大陸の妖精
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孤独な雷鳴
神鳴殿と言われるマグノリアの上空に浮かぶ300個の魔水晶
それを破壊しに向かったエルザはマグノリアの街の中で多くの剣を用意していた
「このマグノリアの地を守る為に・・・剣たちよ、私に力を貸してくれ」
剣を宙に浮かせ、神鳴殿へと向けたエルザは祈るようにそう言った
一方、マグノリアの中心部に位置するカルディア大聖堂ではアルトとナツがラクサスを倒すため、二人協力して戦っていた
「どらあっ!!!!」
ナツが炎の拳を放つがラクサスはそれを容易く避ける
ラクサスが避けた方向にアルトが衝撃波を放つがそれは雷で防がれた
アルトとナツの怒涛の攻撃をかわすラクサスは目を見開いて叫んだ
「テメェらにだってわかるだろ アルトレア!! ナツ!! 今、このギルドがどれだけふぬけた状況か!!!」
そう叫びながら拳を振り仰ぐラクサス
するとアルトたちの近くに強烈な光と共に凄まじい雷撃が放たれた
「オレはこのギルドを変える!!! その為にマスターにならなきゃいけねェんだよ!!!」
そう言い放ったラクサスは横目で空中に表示されている文字を見た
そこには【神鳴殿発動まで あと1分30秒】と書かれていた
「何してやがんだジジィは!!! 街がどうなってもかまわねえのかよ!!!」
先ほどよりも少し声を荒げて叫ぶラクサス
その表情には少々焦りの色が窺えた
「そう焦るなよ、ラクサス」
雷撃から逃れたアルトがラクサスに向けて言う
「神鳴殿なら必ず止まるから」
大聖堂についた時とは一変して少しの笑みを含んだ表情のアルト
その様子はラクサスとはまったく逆、安心して闘いに臨んでいるようだ
「何だと?」
アルトの発言と妙に落ち着いている態度にラクサスは疑問を隠せずにいた
「ギルドのマスターになりたいのなら街を壊したって意味はない、今さら引けに引けなくなっちまって焦ってるんだろ?」
アルトの的を射た言葉にラクサスの表情が固まる
「男には意地を通さなきゃいけない時もあるもんなァ・・・だがな、家族相手にいつまでも意地通したって後から自分が空しくなるだけじゃねえか?」
笑ってそう言ったアルトは勢いよく地面を蹴りだしてラクサスとの距離を詰める
「だから意地張ってねえで戻って来いよ!! ラクサス!!!!」
アルトが左腕に衝撃波を込め、ラクサスに向かって振り上げる
「てめえが知ったような口を・・・!!!!」
一方ラクサスも右腕に雷撃を纏わせ、勢いよく放つ
双方の魔力がぶつかり合い、巨大な渦を巻く
その渦によって生み出された気流にラクサスもアルトもナツも同時に吹き飛ばされた
「(バカな、アルトレアごときにオレの雷撃が・・・!?)」
完全に相手を消し飛ばすつもりで放った雷撃が相殺され、驚愕の表情を浮かべるラクサス
その間にも神鳴殿の発動時間が進んでいく、空中に浮かぶ文字には【あと45秒】と書かれている
ラクサスは時間が経つにつれ徐々に焦りを募らせていく
「何も起きねえ!!」
そう叫ぶナツの蹴りがラクサスの顔面を打ち抜く
しかしナツの顔にも焦りの色が見られる
「大丈夫だ、エルザが何とかしてくれる!!」
アルトはラクサスの腹部を殴りつける
「黙れ・・・」
二人の攻撃を受けても平然としているラクサス
しかし額に冷や汗を浮かべ、表情から焦っている事が分かる
その同時刻、マグノリアの街中にいるエルザは魔力が続く限りの剣を出現させていた
宙に浮かぶ剣の数はおよそ200、それほどの剣を出現させるにはとてつもない量の魔力を消費する
「あと100・・・はあ、はあ」
息を切らし、地に片膝をつけたエルザがそう言った
「あと100本の剣がなければ同時には・・・」
そうしている間にも神鳴殿に雷が溜まっていく
エルザが空を見上げると神鳴殿の魔水晶には凄まじい量の雷が蓄電され、眩い光を放っていた
顔をしかめて神鳴殿を見上げるエルザだったが、その時エルザの頭の中に「声」が響いた
(おい!! みんな聞こえるか!!? 一大事だ、空を見ろ!!!)
「ウォーレン!?」
エルザが辺りを見渡す
頭の中に響いた声の主はウォーレンというフェアリーテイルの魔導士であった
バトル・オブ・フェアリーテイルに参加してリタイヤしてしまったハズだったが、どうやら目が覚めたらしい
「念話か・・・」
頭に声が響くのは「念話」という魔法の一種であった、ウォーレンの得意な魔法である
(ケンカしてる奴はとりあえず中止だ!!! よく聞けお前ら!!!)
どうやら念話を聞いているのはエルザだけではなく、倒れていたフェアリーテイルの仲間にも通じているようだ
(あの空に浮かんでいる物をありったけの魔力で破壊するんだ!!! 一つ残らずだ!!! あれは この街を襲うラクサスの魔法だ!! 時間がねえ、全員でやるんだ!!)
