


「うがっ!~~~~~ぐ!」


そこで蒔風は変身を解く。

「さ、お次は誰だい!?」



べナウィの方を向いて蒔風が言う。
しかしべナウィは首を振り、

「これ以上あなたと戦ってもこちらに勝ち目はありません。それに、私はあなたの話も聞くつもりでしたし」

「ん?そうですか。いやぁ、ありがとうございます」


「いえいえこちらこっそ~♪」


声がした。
気を抜いてしまった蒔風の、背後から。


斬ッ、ブシュッッ!!

「っがぁ!?ガォウぁ!!」


「奴」が現れ、蒔風の背を斜めに切り裂いていたのだ。
血があふれ、地面を染めていく。


「マイカゼさん!!!」

「あなたは・・・・・ッ!!!なんてことを!!」

「言ったろ?そいつはオレの敵なんだよ。殺さなきゃーなんねぇのよ。おわかり?そんなことより早くハクオロ皇を起こしに行きましょうや」

「断ります。まずこの人に治療。それから話を聞いてからです」

「っち・・・・まあいい。この騒動中に封印の場所は調べたし、お前らに用はない。とっとと復活させてサクッと殺すか」

「まて!!」


そういって「奴」は虚空に消えていった。

ベナウィがそれを追って駆け出すが、当然間に合うはずもなく。
苦々しい顔をしてから、蒔風のもとへと駆け寄った。

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「奴」が消えてから蒔風はすぐに治療室に運ばれた。
オボロたちはその場ですぐに目を覚まし、自分の部屋に向かう。


今ここにはエルルゥ、アルルゥ、べナウィがいる。

「ぐ、がぁ・・・あいっつ・・・・」

「マイカゼさん!!動かないでください!!」

「エルルゥさん・・・ありがとうございます。でも「奴」が・・・」

「話をしてくれるのでしょう?それからでも遅くはないはずです」

「えっと・・・・」

「べナウィです。今はこの國の皇をやってます」

「あ、どうも王様。おれは、蒔風・・・・って言います」

「だいじょーぶ?」

「おーう、アルルゥ。大丈夫だぞー。お兄さん強いからねん!!ってて」

「だから動かないでください」

「あっ、はい」

「痛くないの?」

「痛いけど、がんばります!!蒔風強い子!がんばる子!!」

「動くな!!!!」

「「(ビク!!)ごめんなさい・・・・」」


そうして蒔風の治療が一通り終わり、謁見の間に連れてこられた。



「おい、お前大丈夫なのか!?」

「ええ、おかげさまで」

オボロが話しかけてくる。


「しかしすみません。話を聞いてもらうためとはいえ、結構ボコボコにしてしまい・・・」

「ああ、それな・・・」

「それはもういいんですのよ・・・ああ、わたくし、カルラといいますの」

「どうも、蒔風です。もういいとは?」

「あなたの実力は高かった。それは私たち全員を殺せるかもしれないほどに」

「あー、それは」

「だが、あなたは某たちが怪我をしないように戦ってくれた。こちらに非があったというのに・・・」


トウカが引き継ぎ、先を話す。


「しかし某もまだまだ未熟だ・・・あのようなものを少しでも信じてしまうとは!!」

「ああ、その・・・気にせんでください」


そうして、ぎこちないが何とか和解した蒔風に、べナウィが切りだす。


「で、話をしてくれるのですね?」

「はいな。聞いてもらいますよ」








そうして蒔風は話し始めた。
いろいろと疑わしい話であったが、先ほどの戦いでの力を見た彼らは、意外とすんなりと信じてくれた。


「ハクオロさんを・・・・殺す?」

「そう。そうすれば「奴」はめでたく世界を食らい、さらなる力を手にすることができる」

「なるほど・・・今聖上は永久の眠りについている。つまり、何人も手を出すことができない。だから・・・・」

「兄者を復活させてから、殺すって言うのか!?」

「そうだろうな。しかし、そもそもなぜハクオロさんは封印されたんだ?」

「そうですね・・・少し長くなりますが・・・・」



そして今度はべナウィが説明を始めた。



ハクオロはエルルゥに助けられた人物である。
彼は記憶喪失で、そのままエルルゥの家で暮らした。

しかしその國の皇(オゥルォ)があまりにひどく、ついに長老が殺されてしまい、村人が謀反を起こした。
そのときの指導者がハクオロで、今の國のなりたちである。


トゥスクルという國の名は、殺された長老の名で、エルルゥ、アルルゥの祖母だったそうだ。
そうして國を立ち上げたハクオロだが、さまざまな戦いに巻き込まれて行く。

その途中で、ディーという若者が現れた。
それはハクオロの半身である存在が、ディーに憑依したものであった。


実はハクオロは大いなる存在、「うたわれるもの」、この世界の神話でウィツァルネミテアと呼ばれる神のごとき存在だった。
ディーは戦乱こそが人間を進化させるものであると戦いを煽り、ハクオロはそれに真っ向から反対した。

