英雄伝説~焔の軌跡~ リメイク
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第3話
~某日・某所~
「遅くなってすみません。エンジントラブルの関係で飛行船の到着が遅れてしまった為、遅れてしまいました。」
「来たかルーク。何、今から作戦会議を始めるところだ。気にするな。」
各国、各組織が出し合った戦力が集まっている中にルークが入ってくると、その場にいる全員はルークに注目した。
(あれが遊撃士協会の次世代を背負うといわれる遊撃士の一人―――――『焔の剣聖』……確か、情報によるまだ成年ではないそうだな?)
(噂によると息子がいなく剣を捨てたカシウスの後継者だそうだぞ。)
(居心地悪っ!こんな事なら、一本早い飛行船に乗っておけばよかったぜ……)
多くの者達から視線を向けられたルークは表情を引き攣らせた。
「やあ、ルーク。久しぶりだね。やっぱり君も呼ばれたようだね。」
その時東の大国カルバード共和国独特の”東方風”の戦士の衣を身に纏い、頭に赤い鉢巻を撒いた槍を持ち、胸には”支える籠手”の紋章を付けている正遊撃士クルツ・ナルダンが話しかけた。
「クルツ、久しぶりだな!お前ならいると思っていたぜ。」
「ふふ、それはこちらの台詞だよ。私で呼ばれているのだから、君もきっと呼ばれていると思っていたよ。―――君の力、頼りにさせてもらうよ。」
「ああ。子供達を助けてやらねぇとな!」
クルツの言葉にルークは真剣な表情で力強く頷いた。
「へえ~お前が『焔の剣聖』か。確かにその髪をみたらそう思うな。」
ルークと一言二言交わしたクルツが離れるとジャケットを身に纏った茶髪の青年が興味深そうな様子でルークを見つめて話しかけてきた。
「………あんたは?」
「俺か?俺はガイ・バニングス。クロスベルの警察官だ。ちなみにこっちの仏頂面のやつはアリオスっていう俺の相棒さ。」
「誰が仏頂面だ。――――アリオス・マクレインだ。今回の作戦に参加することになったクロスベルの警察官だ。よろしく頼む。君の事は俺の剣の師であるユン老師より聞いている。」
「へ?”アリオス”……まさか老師の話にあった”二の型”を皆伝したっていう”風の剣聖”か?」
青年―――ガイに紹介された長髪の黒髪の青年―――アリオスの説明を聞き、目の前の青年がかつて自分に新たな剣技を教えてくれた老剣士の剣を継ぐ者の一人である事に気付いたルークは目を丸くしてアリオスを見つめた。
「ああ。昔、ユン老師から”八葉一刀流”の剣技を教わった事がある。手紙でユン老師が君の事を書いていたよ。カシウスさんも教え甲斐のある後継者を見つけたと。」
「ハハ、俺なんかまだまだだし、元々他の流派の剣技をやっていたから純粋な”八葉一刀流”の剣士じゃねえしな。なのに”皆伝”を貰うなんて正直俺には不相応だと思っているよ。」
「フッ、不相応なのは私も同じだ。」
その後二人の上司が呼びに来るまでルーク達は様々な談義で盛り上がっていた。
「――――まさか、お前がこの世界にいるとはな、レプリカルーク。お前の噂を聞いてもしやと思っていたが、本当にこの世界で生きているとはな。」
ガイ達が離れると大柄な髭面の男性がルークに話しかけてきた。
「!?」
義理の両親以外知らないはずの自分の正体を言い当てた人物の声を聞いて血相を変えたルークが振り向くとそこには、見覚えがある髭面の男性がいた。
「ラ、ラルゴ!?な、ななななな、何でお前が生きてんだよっ!?」
かつて戦った強敵の登場にルークは混乱し
「フッ。信じられぬ話かもしれぬが俺は気付いたらこの世界に倒れていて、それからこの世界でずっと生きてきた。」
「ハアッ!?お、おい。まさかとは思うが師匠達までこの世界にいるって事はないよな?」
男性の口から聞いた信じられない話を聞いて表情を引き攣らせて尋ねた。
