| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅰ篇)

作者:sorano
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

異伝~新たなる軌跡のプロローグ~中篇

3月18日―――――



~トールズ士官学院・学院長室~



数週間後、”トールズ士官学院”の実戦技術の教官であるサラ・バレスタインは学院長室の前まで来て扉をノックした。

「誰かね?」

「私です、学院長。」

「おお、サラ教官か。そのまま入って来てくれ。」

扉の奥からの返事を聞いたサラは扉を開けて部屋に入った。するとそこにはトールズ士官学院の学院長であるヴァンダイク学院長とオリヴァルト皇子がいた。

「オリヴァルト殿下……!?一体どうしてこちらに……!?」

オリヴァルト皇子を見たサラは驚き

「やあ、久しぶりだね、サラ君。今日は入学式の数週間前に急遽”Ⅶ組”に追加される新たなメンバーが決まってね。その事について君にも話しておかねばならない事があるから、来たのだよ。」

「!!”Ⅶ組”の……!……一体どんな子達を集めたのですか?」

オリヴァルト皇子の話を聞いたサラは驚いた後オリヴァルト皇子を見つめて尋ねた。

「こちらがその資料じゃ。」

サラの言葉を聞いたヴァンダイク学院長は書類をサラに渡し

「拝見します。………………あら……この子は確か殿下が”Ⅶ組”の纏め役として期待していた………よくメンフィルを説得できましたね。」

渡された書類を見始めたサラはリィンの写真や経歴を見て目を丸くした。

「フッ。残りの3人を見たらもっと驚くと思うよ♪」

「残りの3人……?…………――――なっ!?」

からかいの表情で言ったオリヴァルト皇子の話を聞いて眉を顰めたサラは他の書類の内容――――プリネとツーヤの写真や経歴を見てギョッとさせ

「……殿下。一体どんな裏技を使ったのですか?よりにもよって世間でも有名な”姫君の中の姫君(プリンセスオブプリンセス)”と”蒼黒の薔薇”を”トールズ士官学院”に……それも”Ⅶ組”に入学させるなんて…………」

驚きの表情でオリヴァルト皇子を見つめた。



「フッ……あえて言うならエステル君達のお蔭かな♪彼女達と関わっていたお蔭で、リウイ陛下達とも面識の間柄になれたし。」

「あ~…………”あの娘達”ですか。それにしても他国の皇族と貴族がこの学院に留学した上”Ⅶ組”に所属だなんて…………ハインリッヒ教官あたりが知れば、ユーシスやラウラの時以上に色々と言って来るかもしれませんねえ。」

オリヴァルト皇子の答えを聞いたサラは苦笑しながら答え

「フフ……その二人の事もそうだが……新たにこの学院に臨時教官として来る”彼”については君も浅からぬ縁もあるから、さらに驚くと思うのじゃが。」

ヴァンダイク学院長は口元に笑みを浮かべてサラを見つめて呟いた。

「あたしと…………?……………………………ハアッ!?で、殿下!?何で”剣帝”がこの学院の……しかも実戦技術の臨時副教官の上、”Ⅶ組”の臨時副担任になっているのですか!?」

ヴァンダイク学院長の言葉に眉を顰めたサラはレーヴェの書類を見て呆けた後声を上げ、書類の内容をよく読んだ後信じられない表情でオリヴァルド皇子を見つめて尋ねた。

「プリネ姫を学院に通わせる条件の一つとして、プリネ姫の護衛役としてルクセンベール卿と”彼”を傍に居させることをリウイ陛下が出してきてね。”彼”の場合はルクセンベール卿と違って年齢的にも学院生になるのは無理があるから、臨時教官にしたって訳さ。」

「し、しかしこの男の事は殿下はあたし以上にご存知なのでは…………?」

オリヴァルド皇子の話を聞いたサラは複雑そうな表情でオリヴァルト皇子を見つめて尋ねた。

「―――2年前の事件で”彼”と浅からぬ因縁がある事は承知している。―――どうか彼が学院に来ることを認めてくれないだろうか?」

尋ねられたオリヴァルト皇子は静かな表情で答えた後頭を下げ

「殿下…………ですが本当に大丈夫なのですか?”剣帝”が学院で……いえ、このエレボニアで”結社”関係で何もしないという保証はあるのですか?」

オリヴァルト皇子の行動を見たサラは複雑そうな表情をした後、真剣な表情で尋ねた。

「ああ、それは大丈夫だよ。今の彼はプリネ姫にご執心の上、ただならぬ関係――――つまり恋人同士だから、プリネ姫を裏切る事は絶対にありえないさ♪」

「ハアッ!?”剣帝”と”姫君の中の姫君(プリンセスオブプリンセス)”が!?一体どうして……!というかメンフィル皇家はその事を知っているのですか!?」

笑顔で答えたオリヴァルト皇子の答えを聞いたサラは信じられない表情で声を上げた後、オリヴァルド皇子に尋ね

「ハッハッハッ!それは”彼”が来てから存分に聞けばいいだろう?サラ君は彼の”先輩”になるのだから♪これから彼は2年間、”Ⅶ組”の副担任をするのだから担任であるサラ君はいつでも聞ける機会があるのだしね♪」

