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普通だった少年の憑依&転移転生物語

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【ソードアート・オンライン】編
  134 天稟の運


SIDE 升田 和人

年は2025年。月日は年の瀬とも云える12月8日。時の頃は()もどっぷりと沈んでしまった18時16分。

真人兄ぃが先に【ガンゲイル・オンライン】に突入してくれてから早くも二日目。……同じく菊岡から同じくして【ガンゲイル・オンライン】にインする様に頼まれていた俺は、未だに【GGO】にはコンバートしていなかった。

本音を漏らしてしまえば、俺も【ガンゲイル・オンライン】にインして、菊岡からの依頼を果たして──≪死銃(デス・ガン)≫に撃たれて、とっととお役御免の身になりたい。……しかし、そんな俺の焦燥を知っているか知らないかは判らないが──否、判っててやっているのだろうが、菊岡からの〝GOサイン〟は未だに出ずと云った塩梅である。

……真人兄ぃの分のソフトは前日──日曜日の内に渡してあると云うのに…だ。

――~♪ ~~♪ ~~~♪

そんなこんなで未だ届かない菊岡からサインに辟易してながら課題の問題集を解いていると、そんな俺の懊悩(おうのう)を察知した様に、俺の携帯端末から、有名ゲームの勝利のファンファーレ──メールの着信音が聞こえる。

……〝もしや〟と思いながら焦る様に携帯の待受画面のメールアイコンをタップして新着メールの画面を開けば、そこには[菊岡 誠二郎]と俺の待ちに待っていた名前がある。

(……狙ってやってたら覚えてろよ)

当たっていた俺の〝もしや〟の感覚。そして、あまりのタイミングの良さに菊岡へと内心で毒吐きつつも、急ぎながらその新着メールを──読み飛ばしの無い様に注意しながら流し読みすると──そこには、〝やはり〟と云う菊岡からのメールは俺の待ちわびていた内容の旨のメッセージだった。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

12月8日から日をまたいでの12月10日。菊岡からメールが来たほぼ同時刻である、16時32分。場所は変わって──昨日と違って自室ではなく、都内のとある病院に居た。……云うまでもなく、そうする様にと菊岡に指示されたからだ。

……ちなみに菊岡からのメールにはこんな風に記されていた。


――――――――――――――

先行してもらった真人君から情報を貰ったんだが、【GGO】の中ではどうやら〝BoB〟なる──〝【GGO】最強のガンナーを決めるための大会〟が12月13日に開催されるらしい。……真人君の予想では≪死銃(デス・ガン)≫はそこで動く可能性が高い様だ。

火急で悪いとは思うけど少々予定を早めることにさせてもらった。12月10日──明日から和人君も【ガンゲイル・オンライン】にインしてくれ。


【□□□□総合病院】のフロントに行って、和人君の氏名を出して〝安岐(あき) ナツキ〟と云う名前を出せば、その後はとんとん拍子に行くようしてある。だから和人君は、遅くても17時くらいまでには病院に向かってくれ。明日の夕方までには手筈を整えておいてもらえる様に僕からも頼んであるから待たされる様な事はないからね、そこは安心してくれて構わないよ。


【□□□□総合病院】の場所については是非とも添付ファイルを参照の事。


――――――――――――――

菊岡の味気無いメールはそこらに置いておくとして──だがしかし、今の俺には突っ込まねばならない事があった。

「あの安岐さん──で良かったんですよね」

「何かな升田君?」

「〝これ〟は一体…?」

菊岡に指示されて【□□□□総合病院】に居たのは良いのだが、目の前看護師(ナース)さん──名札プレートと菊岡からのメールを(あわ)せて類推するなら〝安岐(あき) ナツキ〟さんに上着を脱ぐ様に指示された。

いきなりの事に〝なんでや!?〟と、どこぞのバカオウ──もといキバオウみたいに抗議をしようとしたが安岐さんの笑顔に封殺されてしまう。

……しかし、俺には真人兄ぃみたいな──〝人を宥めすかしつつ自分の要求を通す弁舌(テクニック)〟は俺のスキル欄には皆無なので、安岐さんから指示された通りに上着を脱げば、ぺたぺたぺたぺたと、たくさんの電極パッドが貼られる。……気分は(さなが)ら末期患者である。

「〝これ〟は、簡単に云っちゃえば【GGO】をやってる最中の、升田君のバイタルサインを観測するためのモデリングセットかな」

「ああ、成る程…」

安岐さんの簡潔かつ明瞭な説明に納得する。俺の今回の目的は、〝≪死銃(デス・ガン)≫に撃たれる事〟で──可能性としては極低いと見ているが、〝現実に死人が出ていて本当に死ぬかもしれない事〟だったので、今の厳戒体制納得モノだった。

……ちなみに明日奈達には真人兄ぃ──ティーチと一緒に【GGO】にコンバートする事は既に周知してある。……【ALO】内のアイテム類は全てエギルに預けてある。真人兄ぃはユーノに預けたらしい。

