IS~夢を追い求める者~
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第2章:異分子の排除
第23話「乱入と挑戦」
前書き
盛大なマッチポンプ的な回です。
=秋十side=
日にちは流れ、ついにクラス対抗戦。
「...始まったか。」
俺と桜さんは千冬姉達と同じ場所から、あいつと鈴の戦いを見ていた。
「ところでなんで俺たちはここにいるんです?別に観客席でもよかったんじゃ..?」
他のクラスメイトや他クラスの人も皆観客席に行っているのに、なぜか俺と桜さん、セシリア(名前で呼んでもいいと言われた)、箒の四人は管制室にいた。
「ん?ちょっとな。」
「...私にも聞かされてない。篠ノ之の場合は織斑を見送った後に観客席に行くのは時間がかかるからこちらの来たのだろうが、お前たちは知らん。.....が、特に禁止してる訳ではないのでな。騒がない限りは構わん。」
千冬姉も聞かされてないらしい。...桜さん、なに企んでるんだ?
「...ん?今のは...。」
そこで戦況が動いた。
あいつがいきなり吹き飛ばされたのだ。
おそらく、鈴の攻撃だろう。確か、鈴の“甲龍”の武装で...。
「...“衝撃砲”...か。」
「はい。オルコットさんの“ブルー・ティアーズ”と同じ、第三世代兵器ですよ。」
「名前は“龍砲”。空間に圧力をかけて砲身を作り、衝撃を砲弾として撃ちだす。...死角もない、不可視の武装だな。」
“おお、恐ろしい”とか言う桜さん。
「おまけに、ハイパーセンサーで認識した時にはほぼ回避不可能の距離だ。普通じゃ、どうしようもねぇな。」
「...ちなみに桜さんはどうするんですか?」
どうせ、この人の事だ。対処法なんて普通に持ってるだろう。
「ん?空気の動きで避ける。」
「....で、デタラメですね...。」
「ちなみに織斑先生もできるだろうな。」
山田先生が引き攣りながら言うと、桜さんがそう返す。
思わず全員が千冬姉を見ると、さも当然かのような顔をしていた。
「(...できるんだな。)」
「第一、視覚を使って避けようとするからダメなんだ。空気の流れを読んだり、それこそ心に水を宿せば簡単に避けれる。...多分、狙撃とかを極めても行けるだろうな。」
心に水を宿す...あ、そうか。気配を読んで避ければいいのか。
「....あれ?って事は俺も避けれると?」
「ああ。...避けれなけりゃまた稽古つけてやる。」
「え。」
桜さんの言葉に俺は固まる。
...ま、まぁ、鈴と戦う事なんて早々ないだろうし...。
「ちなみに、鳳の場合はもう一つ避ける方法があるな。」
「...どういう事ですか?」
“鈴の場合は”という意味が分からず、俺は聞き返した。
「視線だ。鳳の奴、視線が分かりやすい。多分、秋十君やセシリアも実際に戦えば気づけるだろう。」
「....なるほど。」
確かに、視線が分かりやすかった。これならどこを狙ってるか分かるな。
「ふん、視線が分かってしまう程度では、国家代表にはなれんな。」
「...皆さん、手厳しいですね...。」
黙って聞いていた山田先生がそう呟く。
...まぁ、最強クラスがここに二人もいますしね...。
「一夏....!」
「...お?仕掛けに行ったか。」
「どの道あの機体では長期戦は難しいですからね。俺もそうします。」
長期戦には向いていないワンオフに、ブレード一本だけの武装。
...どう考えても短期決戦にするべきだろう。
長期戦ができるの、桜さんと千冬姉ぐらいしか思いつかないし。
「...瞬時加速...か。」
「私が教えた。おそらく一週間ではクラス対抗戦で無様に負けるだけだろうと思ったからな。」
「使いどころを誤らなければ代表候補生とも渡り合えるからな。」
クラスとしてあっさり負けるのはいただけないからな。
...と言っても、通じるのは一回だけだろうな。
「(...っと、決まるか....!?)」
瞬間、上空のシールドを突き破って、地面に砲撃が着弾する。
「っ...なに!?なにが起きましたの!?」
「これは....!?」
明らかに異常事態。なにせ、乱入者が現れたのだから。
「システム破損!何かがアリーナの遮断シールドを、貫通してきたみたいです!」
「っ、試合中止!織斑、鳳!ただちに退避しろ!」
山田先生の言葉と共に、千冬姉が鋭く指示を飛ばす。
「....あいつら、やる気みたいだな。」
「少し無謀すぎません?遮断シールドを貫通する兵器を持つ敵相手に...。」
桜さんの言葉に俺はそう返す。
山田先生も必死に二人に呼びかけている...が、無視されているようだ。
「桜さん!私たちも行った方が...!」
「...残念だが、あれを見てみろ。」
「遮断シールドが...レベル4に...!?」
桜さんが示したパネルにはそう書かれていた。
しかも、扉が全てロックされている。
「まさか...あのISの仕業...?」
「...そのようだ。これでは、避難する事も、救援に向かう事もできない...。」
その言葉で、部屋に重苦しい沈黙が訪れる。
「...緊急事態として既に政府に救援を送っており、今も三年の精鋭がシステムクラックを実行中だが....。」
「....想像以上に固いようです...!」
...まずいな。生徒が避難できないのは厳しい...!
