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ソードアート・オンライン~漆黒の剣聖~

作者:字伏
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アインクラッド編~頂に立つ存在~
  第二十六話 明かされる真実

遠巻きに見ていたシリウスとベガはいったい何が起こったのかわからなかった。あの状況では間違いなくアポカリプスの拳は直撃していた。なのに、気が付いたらソレイユの刀が抜かれていて、アポカリプスを斬り終えていた。それを見ていたシリウスは苦笑いをしながら困ったように、それでいてどことなく嬉しそうに呟いた。

「参ったな。おれのライバルはあそこまで強いのか・・・」

「言葉の意味と表情がかみあってないわよ」

笑いながら呟くシリウスに呆れたように突っ込むベガだが、効果があるかはわからなかった。一息つきソレイユたちの方へ視線を向けると、アポカリプスが消えてかかっていて、ソレイユがそれを見届けているところだった。



「おれの、勝ちだな。アポカリプス」

〝・・・・・どうやら、そのようだな。主の勝ちだ・・・ソレイユ〟

それだけ言い残すとアポカリプスはポリゴン片になって消えていく。それを見届けるソレイユ。完全に消えるのを確認したソレイユは一度だけ目を瞑り、黙祷をささげる。
それが終わると、床に座り込んでいるシリウスたちの方に歩いていく。ある程度近づいてきたところシリウスとベガが労いの言葉をかけてきた。

「お疲れ様だな、ソレイユ」

「お疲れ様、ソレイユ」

「ああ、サンキュー」

そう言いながら床に座り込むソレイユ。その顔は疲労が深く残っていた。

「これで終わったのか?」

「いや、たぶんまだ先がある」

「うへっ、まだあんのかよ」

ソレイユの言葉に顔を顰めるシリウス。そこにベガがソレイユに対して疑問を投げかけてきた。

「でも、この先に何があるの?」

「・・・・・さぁな。とりあえず、ポーションで全快したらここから出てみようぜ」

頷くベガ。その後、ソレイユたちはアイテムウインドウからポーションを取り出すと一気に口に流す。なぜ回復結晶を使わないのか。それはこのフィールドすべてが結晶無効化空間であるためである。
ハイポーションやメガポーションなどたくさんのポーションを消費して全快まで回復したソレイユたちは身支度を整え、アポカリプスを倒したことで再び出現した扉へ向かって歩いていく。重厚な扉を開け、くぐっていくとそこには意外な人物がいた。

「よっ、お疲れさん」

背中に大剣を背負い、ローブを羽織っているプレイヤーオシリスだった。≪流星≫の通り名を持ち、先日の決闘でソレイユと引き分けたプレイヤーである。しかし、予想外の人物がいようとも、ソレイユ達は誰一人驚くことなく、その人物を見据えていた。

「なんでここにいるのか、って質問した方がいいのか?」

「いや、必要ないと思うよ。なにせ、俺がここにいる時点で、君なら、いや、君たちならすでに察しはついているとは思うのだが・・・?」

「まぁ、な。ある程度予想はしてたからな」

茶化すようなソレイユの言葉に真面目に返すオシリス。肩透かしを食らうソレイユだがそれを顔には出さず、オシリスの質問に答えるソレイユ。返答を得たオシリスは面白いものを見つけたような表情になり、再びソレイユに質問を投げかけた。

「予想とは?」

「・・・・・ハァ、説明すると長くなるぞ?」

「構わないよ」

オシリスの了解を得たソレイユは、一息つき自分の考えを即座に頭の中でまとめると、その内容を話していく。

「まず、気になったのはヒースクリフの存在だ」

「あいつの?」

「ああ。二十五層のボス戦で軍は壊滅寸前になり、攻略組から身を引いた。その後二十六層のボス戦時から血盟騎士団が先頭に立っていた。その時の二十六層のボス戦の後に明らかになったヒースクリフがもつユニークスキル≪神聖剣≫。おれが最初に疑問に思ったのはそこだ」

「そこ?」

「ああ。そこだ」

オシリスの質問に頷くソレイユ。大きく深呼吸してから再び話し始める。

「そこ、つまり≪神聖剣≫の存在だ。その直後にお前の≪月光剣≫も露わになってきた。では、なぜユニークスキルは存在するのか。このゲームは基本的に公正さを貫いている、唯一つの例外を除いてな。その存在がユニークスキルだ。おれの≪剣聖≫、シリウスの≪神槍≫、ベガの≪神速剣≫、キリト君の≪二刀流≫、ヒースクリフの≪神聖剣≫、そして、オシリス、あんたの≪月光剣≫だ。ほかにもまだありそうだがな。その存在を知った時、頭に引っ掛かるものがあった。なぜ、ユニークスキルというバランス・ブレイカーがあるのかってな」

