ソードアート・オンライン ~story of Liebe~
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第5話
2022年11月、雪が降り積もる中、日本であることが大きな話題になっていた。それはユーザーによるベータテストを経て、世界初のVRMMORPG「ソードアート・オンライン」(SAO)の正式サービスが開始されたということだ。販売し始めてから約1万人のユーザーがアカウントを作り、完全なる仮想空間を謳歌していた。
「さて、始めるか」
ここにも一人、仮想世界を楽しもうとしている少年がいた。
「リンクスタート!」
浮遊城『アインクラッド』
その名の通り空に浮かぶ巨大な城であり、百もある階層で作られている。一層一層がとても広大で様々なエリアがある。最初は各プレイヤーは第一層から始まり、上の階層を目指していく。大半はそうだが、それに限らず世界観を楽しみたいプレイヤーや友達がいるから等、様々だ
第一層 草原フィールド
「……とりゃ!うわっ!」
前にいる敵のイノシシに向かって剣を振るが虚しく空を切る。何度も攻撃しているが一向に当たらない。
その直後に敵からの反撃の突進を受けて、後ろ回りしながら転がっていく姿を俺は笑いながら見ていた。
「そんなむやみやたらにやっても当たらないぞ、クライン」
「だってよぉ~、キリト。こいつイノシシのくせに動くんだぜ?」
「いや、イノシシだって動くだろ普通・・・」
こいつの名前はクライン。赤い髪にバンダナをしたこいつはログインしてすぐ出会ったばかりで、お互いのことはよく知らない。今は戦い方を教えてくれと頼まれたので教えている。
そして、俺の名前はキリトとなっている。この名前はSAO内のキャラクターネームであって現実の名前ではない。見た目も少し向こうの世界と違う。
「いいかクライン?最初にしっかりモーションを起こしてスキルを発動させれば、後はシステムが命中させてくれる。つまりモーションが大事だよ」
と言いつつおれは地面にある石を拾い上げ、左手で投げるように構えた。するとシステムが感知し、自動的に左手が動きだし持っていた石を投げた。その石はイノシシに向かって飛んでいきしっかり命中した。イノシシは怒ったように鳴きこちらに振り返った。
「後は慣れるまで練習していけばいいよ」
「モーション……モーション……」
まるで呪文を唱えるようにブツブツ言いながら初期装備の刀『海賊刀』を振り回しているが全然当たらない。勿論反撃を受けないなんてことはないためHPはどんどん減っていき半分近くまで減っていた。
「クライン、モーションを感知したのを感じてからじゃないとスキルは発動しないぞ~」
「わ、分かってるつーの!」
クラインの刀から光が放ち、その瞬間に刀を振ると今までとは違う動きでイノシシを切った。どうやらソードスキルを使うことができたみたいだ。敵のイノシシはパラパラとガラスの欠片のように散っていった。
「うおっしゃー!」
「初勝利おめでとうクライン」
「ありがとなキリト!お前がいなけりゃ今頃俺はこの中ボスにやられていたぜ」
「何言ってんだ?こいつは他のゲームで言うスライムみたいなもんだぞ」
「んだと!?こりゃ先が思いやられるぜ……」
落ち込むクラインだが、実際分からなくもない。初めてこのゲームをした時もこういう相手に苦労して勘違いしたものだ。そして、倒した後は凄く感動し喜ぶ。これがこのゲームの醍醐味だと思っている。
「よっしゃぁ!もっと狩るぜ!」
「あまり無茶するなよ」
調子に乗っているクライン放っておいて、周囲を見て改めて実感する。ここは現実の世界じゃなくゲームの世界の中なんだと。そして、二か月前の世界に戻ってきたんだと。
数分後、何体か倒したクラインが戻ってきた。
「いやー、満足した」
「慣れるまで教えようか?」
「いや、まだこのナーヴギアに慣れていなくてな。そろそろ休憩のため抜けるわ。飯も食わなきゃいけねぇし」
どうやらクラインはこういったゲームそのものが初めてらしい。まぁ、疲れるのも仕方ない。
「分かった、お疲れ様」
「……ところでよキリト。飯食った後に知り合いとこの始まりの街で会う約束してるんだが、お前も会って教えてやったりしてくれないか?もちろん紹介するしフレンド登録もできる」
「ん~……」
あまり社交的なことが苦手な俺は口ごもってしまう。上手く仲良くなれる自信がない。
「いや、無理にとは言わねぇぞ?」
「悪いなクライン、また今度にしておくよ。ありがとう」
「おいおい、むしろこっちが礼を言いたいくらいだ!この恩は必ず返すぜ!」
「期待しているよ」
そしてクラインは右手の人差し指と中指をそろえて振り下ろした。メインメニューを開を開く初動だ。そのままログインボタンを押してログアウトしていく……はずだった。
「……おい、キリト。ログインボタンがないんだが」
「何バカなこと言っているんだ?そんなことあるわけ……」
俺も同じくメインメニューを開く。すると一番下にあるログアウトのボタンが消えていた。
「ないな……これはバグかなんかじゃないか?」
「初日からこんなでかいバグ出てたら運営に苦情殺到だな」
クラインは笑って言うが実際かなり大変なバグなんだが……
「まぁ、すぐ運営が対応するはずさ」
すると街の方から大きな鐘の鳴る音が響いた。この一層全体に伝えるように鳴っている。
「お、噂をすればお知らせだぜ」
放送が流れるのかと思いきや、下から光が出てきて二人を包み始めた。
さっきよりも大きな鐘の音が鳴り響き、その音に俺とクラインは驚いた。
「うおっ!」
「!?ここは……始まりの街か」
どうやら始まりの街に強制的にテレポートされたらしい。おそらく俺らだけでなくこのゲームに参加しているプレイヤー全てだ。
それにしてもどうして何の宣告もなしにテレポートさせたんだ?運営は何を考えているんだ?