「フン、その言い方だとヴァンはお前達に敗北したようだな。」
「………まさかまた、オリジナルが生きる世界を破壊するつもりか?」
「俺を侮るな、小僧。俺とヴァン達はお前達と互いの信念をかけて全力で戦い、敗北した。それを穢すつもりはない。第一この世界は俺達が目指した予言のない世界だ。その世界に住む人々を傷つける気はない。」
「そっか………」
かつて戦った強敵の口から出た敵意を感じさせない言葉を聞いたルークは安堵の表情になった。
「………メリルは生きているのか?」
「ああ、生きているぜ。多分立派なキムラスカ王族として今でも多くの国民達を導いているんじゃねえか?アッシュも多分だけど俺達の世界に帰還しているから、アッシュと結婚して幸せになっているんじゃねえのか?」
「そうか……………」
愛娘が元気でいる事を知った父親は静かな笑みを浮かべた。
「そう言えばお前、今何をしているんだ?ここに呼ばれているって事はどっかの国の軍人か”星杯騎士”か?」
「いや、お前と同じ遊撃士だ。ちなみにランクはAだ。」
「…………………………………」
男性の口から出た予想外の言葉を聞いたルークは石化したかのように固まり
「ハアッ!?お、お前が遊撃士ぃッ!?に、似合わねえ~!」
大声を上げて信じられない表情で男性を見つめていた。
「何をおかしなことを言っている?俺は元々傭兵としてキャラバン隊の者達を守っていた身だ。――――逆に王族として何の不自由もなく、我儘放題の生活をしていたお前の方が国のしがらみに囚われない民の守護者である遊撃士は全く似合わないと思うが?」
「うぐっ……!」
図星を突かれたルークは表情を引き攣らせた。
「今後は仕事を通じて協力し合う事もあるだろう。―――その時に足を引っ張るなよ、小僧?」
「うるせえ!それはこっちの台詞だっつーの!―――そういやお前、今は”どっちの名前”を名乗っているんだ?」
かつての強敵の挑発に乗ったルークは声を上げた後ある事が気になって男性の名前を尋ねた。
「かつて捨てた名前――――バダック・オークランドだ。”獅子王”の二つ名で呼ばれている。」
「”獅子王”って確かカルバードで活躍している凄腕の遊撃士だろ?あれってお前の事だったのかよ!?何で気付かなかったんだよ、俺……」
男性―――バダックが口にした聞き覚えのある異名を聞いたルークは驚いた後肩を落とした。
「さて、これで全員揃いましたな。それでは全国でおきている幼児誘拐犯グループ――――”D∴G教団”の壊滅作戦を行いたいと思います。」
一通り周りのざわめきが静かになったのを確認しカシウスは作戦会議を始めた。
「みなさんもご存じの通り各国で幼児の誘拐が目立っております。みなさんの協力やわれわれ遊撃士達の調べでわかったことですがこの犯行は全て同じグループであり、そしてそのグループは各国で"ロッジ"と呼ばれる拠点が数か所あることが判明しました。今回の作戦は犯人達に気付かれないようにまた、一刻も早く子供たちを助けるため少数精鋭でチームを分け一気に拠点を叩くことにしました。カルバードのAロッジの攻略メンバーは………」
そしてカシウスがメンバーを読み上げていった。
「最後に…"楽園"と呼ばれる拠点の攻略メンバーはイオン・ジュエ、アリエッタ・タトリン、ルフィナ・アルジェント、レイシス・フォン・アウスレーゼ、ルーク・ブライト!以上の5人が攻略メンバーです。各自健闘を祈ります!」
「なっ!?」
カシウスの締めくくりの声と同時にカシウスの口から出た信じられない名前を聞いたルークは声を上げ、その場にいる全員はルークに注目した。
「す、すいません!俺の事は気にしないで下さい。ハ、ハハ……」
全員に注目されたルークは大量の冷や汗をかいて表情を引き攣らせて答えた。各自それぞれ集まっている中、ルークは自分が組むメンバーを探していた。
(イオンにアリエッタだと!?ま、まさか本当にあいつらなのか!?)