そして封印の地、オンカミヤムカイの最深部においてディーを倒し、同化し、自らがこの世に相容れぬものとして、自ら封印されることを望んだ。

そうして彼は封印され、いまでも眠り続けている。







「・・・・なるほどな・・・・ならばなおさら復活を止めなければ」

「はい。やはり聖上は封印されたままのほうが・・・」

「べナウィ!!貴様兄者がこの世界にいてはならないというのか!!」

「違います。私も、聖上には帰ってきてほしいと思います。しかし、聖上が自らの封印を願ったことを考えれば、あなたもわからないわけではないでしょう」

「そうか・・・そうだよな。いや、すまん、兄者がいらないと言われたものかと・・・」

「いいんですよ・・・それで、「奴」というのはどのようにして聖上を復活させるのでしょう」

「無理やりだろうな」

「無理やり?」

「待ってください。ハクオロ様が封印されているのは我が国、オンカミヤムカイの最深部。そう簡単に破られるものではないですし、それに無理やりなんてしたらハクオロ様が!!」


オンカミヤムカイの第一皇女でもあるウルトリィが信じられないと声を上げる。


「いいえ、「奴」はやります。そもそも、「奴」はハクオロさんがその手で殺せればいいのですから、身の安全など気にはしません」

「そんな・・・・」

「しかし、オレが・・・・させません」

「マイカゼさん?」

「オレはそのハクオロさんって人はよく知らない。だけど、その人がその意志を貫いたのなら、オレはその意志を守る」

「・・・・・・」

「案内してください。その封印の地まで」

「じゃあ、私も・・・」

「エルルゥさんは残ってください」

「いいえ、彼女は必要です。行きつくまでに堅固な扉があり、エルルゥさんでしか開けられません」

「それに俺たちも行くしな」

「は?ちょっと待ってくれ。「奴」は危険だ。そんな危ない所にみんなで行っては・・・」

「行きます」

「しかし・・・」

「行きますよ」

「あーーー」

「我々の意志は崩れません。我々はあの方の封印を見届けたもの。我々は行かなくてはなりません」

「・・・・・まったく、主要人物ってのはみんな頑固なんだから・・・」

「で、どうするんですか?」

「わかった、全員で行きましょう。でも!決して一人にはならないでくださいね!!」

「分かりました」



「では準備の出来次第ここを発ちます。急いだ方がいいですよ」




そうして全員が支度を始める。



「ふう、さて、守るもんが増えちまったな。ははは、いやーまいったまいった♪」




そして数分後、蒔風たちは砦を出た。







to be continued

 
 

 
後書き
・うたわれるもの
神の如き存在。
この世界ではウィツァルネミテアの名で神話として語り継がれており、場所によっては創造主。別の場所では破壊神とされている。

その二面性が分かれ、ディーに憑依した分身と空蝉(ハクオロ)に分かれた。


・この世界
「うたわれるもの」の世界は、実は現代から数千年もの未来が舞台。

ハクオロはその仮面のせいで(おかげで、ではない)生き残った現代人。
もともとの彼は考古学者だった。


・ハクオロの仮面
決して外れることのない物。
これを付けると、神経が頭部にめり込み肉体を強化する。

かつて一度死んだはずのはハクオロが生き残っていたのはこれのおかげ。
そして氷の中から発掘された彼(当時はアイスマンと呼ばれていた)に不老不死のヒントを見た現代人は、彼を研究してそのレプリカを完成させた。

だが所詮レプリカ。
それを付けた研究者たちは肉体が解けてスライム上の怪物になり、死にたくても死ねない体になった。

途方もない時間が経過し、この研究所は遺跡として封印された。



・ハクオロの名前
ハクオロ、という名前は死んだ長老トゥスクルの息子の名前をもらったもの。

彼(ウィツァルネミテア)はたびたび、地上に姿を現していた。
昔にも彼は地上に現れ、とトゥスクルの息子に名前を与えた。

つまり、ハクオロという名前はもともと彼のものであったのだ。
トゥスクルは、それを返上した、ということになる。








アリス
「「奴」の思惑通りにハクオロは復活してしまい・・・?」


ではまた次回

 
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