周りのプレイヤー達はざわつき始め、不満を言い続けている。すると、空が全て赤く染められ『warning』という文字に覆われた。その文字の隙間から液体が流れ始め、人の形を作り始める。その現象に全プレイヤーは茫然と眺め続ける。
一万人の上で作られたフードを被り、顔も中身もないく左右に白い手袋をつけた人らしき物がしゃべり始めた。
『プレイヤー諸君、ようこそ私の世界へ。私の名前は茅場晶彦、この世界をコントロールすることができる人物だ』
茅場晶彦—————その名前を聞いた瞬間、驚きを隠せなかった。SAOの開発ディレクターであり、ナーヴギアの基本設計を考えた人物その人だ。茅場晶彦は俺の憧れの人物だったため知らないはずがなかった。だが、何故その茅場晶彦がこんなことを!?
『プレイヤー諸君のメインメニューからログインボタンが消えているはずだ。しかし、これは不具合ではない。このゲーム本来の仕様だ。繰り返す、これは不具合ではない』
この言葉を聞いて必死に回転させ考えてた思考が急停止した。この男は何を言っているんだ……?
『諸君にはこのSAOをクリアしてもらう。それまでは自発的にはログアウトすることはできない。もし、外部の人間による停止、解除でも脱出は不可能だ。行われれば—————』
少しだけ間が生じる。その間はあまりにも重くて、短いはずなのに長く感じられた。
『ナーヴギアによって君たちの脳は破壊し、永遠の活動停止をしてもらう』
つまり——―——死。
最初は信じられなかったが、間ができるにつれて周りのプレイヤーの顔色が変わっていく。
ナーヴギアには予備電力として大容量の内蔵型バッテリーが備わっている。その電力があれば人の脳を焼くことぐらいは造作もないだろう。
『これはHPバーがゼロになっても同じことが行われる。充分に気を付けてクリアに励んでほしい。なお、君達の体はメディアからの情報により多くの介護施設、病院に知らせられ、厳重な保護を受けているはずだ』
向こうの体に気にせず、体力に気を付けながらクリアしてほしいということか。まるでこちらで生きろと言われているようだ。
『このゲームから脱出できる方法はただ一つ、このゲーム最上層の百層に到達し最終ボスを倒すこと。そうすれば開放することを約束する』
「ひゃ、百層だと!?βテスターでさえも二か月で六層だぞ!?無理に決まってるだろ!!」
βテスター千人で二か月間挑んでたったの六層。一万で百層攻略を挑だとしても一体いくらの時間が必要となるんだ……?気が遠くなりそうだ……
それに常に一万にいるわけじゃない。層の上に行くにつれて敵も強くなるし攻略も難しくなる。すると当然死者が出始めるだろう。減るにつれて時間もかかるし攻略も厳しくなってくる。最悪クリアできずに皆が——―——死ぬ。
「最後に、この世界は君たちにとって現実世界であるという証拠としてプレゼントを用意してある。受取りたまえ」
メインメニューを開きアイテム欄を開くと、そこにはあるアイテムが入ってた。
『手鏡』だ
そのアイテムをオブジェクト化すると手元に顔がちょうど写るくらいの手鏡が出てきた。周りのプレイヤーも同じように手鏡を手に取り見つめる。
次の瞬間、周りのプレイヤーが青白い光に包まれ始める。慌てだし始めるが逃げることはできない。
光が消えるとさっきと変わらず元の景色に戻る……が、少し違うことがある。
「お前……誰だ?」
となりの赤髪で悪趣味なバンダナをしている男が話しかける。装備や見たことある部分はあるが、顔だけはさっきの奴とは全くの別人だ。
「まさか……クラインか!?」
「おめぇがキリトか!?」
あまりの驚きで手鏡を落としてしまう。その手鏡は落ちた瞬間に欠片となって消えていった。
「それにしてもなんで向こうの世界の顔が……?」
「……おそらくナーヴギアが顔の形や表面の細かいところまで把握して再現したんだろう。この体も最初のセットアップのときにあちこち触るよう指示されただろう?その時に把握したんだろう」
