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剣士さんとドラクエⅧ

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41話 昔話

・・・・

「恥ずかしい話でがすが、実は昔、あっしはここでビーナスの涙を手に入れようとして失敗したことがあるでがす……」
「そうなんだ?」
「軽い気持ちで入って、尻尾を巻いて逃げ帰ったんでがすよ……」

 しみじみとヤンガスは入り口から見える悪趣味な配置の、豪奢な装飾の大きな宝箱……あれにビーナスの涙が入っているんだろう……を眺める。そう、ヤンガス、一度は挑んだんだ……。

「……不謹慎だけど、流石にここに来たら胸が踊るね」
「トウカの兄貴なら問題なく突破できるでがすよ」
「ありがとう。でもここ、仕掛けだらけって聞いたよ?だから単なる戦闘能力だけじゃ何ともならないって」

 ……不吉な情報を初っ端からありがとう、トウカ。知らないよりは良いに違いないけど……なんだか嫌な予感がするんだよなあ……。ここ、雰囲気だけで判断するなら結構魔物も強そうだし……。実際、ヤンガスが撤退したなら相当強いんだろうなあ……。トウカじゃあるまいし、こんなことがなかったら絶対に来たくなかった。

 だって、考えてみれば、あの宝箱が開けられていないっていうことは、今まであそこに行ってビーナスの涙を手に入れた人は居ないって事でしょ……?それなりに名前が知られている場所みたいだし、ヤンガスみたいに何人もここに挑んだはずだし、場合によっては当時のヤンガスはよりも強い人も居たかもしれないのに。

「……羽目は外すなよ」
「分かってる。急所狙いでガンガン行くから」
「それを羽目をはずしているっていうんだ……頼むから自分の身を守ってくれ」
「……おう。回復魔法、何時も悪いね……」

 やや疲れたようなククールに言われて、トウカは頷いた。頷いたね?絶対に守ってよね?僕からもお願いだよ……。最近のククールはフィールドで戦っていると最早語尾がベホイミかベホマだから……。魔法の聖水片手にレイピアを振りつつ……ちょっと、いや、かなり尊敬する。

 ククールが仲間になってくれなくて、回復役が僕だったら……悪いけど、ぞっとするんだけど。

・・・・

「わぁおっ!トラップ!」
「楽しそうに落ちるな!」
「受け身を取るまでもなく着地ィ!」
「地面にクレーターを作らないで!」

 真面目……トウカとして、だけど……に戦っていて、いつもの様に大仰な動作や声を上げて笑ったりもしないけれど、普段の旅で見ないようなものを見つける度、とても嬉しそうにしているトウカ。

 うっかり誰かがトラップの扉を開けてしまい、思いっきり五人もろとも下の階に続く穴に落とされてしまったの。避けきれずに落ちたのは皆同じだけど、剣を空中で素早く仕舞い、ダンッと激しい破壊音を立てて両足で着地し、ついでと言わんばかりにあたしまで助けてくれた。

 ふわりと背中に回された腕は素早くも優しく、衝撃を殺して軽く受け止める。隣で呻くエルトを見る限り相当の衝撃だったみたいだけど……痛くもなかったわ。少し砂埃を受けただけで。トウカって……サーベルト兄さんみたいに何時でも優しいのね……。

「……また何故かひとところに溜まっている毒の沼地か……嫌だなあ」
「いてててて……それよりも……」
「分かってるさククール。ゼシカの騎士は君だよね。ボクは野暮なことしないでここにいる魔物を狩るから安心しててよ!」

 さっとあたしを降ろしたトウカは剣を抜き放ちながら飛び出して行ってしまった。

 ……トウカの言うとおり、周りをぐるりと魔物に囲まれてしまっているわ。跳ね起きたエルトとヤンガスも武器を構え、あたしも杖を振りかざして迫り来る魔物を焼き払う。ああ、もう。こいつらの耐久力は並じゃない。

 前にも思ったのだけど、先へ進めば進むだけ魔物は強くなっていく気がするわ……。魔物の攻撃力、耐久力、攻撃の多彩化……何故なのかしら。ドルマゲスを倒すためには強くならなきゃいけないのは分かっているわ、でもこれはないんじゃないかしら……。

「イオラッ!ヒャダルコッ!」
「バギマ……ベホイミ……ベホイミ……トウカ人の話聞いてたのかよ……ベホイミ」

 魔導書には中級と記載されている魔法を、あたしやエルト、ククールがこうも使いこなせるようになったことは、とても喜ばしいのだけど……ククールのぼそぼそとした愚痴は何時になったら無くなるのかしら……いいえ、忠告を聞いていたようで聞いていなかったトウカが悪いのだけど。

 あれから少しは避けはするようになったのだけど、相変わらずククールが常に詠唱し続ける魔法の光で輝き続ける状態。エルトもヤンガスも最早ククールの愚痴を聞き流すようになったぐらいよ。気持ちは分からないでもないけど、聞いてるこっちは鬱陶しいのよ!

「黙って戦いなさいよ!メラミッ!」
「へいへい……ベホイミベホイミ」
「……同情はするわ」
「そうか……ベホイミ……レディにも俺の苦労が、ベホイミ、分かってくれるのか……ベホマ」

 もうあんたの語尾はベホイミでいいんじゃないかしら……。まあ、魔法の聖水をがぶ飲みしているぐらいなんだから相当きついんでしょうけど。

 ……こんなに魔物を倒していたらお金の貯まり方は尋常じゃないから魔法の聖水をあんなに買ってても大丈夫なのが皮肉ね。

「ありがとうククール!」
「お前は早く魔物を何とかしてくれ……ベホイミ」
「お疲れ様!」
「ヤンガス前見やがれ!ベホマ!」
「おう!」

 ……怒鳴って悪かったわ。これは愚痴ぐらいは言ってもいいわね……。ここにきて魔物の攻撃の間隔……と言ったらいいのかしら……が素早くなったものだから。

「全部倒した!次行こう!」

 颯爽と駆け出す前にトウカがアモールの水をククールの手に押し付けていた。苦労かけてるのわかってるんならもう少し避ければいいのに……。 
 

 
後書き
トウカ「避けろ避けろ言ってるけど、普通そんなの無理なの分かってるの?!」
ククール「気が気じゃないんだがベホイミ」
トウカ「ちなみにさり気なくお姫様抱っこしたんだよ」
ククール「そうかベホイミ」

トウカの回避率は頼まれてからで40%ぐらいという設定。これでもっとやれという、パーティメンバーの要求の無茶ぶり。とはいえククールとゼシカはスキルと装備で50%まであげれますが。
秒単位でダメージを受けまくっているトウカのHPがようやく80に届けばいいなという程度しかない伸び率なのが一番の問題です。

平均レベルは26ぐらいですが、トウカ以外は28レベルです。ククールやゼシカのブランクは考えていたらめんど……ブランクは埋まったんです。

そしてククールが魔法の聖水中毒の危機……!
ちなみに、調達はしてますが、大半は使えもしないクセに持っていたトウカの私物です。 
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