「…………確かにそうですね。これはあたしにとっても”結社”の事も聞ける絶好の機会ですね………了解しました。先輩として悪巧みをする暇もできないくらい”剣帝”を扱き使いまくるのでご安心下さい!」

笑顔で笑った後からかいの表情になったオリヴァルト皇子の話を聞いたサラは頷いた後口元に笑みを浮かべて答えた。

「フッ、それを聞けて安心したよ。彼には先輩として色々と教えてあげてくれ。」

「お任せ下さい。……いや~、まさか”剣帝”を扱き使える日が来るとは思いませんでしたよ♪2年前に”連中”から受けた”借り”を倍返しする絶好の機会ですよ♪」

「……臨時とはいえ、新任の教官をあまり苛めないでくれよ、サラ教官……」

オリヴァルト皇子の言葉に頷いた後不敵な笑みを浮かべたサラを見たヴァンダイク学院長は苦笑しながら言った


3月19日―――――



~翌日・会議室~



翌日、会議室にはヴァンダイク学院長とオリヴァルト皇子に加えて常任理事でありエレボニア帝都ヘイムダルの知事カール・レーグニッツ、”四大名門”の”アルバレア公爵家”の長男ルーファス・アルバレア、そして”ラインフォルトグループ”の会長イリーナ・ラインフォルトが集まっていた。

「常任理事の方々、今回は私の急な呼びかけに応えて頂き誠にありがとうございます。」

「……それで殿下。本日我々―――常任理事達を突如集めた理由は一体何なのでしょうか?」

「まさか”Ⅶ組”に関する事でしょうか?」

オリヴァルト皇子の言葉を聞き終えたイリーナ会長とルーファスはオリヴァルト皇子に尋ねた。

「フッ、さすがはルーファス君。相変わらず鋭いな。――――本日、常任理事の方々を集めたのは”Ⅶ組”に急遽ではあるが新しい生徒達が入る事になってね。その事についての理由を説明をする為にこうして召集させてもらった。」

「”Ⅶ組”に入る生徒達……ですか?」

「我々を招集するほどという事はよほどの人物なのでありましょう?それも急遽決まったという事は、他国からの留学生……それも殿下のお知り合いの関係となると……まさかメンフィル帝国の貴族あたりですか?」

オリヴァルト皇子の答えを聞いたレーグニッツ知事は不思議そうな表情をし、ルーファスは真剣な表情で尋ね

「―――その事については配られてある書類を見れば、すぐにわかる。まずは各自、配られた書類の内容を読んで頂きたい。」

尋ねられたオリヴァルト皇子は静かな表情で促した。そしてレーグニッツ知事達は自分達の目の前に置かれてある書類の内容を読み始めた。

「なっ!?こ、この方々は……!?」

「ほう………………」

「―――――メンフィル帝国の貴族どころか、皇族……それもあの”姫君の中の姫君(プリンセスオブプリンセス)”ですか。…………さすがは殿下ですわ。こんな事までできるのでしたら、プリネ姫のご両親と私の面会を殿下に是非ともセッティングして頂きたいくらいですわ。メンフィル帝国の皇族の方々との交渉は”ラインフォルトグループ”としても望みたい所ですし。」

書類の内容――――プリネやツーヤの写真や経歴を見たレーグニッツ知事は驚いて声を上げ、ルーファスは感心し、イリーナ会長は静かな表情で呟いた後口元に笑みを浮かべてオリヴァルト皇子を見つめ

「フッ。何も私自身に頼まなくてもリウイ陛下達と面会する機会は今後いくらでもあると思うよ。」

「?一体それはどういう意味ですか?」

静かな笑みを浮かべて答えたオリヴァルト皇子の答えを聞いた後、眉を顰めて尋ねた。するとその時扉がノックされた。

「殿下。」

ノックを聞いたヴァンダイク学院長はオリヴァルト皇子を見つめ

「フッ、ちょうどいいタイミングで来てくれたね。――――そのまま入って頂いて結構です。」

見つめられたオリヴァルト皇子は静かな笑みを浮かべた後扉に視線を向けて言った。すると扉が開かれ、そこにいたのは――――――

「―――会議中の所、失礼する。本日の会議の内容の説明については俺自身からも説明があった方がいいと思い、参上した。」

なんとリウイがいた!



