世界をめぐる、銀白の翼
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第一章 WORLD LINK ~Grand Prologue~
響鬼 ~迫る脅威~
今蒔風は甘味処「たちばな」という店に来ている。
特に甘いものが食べたくなった、というわけでは当然ない。
実を言うと、そこである人物が来るのを待っているのだ。
ただいつ来るかわからない以上、その人物の風体も何もわからない。
だが目に入れば、世界からの情報提供でわかるはずだ。
そして30分後
御手洗団子を食べながら待っていると、目当ての人物がやって来た。
「どうも、おやっさん、いる?」
「ああ、ヒビキさん!父上なら下の資料室に」
「ん、サンキュー」
「あの、すみません」
やってきてあいさつを交わす彼等。
そこで、蒔風がおずおずとそこで声をかけた。
すると、それに応えてヒビキと呼ばれていた男が振り返る。
「ん?なんでしょ?」
「えっと、ヒビキさん、ですか?鬼の」
「おや!鬼を知ってるの!?最近正体ばれすぎてんじゃない?」
「ヒビキさん、またばれるようなことを?」
「ああいや、オレはヒビキさんに会うのは初めてですし、正直「鬼」が何なのかも知りませんよ?」
「は?じゃあなんで・・・」
「あー、うん。どこか別の場所がいいんですが・・・」
「じゃあ中入っちゃってよ」
「そんなわけわかんない人を・・・」
「まあまあ、まずは聞いてみないと。話はそっから。でしょ?」
「それは・・・そうですけど・・」
「んじゃ、来てくれ。ああ、青年、名前は?」
「蒔風舜」
「ん、オレは響鬼ってんだよろしく。(シュッ)」
何とも軽い対応で、ホイホイと連れ込まれてしまう。
そして響鬼に連れられ店の奥に進み、階段を降り、資料室と呼ばれる部屋に入る。
そこには眼鏡をかけた50歳くらいの男性が、もう二人の男性と調べ物をしていた。
「ども、こんにちは」
「「響鬼さん!」」
「お、響鬼。ん?その人は?」
「まさか響鬼さんまた弟子っすか~?」
「はっはっはっ!いや違うんだよ轟鬼。なんか変な風にオレのこと知ってるらしくてさ、話をしに来たんだよ」
「響鬼さんを知っている?」
「うん。らしいんだよね」
「あの、ここって・・・」
「ん?ああ、「たちばな」の地下、と言うより猛士の関東支部って言った方が正解かな?」
「猛士関東支部?たしか・・・・」
「??」
「これなんですけど・・・・」
蒔風が懐から紙を取り出す。
「なになに?「猛士 関東支部 蒔風舜」?」
「おやっさん、それは?」
「どうやら、彼はここの所属、みたいだねぇ」
「そんなはずはないっすよ!自分、ここに長く通ってますけど、この人に会ったことないです!」
「僕もですね」
「威吹鬼もか。おやっさん、どうなっているんですか?」
「それは彼に聞かないとねぇ」
「はい、説明します。そのためにここに来ましたからね」
「頼むよ」
「ラジャです。とりあえず、この世界に・・・・」
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そうして蒔風が説明を終えると、轟鬼が立ち上がって叫んだ。
「世界とかなに言ってんですか。そんな話信じられないでしょう!響鬼さん、威吹鬼さんも信じられないっすよね?」
「まあ、にわかには信じにくいよな」
「ですよねぇ!しかもなんすかこの紙は。名前と所属だけであとの欄はスッカラカンじゃないすか!」
「うーん。紙は、本物なんだけどねぇ。蒔風くん曰く役割、だっけ?たしかに、それなら説明つくけど」
「そうですね、僕もまだ信じられませんね」
「響鬼は、どう思う?」
「うーん、たしかに突拍子もない話だけど、彼が嘘ついているとは思えないんですよね」
「そっか・・・蒔風君、なにか、証明出来るようなことって、ないかな?」
「そうですね・・・最近変なことって起きてないですか?終わったはずのことが始まったとか、昔のなにかか復活したとか」
「・・・・うん、それはたしかにあるねぇ。他には?」
「ふう、じゃあ・・・・・これと、か?十五天帝!」
蒔風がムンッ、と身体を張り、少し仰々しく唸り声を上げる。
するとそれに呼応して、十五天帝が全身に現れてきたのだ。
「これは・・・」
「すっげーっす!」
「たしかに、我々の知らない力だね」
「そうなると思います。まあ、世界云々の話は信じてくれなくても大丈夫ですよ。とりあえず大変な危機が迫っているってことは、知っていてください」
「いや、信じるよ」
「事務局長?」
「なにより、彼の目は嘘をついていない」
「ありがとうございます」
「さて、今度はこちらが説明する番だね」
「お願いします」
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ここ、甘味処「たちばな」は、鬼を支援する組織、「猛士」の関東支部である。
