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Gカップ★グラドル

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5部分:第五章


第五章

「相手ってあれでしょ。今の彼氏」
「そうよ」
 それに頷いた。
「何時?初体験は」
「何時だっていいでしょ」
 顔を前に向けて運転しながら答える。だがその顔は真っ赤になっている。
「大学生の時?やっぱり」
「だから何時だっていいじゃない」
 顔がさらに赤くなる。
「じゃあそう思っておくね」
「勝手にしたら」
 山本は憮然とした声を返す。
「けれど何でそんな話になるのよ」
「いやあ、山本ちゃんも結構可愛いところあるんだなあって」
「からかわないでよ」
「御免御免。それでね」
「今度は何?」
「あのヒーローDVD買ってもいい?あの人が出てるの」
「それは別にいいわよ」
 山本もそれ位は許した。
「演技の勉強にもなるし」
「ありがと」
「けれど」
 ここで山本はふと思った。
「あんたも特撮もの出てもいいかもね」
「特撮に?」
「あれはあれで凄い演技の勉強になるのよ」
「ふうん」
「それにダイエットにもなるしね。あんた只でさえ太り易いし」
「まさかヒーロー役!?」
「そればかりじゃないけれど悪役でもよく動くじゃない、あれって」
「派手なコスチュームでよね」
「変身しない主人公のお友達とか妹でも何かと動くでしょ」
「襲われたりするもんね。戦闘員とか怪人に」
「よく知ってるわね、本当に」
「ヒーローでも最近は悪役だし」
「悪役ねえ。ヒーローが」
 山本にとっては少しどころではない違和感があった。
「世の中変わったわね、本当に」
「それで私もヒーローになれるの!?」
 恵理香の声が弾んでいた。
「だったらポーズとかも練習しないと駄目よね。こうやって」
「こらっ」
 目だけを向けて叱る。恵理香は車の中でシリーズの中のヒーローの一人のポーズをしだしたのである。
「そこで電気人間にならないの」
「ちぇっ」
「けれどまあ」
 叱った後でまた言う。
「悪くないかもね」
「そう思う!?山本ちゃんも」
「グラドルからね。そっから脱皮するのにも」
「悪党をどんどん倒す正義の女ヒーローなんてね」
「いい宣伝にもなるし」
「そうそう」
「けれど演技は真面目にね」
 声がキッとなる。
「いい、好きなんだったら余計に」
「わかってるわよ、それは」
「どうだか。あんた気分屋だし」
「大丈夫だって」
「どうかしら」
 あまり信頼はしていない声であった。伊達に恵理香を見出して一緒に住んでいるわけではなかった。
「心配無用よ。ヒーローになれるのよ」
「まあ社長と話はしてみるわ」
「うんうん」
「それにしろまずはこれからの仕事」
 また声を引き締めさせた。
「それはわかってるわね」
「わかってますって」
 だがそれに対する恵理香の返答はわかっていないのではと思わせるものであった。
「バラエティも好きだし」
「あんたって仕事は何でもいいのね」
 それは感心するところであった。
「グラビアでもバラエティでも」
「だってそれが仕事なんでしょ」
 今度の返事はあっけらかんとしたものであった。
「タレントの」
「そうだけれどね。嫌がったりする娘って多いのよ。グラビアにしろバラエティにしろ」
「ふうん、そうなんだ」
 これは恵理香にとっては少し意外なことであった。
「どれも同じ仕事なのにね」
「まあそういう考えっていいと思うわよ」
 山本はそんな恵理香の考えを否定しなかった。
「そうして仕事していくのがやっぱりステップアップになるからね」
「山本ちゃんもそう思ってくれるの?」
「だから仕事とってきてるんでしょ。まあ何でもしてくれるから楽だけれど」
「そうでしょ。けれどヒーローはね」
「ええ」
「ヒーローでいきたいわよね。仮面レイピアとか言ってさ」
「あんたがレイピア?」
 西洋の細い剣のことである。刺すことを主としたものでありフェシングでもよく使われている。
「そうよ。似合うと思わない?」
「何かレイピアって柄じゃないわね」
「あら、御言葉ね」 
 その突っ込みにはむっとした顔を見せる。
「けれどいいわ。あのヒーローね」
「そう、あのヒーロー」
「何とかやってみるわ。期待しないで待っていて」
「了解」
「まったく」
 嬉しそうにはしゃぐ恵理香を横目で見て困ったような苦笑いを浮かべる。色々と面倒な彼女であるが不思議と嫌いにはなれないのが本音だった。何か妹みたいな感じだった。山本は恵理香を番組に送り出した後で楽屋でノートパソコンを使ってあれこれと調べものをした。それが一段落ついたところで撮影が終わりの時間となったのであった。

 
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