「なあっ!?あ、貴方は…………!?」

「メンフィル大使――――”英雄王”リウイ皇帝陛下…………!?一体何故こちらに……!?」

「………………フフ、これは一本取られましたな。」

リウイの姿を見たレーグニッツ知事は驚きの表情で声を上げ、イリーナ会長は信じられない表情をし、ルーファスは呆けた後静かな笑みを浮かべ

「―――ご紹介しよう。皆もご存知のかの”英雄王”にして”四人目の常任理事”―――――リウイ・マーシルン皇帝陛下だ。」

オリヴァルト皇子は静かな笑みを浮かべて答えた。

「なっ!?よ、四人目の常任理事……!?」

「あら…………なるほど。確かに今後顔を合わせる機会はいくらでもありますね。」

「フッ、まさかこんなとんでもない不意打ちをしてくるとは。―――お見事です、殿下。…………当然、今から説明して頂けるのですよね?」

オリヴァルト皇子の説明を聞いたレーグニッツ知事は驚いて声を上げ、イリーナ会長は目を丸くした後口元に笑みを浮かべ、ルーファスは静かな笑みを浮かべた後オリヴァルト皇子に視線を向けた。その後オリヴァルト皇子はリウイと共に様々な説明をし、それぞれ納得し、会議をした後、それぞれ従者を伴って帰り始めた。



「ん…………?何でまた常任理事達が集まっているんだ?……まだ月末じゃ…………なっ!?」

「どうされたのですか、マカロフ教………ええっ!?あ、あの方達は!?」

新任である音楽、芸術、調理技術を担当している女性教官――――メアリー教官に学院内を案内している導力技術と自然科学を教えている教官―――マカロフ教官はオリヴァルト皇子達と共に廊下を歩いて出口に向かうリウイ、リウイの傍に付き従って歩いているペテレーネを見て驚き、マカロフ教官の様子に首を傾げたメアリー教官もリウイ達を見て信じられない表情をし

「ま、まさかあの方達は…………リ、リウイ皇帝陛下にペテレーネ神官長!?い、いいいいい、一体何故このトールズ士官学院に……!?」

別の場所から見ていた士官学院の教頭であるハインリッヒ教官は混乱していた。

「本日はありがとうございました、リウイ陛下。お蔭様で滅多に見れないルーファス君達の驚いた顔を見ることができましたよ。」

ルーファス達と別れの挨拶を交わし、ペテレーネと共にリムジンに乗ったリウイにオリヴァルト皇子は口元に笑みを浮かべて話しかけ

「………相変わらず喰えない男だ。だがこちらとしても滅多に見れないものが見れた。”異変”の時……いや、あの時以上に俺自身の存在を露骨に利用した事については少々言いたい事があったが……今回の件で無しにしておいてやろう。」

「ありがとうございます。」

リウイに言われたオリヴァルト皇子は会釈をし

「……せいぜいこれ以上その皇子が奇行をしないように見張っておくのだな。でなければまたとんでもない奇行を仕出した挙句下手をすれば足元をすくわれるぞ、その皇子ならば。」

「ハッ!ご忠言、ありがたく受け取らせて頂きます!」

リウイの忠告にミュラー少佐は敬礼をして答えた。

「ペテレーネ。」

「はい。――――出して下さい。」

そしてリウイとペテレーネが乗ったリムジンはトールズ士官学院から去って行った。

「ね、ねえねえ、アンちゃん。今の人達ってあの”英雄王”と”闇の聖女”だよね?一体どうして常任理事の人達と一緒にいたんだろう…………?」

その様子を遠くから見ていた生徒会長のトワ・ハーシェルは大量の冷や汗をかいて表情を引き攣らせながらライダースーツを身に纏った女生徒―――アンゼリカ・ログナーに話しかけ

「フフ、常任理事達と一緒にいたという事は”Ⅶ組”とも何らかの形で関わってくる可能性は高そうだね。どうやら今年はトールズ士官学院始まって以来の面白い年になる気がしてきたよ。」

アンゼリカは静かな笑みを浮かべて答えた。



~同時刻・屋上~



「フフ……まさかかの姫君がこのエレボニアに訪れ……我が好敵手の導きによって”紫電(エクレール)”の君や”彼”と共に興味深い雛鳥達と新たなる物語を始めるとは……ハハハハハハッ!面白くなってきたな!ここでこんな素晴らしいゲストが加わるとは!」

同じ頃学院の屋上でリウイ達を乗せた車が去って行く様子を見守っていた白いマントを身に纏った仮面の男は口元に笑みを浮かべた後大声で笑い

「”幻焔計画”………私の予想以上に楽しめそうだよ。」

静かな笑みを浮かべて呟いた後ステッキを構えた。すると花びらが男の周囲に舞い、男は花びらと共に消えた…………! 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