おやっさんと呼ばれる、立花 勢地朗がこの関東支部の事務局長だ。
姫と童子という二人の怪しげな男女が、人間を餌に化け物「魔化魍」を育て上げ、さらに暴れる、ということがあるらしい。
その魔化魍を人知れず退治するのが「鬼」と呼ばれる人たちである。
「鬼」には己の体を鍛えに鍛えあげて、その肉体を変化させることによってなることができる。
ちなみに響鬼、威吹鬼、轟鬼などの名はいわゆるコードネームであり、本名ではない。
普通鬼になるには弟子になってから数年間修業してなる。
響鬼も弟子をもってるらしいが、今は猛士の総本山の吉野に行っているらしい。
姫と童子はともかく、魔化魍は鬼の放つ「音撃」でしか倒すことができない。
音撃とは、鬼たちの放つ清めの音による攻撃である。
音撃には太鼓、管、弦の三種類があり、ここにいる響鬼、威吹鬼、轟鬼がそれぞれ該当する。
鬼たちは全国の猛士のメンバーから情報を得て、魔化魍を退治し続けているのだ。
そしてつい半年前、「オロチ」と呼ばれる現象が起き、魔化魍の異常大量発生が確認された。
その異常に対し、響鬼、威吹鬼、轟鬼の三人が、見事その現象を抑えたのだった。
しかし、ここ二、三日になってまた魔化魍の出現が多くなってきており、その対応に他の鬼の人達も疲弊しきっているという。
その為、なにが起こってるのかを三人は調べていたのだ。
「なるほど・・・・」
「でも正直なにがなんだかわかんないんすよね・・・・」
「おそらくは、「奴」です」
「蒔風くんが追ってきているっていう?」
「ええ、どうやらその魔化魍ってのを大量発生させて、響鬼さんを疲弊させたところでやるつもりなんでしょう」
「なんかオレそんな、世界の中心っていうのがわかんないんだけどね。オレが殺されたら世界が壊れるって言っても自覚ないんだよね」
「でも、「奴」に殺されなきゃ世界は壊れないんすよね?だったらオレが響鬼さんを守るっす!!」
「ここに何百匹もの魔化魍が襲いかかってきても?」
「う!!そ、それは・・・」
「まあ、それでもいいです。とにかく狙われてるのは響鬼さんっていうのがわかっていただければ」
「んー、なんかなぁ」
「で、とりあえず「オロチ」を止めましょう」
「そうだね。そのためには・・・・・・」
「響鬼さん!!威吹鬼さん!!轟鬼さん!!」
「どうした?日菜佳」
突然さっき店で響鬼を迎えたおやっさんの娘、立花日菜佳が血相を変えて飛び込んできた。
彼女も猛士の一員であり、響鬼たちに魔化魍の情報を与えたり、対抗策を講じる、重要なメンバーの一人である。
「い、いま連絡があったんですけど、弾鬼さん、勝鬼さん、裁鬼さんが魔化魍に倒されて重傷だって!!」
「なに!?」
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~三日前~
とある山奥の遺跡
そこに「奴」は立っていた。
「奴」は蒔風の来る前にこの世界に入っていたのだ。
ここにある遺跡は「オロチ」の現象を止めるために、大地に直接清めの音を流し込むための巨大な太鼓である。
半年前、ここで響鬼がこれを使用し、大地を清め「オロチ」を止めた。
ならば、逆にべ宇野波長を流すことも可能ということ。
「すばらしい、ここからなら直接この世界にオレの波長を流しこめるな・・・ハァッ!!!」
「奴」が行動を始める。
その世界を食らうために。
to be continued
後書き
・猛士
魔化魍を倒すために作られた非公開組織。
所属する者全てが鬼というわけではなく、彼等をサポートする人員がほとんどである。
・関東支部
表向きは「甘味処・たちばな」という店。
関東支部としての本質は地下にあり、彼等の使う武器やディスクアニマルの開発や保管がされている。
・鬼
いわゆる、この世界における「仮面ライダー」のこと。
ちなみに関東支部には現在11人の鬼が所属している。その中で、響鬼は一番のベテランの鬼であり最強と言われている。
・音撃
邪悪を払う清めの音。
これを魔化魍に叩き込むことで、その身体を滅ぼす事が出来る唯一の方法。
ちなみに音撃の形式には三つあり、音撃打、音撃射、音撃斬である。
仕様武器もそれによって異なり音撃打は打楽器(撥)、音撃射は管楽器、音撃斬は弦楽器となる。
・オロチ
大地に邪悪なる気が溜まり、魔化魍が異常発生する現象のこと。
かつて響鬼たちは、山奥の儀式の場で大地に直接音撃を叩き込み、これを浄化した。
又、同名の魔化魍も存在するらしい(こちらの場合は龍の頭部の姿をした怪物)
少年よ、旅立つのなら 晴れた日に、胸を張って
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