「―――すみません、”焔の剣聖”殿ですね?」
「へっ!?あ、ああ。あんたはもしかして俺と同じチームの……?」
周囲を真剣な表情で見回しながら自分と組むメンバーを探すルークに声をかけた女性は優しげな雰囲気を纏い、背中にまで届くほどのピンクブラウンの髪を1つに纏め、白を基調とした法衣を身に纏い、首には”星杯”が描かれたペンダントをかけていた。
「―――初めまして。ルフィナ・アルジェントと申します。よろしくお願いします。」
「っと。ルーク・ブライトだ。えっと……もしかしてあんたって”星杯騎士”か?見た感じ、シスターに見えるけど武装しているし………」
「フフ、さすがですね。はい、私は”星杯騎士”の一人です。既にジュエ卿と正騎士アリエッタが別の場所で待機していますのでご案内します。」
「ど、どうも。(”ジュエ卿”って……ハハ、違う世界でもイオンは偉いんだな。まあ、本人かどうかわからねえが。つーかアリエッタが”騎士”って、全然想像できねえよ!いや、待てよ?あんな見た目でも”六神将”の一人の上、元導師守護役(フォンマスター・ガーディアン)だからおかしくはない……のか??)」
様々な思いを抱えながらルークは女性――――ルフィナの後をついて行き、到着した場所には自分にとって見覚えがありすぎる姿であり、生きている事自体が”ありえない”2人であった。
「なっ!?(オイオイオイ!?どうなってんだ!?あの二人と姿が瓜二つじゃねえか!?まさか本当にあの二人なのか!?)」
「―――ルフィナ。少し席を外してもらえませんか?彼とは顔なじみでして。久しぶりに再会しましたので、色々と積もる話があるんです。」
ルークが自分達の容姿を見て驚いている様子をクスッと笑って見つめていた森のような深い緑の髪を二つに縛り、白を基調とした法衣を身に纏う少年は透き通った声でルフィナに視線を向けて指示をし
「え?―――かしこまりました。」
少年の指示に首を傾げたルフィナはその場から去った。
「やっと、会えましたね、ルーク。貴方の噂を聞いてもしやと思いましたが、やはり貴方でしたか。――――ずっと会いたかったですよ。」
「………………………」
ルフィナが去ると少年は優しげな微笑みを浮かべ、少年の傍でぬいぐるみを抱きしめ、”星杯”が描かれている帽子を頭に乗せた法衣姿の少女はジッとルークを見つめた。
「イオン!本当にお前なのか!?」
「はい。僕はずっと貴方達と共に旅をしてきた”レプリカイオン”です。」
「!!よかった!お前、生き返ったのか……!」
「く、苦しいですよ、ルーク。」
涙を流して嬉しそうな表情をするルークに抱きしめられた少年―――イオンは自らが口にした言葉とは裏腹に、嬉しそうな表情になっていた。
「イオン様から、離れるです、レプリカルーク。イオン様、痛がっています。」
その時もう一人の少女―――アリエッタはルークを睨んで途切れ途切れに呟き
「っと、悪ぃ、イオン。えっと……久しぶりだな、アリエッタ。”聖獣の森”での決闘以来だな。」
アリエッタに注意されたルークはイオンから離れた後気まずそうな表情でアリエッタを見つめた。
「久しぶり、です。レプリカルークがこの世界にいる、という事はレプリカルークもアリエッタとイオン様のように、”一度死んだ”のですか?」
「……俺はローレライを解放した後意識が無くなったからな……てっきりアッシュと同化したと思っていたんだが……」
「ローレライを解放?ルーク、”僕やアリエッタが死んでから”一体何があったのか教えてもらえないでしょうか?」
「ああ、いいぜ。その代わり二人がどうやってこの世界に来たのかも教えてくれ。」
ルークの口から出た驚愕の事実に驚いたイオンはルークに自分達が死んでから以降の話が気になり、対するルークもイオン達がゼムリア大陸にいる事が気になっていた為情報交換をした。
「そっか……俺と似たような状況だな。やっぱ既に死んだ事が関係あんのか?」
「……わかりません。ですが、ラルゴの件も考えるとその可能性は高そうですね。」
互いに情報交換を終えたルークとイオンはそれぞれ考え込んでいたが
「ディスト以外は、総長も、リグレットも、みんな死んだ、ですか。」
「アリエッタ………」
何の感情も現さないアリエッタの言葉を聞いたルークは考えるのを止め、複雑そうな表情をした。
「アリエッタの事、気にする必要は、ないです。アニスとの決闘は、アリエッタの負けでしたが、アリエッタ、イオン様に、また会えました。それだけで、十分です。それに、ラルゴが生きています。ラルゴ、生きていて嬉しい、です。」
「そっか。多分ラルゴもお前の事を知ったら喜ぶだろうぜ。――――ん?」
アリエッタの答えを聞いて安堵の表情になった後ある重大な事実に気付いてイオンに小声で尋ねた。
(おい、イオン。今のアリエッタはお前が”レプリカ”である事は……?)