「桜さん....!」
「...........。」
桜さんに声を掛けるが、桜さんはじっとアリーナを映す画面を見ていた。
「っ...!?そんな!?」
「どうした?」
「....IS反応が...上空に三体も....!」
「なっ....!?」
さすがにそれには千冬姉も驚いた。
おそらくアリーナにいるISと同じであろうISが三体も現れたのだから。
【織斑先生!大変です!ロックのシステムが...!】
「....システムが書きかえられてるのか...?」
三年生からの通信に、桜さんがそう呟く。
「っ...これでは、織斑と鳳...だけじゃない、避難できていない者全員が...!」
「そんな....!?」
千冬姉の言葉にセシリアが声を上げる。
...確かに、これは....!
「...観客席に、ユーリちゃんとマドカちゃん、簪ちゃんがいたはずだ。」
「.....え?」
そう呟いた桜さんにどういうことか聞く間もなく、何か通信機らしき物を取り出す。
「ユーリちゃん!聞こえるか!?」
【さ、桜さん!?聞こえます!】
「...篠咲兄、それはなんだ?」
「...ユーリちゃんの専用機、エグザミアにあるAIとの通信機能を応用した、緊急時の通信システムだ。チヴィットを通じて通信を行っている。」
...そういえば、グランツさんとジェイルさんがチヴィット開発の傍らでそんなの作ってたっけ...?まさか、こんな所で役に立つとは...。
「ユーリちゃん、簪ちゃんの二人は協力して扉のロックを解除してくれ!マドカちゃんはいざという時に皆を護ってやってくれ!」
【わ、私がですか!?そ、そんなの...!】
桜さんが通信機を使って指示を飛ばす。
しかし、ユーリは自信がないらしく、そんな事を言う。
...まぁ、こんな土壇場で重要な事押し付けられたらな....。
「...できる。俺が保証しよう。」
【桜さん...?...分かりました。....やってみます!】
「よし、その意気だ。頑張れよ。」
そう言って桜さんは通信を切った。
「...できるのか?」
「ユーリちゃんの解析能力はそれこそ俺たちの域に辿り着ける程だ。できるさ。」
「...そうか。」
“俺たち”というのは桜さんと束さんの二人の事だろう。
それを聞いて千冬姉も納得したらしい。
「.....で、貴様は緊急時にどこに向かおうとしている?」
「あの二人だけではすぐにやられてしまう。だから俺たちが行くつもりだが?」
「........。」
それは俺も同意見ではある。
でも桜さん、どうやってロックのかかった扉を...?
「ここからアリーナまでの最短の道のりに生徒はいないな?」
「避難しているか観客席に取り残されているかだからいないはずだが....まさか....。」
「後で弁償すっから!行くぞ秋十君!セシリア!」
そう言ってアリーナへと向かっていく桜さん。
「ちょ、待ってくださいよ桜さん!」
慌てて俺たちも追いかけて行く。
=ユーリside=
「開けて!開けてよ!!」
「ここも出られないの!?」
至る所から慌てる声が聞こえます。
「....シュテル、手伝ってください。」
〈分かりました。〉
それに構う暇もなく、私はロックの解除に取り掛かります。
「簪さんは私のサポートと、できれば皆さんの安全を!」
「わ、分かった!」
簪さんにそう言いつつ、私はロックシステムにアクセスします。
「っ...!?これは...!」
〈なんて膨大なブロック...!〉
まるでこのシステムを解除させる訳にはいかないとばかりに、システムのブロックが多くなっていました。こんな事ができるのは...!
