異世界にて、地球兵器で戦えり
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第十一話 自衛隊との共同作戦3
「逃避行は中々、消耗するね。舗装されてない道だから、昨日の雨のせいで地面は泥まみれ。そのせいで馬車の車輪が嵌って移動速度は低下。」
そして次々と起こるトラブルも相次いでいるが、伊丹と島田の部隊だけでは対処は出来ないので、脱落した人間に関しては、非情かも知れないが見捨てるしかなく、ついてくる人間しか守る事が出来ないのが現在の第三偵察隊の現状である。
「クロちゃん。女の子の様子はどう?」
「伊丹二尉、同じエルフであるクリストフ兵長の助言もあり、異常はありません。」
黒川茉莉二等陸曹。女性にしては長身であるが、その黒髪の長髪の大和なでしこを思わせる美人であるが、第三偵察隊の男性陣曰くかなりの「毒舌」との事である。自衛隊中央病院から招集された医療活動による主幹人員である。
そんな黒川の隣にいる美形の男性エルフを伊丹は見る。そのエルフは、島田の部下である男性エルフで、唯一の生存者である少女エルフを黒川と見てもらう為に、高機動車に搭乗させるように島田に許可を貰って、現在は島田と入れ替わる形でクリストフが高機動車に搭乗している。
伊丹の視線に気がつきニコリと笑顔で対応する青年エルフであるクリストフ、そして外面だけでなく内面も非の打ちどころがなく紳士的な態度であるため、アルヌス駐屯地にいる女性自衛官からも人気がある。なお、これを知って「外見内面共に完璧イケメンって……ガチのリア充っす」と、クリストフの対応にどんよりとした倉田が落ち込んでいたのであった。なお伊丹は、これを無視してた。リア充が羨ましいとは、同じ男性でもあるため多少は持ち合わせているが、かといってそこまで執着する人間でもなかったからだ。
「しかし、まあ~あれだね。アカツキ帝国だと、エルフとかが軍人になるのも珍しくないんだ」
「そうでもないですよ。同じ亜人でも、軍人になるのは獣人達が中心ですし、エルフがアカツキ帝国で働く場合は自然関係の仕事が殆どです」
実際に種族の価値観の違いもある。基本的に短命種は、結果を直ぐに求めて早期に技術を学ぶのに対して、エルフを筆頭とした長命種族は自然に気長に覚えればという考えがあり、アカツキ帝国に奴隷から解放された事は感謝はするが、昔ながらの森の中で気長に生活したい者が多く、働くにしても自然の中で生きていたエルフは、自然と調和する仕事を選ぶ場合が多いのだ。
そのため、荒行ともいえる軍人になる事は珍しいとの事だ。
「じゃあ何で軍人になったの?」
「ん~なんといえば言いですかね。奴隷だった頃に市民に戻してくれたアカツキ帝国に感謝して、軍に志願したというのが動機の一つでもありますね」
クリストフは、元々はエルフの中でも変わり者に属されるエルフであった。とにかく外界にて、刺激的な毎日を過ごしたいという思いが強く、森の中でひきこもるのが嫌になり、160歳を過ぎたころに遂に森を出て外に出てしまったらしいのだ。その時たまたま奴隷狩りを行っていたイソルデ王国に捕まり、50年も奴隷にされて酷使され続けたが、アカツキ帝国がイソルデ王国を滅ぼした事で奴隷から市民に戻って今にいたる。
「まあ、他にも理由はあります。そもそも親の反対を押し切って森を出たのに、今さら帰れる雰囲気でもないので、219歳になったのをきっかけにアカツキ帝国軍に志願しました。」
219歳と聞いて黒川は、何といえばいいか分からない表情であるが伊丹は、この手の話を自分の趣味でも知っているので「やっぱりエルフだ」と納得した表情であった。クリストフ曰く、エルフは人間種と比べて成長も遅いので、エルフの感覚で言えば100歳になれば人間の感覚で10歳くらいの扱いであるため、クリストフはまだまだ若いエルフに属されるとの事だ。
これを聞いた黒川は、種族のギャップに困惑するが、伊丹は特に気にする様子はなかった。本人はそういうものだと割り切っているからだ。
そんな話をしている時に、豪快なジェット機特有の轟音が響き渡る。そして空は数機程の中型輸送機が飛んでいた。
ーーー。
『こちらウォーカー1。援軍と補給物資を届けにきた。未来位置に補給物資を投下するから後はまかせた!』
そして輸送機の貨物扉から退避民達に必要な衣服、水、食料といった補給物資が次々と投下された。
