Gカップ★グラドル
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7部分:第七章
第七章
「またあんた飲むんでしょ」
「まあまあ」
だが恵理香はその声にも平気である。
「ついでに夕食もね」
「そういう問題じゃないでしょ。そもそも」
「細かいことは抜きでさ。久し振りに長い夜なんだし」
「だから遊び過ぎと飲み過ぎは」
「たまには羽目を外すものよ」
「いつもじゃない、それ」
「まあまあ」
怒った顔を見せる山本を宥めにかかる。
「それでさ。考えてくれた?」
そのうえで尋ねる。
「あのヒーローのこと」
「ああ、あれね」
ここでは自分の考えをまずは隠していた。
「一応調べたわ」
「うん」
「ちょっとだけど。それでね」
「主役やれそう!?女性ヒーローに」
「待ちなさい」
顔を寄せて問うてくる恵理香をまずは退けた。それからまた答えた。
「ちょっとだけだけれどね。わかったことがあるわ」
「何、何」
「一応女性ヒーローなんかも考えてるみたいよ」
「やった、それじゃあ」
「けれど役がもらえるかどうかはまだわからないわよ」
そう釘を刺した。
「それはわかっておいてね」
「うん」
「とりあえずは交渉とかオーディションの話とかも調べておくから」
「主役よ、主役」
「それも調べておくから。とりあえずは大人しくしてて。いいわね」
「うん。山本ちゃんしっかりしてるからやっぱり頼りになるわよ」
「あんたがだらしないだけよ」
また怒った顔になりそう返した。
「もうちょっと。しっかりしなさい、いいわね」
「はぁい」
「返事はしっかりと」
「ちぇっ、何かお姉さんみたい」
「ビシビシいくわよ」
それから山本はヒーローに関して調べて交渉をはじめた。何と主役の話まで来たのである。
「奥田恵理香ちゃんだよね」
「はい」
プロデューサーと電話で話をしていた。電話とはいえかなり真剣な話になっていた。
「覚えてるよ。前ゲストで出たの覚えてるかな」
「あれは科学戦隊でしたよね」
「うん。あの時の演技が気に入ってるんだよ。それでね」
「主役に、ですか」
「主役って言ってもあれだよ」
プロデューサーは前もってこう述べた。
「最近はヒーローも同じ番組に何人も出るんだよ。それは知ってるよね」
「ええ、まあ」
もっともこれはこのシリーズの伝統であるが。最初から二人のヒーローがいて活躍していた。止むを得ない事情でそうなったとはいえこれが今に至る伝統となったのである。
「そのうちの一人でどうかな」
「一人に」
「もう一ついいかな、って思う役があるんだけれどね」
「もう一つですか」
「うん、こっともレギュラーだけれどヒーローじゃないから出番はぐっと減るんだ」
「どんな役ですか?」
「喫茶店のウェイトレス。主人公の側にいつもいる役だね、恋人じゃないけれど」
「レギュラーなんですね」
念の為それをもう一度確かめた。
「うん、そうだよ。どっちがいいの?」
「それはですね」
二つあるのならば。山本の考えは決まっていた。
彼女は答えた。こうして恵理香は念願のヒーローに出演となったのであった。だが彼女はそれに関してかなり不満であったのだ。
「何よ、それ」
役を聞いて最初に言った言葉はこれであった。
「ヒーローじゃないじゃない」
「それでも番組ではレギュラーよ。出番だって多いし」
「そういう問題じゃないの」
頬を膨らませてそう抗議する。
「あたしはヒーローがやりたいのよ」
「仕方ないでしょ。じゃあ降りるの?」
「いえ、それは嫌よ」
降りるつもりはなかった。折角のレギュラーである。恵理香もそうした分別もあった。
「けれどヒーローじゃないなんて」
「それでもヒーローに出られることは出られるわよ」
「じゃあ出るわ」
結局受けることにした。
「それでいいわよ」
「じゃあそれでね。プロデューサーさんとお話しておくわ」
「ええ。そういえばあのプロデューサーさんと脚本家さんって」
「何!?」
「相当頑固な人らしいけれど」
「ああ、それは大丈夫よ」
山本はニコリと笑ってそれに返した。
「そちらは私に任せておいて。出番も取って来るから」
「それなら」
かなり不満ではあったがレギュラーに決まった。収録がはじまると恵理香はすぐにさらに忙しくなるのであった。
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