「(束さん...!どうして、こんな...!)」
ロックを解除するためにキーボードを叩きながら、そんな事を考えます。
「っ....!....!」
「ゆ、ユーリ....これ...。」
次々とパスワードが現れ、一向に解除できません。
簪さんもその異常さに言葉を失っています。
「っ.....。」
タン!と、キーボードを叩くのを中断します。
「(これほどの膨大なロック...私と簪さんが手を合わせた所で、破れるはずが....。)」
こんなのが破れるのは、束さんが桜さんだけ...。
そう思ってしまい、私は諦めかけます。
「(こんなの、できるはずが....!)」
―――...できる。俺が保証しよう。
「っ―――!!」
ふと、桜さんの言葉が蘇ります。
「(...そうです。できるんです...。桜さんが...あの桜さんが、私に“できる”と言って、任せてくれた。....なら、それに答えないと!!)」
そうと決まれば、一気にロックシステムに目を通します。
「(これを仕掛けたのは恐らく束さん。もしかしたら桜さんも一枚噛んでいるかもしれません。どうして、そんな事をしたのか、私には知るよしもないですが.....これが束さんや桜さんからの試練だというのなら、乗り越えてみせます!!)」
増え続けるブロックに対し、それを上回る速度で私は解析し、解除する。
さっきまでよりも早く、速く手を動かし、次々と解除していく。
「簪さん!解析の終わったブロックの解除をよろしくお願いします!私は解析に専念しますので!レヴィ、ディアーチェはアリーナにいるISの攻撃の流れ弾が来ないか、マドカさんと協力して探知しておいてください!」
「わ、分かった!」
〈まっかせてー!〉
〈うむ。そちらは頼んだぞ。〉
私が飛ばした指示に、皆従ってくれます。
エグザミアに搭載されているAIは、他のISとも通信はできるので、これでマドカさんも少しは楽になるはず...!
「(このシステムの構図...明らかに私に合わせて対策されています。やはり、束さんが...?)」
徐々に、私の解析スピードが追い付かなくなってきます。
っ....やっぱり、私が手こずりやすいシステム...!
「(...けど、それは以前までの話です!今は...もう...!)」
〈残り20。もう少しですユーリ。〉
シュテルの言葉に、もう少し速度を上げます。
簪さんも私に合わせようと、解析済みのブロックを次々と解除してくれます。
「(私はもう負けない。...劣等感にも、姉様にも...私自身にも!)」
「これで....最後...!」
簪さんの言葉と共に、扉のロックが解除されます。
「っ、開いた!?」
「出して!さっさと出して!」
「いたっ!?押さないでよ!」
解除されたのが分かった瞬間、皆さんが我先にと出て行きます。
...扉の横で作業をしてたので、辛うじて人の波に呑まれずに済みました...。
「....はぁ....はぁ....。」
「解除...できた...?」
〈お疲れ様です。ユーリ、簪。〉
意識を張りつめすぎていたのか、私は息切れし、簪さんもやりきった表情で座り込んでいました。
「わ、私達も...避難しましょう...。」
「うん。」
緊張の糸が切れて整わない息を抑えながら、私は簪さんにそう言いました。
他の皆さんが避難し終わり、私達も立ちあがります。
〈っ、ユーリ!危険です!〉
「えっ...?」
突然、シュテルが声を上げ、後ろの気配に違和感がありました。
振り返ろうと、顔を動かした瞬間...。
―――ドォオオオオン!
「っ.....!?」
爆風の余波に、私は腕で顔を覆います。
...?どうして私は無事なんでしょう?すぐ後ろに攻撃が着弾したはずなのに。
「...っと...二人共、無事?」
「マドカさん...?」
ふと見ると、私と簪さんを庇うようにマドカさんがISを展開して立っていました。
「二人共お疲れ様。後は私と秋兄たちに任せて。」
そう言って攻撃によって空いた穴からアリーナへと出て行きました。
「....行きましょう簪さん。」
「え?う、うん。」
私も行った方がいいと思いますが、生憎精神を使い果たしたので、行った所で体力が持ちません。
なので、私は後をマドカさん達に任せ、簪さんと共に避難する事します。
「(後は...任せましたよ....。)」
ふとアリーナの方を一瞥して、私は避難しました。
=out side=
―――少し時間を遡り...