「そういうことか……本当に現実なのか。でも、なんでこんなことをするんだよ!?」
「それはすぐに答えてくれんじゃないか?」
数秒後には俺の予想通りに茅場は答えてくれた。
『諸君は今、何故私がこんなことをするのか疑問を思っているだろう。私の目的は大規模テロでもなく大量誘拐事件でもない。この状況そのものが私の目的。この世界を造り、この世界を鑑賞するためだけにナーヴギアを造り、SAOを造った』
無機質にそして静かに茅場は答える。
『以上でこの《ソードアート・オンライン》のチュートリアルを終了する。諸君の健闘を祈る』
その言葉を残して茅場晶彦は姿を消した。それと同時に周りの景色が変わり元の始まりの街に戻った。既に夕暮れだ。
街は元に戻るがプレイヤー達はそうではない。多くのプレイヤーは罵り合ったり、うずくまったり、そして叫び、怯え、恐れた。
俺は周りに飲み込まれないようにゆっくり深呼吸し、落ち着きを維持した。
「クライン、ちょっと来い」
腕を掴み男の長身を人込みを躱しながら人気のいない路地に行く。
「よく聞けクライン。俺は今からすぐに次の村に向かう。奴の話が本当ならこれから大事になってくるのは自分自身の強化だ。お前も分かっているだろうがMMORPGではリソースの奪い合いが当たり前だ。多くのプレイヤーも落ち着きを取り戻したら経験値や金を取りに動き出すだろう。そうなればここら一帯はすぐに枯渇するだろう。再湧出(リポップ)を待つのもいいが効率が悪すぎる。今のうちに移動しながら経験値とかを獲得しつつ次の村を拠点にする。俺も大体のことを知っているから安全だ。だからクライン、ついて来い」
「でもよ、俺には他に仲間がいるからよ……嬉しい話だが、乗ることはできねぇ。それにこれ以上お前の世話になるわけにはいかないしな」
確かに仲間がいるのは知っていた。その人たちを放っておくわけにはいかない。だが、納得いかなかった。せっかく助けることのできるプレイヤーを逃すことになるかもしれないからだ。
「……分かった、ならここで別れよう。何かあったメッセージを飛ばしてくれ」
「ありがとな、キリト」
俺は振り向て次の街に向かおうとした。動き出してすぐに声がかけられた。
「キリト!おめぇ、本物は結構かわいい顔してやがんな!結構好みだぜ!」
俺は苦笑いして答えた。
「お前もその野武士ヅラの方が似合っているよ!」
と返して俺は走り出した。路地を曲がり走り出す。振り向いても誰もいない。悔しい思いを抑え、前を向いて走りだした。
そろそろ街をでるころ最後の路地を曲がろうと思い走っていると、前を見知らぬ二人組が通り過ぎる。
「!?プレイヤー……?おかしい、俺が一番に抜けようとしてるはずだ」
クラインと話しているときはまだ落ち着きを取り戻していなかったはず……叫び声も聞こえていた。俺より先に行動しているやつはいなかった。
それにちらっと見えた二人組の装備、あれが初期装備なのか?
「追いかけてみるか……!?」
そう思い曲がるが既に姿はなく静かだった。
「……何者なんだ?」
その疑問を解決できなかった。気にしてても仕方ないため走り出す。
この世界のクリアのために………
「いやー、危なかったね。ばれちゃうとこだったよ」
「いや、完全にバレてたぞあれ」
「えぇ!?うそぉ!?」
人気のない路地で会話のみが響く。
「全く、だからあれほどこっちはダメだっていったのに……それはいいとして、これから先どうなるんだろうな」
「分からない、けど進むしかないよね」
「だな……行くか」
その会話は路地の奥へと消えていった。
後書き
頑張って書いていきま~す。
ご意見、感想よろしければお願いします。
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