「輸送機ですか?あれはアカツキ帝国軍が使用している輸送機ですよね」
「そうだよ。島田大尉が救援要請をしてくれて、大規模な援軍は送れないけど、補給物資を届けてくれるように交渉してくれたんだよ。翼龍の限界高度はそこまで高くないし、輸送機でもイザとなれば速度と高度の差で逃げ切れるでしょ」
「やる気がない隊長と思いましたが、少しは尊敬できそうですわ」
黒川の少し毒がある言葉を聞いて伊丹は「どうも」としか返せなかった。普段が怠け者として知れ渡っている事を知っているので、本人はあまり黒川の毒舌を気にしない。
(何度も思うけど、あれ完全にボトムズのATだよな)
輸送機と一緒に降下してきたアカツキ帝国軍が寄越した援軍である。アカツキ帝国軍が配備した新兵器10式戦術装甲歩兵機を見て、有名な咽るロボットアニメに出てくる機動兵器に酷使している10式戦術装甲歩兵機に違和感を覚える伊丹。初めは伊丹も「何でAT!」と、驚きが隠せない程に驚きまくっていたのだ。
「01機械化混成部隊の岩崎 薫曹長です。援軍に来ました」
岩崎は10式戦術装甲歩兵機(次からは10式と省略する)のコックピットから顔を出して、島田に敬礼をする。
「こちらは第2検索部隊、及び第三偵察隊の島田大尉だ。援軍を感謝する。しかし中将も思い切った決断を下したんだな」
「ええ、こいつの初の実戦が炎龍かも知れないって聞かされた時は、何かの冗談かと思いましたよ」
「選ばれた事は不幸かも知れないが、大規模な援軍が呼べない事もある。本当にすまんな」
「いえいえ。こいつが実戦で役に立つって事を保守派の連中に教えてやるいい機会だと思いますので、腕がなりますよ」
陸軍の間で、人型機動兵器が役に立つとは思っていない者が多く存在しており「そんな物を作るなら、もっと1式戦車を量産しろ」との声も沢山あり、10式に対する信頼性は低いものであった。
補給物資を手に入れて新たな護衛が到着した事もあり、コダ村の住民たちは安心していた。
「これで死なないで済む」
何しろ退避行の時に馬車が壊れて荷物を放棄するしかない住民もいたので、そんな彼らからすれば自衛隊やアカツキ帝国軍が用意してくれた補給物資に感謝していたのだ。補給物資をコダ村の住人に全て届け終えた所で逃避行が再開した。そしてしばらく歩き続けた所で、上空にカラスが多く飛び回っている事に気がつき、そしてカラスに囲まれているように座っているハルバートを抱えているゴスロリ少女がいた。
その姿を確認して驚いていたのは、ブルーム王国出身のアナである。
「ロ、ロウリィ・マーキュリーだと!!」
「知っているのかアナ?」
「ああ、以前我が国に来ていたので謁見の間で見た事がある。」
「どんな人物なんだ?」
「ロウリィ・マーキュリーは死と断罪の神であるエムロイに仕える亜神だ。亜神は、肉体を持ったままか神の力を得た存在だ」
そんな現世にいる神とも言える存在が現れた事に驚くアナであったが島田に説明する。
「見た目は12から14歳の少女だけど」
「馬鹿を言うな!あれで齢が900を超えているのだぞ!」
「え?」
まさかエルフのクリストフ以上に歳を取っている事に驚きが隠せない島田であった。見た目はコスプレをしている美少女にしか見えないが特地の住人にとっては重要な人物であるため、その事を伊丹に伝えた後に、島田とアナがロウリィのもとに向かう。
「自分はアカツキ帝国軍に所属しています島田大尉です」
「ブルーム王国出身のアナです。聖下にあえて光栄です」
「そういう堅苦しい挨拶はいいわぁ。それよりあなた達は、何処から来て何処に向かうのかしらぁ?」
「コダ村からです。自分達は炎龍が現れた事で避難する事になったコダ村の住民達と一緒に同行しています」
「無理矢理連れて行っているわけじゃないのねぇ」
「無論です。そちらの事情に差し支えなければ我々と一緒にご同行いたしますか?」
「ええ、いいわぁ。少し興味があるしぃ」
こうして亜神のロウリィ・マーキュリーも一緒も同行する事になった。その後、高機動車に搭乗するのだが、そこで伊丹の膝を椅子替わりにして、そこで伊丹が押し退けるとロウリィがまた座るという亜神と人間のショボイ争いが起きたのであったが、お互いに妥協して席を半分に分ける形で終わった。
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