「・・・・・その、答えは出たのかい?」

「ああ、もちろん出たさ。答えは、このゲームのキーパーソンにするためさ」

「キーパーソン?」

「ああ。それがゲーム攻略のカギなのか、はたまた敵として現れるのかはわからないがな。何はともあれ、ユニークスキルというバランス・ブレイカーはこのゲーム≪ソードアート・オンライン≫をクリアするにあたって必要になってくるカギだったってこと」

「「へぇ~」」

「・・・・・・」

ソレイユの推理を聞いたシリウスとベガは感心したようにうなずき、オシリスは目を見開き、いかにも驚いています、という表情だった。そんなオシリスの姿を見たソレイユは愉快そうに笑いさらに言葉を続けていく。

「だからこそ、最初にそれを発現させたヒースクリフのことは怪しいと睨んでいた。おそらく、奴が茅場晶彦なのだろ?」

「・・・・・正解だ。君の名推理には恐れ入った。では、おれが誰だか見当はついているんだろう?」

「ああ。茅場晶彦と共に並び称される天才。茅場晶彦の影に隠れ、メディアに取り上げられることはあまりなかったが、それでも人はあんたのことを天才と称える。高嶺恭介、それがあんたの正体だ、オシリス」

「・・・・・ああ、そうだ。正解だよ、ソレイユ」

「もう一つ言っておこう。アインクラッドを創造したのは茅場晶彦だろう。だが、ジェネシアスを創造したのはあんただ」

「へぇ~、なぜそう思ったんだい?」

「簡単だ。アインクラッドとジェネシアスでは開発のコンセプトがまるで違うだろう。だからそう思っただけだ」

「それも正解。確かにこのフィールドはおれが創造したものだよ。だが、一つだけ疑問が残るんだよ。なぜ、君たちはこのフィールドに挑戦してきたんだい?」

「・・・・・デスゲームが始まる時に茅場晶彦が言ったセリフのなかにこんなのがあった。『ログアウトするためにはこのゲームをクリアする必要がある』、と奴は言っていた。なぜ、この城を、という言い回しを使わなかったのか。そこで気が付いた。その台詞の意味を。このゲームとは≪ソードアート・オンライン≫に他ならない。そして≪ソードアート・オンライン≫はRPGだということ。古今東西RPGでは隠しダンジョンが存在するのは当たり前だし、メインストーリーをクリアすると隠れストーリーが露わになる。それはおそらく≪ソードアート・オンライン≫も例外ではないはず、と考えたんだよ」

「・・・・・なるほど、な。つくづくな名推理だな」

「・・・攻略組を含めて、大概の、と言うよりも全てのプレイヤーはアインクラッドを最上階まで登ればログアウトできると信じているのだろう。それをこんな形で絶望を与える。悪趣味だぜ、オシリス」

「そこまで言うか?ただ、隠しステージがあるのはRPGとして当たり前だと思っただけなんだがな」

「・・・じゃあ、あんたを倒せば、ログアウトに必要な要素を一つ満たせるということだな?」

「まぁ、そうなるな。だが、そう簡単にいくかな?それでは、おれはおれの玉座にて待つことにするよ。アポカリプスを倒した君らに幸運を祈るよ」

それだけ言うとオシリスの姿が消える。その直後、オシリスが立っていた後ろに三つの扉が出現した。三人は一度顔を見合わせ、相談を始める。

「どうするよ?」

「いや、行くしかないでしょ」

「ベガに同意」

「だよなぁ。誰がどこに行く?」

シリウスの疑問に一番はじめに答えたのはベガだった。

「私が真ん中に行くわ」

「ならおれは向かって左側な」

「おれはあまりものかよ・・・」

思いのほか簡単に決まった。向かって右側の扉を行くのがシリウス、真ん中の扉を行くのがベガ、左側の扉を行くのがソレイユということになった。誰がどの扉に行くのかが決まると、三人はそれぞれの扉の前に立ち、一度だけ頷くと扉を開けていく。

ここにいるもの以外知ることのない最終決戦が幕を開けた。
 
 

 
後書き
という訳で最終ボスだな!

ソレイユ「アポカリプス戦でいろいろ無茶苦茶やっといてまだ続きがあるとか・・・」

なんだい?何か文句でも?

ソレイユ「いや、もう、いいよ・・・」

その溜息がなんか引っかかるが・・・
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