破壊ノ魔王
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一章
22
「……………………ってなことがあったから昨日は戻らなかったんだよ」
「血を、吸われてた、て……」
「うむ?言わなかったか?妾は吸血鬼のティナを持っておる。闇のなかでしか生きられぬ魔の者ぞ?」
「いやいや!ゼロが意識飛ばすくらい血を飲むって!それどうなの!???」
あの夜、さすがに飛空挺では無理だと断り、近くの(といっても空の大都市じゃなくて地上)森に入った。思い出してもイライラする。こいつ、案の定理性を飛ばしやがったからな
「童には刺激が強すぎたかのう……」
「いや!そうだけどそうじゃない!!」
「ならば、もっと詳しく話してやろう」
いいからーーー!!と叫ぶガキの声が響く。あー、やかましい。話す必要もねぇし、それに対して叫ぶ必要もねぇだろ。うっせぇな。こっちは極度の貧血なんだってのに
吸血鬼であるルナの目は妙な光を放っていた。息をあらげて厚い唇をゼロの首筋に伝わせ、牙を突き刺そうとして、そして迷う。
「…………気にすんな。取引だろうが」
ルナに返答はない。ただ、その牙をゆっくりと、そして深々と突き刺したのだった。ゼロには痛みが走る。しかし壁にもたれ、ただゆったりと目を閉じていた。体に力が入るのはルナの方だ。ゼロの体をきつく抱き締め、肩をつかむ手も爪が食い込むほど握る
血の一滴を溢すこともなく、血のすすり出される妙な音だけが響いていた
「…………おい」
ゼロの口からふと言葉が漏れた。目を伏せて睨み、少しだけ息をはやくするゼロ。ルナの口が止まった。しかし、また喉を動かす
「ーーっつ!この……」
無理やり引き剥がそうとするゼロ。しかし、ルナは逆に体重をかけ押し倒した。その口を放すことはなく、腕を伸ばして、ゼロの腕を封じる
ルナもティナの所有者だ。また、ゼロと同じく変形型でもある。見た目以上にその押さえる力は強かった
「…………おい」
ゼロはため息混じりに静かに言った
「コレが嫌で、死にたいんじゃなかったのか?」
ルナの深紅の眼がかっと開いた。その隙を逃すゼロではない。力任せに起き上がり、逆にルナを地に押さえつけた。濃紫からルナと同じ深紅の眼へと変わったゼロ。無機質な爪はルナの細い首を締め付けていた
「………………すまぬ」
「聞こえねぇなあ」
「すまぬ、魔王。……ほんとに、いつも……いつも……」
細く尖った牙はまだ血を欲しており、ルナの体に強烈な衝動が巡っていた。血を飲め、と本能の声だ。しかしそれが許されるはずはない。ゼロの冷たい視線がそう言っていた
「……貴重な情報を期待してるぜ。吸血鬼」
「見あった働きはしよう。約束する」
それからルナは空へと飛び上がり、ゼロはその場で座り込んだ。いつものタバコを取りだし、火をつける。もう爪も深紅の眼もそこにはなかった
「…………ぼくもいろいろあったんだけど…そっちほどしゃないな……」
「そうであろう。妾はかの魔王を怒らせてしまったのだからの。あの目は……いかんな。妾でも恐怖を感じる」
「本人は貧血でぶっ倒れる寸前だったんだろうけど」
ばーか。そんな危ないところまで喰わせるか。ちゃんと一撃で頭をふっ飛ばす力は残しといたっつーの
「それでぼくのはなしなんだけど、一応聞いてくれる?」
「あ?必要か?」
「たぶん」
「じゃ聞く。簡潔にな」
「簡潔に…………んー…………。ルーク・ラヴィーナがいた」
………………あ"?
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