「(っしゃぁ!原作通り!)」
鈴を抱え、一夏はそんな事を考える。
今まで桜や秋十によって色々とおかしかったが、ここで原作と全く同じ出来事が起きたのだ。考えが不純でもそう思うのは当然だった。
「っ!」
飛んできたビームを、鈴を放すと共に避ける。
「(このまま原作通りに進めて、あいつらの立場をなくしてやる!)」
“原作”でもあった動きをする事で、敵のISの攻撃を躱す一夏。
躱しながらも一夏は笑みを抑えられなかった。
いきなりとはいえ、自分の思い通りに戻ったのだから。
―――...尤も、二人の兎はそれを許さないが。
「っ!?嘘!?」
「どうした!?っ、なっ...!?」
突然驚きの声をあげた鈴に、何事か聞こうとして上からのビームに阻まれる。
「もう三機...!」
「嘘だろ!?どうして...!?」
鈴は純粋にさらに増えたことに、一夏は原作よりも三機多い事に驚く。
「何か訳があるってことね。今、このタイミングで、四機で襲ってくる訳が!」
「(どういうことだ!?なんで四機なんだよ!?ここは一機だろう!?)」
鈴はすぐに分析し、簡単な憶測を述べながらビームを躱す。
一方、一夏は躱せてはいるが脳内では完全に混乱していた。
“原作”に囚われてるが故に、その通りにならない事に焦っているのだ。
「一夏!逃げなさい!」
「っ!」
敵ISの内一機が接近してきたのを鈴が双天牙月で受け止め、一夏に叫ぶ。
「アンタじゃこいつらの相手にならないわ!あたしが時間を稼ぐから、アンタは逃げなさい!」
「っ、ぁ...で、でも...。」
一夏は原作の“一夏”らしく言い返そうとして、言葉に詰まる。
「(っ....なんだよ。なんで言い返せねぇんだよ..!)」
そう考える一夏の体は震えていた。
“原作”から外れ、より命の危険が大きいため、本能的に恐怖しているのだ。
「早く!!」
「っ、ぁ...ぁ、ああ...。」
「っ、きゃあっ!?」
恐怖で震える一夏に鈴は呼びかけるが、ついにビームに掠り、体勢が崩れてしまう。
「(まず...!?)」
結果、大きな隙を晒す事になり、二機ほどが鈴に狙いを定める。
...その瞬間、
―――ドドォオオン!!
「えっ!?」
鈴を狙っていた二機にレーザーが着弾する。
【着弾確認!俺と秋十君が斬りこむ!セシリアは援護!連携に自信がなければ一機だけでも引き付けてくれ!】
【わかりましたわ!】
すかさず二つの影が鈴の前に躍り出て、ブレードを一閃。
敵ISを飛び退かせて体制を立て直す間を確保した。
「大丈夫か!?」
「え、ええ!」
「...ちっ、あっちもか!秋十君!任せた!」
「はい!」
自身に背を向けて構える秋十の姿を見て、鈴は既視感を覚えつつも、反射的に助けられた事にお礼を言う。
桜は、他の二機を止めにすぐさまその場を離れて行った。
「な、なんでここに...。」
「...桜さんの強行突破だ。扉のロックを解除するのが面倒だからと、蹴破ってきた!」
突っ込みどころがあるが、鈴の言葉に秋十はそう言いかえした。
「っ....アンタの助けなんかなくったって...!」
「そんな事言ってる場合か!っ、くっ...!」
理不尽な秋十への嫌悪に秋十は言い返すが、敵ISの一機が秋十に殴りかかってき、それを秋十はブレードで受け止める。
「(しまっ...!?一機がノーマークだ!?)」
だが、もう一機が秋十を素通りして鈴へと向かう。
「くっ...来るならきなさい!」
「鈴!く...邪魔...するな!!」
受け止めているブレードで押し切り、そのまま刃を返して一閃する。
敵ISは腕で受け止めるも、その威力で少し後退する。
...だが、鈴を助けに行くには不十分な間合いだった。
「(アリーナにはまだ避難できていない生徒が多数いる。....被害があっちに行かないようにするには、今目の前にいる奴に集中するしかない!)」
思考を切り替え、秋十はブレードを構えて敵ISへと突っ込んでいった。
後書き
原作では一機だけだと油断している一夏に対しさらに三機追加する束さんマジドS。
システム関連についてはド素人レベルなので、多少の事は目を瞑ってくれるとありがたいです。
“こう表した方が分かりやすい”と言った書き方があればアドバイスしてくれると助かります。
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