「何だとォ!?」
「あれがラクサスの・・・」
ウォーレンの言葉を聞いたフェアリーテイルの魔導士たちは一斉に空を見上げて、神鳴殿に気づいた
「ウォーレン、おまえ・・・何故神鳴殿の事を・・・?」
エルザが念話を通してウォーレンに問う
(その声はエルザか!? 無事だったか!?)
しかし返ってきたのはウォーレンの声ではなく、倒されたはずのグレイの声
「グレイ!? そうか、お前が・・・」
神鳴殿の事をウォーレンに伝えたのはグレイであった
ウォーレンを偶然見つけて念話を使い神鳴殿の事を皆に教えるようウォーレンに指示したらしい
(すまねえ、オレの念話はギルドまでは届かねえ・・・とにかく聞こえている奴だけでいい!! あの空に浮いているものを・・・)
「ウォーレンてめぇ・・・オレに何したか忘れたのかよ」
マックスの声がウォーレンの言葉を遮った、その声には怒りの感情が込められていた
何故ならマックスはバトル・オブ・フェアリーテイルでウォーレンと戦い、そのまま倒されてしまっていたからだ
マックスの言葉が火種となり、次々と念話を通じてのケンカが始まる
するとグレイがウォーレンの耳元向かって叫ぶ
「喧嘩なら後でやれ!!!!」
「お前が言うな!!!!」
声が混じり合い誰とも分からぬ者から返事が聞こえる
しかしグレイはひるまずに叫び続けた
「今は時間がねえ!! 空に浮いているのを壊せ!!」
「よ・・よせ、あれには生体リンク魔法が・・・」
神鳴殿の説明をせずにただ壊せと叫ぶグレイに対し、エルザが止めようとする
しかし喧嘩や言い合いで興奮している魔導士たちにエルザの声が聞こえるはずもなく、各々が魔水晶に視線を移す
「決着はあれを壊した後だー!!」
「ビジター、てめえそこを動くなよォ!!」
「マカオ、おめえにゃ無理だ寝てな!!」
「んだとォ、ワカバ!! ジジィのくせにハシャぎすぎだヨ!!」
それぞれ好き勝手な会話が飛び交いつつも皆が魔水晶を壊すため、自身に魔力を集中させる
「行くよハッピー!!」
「ルーシィ本気? 痛いよ?」
「痛くてもやるのっ!!」
ルーシィとハッピーも魔水晶に向けて構える
「おまえたち・・・」
その様子を念話を通じて理解したエルザは口元を綻ばせ呟いた
そして左手に持った剣を振り上げ、高らかに叫んだ
「北の200個は私がやる!!! 皆は南を中心に全部撃破!!!」
「一コも残すなよォ!!!!」
エルザとグレイの叫びを合図に魔導士たちが神鳴殿に向かって一斉に魔法を放つ
すると次の瞬間、空に浮かんでいた300個の魔水晶は一度に全て破壊され神鳴殿の機能は完全に停止した
「何だ何だ!?」
「オオッ」
「花火かしら・・・?」
「フェアリーテイルも年々やる事がハデになってきたな」
マグノリアの人たちは神鳴殿の破壊を花火と勘違いし、特に騒がれる様子もなかった
「や・・やったか」
神鳴殿の魔水晶が全て砕け散ったのを見たエルザは歓喜の表情を浮かべる
しかしその後、生体リンク魔法の効果で自身を貫くひどい痛みが走り思わず地面に倒れた
更に、それと同じ痛みを味わう仲間たちの悲鳴が念話を通して聞こえた
(み、みんな・・・無事・・・か?)
ウォーレンが念話で皆に呼びかける
「まったく・・・おまえたちは何という無茶を」
地面に倒れたエルザが言う
「お互い様・・・って事で」
同じく、地面に伏したグレイが笑みを作って口を開く
他の仲間たちの会話も聞こえる、他者を気遣うものや仲直りする者、それぞれが違う行動をとっているが皆同じギルドの輪にいる事を感じさせる出来事であった
カルディア大聖堂には驚いて動かないラクサスと笑みを浮かべるアルトたちが向き合っていた
【神鳴殿 機能停止】
空中に書かれていた言葉はラクサスの想像を大きく上回るものだった
「だから言ったろ、エルザが何とかしてくれるってな」
アルトがラクサスに語りかける
その直後、ビビッ と音を立て空中に文字が次々と浮かび上がる
神鳴殿の魔水晶を破壊した者の名前とその個数だ
「ギルドを変える必要なんかねえ、皆同じ輪の中にいるからこそどんな困難も乗り越えて行けるんだ」
自身を持ってそう言い放つアルトはそのまま続けて言う
ラクサスは俯き、その体が震えだす
「その輪にも入ろうとしないお前が一体どうやったらマスターになれんだよ、ラクサス」
そう言い放った直後の事である
「オ オ オ オ オ オ オ オ オ オ オ オ オ!!!!」
野太い咆哮と共にラクサスの体から天に向かって雷撃が放たれる
雷鳴が轟き、アルトとナツは驚愕の表情を浮かべる
「支配だ」
雷を身に纏い、鋭い眼光で二人を睨みつけるラクサスはゆっくり口を開けて言い放った
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