閑話休題。

それでこ安心してアミュスフィアを被れると云うものだ。……アミュスフィアを被ると安岐さんが何やら思い出したように──俺が居る病室の隅を指で示しながら口を開く。

「あ、AEDも完備してあるから安心して逝ってきていいよ~」

「はは…。それは心強いですね。〝リンク・スタート〟」

安岐さんにガス抜きをしてもらい、今日も仮想の世界へと身を投じた。

SIDE END

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

SIDE 《Kirito》

「まさか〝こんな〟アバターを引いてしまうとは…」

【ガンゲイル・オンライン】にコンバートして数分。転移ポート(?)からここまでの道程で二回もナンパされてしまった。……もちろん〝逆〟なんて付くような──うらやまけしからん理由なんかではなく、〝むさ苦しい男〟にナンパされた。二回とも。

その理由は俺の容姿にあった。最初は俺が〝女性(にょしょう)〟と思ってナンパしていたらしいが──どうにも俺の仮想体(アバター)はレアモノらしく、俺が男である事を明かしたとしても、今度はその誘いの方向性を変え〝その仮想体(アバター)売ってくれ〟──とな、大して嬉しくもない誘い文句でナンパされていた。

……むさ苦しいナンパ師共の視線に言い様の無い恐怖感を抱きその視線を浴びせられてある状況から逃れる様に動こうと──通りのショーウィンドウに写った自分の姿を見たときに理解した。……〝自分の仮想体(アバター)が美少女〟であると云うなんて、直ぐに判ってしまった。

自分の仮想体(アバター)が美少女然としてると云う事を確認して、直ぐに転移ポートの通りから一本路地に入っての──さっきの愚痴である。

……ただでさえ現実(リアル)の女顔に辟易てしているのに、仮想(バーチャル)ですら女顔──寧ろ〝女の子そのもの〟になってしまうなんて、愚痴の1つや2つを溢しても神様は文句は言わないだろう。逆に、言われたとしたら──その時は鬱憤を晴らさせてもらおう。……主にMobに。

(……えっと、確かポートの通りを真っ直ぐ行って右手側の店だったよな)

「さて──」

――「ちょっと待ちなさい」

【GGO(こっち)】に先行してもらった真人兄ぃ──ティーチとは、一緒に動ける様に待ち合わせをしている。……路地裏に入って数分。〝いろいろな意味での覚悟〟も決まり──時間も()しているしティーチとの待ち合わせ場所に向かおうした時、前の方──メインストリートの方向から声を掛けられる。

「えっと、何かな」

「さっきまであんなにわたわたしてたのに案外余裕そうね」

声を掛けてきた水色髪の少女は、俺の喜劇(ひげき)を知っているらしく声を掛けてくれたらしい。……その心遣いは今の俺の煤けた心には面白いほど()みわたっていく。

「……そういえば自己紹介がまだだったか、私はシノン。……〝貴女〟の名前は?」

「キリトだ」

「……〝キリト〟…? こう言ったら〝貴女〟には悪いけど、まるで男みたいな──ああそう云うことね。……〝そんな〟仮想体(アバター)を引くなんて貴方もツイて──ああ、もうっ、悪かったからそんな顔をしないでよ!」

シノンと名乗ったその少女に俺も名乗り返せば、その反応(リアクション)からシノンも勘違いしていた事が判明する。……〝いい()やぁ…〟──などと感動しかけていたので、意外と傷は深かった。……するとシノンは落ち込む俺を見て気に病んだのか、場を繋ぐ様に口を開いた。

「あ、でも、ある意味タイミングが良かったかもしれないわね。前からの知り合いと待ち合わせしてるの。……でその知り合いが〝面白い初心者(ニュービー)が居るから紹介してみたい〟──って言ってるのよ」

「〝面白い初心者(ニュービー)〟…?」

「そう。貴方もその初心者に会ってみない? ……貴方と初心者同士で良いと思ったんだけど…」

鸚鵡(おうむ)返しに訊ねてみるも、俺には〝出来すぎている〟様に感じる。……なので〝それ〟をシノンに()いてみる事にした。

「……もしかしてその待ち合わせ場所って、ここから一番近いバーだったりしないか」

「……確かに知り合いとの待ち合わせ場所は通りに出てすぐのところだけと──そういうこと。……ねぇ、貴方はもしかして〝面白い初心者(ニュービー)〟の知り合い?」

ティーチから待ち合わせに指定された店の事を口にすれば、シノンから胡乱(うろん)な目で見られる──も、数秒の事。直ぐにシノンも〝出来すぎている〟この状況に違和感を持ったのか、胡乱気な表情を引っ込める。……シノンは俺と同様に〝とある可能性〟に辿り着いたらしい。

……〝ティーチとシノンの知り合いが既に知り合っている〟と云う可能性に…。……〝普通に考えたら〟まず出ない様な推論だが、何故だか(あなが)ち外れてない様に思えるのはティーチ──または真人兄ぃの天稟(てんぴん)からの学習か。

「……シノンの知り合いがピーチと云う──〝紫っぽい髪をしている〟女性プレイヤーなら、多分その〝面白い初心者(ニュービー)〟とやらは俺の知り合いだな」

「……思った以上に世界は狭いようね」

「そうだな…」

どうやら俺とシノンの推測は当たっていた様で、シノンと一緒に溜め息を()きながら肩を落とす。……何故だかシノンとは仲良くなれるような気がした。

SIDE END 
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