「勿論彼女には説明しました。僕がレプリカイオンである事も。それでもなお、彼女は僕に付いて来てくれると言ってくれたのです。」
「オリジナルのイオン様、死んだのは悲しいです。でも、ここにいるイオン様も、守ります。レプリカでも、イオン様はイオン様、だから。」
「そっか。よかったな、イオン。」
アリエッタの答えを聞いたルークは口元に笑みを浮かべてイオンを見つめた。
「フフ、それは貴方もですよ、ルーク。”剣聖”に家族にしてもらったのですよね?」
「………ああ。俺の正体を知っても、”人間”として扱ってくれる本当に良い人達だよ。」
イオンに微笑まれたルークも微笑み返した。
「そうですか………それにしてもまさか僕とシンク以外にも生き延びたレプリカがいたなんて。ですがアニスなら安心して任せられますね。―――ルーク。まさかとは思いますが貴方にもアッシュの記憶があるのですか?」
「へっ!?いや、ねえけど。何でそんな事を聞くんだ??」
「僕にはシンクの記憶があるんです。」
「なあっ!?お、おい、そ、それって!?」
イオンの口から出た驚愕の事実にルークは血相を変えた。
「”大爆発”現象でしょうね。―――まあ、そのお蔭で以前の身体の弱さはまるで無かったかのように完全に治って、シンクのように戦えますから助かるのですが……正直複雑ですね。」
「ハアッ!?って事はアレか!?シンクみたいに格闘技ができんのか!?」
「ええ。」
「オリジナルのイオン様、元々シンクみたいに、格闘技、得意、だったです。」
「ハ、ハハ。何から驚けばいいのか、わかんねぇぜ。そう言えば気になったんだけどよ。お前らの名前って………」
驚愕の事実の連続に表情を引き攣らせていたルークは二人の聞き覚えのあるファミリーネームに気付いて二人を見つめた。
「フフ、恐れ多いとは思いましたが、せっかくこうして別の世界で生きられるようになったのですのでユリア・ジュエから名前を頂いたんです。」
「アリエッタ、名前、アニスの名前しか、思いつきませんでした、から。それに、アニスへの仕返し、です。」
「ハハ……(アニスが知ったら絶対烈火のごとく怒りそうだな。)」
かつて共に戦った最後の”導師守護役(フォンマスター・ガーディアン)”の少女アニス・タトリンが烈火の如く怒る瞬間を思い浮かべたルークは苦笑いをした。
「――――改めて名乗りましょう。”守護騎士”第七位”七の導師”イオン・ジュエです。よろしくお願いします。」
「――――”七の導師イオン・ジュエの従騎士”、正騎士アリエッタ・タトリン、です。イオン様の、仲間である、レプリカルーク、アリエッタの仲間、です。」
その後イオン達と共にルフィナと合流しようとしたルークだったがルフィナと会話をしている金髪の青年に気付いた。
「ん?誰だ、お前?」
「ルーク、確か僕達のチームは5人です。彼は最後の一人なのでは?」
見覚えのない人物に首を傾げているルークにイオンは推測を口にし
「ああそう言えば、そうだったな……」
「フフ、君がカシウス殿の養子にして新たな”剣聖”か。―――お初にお目にかかる。私の名はレイシス・フォン・アウスレーゼ。よろしく頼む。」
青年―――レイシスは静かな表情で名乗り出た。
「ルーク・ブライトだ。よろしくな……ん?”アウスレーゼ”?確かその名前ってリベール王家のファミリーネームだったような……って、まさか!?」
「もしかしてリベール王家の方なのですか?」
目の前の青年が王族である事に気付いたルークは驚き、イオンは目を丸くして尋ねた。
「ハハ、私は祖母上達と違って”庶子”の身だからそう固くなる必要はないよ。」
驚いている様子の二人を見たレイシスは苦笑しながら答えた。
「”庶子”……?」
「”庶子”とは平民の血を引く王族の事ですよ、アリエッタさん。」
レイスの言葉に首を傾げているアリエッタにルフィナは説明した。
「というか何で王族がこの作戦に参加しているんだ――――ですか?」
「無理をして固い口調に直さなくてもいいよ。確かに私は王族だが祖母上―――アリシア女王陛下に無理を言って”社会勉強”として世界を放浪させてもらっている放蕩者だからそんなかしこまられるような”資格”は私にないよ。」
口調を言い直したルークにレイシスは苦笑しながら指摘した。
「ハ、ハア……(ピオニー陛下と話が合うかもしれねぇな、この人……)―――わかった。それでレイシス、遊撃士でも軍人でもないあんたが何で今回の作戦に参加したんだ?」
「例の誘拐事件は私も耳にしていてね。話によると幼い子供達ばかり攫われているとの事。王族の一人として……腹違いとはいえ幼い妹がいる者としてその集団の事は許せなくてね。それで旅を中断してリベールに帰国して祖母上に頼み込んで今回の作戦に参加できるように取り計らってもらったんだ。」
「その気持ちは立派、ですが、足手纏いにならないで、下さい。」
「お、おい、アリエッタ。」
レイシスに忠告するアリエッタを見たルークは焦った表情をした。
「ハハ、これでも剣はそれなりに使えるしアーツの適性も高いから足手纏いにはならないと思うよ。」
「部下が失礼を言ってしまい申し訳ありません。――――それでは行きましょう。」
「ああ。」
その後ルーク達は指定の地点に向かった……………
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