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歌集「春雪花」

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 たれそ呼ぶ

  鳴きにし蛙

   小夜更けて

 春雨降らば

    花ぞ散りなむ



 誰を呼んでいるのか…あちらこちらで蛙が鳴き声が響いている…。

 気付けば夜も更けて、肌寒くなってきた。花冷えとはよく言う…。

 空には星影もなく…厚い雲からしとしとと雨が降っている…。

 あぁ…この雨で、折角咲いた桜も散ってしまうなと思い…何だか寂しくなってしまった…。

 彼と桜を見たかった…この想いを伝えられずとも、ただそっと…春の刹那を彩る桜を…。



 揺るぎなき

  想いぞ秘めて

   霞みたる

 山眺むれば

    君恋しけれ



 春雨に仄かに山から立ち上る霞…。

 彼への想いはずっと変わらず…思えば、あの霞がかった山のように想いを隠してきたのだな…。

 きっと…これからも同じなのだろう…。

 こんな日の淡い山波を眺めると…彼が恋しくてたまらなくなる…。


 会いたい…。



 
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